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遺留分を放棄する手続きをわかりやすく解説

最終更新日 2026年 10月23日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

遺留分を放棄する手続きをわかりやすく解説

この記事を読むとわかること

相続について考えるとき、「遺留分の放棄」が問題になる場合があります。

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障されている最低限の相続財産の取り分のことなのですが、相続人の間でトラブルに発展することもあるものです。
そこで重要になることの1つが、遺留分放棄という手続きです。

遺留分放棄は、すべての相続対策で必要になる制度ではありませんが、次のようなケースでは必要になる可能性があります。

「父から、長男に会社を継がせたいので
遺留分を放棄してほしいと言われた」
「次男である自分は、すでに十分な
生前贈与を受けているし、争いたくないから将来の遺留分は主張しないつもりだ」

遺留分放棄には、被相続人と相続人の双方にとって次のようなメリットがあります。

  • 遺言による財産配分を実現しやすくなる
  • 相続開始後の争いを予防できる
  • 特定の相続人に財産を集中させることで
    事業承継を安定させやすい
  • 将来の相続トラブルに巻き込まれにくい

しかし、デメリットもあることを忘れてはいけません。

そして、重要なポイントは次の4点です。

  1. 被相続人(親など)が生きている間に
    放棄する場合と、相続開始後に
    放棄する場合では手続きが大きく
    異なる。
  2. 遺留分を放棄しても、
    相続人でなくなるわけではない。
  3. 相続人の一人が遺留分を放棄しても、
    他の相続人の遺留分は増えない。
  4. 遺留分放棄と相続放棄は
    まったく違うもの。

本記事では、後継者への事業承継を円滑に進めたい中小企業の経営者の方や、遺留分放棄のメリットなどを知りたい相続人の方に向けて、次の項目について解説していきます。

<本記事の解説項目>

  • 遺留分放棄とは何か
  • 遺留分放棄を検討する理由
  • 遺留分放棄のメリットとデメリット
  • 相続開始の前か後かで
    放棄の手続きはどう変わる?
  • 相続放棄と遺留分放棄の違い
  • 遺留分放棄で注意すべきポイント

遺留分で知っておくべき
ポイントを確認

遺留分とは?

たとえば、父親が死亡し、法定相続人が妻、長男、長女、次男であるとき、父親の遺言書が見つかり、「すべての財産の半分は妻に、もう半分は長男に引き継ぐ」と書かれていた場合、非常に不公平ですが長女や次男は遺産を相続することができません。
遺言書の内容は、民法が規定する法定相続分よりも優先するからです。

また親の死後、相続が開始してから長男だけ多額の生前贈与を受け取っていたことがわかったら、他の兄弟姉妹は黙っていられないほど腹立たしいと思うかもしれません。
特に、他の財産がほとんど残っていないような場合などでは、なおさらでしょう。

こうした場合に、一定の相続人に対して法律上保障されている最低限の相続財産の取り分が「遺留分」です。

遺留分侵害額請求権とは?

自分が侵害された遺留分を、相手(遺贈や一定の生前贈与によって財産を取得した人)に対して請求できる権利を「遺留分侵害額請求権」といいます(民法第1046条)。

たとえば、父親の遺産が合計で6,300万円あり、遺言書に「財産のすべてを長男に相続させる」と書いてあったとしても、長女や次男には法的に遺留分があるため、長男に対して遺留分侵害額請求をすることができるわけです。

なお、現在の法律で請求できるのは遺留分侵害額に相当する金銭であって、不動産などそのものを取り戻せるわけではないことに注意が必要です。

また、遺留分侵害額請求権の期間制限にも注意が必要です。

  • 相続開始と遺留分を侵害する
    贈与・遺贈を知った時から1年間
  • 相続開始から10年

この期間が過ぎてしまうと、時効消滅により権利行使できなくなってしまいます。

遺留分は誰に認められるのか?

遺留分は、誰でも請求できるわけではありません。
法的に遺留分請求権がある人と、ない人がいます。

遺留分が認められる人

  • 配偶者
  • 子(生きて生まれてきた場合の
    胎児も含む)
  • 孫(子がすでに亡くなっている場合の
    代襲相続)
  • 父母
  • 祖父母
    (父母がすでに亡くなっている場合)

遺留分が認められない人

  • 被相続人の兄弟姉妹
  • 相続放棄をした人
  • 遺留分放棄をした人
  • 相続人の廃除になった人
  • 相続欠格者

遺留分の対象になる財産は?

基本的に、親などの被相続人が亡くなった時点で遺っていた①「プラスの財産」(遺贈、死因贈与財産を含む)に、②生前贈与した財産を加え、③負債・借金などの「マイナスの財産」を差し引いた財産が遺留分の対象になります。

<遺留分の計算式>
遺留分算定の基礎となる財産額
= プラスの財産の合計額
+ 贈与の合計額 - 負債額

プラスの財産の種類

  • 預金(銀行や信用金庫などの
    金融機関)
  • 貯金(ゆうちょ銀行やJAバンクなど)
  • 現金
  • 不動産
  • 株式
  • 自動車
  • 宝石、高級時計などの貴金属類
  • 絵画、骨董品など
    金銭的価値のある財産 など

マイナスの財産

  • 借入金やローン(住宅ローン、
    カードローン、
    消費者金融からの借入れなど)
  • 未払金(医療費・公共料金・
    家賃など)
  • 未払いの税金
  • 連帯保証債務 など

贈与など

<生前贈与>
被相続人が生前に、子や孫、第三者などに無償で自分の財産を与えることを生前贈与といいます。

相続開始前の1年間に行なわれた、第三者への生前贈与は遺留分の対象になります(民法第1044条)。
※贈与する側と贈与される側の双方が、他の相続人の遺留分を侵害することを知っていて贈与を行なっていた場合は、1年以上前の生前贈与でも遺留分の対象になります。

<遺贈>
遺言によって、遺言者が自由に(受取人が法定相続人かどうかに関わらず)受取人を指定して、無償で財産を与えることを遺贈といいます。
<特別受益>
「婚姻のための贈与」、「養子縁組のための贈与」、「生計の資本としての贈与」、「遺贈」など、一部の相続人が受け取った相続分の前渡しとみなされる利益のことを特別受益といいます。

相続開始前の10年以内に被相続人から受けた特別受益にあたる一定の贈与は、遺留分の対象になります。
※贈与する側と贈与される側の双方が、他の相続人の遺留分を侵害することを知っていて贈与を行なっていた場合は、10年以上前のものでも遺留分の対象になります。

遺留分の割合と計算方法を確認

遺留分の割合

民法は、法定相続人の優先順位と相続割合を規定していますが、一定の相続人が受け取ることができる遺留分の割合も次のように決められています。

  • 配偶者や子が相続人の場合:
    相続財産の2分の1
  • 直系尊属のみが相続人の場合:
    相続財産の3分の1

遺留分の計算例

ここでは、相続人が配偶者と子ども3人、相続財産が6,300万円の場合で計算してみます。

1.配偶者の遺留分割合
配偶者の法定相続分は全体の2分の1なので、次のようになります。

6,300万円 ÷ 2 = 3,150万円

配偶者の遺留分は相続財産の2分の1なので、次のようになります。

3,150万円 ÷ 2 = 1,575万円

2.子の遺留分割合
子の法定相続分は全体の2分の1、3人で等分する場合は1人あたりの金額は次のようになります。

6,300万円 ÷ 2 = 3,150万円
3,150万円 ÷ 3 = 1,050万円

子の遺留分は相続財産の2分の1なので、1人あたりの金額は次のようになります。

1,050万円 ÷ 2 = 525万円

遺留分の放棄とは?

なぜ遺留分の放棄をする
必要があるのか?

遺留分は相続で不公平を被っている相続人が、自分の受け取り分を少しでも取り戻せる制度です。
それなのに、遺留分を放棄するとは一体どういうことでしょうか?

たとえば、父親に長男・次男の2人の子どもがいて、長男が家業を継ぐ予定だとします。

父親は事業承継をスムーズかつ安定的に進めるために、「会社の株式や事業用不動産は長男に集中させたい」と考えています。
一方、次男はすでに父親から十分な財産を贈与されており、「自分は将来、会社株式について遺留分を請求するつもりはない」と考えているとします。

こうしたケースでは、次男があらかじめ遺留分を放棄するという選択をとることが考えられます。

ただし、父親の存命中に、「私は遺留分を請求しません」という念書を作成するだけでは、民法第1049条が規定する生前の遺留分放棄として有効とはいえません。
相続開始前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要だからです。

それでは次から、遺留分の放棄について詳しく見ていきましょう。

ケース別:遺留分を放棄する
場合について解説

ケース1:特定の子に
事業を承継させたい

典型的な例は、会社経営や個人事業の承継の場面です。
たとえば、長男が会社を承継するため、次のものを集中させる必要があるケースが考えられます。

  • 自社株式
  • 事業用不動産
  • 工場
  • 店舗 など

将来、他の子どもが遺留分侵害額請求をすると、後継者に多額の金銭負担が発生する可能性があります。
そこで家族全体で話し合い、納得している場合には他の推定相続人による遺留分放棄を検討・実行することがあります。

なお、中小企業の事業承継では、遺留分を全面的に放棄する方法だけでなく、経営承継円滑化法による除外合意・固定合意を利用できる場合もあるので確認されるといいでしょう。

ケース2:すでに十分な
生前贈与を受けている

たとえば、次男が父親から、次のものを受け取っているケースです。

  • 住宅購入資金
  • 不動産
  • 事業資金 など

この場合、次男自身が「すでに十分な財産をもらっているので、残りの財産は兄に相続してもらってよい」と納得しているのであれば、生前の遺留分放棄を検討することがあります。

ケース3:特定の財産を
特定の相続人へ確実に残したい

たとえば、父親が「自宅は同居して介護してくれている長女に残したい」、「農地は農業を継ぐ長男にまとめて残したい」などと考えているケースです。

他の推定相続人もその考えに納得しているのであれば、遺言と遺留分放棄を組み合わせて相続を考えることができます。

ケース4:相続開始後の
遺留分争いを避けたい

すでに相続が開始しており、自分は遺留分を請求できる権利者だが、家族関係やこれまでの財産分配を考えて「遺留分侵害額請求はしない」と判断するケースも考えられます。
この場合は、生前の遺留分放棄とは手続きが異なるため後ほど詳しく解説します。

遺留分を放棄するメリット/
デメリットとは?

遺留分放棄のメリット

被相続人(財産を残す人)に
とってのメリット

メリット1:相続開始後の
遺留分争いを予防できる

生前に有効な遺留分放棄が成立していれば、将来、放棄した人が遺留分侵害額請求をすることを防ぐことができます。

事業承継や不動産の承継など、特定の人に財産を集中させたい場合には大きなメリットがあります。

メリット2:遺言による
財産配分を実現しやすくなる

たとえば、「会社株式は長男へ」、「自宅は長女へ」という遺言を作っていても、他の相続人の遺留分を大きく侵害していれば、死亡後に多額の金銭請求が発生する可能性があります。

遺留分放棄が適切に行なわれていれば、そうしたリスクを抑えることができます。

メリット3:事業用財産の分散を
防ぎ事業承継を安定させやすい

会社株式や農地、店舗などは複数の相続人に分散すると、その後の経営・管理が難しくなることがあります。
遺留分対策を生前に行なっておけば、後継者へ必要な財産を集中させやすくなります。

遺留分を放棄する
相続人のメリット

メリット1:相続開始前に代償を
確保できる

放棄と引き換えに、相続の前に遺留分に見合う一定の生前贈与や金銭的支援を受け取れるケースが多いため、早めにまとまった財産を確保することができます。

メリット2:将来の相続トラブルに巻き込まれにくい

放棄すれば、後から遺留分を主張しないことが前提になるため、他の相続人との紛争に巻き込まれず、トラブルを回避することができます。

また、相続手続きを簡素化できる可能性もあります。

メリット3:被相続人の意思を
尊重できる

親などの被相続人の意思を尊重し、希望を叶えることができます。

遺留分放棄のデメリット

被相続人(財産を残す人)
にとってのデメリット

デメリット1:争いの火種に
なりやすい

生前に家族全員で遺留分についての話し合いをして、各人の合意を得ないまま一部の相続人だけに遺留分放棄をしてもらうと、不公平感が出やすいです。

結果として、ほかの相続人との関係が悪化し、別の相続トラブルにつながることがあります。

デメリット2:許可が必要など
手間がかかる

相続開始前の遺留分放棄は、本人同士の合意だけでは足りず、家庭裁判所の許可が必要です。

被相続人の思いどおりに、すぐ進められるわけではありません。

デメリット3:
必ず認められるわけではない

遺留分放棄について、家庭裁判所は本人の自由意思か、不当な圧力がないか、放棄に合理性があるかなどから総合的に判断します。

そのため、被相続人が強く望んでも、事情によっては許可されない可能性があります。

デメリット4:他の相続問題は
残る可能性もある

遺留分放棄をしても、その人の相続人としての地位がなくなるわけではありません。
遺留分放棄は、あくまで遺留分に関する放棄だからです。
つまり、遺産分割そのものへの関与は残り得るため、被相続人が考えるほど相続の争いを完全に防げない可能性があります。

遺留分を放棄する
相続人のデメリット

デメリット1:
将来に多額の財産が判明しても
遺留分を主張できなくなる

遺留分を生前に放棄した時点では、「父の財産はそれほど多くない」と思っていたとしても、その後に状況が次のように変化することもあります。

  • 不動産価格が上昇した
  • 会社の株式価値が大きく上昇した
  • 知らなかった財産が判明した

一度、遺留分放棄をすると、その後に事情が変わっても、原則として、元どおりになるわけではありません。

ただし、許可の前提となった事情が変化した場合に、放棄許可審判が取り消されることがあり、その場合には、遺留分侵害額請求をできることになります。

デメリット2:被相続人の意向が
変わる可能性もある

父親の生前に「長男に会社を継がせる」という前提で次男が遺留分を放棄したものの、その後、長男が会社を辞めたり、家族関係が変化したりすることも考えられます。

生前の遺留分放棄は将来の相続に大きな影響を与えるため、短期的な事情だけで判断しないほうがいいでしょう。

デメリット3:一度許可された
放棄は自由に撤回できない

家庭裁判所の許可を受けた遺留分放棄について、「やはり気が変わったので取り消したい」と自分の意思だけで自由に元へ戻せると考えてはいけません。
許可後に重大な事情変更が生じた場合には、過去の裁判例上、許可審判の取消し・変更が問題となる余地はありますが、当然に認められるわけではないからです。

そのため、申立て前に十分検討することが重要です。

デメリット4:被相続人の
借金などリスクは残り得る

遺留分放棄は「最低限の取り分を請求しない」というもののため、相続人としての地位や、債務を相続する可能性までは自動的に消えません。
つまり、被相続人の借金を背負う可能性は残り続けるため、必要なら別途「相続放棄」の申述が必要になります。

被相続人の生前と死後の
遺留分放棄の手続きの
違いについて

遺留分放棄では、相続が始まる前後でルールが大きく変わります。
まずは一覧表で確認しましょう。

※横にスクロールすると続きが見れます。

項目相続開始前相続開始後
被相続人生存中死亡後
家庭裁判所の
許可
許可が必要許可は不要
根拠民法第1049条権利者による権利処分
手続き家裁へ許可申立て請求しない・
放棄の意思表示等
注意点許可がなければ生前放棄として
効力を生じない
後日の紛争防止のため
書面化が重要

被相続人の生前(相続の開始前)に遺留分放棄をする場合は、家庭裁判所の許可が必要になります。
なお、前述したように、遺留分権利者との間で念書を取り交わす(書面で約束する)だけでは、生前の遺留分放棄は法的に無効であることに注意してください。

一方、被相続人の死後(相続開始後)は、遺留分はすでに具体的な財産上の権利として問題となる段階のため、本人がこれを行使しないことや、相手方との間で放棄を含む合意をすることができ、特別な手続きは必要ありません。

ただし、この場合も口頭で「私は遺留分を放棄する」というだけでは後のトラブルに発展する可能性があります。
遺留分権利者との間で「誰が」、「どの相続について」、「どの権利を放棄したのか」を書面で明確にしておくことが重要です。

生前に遺留分を放棄する手続き
/5つのステップ解説

次に、被相続人が生きている間に遺留分を放棄する具体的な手続きを解説していきます。

STEP1:遺留分放棄の
必要性を確認

本当に、全面的に遺留分を放棄する必要があるのかについて検討します。

  • 遺言内容を調整する
  • 他の財産を取得させる
  • 生命保険を活用する
  • 事業承継なら
    経営承継円滑化法を利用する

これら遺留分放棄以外の方法で解決できる場合もあるため、最初から遺留分放棄を唯一の選択肢と考えないほうがいいでしょう。

当事者間で次の項目を話し合って整理し、説明・条件提示などを経て、納得できることが大切です。

  • なぜ遺留分を放棄するのか
  • どのような財産があるのか
  • 放棄する人は何か財産を
    すでに受け取っているか
  • 放棄した後の財産配分は
    どうなるか

STEP2:被相続人の財産/
放棄の理由を整理

家庭裁判所は、申立てをすれば必ず遺留分放棄を許可するわけではありません。
実務上は、次のような事情が考慮されます。

  • 本人の自由な意思による
    放棄なのか
  • 放棄する合理的な理由や
    必要性があるか
  • 放棄に対応する財産の贈与などの
    代償があるか

過去の裁判例でも、上記が重要な判断要素とされています。
たとえば、「父から言われたので仕方なく申立てをする」というように、相続人本人が十分納得していないケースでは問題があります。

STEP3:家庭裁判所へ
申立てをする

相続開始前、つまり被相続人の生前の遺留分放棄は、遺留分を放棄する本人が家庭裁判所へ申し立てます。

申立先は、被相続人となる人の住所地を管轄する家庭裁判所です。
裁判所の現在の案内では、申立手数料は収入印紙800円分で、そのほか連絡用の郵便料が必要です(郵便料は各裁判所によって異なります)。

STEP4:必要書類を提出する

標準的な必要書類には次のものがあります。

  • 遺留分放棄許可申立書
    (正式名称:家事審判申立書/
    事件名:遺留分放棄の許可)
  • 被相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 被相続人の同意書
  • 理由書 など

審理に必要な場合には財産関係の資料、たとえば「不動産の目録」、「現金・預貯金・株式などの財産目録」など追加書類を求められることがあります。

なお、申立書では次の事柄が審理上問題になることがあります。

  • なぜ遺留分を放棄したいのか
  • 被相続人との関係
  • 財産状況
  • 生前贈与等を受けているか

STEP5:家庭裁判所の
審理・許可を受ける

申立書を提出すると、家庭裁判所が必要に応じて次のような審理を行ない、事情を確認します。

  • 書面による照会
  • 追加資料の提出
  • 本人から直接事情を聞く など

ここで特に重要なのは、本人が自分の意思で遺留分を放棄しようとしているのかという点です。
たとえば、「父親から強く言われたので仕方なく放棄する」というケースでは慎重な検討が必要になります。
また、「なぜ放棄するのか」、「すでに十分な生前贈与を受けているのか」など具体的な事情も整理しておいたほうがいいでしょう。

そして、家庭裁判所が遺留分放棄の許可を決定すれば、相続開始前の放棄として効力が生じることになります。

遺留分放棄で誤解してはいけない
2つの重要ポイント

遺留分放棄と相続放棄は
何が違う?

遺留分放棄で間違えやすいことの1つが、この問題ですから整理しておきましょう。

遺留分放棄で放棄するのは「最低限保障された取り分である遺留分」ですから、遺留分を放棄していても相続開始時には原則として相続人です。
つまり、遺留分を放棄しても相続人でなくなるわけではありません。
たとえば遺言がなく、通常どおり法定相続によって財産を取得するのであれば、遺留分を放棄した人も相続人として財産を取得する可能性があります。

これに対して相続放棄は、被相続人の権利・義務を相続しないための制度です。
裁判所への相続放棄の申述は、原則として自己のために相続開始があったことを知った時から「3か月以内」に行ないます。
相続放棄が受理されれば、プラスの財産だけでなく、原則として借金などのマイナス財産も承継しません。

<遺留分放棄と相続放棄の違い一覧表>

※横にスクロールすると続きが見れます。

項目遺留分放棄相続放棄
放棄するもの遺留分相続そのもの
相続人の地位原則残る初めから相続人でなかったもの
としてあつかわれる
財産を相続できるかできる場合がある原則できない
借金を相続するか相続人なら
原則承継する
原則承継しない
生前に手続きできるか家裁の許可により可能原則できない
相続開始後の
家庭裁判所の手続き
遺留分放棄については
不要
原則3か月以内に申述

特に「遺留分を放棄したから親の借金も相続しない」という理解は誤りですから注意してください。

一人が遺留分を放棄しても
他の相続人の遺留分は増えない

共同相続人の一人が遺留分を放棄しても、他の共同相続人の遺留分には影響しません(民法第1049条2項)。

たとえば父親に、「長男」、「次男」、「長女」の3人の子どもがいる場合、次男が遺留分を放棄したからといって「次男の遺留分が長男と長女へ半分ずつ移る」ということにはなりません。
次男が放棄した分だけ、他の相続人の遺留分割合が自動的に増えるわけではないのです。
この点は相続放棄との違いを考えるうえでも重要です。

被相続人が勝手に遺留分を
放棄させることはできない

遺留分は相続人側の権利ですから、被相続人が遺言書に「次男の遺留分を放棄させる」と記載しただけで、次男の遺留分がなくなるわけではありません。
生前放棄は、あくまで遺留分を持つ本人の意思に基づいて申し立てる必要があります。

また、「遺留分を放棄しないなら家族と縁を切る」、「会社を辞めさせる」など、強い圧力や強制によって申立てをさせるのは適切ではありません。
あくまで、相続人本人の自由な意思による放棄かどうかが重要な判断要素になります。

放棄と引き換えに財産を
受け取る場合は税務も確認する

遺留分放棄にともない、生前に現金や不動産などを受け取る場合は、贈与税など税務上の問題が生じる可能性があります。
「遺留分を放棄する代わりにもらった財産だから税金はかからない」とは限りません。
財産額が大きい場合には、弁護士だけでなく税理士とも連携して検討することが大切です。

みらい総合法律事務所は全国対応で、随時、無料相談を行なっています(事案によりますので、お問い合わせください)。

もちろん、秘密厳守ですから安心してご相談ください。

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