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生前贈与のトラブルと解決法

最終更新日 2026年 09月09日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

生前贈与のトラブルと解決法

この記事を読むとわかること

相続でトラブルの原因になることの1つに「生前贈与」があります。

「兄だけが親から住宅購入資金を
援助してもらっていた」
「姉は親の生前に多額の現金を
受け取っていたのに、
妹の私は
何ももらっていない」
「親から援助を受けていた兄弟姉妹と
同じ割合で遺産を分けるのは
納得できない」
「親から受け取ったお金は特別受益だから
相続分から差し引くべきだ、と
他の相続人から言われた」

このように、被相続人(亡くなった親など)が生前、特定の相続人(子どもなど)だけに多額の財産を贈与していた場合、死亡時に残っている財産だけを法定相続分どおりに分けようとすると、相続人の間で大きな不公平や不満が生じる可能性があります

また、生前贈与を受けた側は「たんなる少額の生活費だった」、「貸したお金を返してもらっただけだ」といった主張をする場合もあり、問題が複雑化して解決に時間がかかってしまうリスクもあります。

そこで、本記事では次の項目などについて弁護士の視点からわかりやすく解説します。

  • 生前贈与とは何か?
  • 特別受益との関係は?
  • どのような生前贈与が特別受益として
    問題になるのか?
  • 生前贈与をめぐる具体的なトラブル
  • 特別受益の持戻しとは?
  • 生前贈与トラブルの解決方法
  • 生前贈与について注意すべき
    ポイント

ぜひ最後まで読んでいただき、損のない相続を実現してください。

まずは贈与・生前贈与・遺贈・
特別受益を整理

贈与とは?

自分の財産を無償で相手に譲り渡すことを「贈与」といいます。

財産を渡したい人は「贈与者」、受け取る人は「受贈者」となり、双方の合意によって生前に契約を交わすことで成立するものです(民法第549条)。
つまり、贈与は一方的に財産を押し付ける行為ではなく、原則として、贈与する人の「あげる」という意思と、受け取る人の「もらう」という意思によって成立する契約ということになります。

贈与契約では、贈与者は受贈者を自由に指定することができるため、相続人以外の第三者を指定することも可能です。

生前贈与とは?

生前贈与というのは、法律用語ではなく、一般用語です。

生前贈与は、贈与のうち、主に相続対策として、被相続人が生きているうちに行なう贈与のことで、配偶者や子ども、孫などに財産を無償で与えることをいいます。

相続税が発生する前に、長期にわたって少しずつ贈与することで、相続税や贈与税の負担を抑える目的で用いられることが多いものです。

遺贈とは?

遺言によって自分の財産を相続人以外の第三者も含めて特定の人や団体に無償で譲ることを「遺贈」といいます。

民法で定められた法定相続人(子どもや配偶者など)への財産の承継は相続。
それに対して、法定相続人であるかどうかに関係なく、遺言者が自由に受取人を指定できるのが遺贈になります。

贈与が当事者双方の合意によって成立するものである一方、遺贈は遺言者が一方的に意思表示を行なう「単独行為」で、遺言者が亡くなった時に初めて効力を生じるものです。

特別受益とは?

特定の相続人だけが、生前贈与や遺贈などで受けた利益のうち、一定のものを「特別受益」といいます。
共同相続人の一部が被相続人から受けた一定の遺贈や生前贈与について、相続財産の前渡しとしてあつかう制度です。

法的には次のような財産が特別受益になります。

  • 遺贈された財産
  • 婚姻や養子縁組のために
    贈与された財産
  • 生計の資本として贈与された財産

なお、生計の資本として贈与された財産は、相続の実務では他の相続人との間で不公平が生じやすいため、もっとも争われやすい部分といえます。

<生計の資本として
贈与された財産の具体例>

  1. 住宅取得資金
    ただし、少額の援助や一時的な生活支援に近いようなケースでは、特別受益の対象外となる場合もあります。
  2. 事業資金の援助
    子どもが独立開業や事業の立ち上げをする際、あるいは会社の設備投資などの際の金銭的援助も特別受益として持ち戻しになる可能性があります。
  3. 高額な学費や留学費
    海外留学費用や長期の学費負担などは、通常の扶養の範囲とみなされず、特別受益となる可能性があります。
<コラム①特別受益を考慮する理由>
たとえば、父親が亡くなり、相続人が長男と次男の2人だった場合で考えてみます。
死亡時の遺産は4,000万円。
父親は生前、長男に住宅購入資金として2,000万円を贈与していました。

死亡時の4,000万円だけを半分ずつ分けると、長男は生前贈与2,000万円と相続財産2,000万円の合計4,000万円を取得することになります。
一方、次男は2,000万円しか取得しません。

仮に長男への2,000万円が特別受益に該当するのであれば、単純化した計算では、
4,000万円+2,000万円=6,000万円
を基礎として相続分を計算します。
これを「特別受益の持ち戻し」といい、相続人が生前贈与や遺贈で受けた財産を一度、遺産に加算してから相続分を計算する仕組みです。

法定相続分は長男と次男で各2分の1ずつなので、それぞれ3,000万円が基準となり、長男はすでに2,000万円を受け取っているため、残った遺産からは1,000万円を取得する計算になります。

このように、特別受益は相続財産の先渡しと考えて、一部の相続人だけが相続開始前に多額の財産を受け取っていた場合の不公平を調整し、相続人の間の公平を図る制度ということになります。

生前贈与についての深堀り解説

生前贈与の特徴
(メリット/デメリット)

メリット①
自分が生きているうちに
財産を渡すことができる

相続では、原則として本人が死亡した後に財産が相続人へ承継されます。
これに対して、生前贈与であれば本人が元気なうちに、相手が必要な時期に財産を渡すことができます

たとえば、次のような使い方ができます。

  • 子どもの住宅購入を援助する
  • 孫の教育資金を援助する
  • 後継者へ会社の株式を渡す
  • 配偶者へ自宅を贈与する など

なお、贈与者自身が財産を渡した後の状況を確認できることも生前贈与のメリットです。

メリット②相続人以外の人にも
財産を渡せる

生前贈与の相手は、必ずしも法定相続人に限られないため、「誰に、どの財産を渡したいか」という被相続人の意思を比較的直接反映できる方法といえます。

生前贈与では、次のような人にも財産を渡すことができます。

  • 子どもの配偶者
  • 事実婚のパートナー
  • 親族以外の知人 など

メリット③現金以外の財産も
贈与できる

生前贈与では現金だけでなく、次のようなさまざまな財産を渡すことができます。

  • 預貯金
  • 土地
  • 建物
  • マンション
  • 株式
  • 投資信託
  • 自動車 など

ただし、不動産や非上場株式などを贈与するときには財産評価が問題になります。
また、不動産であれば名義変更の登記や税金についても検討する必要があることに注意が必要です。

メリット④
相続財産を前もって減らして
将来の相続税負担を
軽くできる

相続税は「累進課税制度」(相続財産が多ければ多いほど税負担が重くなる)のため、亡くなる前に生前贈与で財産を移転すれば相続財産が減るので、将来的に家族の相続税の負担を軽減することができます

デメリット①贈与税などが
高額になる可能性

暦年課税では、1年間に受け取った財産の合計額が110万円を超えると、原則としてその超えた部分に贈与税がかかります
また、不動産を贈与する場合は贈与税だけでなく、名義変更のための登録免許税や不動産取得税などがかかることもあります。
そのため、「贈与税がいくらか」だけでなく、贈与に伴う税金や費用をまとめて確認しておくことが大切です。

<コラム②生前贈与は
「年間110万円以内」なら
大丈夫とは限らない>

注意したいのは「年間110万円以下の贈与なら、将来の相続税にはまったく影響しない」とは限らない点です。

2024年1月1日以後の暦年贈与については、一定の場合、亡くなる前に行なった贈与を相続財産に加えて相続税を計算する期間が、これまでの3年間から段階的に7年間へ延長されています

具体的には、2026年12月31日までに相続が始まった場合は、原則として亡くなる前3年以内の贈与が対象です。
その後は対象となる期間が段階的に長くなり、2031年1月1日以後に相続が始まった場合には、原則として亡くなる前7年以内の贈与が相続税の計算に影響することになります。

そのため、生前贈与を考えるときは、「年間110万円以内だから大丈夫」とだけ考えるのではなく、将来の相続税まで含めて検討することが重要です。

デメリット②
相続人同士のトラブル
(遺留分侵害額請求)のリスク

一定の法定相続人に保障された最低限受け取れる取り分を「遺留分」といいます。
相続開始前10年以内の贈与が他の相続人の遺留分を侵害した場合、遺留分侵害額請求をされる可能性があるため注意したいところです。

また、たとえば長男だけに住宅購入資金として2,000万円を贈与すれば、相続開始後に他の兄弟姉妹から「相続分の前渡しではないか」として、特別受益を主張される可能性があります。

特定の相続人への多額の贈与は、遺留分侵害額請求の問題につながることもあります。

デメリット③
贈与者の生活困窮リスク

相続税対策を優先して財産を生前贈与しすぎると、後から介護施設費、医療費、生活費などが必要になったときに、自身の老後資金が不足するリスクがあります。

一度贈与した財産は、原則として取り戻せないので要注意です。

生前贈与と相続の違いは?

「自分の財産を無償で相手に渡す」ということでは生前贈与と相続は近い部分がありますが、次の点などで違いがあります。

<生前贈与と相続の主な違い>

※横にスクロールすると続きが見れます。

項目生前贈与相続
財産を渡す人が
存命か?
財産を渡す人
(贈与者)が
生きている。
財産を引き継がせる人(被相続人)が
亡くなっている
(亡くなった時点で相続が開始)。
財産を渡す側と
受ける側の
合意があるか?
贈与者と受贈者の合意が
必要
(生きているうちの
契約のため)。
相続人に受け取る意思が
あるかどうかは関係ない
(財産の持ち主が死亡すると、
その財産は自動的に相続人に
引き継がれる)。

【解説動画】相続の遺産分割を
弁護士が簡単に説明します

生前贈与の対象となるもの

たとえば、次のものなどが生前贈与の対象になります。

  • 現金や預貯金
  • 土地や建物
  • 株式
  • 投資信託
  • 自動車
  • 事業用資産 など

親が子どもの住宅購入資金として1,000万円を渡した場合や、所有している土地を子ども名義に移した場合などが典型例です。

すべての生前贈与が
特別受益になるわけではない

相続トラブルでよく問題になるのが、被相続人の口座から特定の相続人へ大きな金額が移動しているケースです。
たとえば父親の口座から長男の口座へ500万円が送金されていても、それだけで直ちに「父から長男への生前贈与だった」と確定するわけではありません

実際には、次のような可能性もあります。

  • 父が長男に貸したお金だった
  • 父の生活費を管理するために
    移しただけだった
  • 父の介護施設費用を支払うための
    預り金だった
  • 父が以前に長男から借りていたお金を
    返したものだった

民法第903条(特別受益者の相続分)が問題としているのは、「婚姻・養子縁組のため」、あるいは「生計の資本として行なわれた贈与」などです。

特別受益になるかどうかは、次の点などを考慮して個別に判断されます。

  • 贈与額
  • 贈与の目的
  • 被相続人の資産・収入
  • 他の相続人への援助状況
  • 家族の生活水準
  • 贈与を受けた人の生活状況

したがって、生前贈与をめぐる争いでは、お金が動いた事実だけでなく、その金銭移動の原因や目的まで確認する必要があります

特別受益になる
可能性のある生前贈与と
ならない生前贈与とは?

次に、どういった生前贈与が特別受益に該当する可能性があるのかについて見ていきます。

生前贈与があれば、すべて特別受益になるわけではありません。
相続分の前渡し」と評価できるような贈与かどうかを、「金額や目的」、「被相続人の資産状況」、「他の相続人への援助状況」などから判断します。

特別受益に該当する
可能性のある
生前贈与の具体例

住宅購入資金の援助

親が特定の子どもにだけ、住宅購入資金として多額のお金を援助した場合は「生計の資本」としての贈与にあたり、特別受益となる可能性があります。
たとえば、長男が親から自宅購入時の頭金として2,000万円を受け取っていた、といったケースなどです。

土地や建物の贈与

親から土地や建物そのものを贈与されている場合も、特別受益が問題となります。
不動産の場合は特別受益になるかだけでなく、その不動産をいくらと評価するのかという部分も争点になりやすいことに注意が必要です。

開業資金・事業資金

子どもが会社を設立したり店舗を開業したりする際に、親から多額の資金援助を受けた場合も特別受益となる可能性があります。
もっとも、「贈与」ではなく「貸付け」だった場合には、特別受益とは別の問題になります。

結婚時の多額の援助

婚姻時の多額の持参金なども特別受益に該当する可能性があります。
一方、一般的な結婚祝い程度であれば、直ちに特別受益になるわけではありません。

学費・教育費

親が子どもの大学や大学院の学費を負担していたとしても、それだけで特別受益になるとは限りません。
親の資産や収入、家庭環境などからみて通常の扶養の範囲内であれば、特別受益にならないことがあります。
一方、一人の子どもだけが通常の扶養を大きく超える高額な教育費や留学費用などを負担してもらっていた場合には、特別受益が問題になる可能性があります

子どもの借金を親が
肩代わりした

子どもが負っていた多額の借金を親が返済し、その後、子どもに返還を求めなかった場合も実質的な財産上の利益として問題になることがあります。
ただし、「親が贈与するつもりで支払ったのか」、「子どもに対する貸付けとして支払ったのか」によってあつかいは変わります。
この場合、贈与契約書や借用書、返済履歴、当時のメール・手紙などの証拠が重要になります。

特別受益にならないことが
多いケース

生前贈与の主張でありがちな誤解が、「兄が親から1円でも多くもらっていれば、その全額を相続で精算できる」という考え方です。

特別受益制度は、そのような制度ではありません。
たとえば、次のようなケースについては、通常、直ちに特別受益になるとは限りません。

  • 日常的な生活費
  • 通常必要な学費
  • 少額のお小遣い
  • 通常の誕生日祝い
  • 一般的な結婚祝い
  • 親族間で通常行なわれる程度の援助

特別受益は相続人間の実質的な不平等を是正する制度であり、他の共同相続人が同程度の利益を受けている場合などには持戻しをしないことが多いといえます。
つまり、金銭の授受があったかだけでなく、その贈与が「相続分の前渡し」と評価できる性質のものかが重要です。

生前贈与のトラブルを
解決する方法を解説

解決法①生前贈与の事実を
確認する

たとえば、「兄は生前に多額のお金をもらっていたはずだ」という推測だけでは問題を解決できません。
まず、次の項目について財産を受け取ったのかを具体的に整理します。

  • 誰が
  • 誰から
  • いつ
  • いくら
  • どのような目的で
  • どのような方法によって

特別受益を主張する場合には、誰から誰への特別受益なのか、贈与時期や金額などを具体的に主張し、それを裏付ける資料を提出する必要があります

解決法②
預金履歴や契約書などの
証拠を集める

生前贈与について争いがある場合、証拠が非常に重要です。
具体的には次のようなことが証拠になり得ます。

  • 被相続人の預貯金取引履歴
  • 相続人の口座への振込記録
  • 贈与契約書
  • 不動産登記事項証明書
  • 売買契約書
  • 借用書
  • 贈与税申告書
  • メール、LINE、手紙
  • 被相続人の日記
  • 不動産購入時の資金資料 など

「本人から聞いていた」というだけでは、相手が否定した場合に立証が難しくなることがあります。

解決法③
「贈与か」「貸付けか」を
整理する

金銭の移動が確認できても、それが贈与とは限りません。
相手が「借りたお金だった」と主張する場合には、次の項目などから判断します。

  • 借用書はあるか
  • 利息の約束があるか
  • 返済期限があるか
  • 実際に返済していたか
  • 贈与税申告をしているか
  • 当時どのように説明されていたか

もし貸付金であれば、逆に被相続人が相続人に対して持っていた貸金返還請求権(金銭を貸した側が、借りた側に対して法的に返却を請求できる権利)が相続財産になる可能性があるため、「贈与ではない」で終わるとは限りません。

解決法④特別受益に該当するか
検討する

贈与の事実が認められたら、その贈与が特別受益にあたるのかを検討します。
特に、次の贈与は問題になりやすいもののため慎重に検討します。

  • 住宅取得資金
  • 不動産
  • 開業資金
  • 多額の事業資金
  • 多額の婚姻時の贈与
  • 通常の扶養を超える教育資金 など

一方で、通常の扶養や生活援助の範囲であれば、特別受益と認められない場合があります。
単純に金額だけを見るのではなく、家族の生活状況や贈与の目的も含めて判断します。

解決法⑤財産の評価額を決定

不動産や株式などの生前贈与では、贈与の有無だけでなく評価額も争点になります。
たとえば、長男と次男の間で「贈与を受けた土地は2,000万円程度だった」、「今なら5,000万円以上の価値がある」などと意見が分かれるケースです。

不動産評価については当事者の合意を基本とし、「固定資産税評価額」、「相続税評価額」、「公示価額」、「不動産会社の査定」などを参考にしながらも、合意できなければ鑑定を行なう場合があります。

特別受益の評価については、民法第904条のルールもあるため、単純に「贈与した当時の金額」で考えればよいとは限りません

解決法⑥相続人間で
遺産分割協議を実施

生前贈与の内容と評価額がある程度整理できれば、相続人の間で遺産分割協議を行ないます。

必ず法律上の規定どおりに分けなければならないわけではなく、相続人全員が合意すれば、事情を踏まえた柔軟な解決も可能です
たとえば、「兄はすでに自宅購入資金を受け取っているので、残った預金を妹が多めに取得する」といった形で調整することも考えられます。

解決法⑦弁護士を代理人として
交渉する

生前贈与の問題では、「昔から兄だけが優遇されていた」、「自分だけが親の介護をしていた」、「兄弟姉妹が贈与を隠している」といったような長年の家族関係の不満が加わり、感情的な対立になりやすい傾向があります。

当事者同士で話し合うことが難しい場合は、弁護士を窓口にすることで次のような争点を整理したうえで交渉することができます。

  • 何が法的な争点なのか
  • どの証拠が必要なのか
  • 特別受益になる可能性があるのか
  • 具体的な相続分はいくらか

解決法⑧
話し合いがまとまらなければ
遺産分割調停を利用する

相続人同士で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所へ「遺産分割調停」を申し立てる方法があります。
裁判所の遺産分割調停では、当事者から事情を聞き、必要な資料の提出を受け、必要に応じて鑑定なども行ないながら解決を目指します。

調停が成立しなければ、原則として審判手続に移行します。

なお、特別受益についても遺産分割の中で主張することができます。
ただし、裁判所が自動的に過去の贈与を調査してくれるわけではないため、特別受益を主張する側が預金履歴などの証拠を準備する必要があります

【解説動画】遺産分割調停の手続を
弁護士がざっくり解説します。

生前贈与で注意するべき
ポイントまとめ

生前贈与と特別受益を
混同しない

生前贈与があったからといって、そのすべてが特別受益になるわけではありません。
特別受益になるかどうかは、贈与の目的や金額、家庭環境などを踏まえて個別に判断します。

特別受益があっても
必ず返還を求められるわけではない

たとえば、「兄が2,000万円の特別受益を受けているのだから、当然2,000万円を遺産に持ち戻すべき」とはなりません。

特別受益は、基本的には具体的な相続分を計算するための制度です。
たとえば特別受益が相続分を上回っていたとしても、特別受益制度だけを理由として超過分を当然に現金で返還させられるわけではありません

ただし、生前贈与によって他の相続人の遺留分が侵害されている場合には、別途、遺留分侵害額請求を検討できる可能性があります。

特別受益の持戻し免除の
意思表示についても注意

被相続人が、「この財産は相続とは別に与える」という意思を示していた場合には、特別受益を遺産に持ち戻さないあつかいになることがあり、これを「持戻し免除の意思表示」といいます。

なお、明確な書面がなくても贈与の経緯などから意思が争われる場合があります。

婚姻20年以上の夫婦間贈与には
特則がある

2019年7月1日以降に開始された相続では、婚姻期間20年以上の夫婦間で自宅や自宅取得資金が贈与・遺贈された場合、一定の条件のもとで、持戻し免除の意思があったものと推定される特則があります

これは「贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)」というもので、基礎控除110万円に加え、2,000万円まで非課税となります。
そのため、配偶者への自宅贈与については、通常の生前贈与と同じに考えないほうがよい場合があります。

特別受益を考慮した遺産分割の
「10年ルール」に注意

2023年4月1日施行の改正民法により、原則として相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、特別受益を考慮した具体的相続分による分割ができなくなりました

基本的には法定相続分または指定相続分によって遺産分割することになりますが、次の例外があります。

  • 10年以内に家庭裁判所へ
    遺産分割を請求した場合
  • 一定のやむを得ない事由がある場合

また、2023年4月1日以前に開始した相続については経過措置が設けられており、ケースによっては2028年3月31日まで猶予されます。

古い相続について生前贈与を主張したい場合には、早めの対応が重要です。

特別受益の「10年」と
遺留分の「10年」を混同しない

前述の、特別受益に関する遺産分割の10年ルールと、遺留分の計算に生前贈与を含める期間は別の制度です。
遺留分の計算の基礎となる特別受益に該当する生前贈与は、相続開始前10年以内に行なわれたものに限られます。

さらに、遺留分侵害額請求自体にも次のような期間制限があります。

  • 相続開始と遺留分侵害を
    知った時から1年
  • 相続開始から10年

「10年」という数字が複数登場し複雑ですが、それぞれ意味が異なるので注意しましょう。
詳しい内容については、弁護士に相談されることをおすすめします。

みらい総合法律事務所は全国対応で、随時、無料相談を行なっています(事案によりますので、お問い合わせください)。
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