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兄弟姉妹間の遺留分の争いの解決法は

最終更新日 2026年 08月26日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

兄弟姉妹間の遺留分の争いの解決法は

この記事を読むとわかること
「親が兄に財産のすべてを
相続させるという遺言を残していた」
「姉だけが多額の生前贈与を
受けていたことがわかった」
「兄弟で遺産分割の話をしているが、
自分の取り分があまりにも少なく
不公平だ」

こうした場合に問題になるのが「遺留分」で、法律上、一定の相続人に保障された最低限の取り分になります。

相続においては、兄弟姉妹間で遺産の取得額に大きな差があると、「自分には、もっと相続する権利があるのではないか」ということで、遺留分をめぐる争いに発展することがあります。

ここで、最初に理解しておきたいのは、相続人が「亡くなった方の兄弟姉妹」の場合と、「亡くなった方の子ども同士である兄弟姉妹」では、遺留分のあつかいがまったく異なることです。

  • 被相続人(亡くなった方自身)の
    兄弟姉妹には、原則として
    遺留分はありません。
  • 一方、父や母が亡くなり、
    その子どもである兄弟姉妹同士で
    相続する
    場合には、それぞれが
    「子」という立場で遺留分を
    持つ可能性があります。

誰を基準にした兄弟姉妹なのかを区別することが重要になります

そこで本記事では次の項目などについて、できるだけわかりやすく解説していきたいと思います。

  • 遺留分とは何か
  • 兄弟姉妹に遺留分は認められるのか
  • 遺留分が認められる条件
  • 遺留分争いの解決方法
  • 遺留分を請求するときの注意点

遺留分についてまず
知っておくべきこと

遺留分とは?

一定の相続人について、法律で保障されている、最低限の相続財産の取り分が「遺留分」です。

被相続人は、自分の財産を誰に相続させるかを遺言で自由に決めることができます。
たとえば父親が、「所有するすべての財産を長男に相続させる」という遺言を残すこともできます。

また、生前贈与や遺贈によって特定の子どもに財産が偏って渡されている場合もあります。

しかし、その結果として他の子どもが一切財産を受け取れなくなる、あるいは不公平に少ない財産しか受け取れなくなると、生活保障などの面から不都合が生じる可能性があります。

そこで民法では、配偶者・子・直系尊属など一定の相続人について、遺言などによっても完全には奪うことのできない最低限の取り分を認めているのです(民法第1042条〜1049条)。

遺留分が認められる人/
認められない人

遺留分を受け取ることが
できる人

遺留分が認められている人(遺留分権利者)は次のような法定相続人です。

  • 配偶者
  • 子(胎児も、生きて生まれたときは
    遺留分の権利あり)
  • 孫(子がすでに亡くなっている場合)
  • 父母
  • 祖父母(父母がすでに
    亡くなっている場合)

遺留分を受け取ることが
できない人

次の人には遺留分は認められません。

  • 被相続人の兄弟姉妹
  • 相続放棄をした人
  • 相続人の廃除がされた人
  • 相続欠格者
  • 遺留分を放棄した人
    (家庭裁判所の許可が必要)

相続人が兄弟姉妹のみの場合、被相続人が遺言で血族以外の人に全財産を遺贈しても、兄弟姉妹は原則として遺留分侵害額請求をすることができません

遺留分の割合と計算方法

相続分の割合について

相続で受け取ることができる割合は、相続人の順位などによって決まっており、遺留分もこれに影響を受けます。

被相続人の配偶者はつねに相続人となり、それ以外では第1順位は子ども、第2順位は父母、第3順位は兄弟姉妹です。

たとえば、相続人が配偶者(妻)と子ども2人で、遺産の総額が5,000万円の場合で単純に計算すると、次のようになります。

配偶者の法定相続分は2分の1なので
2,500万円
子どもの法定相続分は2分の1なので
2,500万円
2人で分割するので1人あたり
1,250万円

遺留分の割合について

遺留分は次のように割合が決まっており、算定式は次のようになります。

  • 配偶者や子が相続人の場合:
    相続財産の2分の1
  • 直系尊属(父母、祖父母)のみが
    相続人の場合:相続財産の3分の1
<遺留分の算定式>
遺留分を算定するための財産額
× 総体的遺留分率 × 法定相続分

上記の例で考えると、次のようになります。

配偶者の遺留分は2,500万円の
2分の1 = 1,250万円
子ども1人あたりの遺留分は
1,250万円の2分の1 = 625万円

ただし、実際の遺留分侵害額は、生前贈与や債務、各人が取得した財産などによって変動するため、個別の計算が必要です。

遺留分は金銭を受け取る制度

遺留分侵害額請求」とは、遺言や生前贈与などによって遺留分を侵害された相続人が、侵害した相手(生前贈与などを受け取っている相続人)に対して、侵害額に相当する金銭の支払いを求める手続きです。

以前は「遺留分減殺請求」と呼ばれる制度があり、遺留分を侵害された場合に、財産そのものの返還が問題になることがありました。
しかし、2019年7月1日施行の改正相続法では、遺留分侵害額請求は原則として金銭請求になっています。

つまり、遺留分は侵害された額に相当する金銭を請求できる制度であって、家や土地などの不動産であれば「自分の分を取り戻す」のではなく、その分の金銭を受け取ることになるわけです。

遺留分侵害額請求の期限

遺留分侵害額請求権には時効期間があり、次のうちの早いほうの期限が過ぎると遺留分を請求できなくなることに注意が必要です(民法第1048条)。

  1. 相続開始および侵害する
    贈与・遺贈を知ったときから1年
  2. 相続開始のときから10年

遺留分侵害額請求での
注意ポイント

  1. 上記の「知ったとき」とは、「被相続人が死亡した事実(相続開始)」と「自分の遺留分を侵害する贈与・遺贈の存在」の両方を具体的に認識したときとされる。
  2. 相続開始を知らなかったとしても、請求権は相続開始から10年が経過すると消滅するため、遺留分侵害額請求ができなくなる。
  3. 相手方には、1年以内に内容証明郵便などで遺留分侵害額請求の意思表示だけしておけば、具体的な金額の詳細な計算や調整は後からでもよいとされている。
  4. 相手側が消滅時効の主張をしなければ、時効期間を過ぎていても遺留分侵害額請求権の効力はなくならない。
  5. 遺留分は、権利のある相続人が請求することで発生するため、請求しなければ受け取れない。

遺留分と兄弟姉妹の関係に
要注意

前述したように、兄弟姉妹と遺留分の関係については、まず「誰から見た兄弟姉妹なのか」を区別する必要があります。

亡くなった人自身の
兄弟姉妹には遺留分がない

原則として、被相続人の兄弟姉妹には遺留分は認められていません

たとえば、亡くなった被相続人Aには配偶者、子ども、両親がおらず、兄Bと妹Cが相続人になった場合で考えてみます。

Aが「全財産を友人Dに遺贈する」という有効な遺言を残していた場合、BとCは法定相続人となり得る立場ではあるものの、Dに遺留分侵害額請求をすることは原則としてできないわけです。

亡くなった親の子どもである
兄弟姉妹には遺留分がある

たとえば、父親が亡くなり、長男・次男・長女の3人の子どもがいる場合、この3人は兄弟姉妹ですが、被相続人である父親の兄弟姉妹ではありません。

そのため、父親が「すべての財産を長男に相続させる」という遺言を遺した場合、次男と長女は遺留分を長男に対して請求することができます

「兄弟姉妹には遺留分がない」という部分だけで、「自分は何も請求できない」などと勘違いしないことが重要です。

遺留分が認められる条件

兄弟姉妹間で遺留分を請求するには、主に次の点を確認する必要があります。

条件1:遺留分を持つ
相続人であること

被相続人の相続人のうち、遺留分を持つ可能性があるのは基本的に次の人です。

  • 配偶者
  • 子や孫などの直系卑属
  • 父母や祖父母などの直系尊属

一方、被相続人の兄弟姉妹には遺留分がありません。
したがって、「兄弟姉妹間で争っている」というだけでは遺留分を請求できるかどうかは判断できません。

「親の相続について子ども同士で争っているのか」、それとも「兄弟姉妹本人の相続について他の兄弟姉妹と争っているのか」を最初に整理しましょう

条件2:遺言や生前贈与によって
遺留分が侵害されていること

遺留分がある相続人でも、実際に最低限の取り分を確保できているのであれば、遺留分侵害額請求は発生しません。

遺留分侵害額請求が発生する典型的なケースは、次のような場合です。

  • 「長男に全財産を相続させる」
    というような遺言がある
  • 一人の子どもだけに多額の財産が
    遺贈されている
  • 特定の子どもに多額の生前贈与が
    行なわれている
  • 愛人や知人など第三者に
    大部分の財産が遺贈されている

こうしたケースでは、「遺産額」、「生前贈与」、「相続債務」、「各相続人が実際に取得した財産」などを確認したうえで、具体的な遺留分侵害額を計算します。

7つのステップで理解する
遺留分争いの解決法

遺留分問題では、いきなり裁判をする必要があるとは限りません。
一般的には、次のような順序で解決を目指します。

STEP1:相続人・遺言・遺産の
全体像を調査

遺留分の計算をするためには、まずは財産の全体像を把握するために次の確認をします。

  1. 誰が相続人なのか
  2. 遺言書があるか
  3. 預貯金はいくらあるか
  4. 不動産は何があるか
  5. 株式や投資信託があるか
  6. 借金などの債務があるか
  7. 特定の相続人への
    生前贈与があるか など

なお、兄弟の一人が親の財産を管理していて情報を開示してくれない場合には、金融機関の取引履歴や登記事項などの調査を検討する必要があります

STEP2:遺留分侵害額を計算

次に、遺留分算定の基礎となる財産を整理し、自分の遺留分額と実際に取得した財産を比較します。

  • 不動産の評価
  • 生前贈与の有無
  • 特別受益に該当するか
  • 相続債務
  • 遺贈された財産
  • 他の相続人が取得した財産

これらが重要なポイントになります。

遺留分侵害額の計算では、遺産総額を法定相続分で割るだけでは正確に算出できません。
金額が大きい場合や生前贈与が複数ある場合などでは、弁護士に計算を依頼することをおすすめします

<コラム①特別受益とは?>
特別受益とは相続人のうち一部だけが、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として生前に贈与を受けることです(民法第903条1項)。

相続の際は不公平にならないよう、その分をいったん遺産に持ち戻してから各人の取り分を計算します。
なお、遺留分計算においては、相続人に対する特別受益財産は「10年以内」にされたものに限り、遺産に持ち戻して計算します(民法第1044条3項)。

STEP3:内容証明郵便で
遺留分侵害額請求の意思表示

遺留分侵害の事実が把握できたら、相手に対して遺留分侵害額を請求します。
前述したように、遺留分には請求期限があるからです。

そのため、期限が迫っている場合は話し合いを続けるだけではなく、内容証明郵便など請求したことを証明できる方法で意思表示をしておくことが重要です。

STEP4:兄弟姉妹間で
金額や支払方法を交渉

遺留分侵害額を通知した後は、相手方と具体的な解決条件を話し合います。
争点になりやすいのは次のポイントです。

  • 遺留分侵害額はいくらか
  • 生前贈与を含めるか
  • 不動産をいくらと評価するか
  • 一括払いか分割払いか
  • いつまでに支払うか など

なお、兄弟姉妹間では、過去の家族内の事情まで持ち出され、感情的な対立になることがあります。
たとえば、「自分は親の介護をした」、「兄だけ大学の学費を出してもらった」、「妹は結婚するときに援助を受けた」など、遺留分や寄与分に関わるものなどです。

こうしたケースでは、法律上の争点と家族間の感情を切り分けて交渉することが解決への近道です。

STEP5:弁護士を窓口にして
交渉

当事者同士での解決が難しく、話すたびに感情的になる、なかなか話し合いが進展しない、といった場合には弁護士を交渉窓口にする方法があります。

弁護士が入ると、次のようなことが可能になります。

  • 遺留分を法律に基づいて計算する
  • 財産資料を整理する
  • 相手方との連絡を
    弁護士に一本化する
  • 不動産評価などの争点を整理する
  • 現実的な和解案を提示する など

家族だからこそ直接話すことが難しいケースでは、第三者である弁護士を介したほうが早期解決につながるケースが多くあります。

STEP6:家庭裁判所の調停を
利用

話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所に「遺留分侵害額の請求調停」を申し立てる方法があります。

調停では、裁判官や調停委員が当事者双方の事情を聞き、資料を確認しながら、解決に向けた話し合いを進めます。
ただし、調停を申し立てただけでは遺留分侵害額請求の意思表示をしたことにはならないこと、また前述したように遺留分侵害額請求には期限があることに注意が必要です。

  • 相続開始と侵害を知った時から1年
  • 相続開始から10年

これを過ぎると権利が消滅してしまうため、期限が迫っている場合には内容証明郵便など証拠が残る方法で請求の意思表示をしておくことが重要です。

STEP7:調停でも
まとまらなければ訴訟を検討

調停でも合意できない場合、最終的には訴訟による解決を検討することになります。

訴訟では、次の点などについて証拠に基づいて主張・立証します。

  • 遺留分侵害の有無
  • 遺産の範囲
  • 生前贈与の有無
  • 財産評価額
  • 具体的な遺留分侵害額

訴訟になると時間や費用もかかるため、できるなら交渉や調停の段階で合理的な解決を探ることが望ましいでしょう。

【解説動画】遺留分を請求された場合の
対処法

兄弟姉妹間の遺留分で
注意するべきポイント

「兄弟姉妹には遺留分がない」
の意味を誤解しない

被相続人自身の兄弟姉妹には遺留分がありません。
しかし、父母が亡くなり、その子ども同士である兄弟姉妹が争っている場合、それぞれは「子」として遺留分を持つ可能性があります

兄弟姉妹だから遺留分がない、と一律に考えるのは誤りです。

遺言書があっても
遺留分を請求できる場合がある

たとえば、父親の遺言書に「財産のすべてを長男に相続させる」と書いてあるので、自分は何ももらえない、などと考える必要はありません。

有効な遺言であっても、遺留分を持つ相続人の遺留分を侵害していれば、遺留分侵害額請求ができる可能性があります

遺言が有効か無効を争う問題と、遺留分侵害額を請求する問題は分けて考える必要があります。

請求期限を忘れない

前述のように、遺留分侵害額請求には期限があります。
特に「相続開始と遺留分侵害を知ってから1年」という期間は短いため、相続が始まったら早めに対応するのがいいでしょう

生前贈与を見落とさない

親の死亡時に残っていた財産だけを確認しても、正しい遺留分を算出できないことがあります。
なぜなら、特定の兄弟姉妹への一定の生前贈与が遺留分算定の対象になる場合があるからです。

「父が兄の自宅購入費を負担していた」
「姉が事業資金を受け取っていた」
「親名義の預金から多額の
お金が移動している」

こういった事情がある場合には、親の生前の資金移動についても確認することが重要です。

不動産評価によって
請求額が大きく変わる

遺産に不動産が含まれる場合、評価方法によって遺留分侵害額が大きく変わることがあります。
特に、次のようなケースでは専門的な評価が必要になることがあります。

  • 都市部の土地
  • 賃貸不動産
  • 収益物件
  • 事業用不動産 など

相手が提示した評価額をそのまま受け入れるのではなく、客観的な資料を確認することが大切です。

遺産分割と遺留分侵害額請求は
別の問題

遺産分割協議と遺留分侵害額請求は、関連はしますが法律上は別の問題です。

「まだ遺産分割協議が終わっていないから、遺留分については考えなくてもよい」と判断すると、遺留分侵害額請求の期限との関係で問題になるリスクがあります。
特に、遺言によって特定の相続人に財産が集中しているケースでは、早い段階で遺留分について確認しておくべきです。

兄弟姉妹間の遺留分争いは
早めの対応が重要

兄弟姉妹間の遺留分問題では、法律上の金額だけが争点になるわけではありません。
長年にわたる家族関係の感情的な問題が争いを複雑にする傾向があり、当事者だけで冷静に話し合うことが難しくなるケースもあります。

しかし、遺留分侵害額請求には期間制限があるため、争いを避けたいからといって何もせずに時間を経過させることはおすすめできません

次のような流れで対応していくことが重要です。

  1. 相続人を確認する
  2. 遺言書を確認する
  3. 遺産と生前贈与を調査する
  4. 遺留分侵害額を計算する
  5. 必要であれば期限内に
    請求の意思表示をする
  6. 交渉・調停・訴訟の中から
    適切な方法を選ぶ

兄弟姉妹間で遺留分の争いが
起きたら弁護士に相談を!

次のようなケースでは、早めに弁護士にご相談ください。

  • 兄弟姉妹のうち、特定の人に
    「全財産を相続させる」という
    遺言があった
  • 再婚相手や家族以外の第三者に
    「全財産を遺贈する」という
    遺言があった
  • 兄弟姉妹のうち、一部の人だけが
    多額の生前贈与を受けていた
  • 実家を相続した人と現金を求める
    人が対立して関係が悪化している
  • 兄弟姉妹の間で不動産の評価額に
    ついて意見が合わない
  • 遺産額が大きい
  • 兄弟姉妹が財産資料を
    開示してくれない
  • 遺留分の計算方法がわからない
  • 遺留分侵害額請求の期限が
    迫っている
  • 相手から遺留分を請求された

【解説動画】遺留分を渡したくない場合の
生前対策

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