遺産分割中に相続人が亡くなったら?数次相続の進め方
人生では、しばしば予想もしていなかった事態が起きることがあります。
たとえば、相続においても、こんなことを経験する場合があるかもしれません。
相続人は母と自分、そして妹の3人。
遺産分割について、本格的な話し合いを
後回しにしていたところ、
今度は母が
死去。
2つの相続を並行して
行なわなくてはいけなくなってし
まった……。
こうした状態を「数次相続」といい、
- 父(被相続人)の財産が
相続人(母・自分・妹)に
引き継がれるのが
「一次相続」。 - 父から母への相続権が、
そのまま母の相続人
(自分・妹/場合によっては
再婚相手
など)へ引き継がれるのが
「二次相続」。
という仕組みになります。
このようなとき、相続人としては次のように考えるかもしれません。
違いはあるのだろうか?」
「相続で損はしたくないが……
どうすればいい?」
「この先の手続きが不安だ。
まずは注意するべきことを知りたい」
そこで本記事では、数次相続に関する次の項目などについて、できるだけわかりやすく解説していきます。
- 数次相続とは何か
- 数次相続の具体例
- 数次相続と代襲相続の違い
- 誰が遺産分割協議に参加するのか
- 数次相続と相続放棄の関係
- 再転相続とは何か
- 発生しやすい問題と注意ポイント
- 相続税や相続登記の注意点
- 数次相続が発生した場合の対処法 など
ぜひ最後まで読んでいただき、より良い相続を実現していただければと思います。
数次相続とは?
相続では、すぐに遺産分割協議が終わるとは限りません。
そして、相続人同士で話し合っている間に、その相続人の1人が亡くなってしまうこともあります。
このように、最初の相続について遺産分割が終わらないうちに、相続人についてさらに次の相続が続けて発生することを「数次相続」といいます。
たとえば、次のようなケースが考えられます。
⬇️
長男と次男(相続人)が父の財産を相続
⬇️
父の遺産分割が終わる前に長男が死亡
⬇️
長男の妻と子どもが長男の財産を相続
父の死亡による相続を「一次相続」、長男の死亡による相続を「二次相続」といいます。
民法上、相続人は相続開始時から、被相続人の財産に属する権利・義務を原則として承継します。
そして、相続人が複数いる場合には遺産は共同相続人の共有状態になります。
そのため、父から長男が承継した相続上の地位も、長男が死亡すれば原則として長男の相続人へ引き継がれることになります。
つまり、長男が持っていた「父の遺産を相続する権利」は長男の配偶者や子どもなどに引き継がれるため、相続人には一次相続と二次相続の手続きを並行して進める必要が生じるわけです。
具体例から数次相続を理解する
ここでは、次の家族を例に考えてみます。
家族構成
- 父Aが死亡。
- 相続人は、妻B、長男C、次男D。
その後の状況
- 父Aの遺産についてまだ
分割協議をしていないうちに、
長男Cが亡くなりました。 - 長男Cには、妻E、長男F、長女Gが
います。
この場合、父Aの相続が一次相続、長男Cの相続が二次相続になります。
法定相続人と相続分
父Aが亡くなった時点では、法定相続分は次のとおりでした。
- 妻B/1/2
- 長男C/1/4
- 次男D/1/4
ところが長男Cが亡くなると、Cが持っていたAについての相続上の地位を、Cの相続人である妻E・長男F・長女Gが引き継ぐことになります。
そのため、父Aの遺産分割協議には、原則として次の人が関係することになります。
- 妻B
- 次男D
- 長男Cの妻E
- 長男Cの子F
- 長男Cの子G
最初の被相続人Aから見れば血縁関係のない「長男の妻E」までが遺産分割の当事者になる可能性があるわけで、ここが数次相続の重要なポイントになります。
数次相続・代襲相続・
再転相続の関係を確認
代襲相続と数次相続の違いは?
数次相続と間違えやすいのが「代襲相続」です。
最大の違いは、「相続人になるはずだった人が、いつ亡くなったのか」です。
<代襲相続>
たとえば、上記の家族関係の場合で考えてみます。
⬇️
長男C
⬇️
孫F
ここで、長男Cが父Aより先に死亡したとします。
その後に父Aが死亡すると、長男Cに代わって、その子である孫Fが相続人になる場合があり、これが代襲相続です。
<数次相続>
これに対し、次のようなケースが数次相続になります。
⬇️
長男Cが父Aの相続人になる
⬇️
その後、遺産分割前に長男Cが死亡
つまり、次のような違いともいえます。
- 相続開始前に相続人が死亡
⇒ 代襲相続 - 相続開始後に相続人が死亡
⇒ 数次相続
子の配偶者が相続に参加する
かどうかもポイント
この違いも非常に重要です。
長男Cが父Aより先に亡くなっていた代襲相続の場合、Cの妻Eは、原則として父Aの代襲相続人にはなりません。
一方、父Aが亡くなった後にCが亡くなった数次相続では、妻EはCの相続人です。
そのため、Cが取得した父Aについての相続上の地位をEが承継し、父Aの遺産分割に参加することがあります。
※横にスクロールすると続きが見れます。
| 項目 | 数次相続 | 代襲相続 |
|---|---|---|
| 本来の相続人が 死亡した時期 | 被相続人の死亡後 | 被相続人の死亡前など |
| 新たに相続が 発生するか | 発生する | 本来の相続人に 代わって相続する |
| 本来の相続人の 配偶者 | 相続人として 関係することがある | 原則として 代襲相続人にならない |
| 子・孫 | 二次相続の 相続人となり得る | 代襲相続人となり得る |
再転相続と数次相続は
何が違う?
さらに知っておきたいのが「再転相続」です。
これは特に相続放棄を考えるときに重要になります。
相続人には原則として、「自己のために相続開始があったことを知ったときから3か月」の熟慮期間があり、その間に単純承認・限定承認・相続放棄を選択します。
ところが、その相続人が承認するか放棄するかを決めないまま死亡した場合の承認・放棄の期間については、「その人の相続人が自己のために相続開始があったことを知ったときから起算する」と定められているのです(民法第916条)。
このように、一次相続について承認・放棄を決める前に相続人が死亡し、その選択権を次の相続人が引き継ぐことを「再転相続」といいます。
数次相続と似ていますが、再転相続では「最初の相続を承認するのか、それとも放棄するのか」という選択まで次の相続人に残されている点が大きな特徴です。
数次相続で起こる
リスクの具体例を解説
リスク①遺産分割協議の
参加者が増えてしまう
遺産分割協議は、原則として遺産分割に関係する相続人全員で行なう必要があります。
たとえば当初、父の相続人が子ども3人だけだったとしても、そのうち1人が亡くなり、その人に配偶者や子どもが複数いれば、協議に関係する人数が一気に増えます。
さらに、そのうちの1人が死亡すれば、またその相続人が加わる可能性があります。
特に、何世代にもわたって相続登記(不動産の名義変更)をしていない数次相続では相続人が増えて、必要書類等も多くなってしまうなどのリスクが増大します。
リスク②「知らない親族」が
遺産分割の当事者になる
数次相続では、最初の被相続人とほとんど関係がなかった人が、遺産分割協議の当事者になることがあります。
たとえば、「父の相続なのに、亡くなった兄の妻が協議に入ってきた」といったケースなどです。
これは不自然に感じるかもしれませんが、兄が父の死亡時に相続人となり、その後に死亡したのであれば、兄が取得した相続上の地位を数次相続でその妻や子が相続するので、あり得る話なのです。
特に大きなリスクは、数次相続を長期間放置すると、「一度も会ったことがない親族」や「海外に住んでいる人」、「連絡先がわからない人」までが協議に参加してくる可能性があることで、これには注意が必要です。
リスク③相続放棄を自由に
選択できない場合がある
数次相続では、「亡くなった父の相続は、今から放棄すればよいだろう」と単純に考えられないケースがあります。
相続放棄は原則として、自己のために相続開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
問題になるのは、たとえば父Aの相続について、長男Cがすでに単純承認をしていた場合や、財産を勝手に処分するなどして法的に単純承認とあつかわれる状態になった後にCが死亡した場合です。
こうしたケースでは、Cの相続人は、Cがすでに取得していた相続上の地位を相続することになります。
すると、Cがすでに確定的に相続したAの財産について、Cの死亡後に借金や負債が多いことがわかったとしても、「Cに代わってAの相続を放棄する」ということは原則としてできないのです。
一方で、CがAの遺産相続について承認も放棄もしないまま死亡した場合は、前述した再転相続となるため、Cの相続人は最初のAの遺産相続については承認や放棄の選択ができます。
この違いは非常に重要ですから、相続放棄が関係する数次相続では、「誰が」、「誰の相続について」、「いつ相続人になり」、「3か月がいつ始まったのか」を一つずつ整理する必要があります。
リスク④借金も次の相続へ
引き継がれる可能性がある
相続によって引き継ぐのは、不動産や預貯金だけではありません。
民法第896条は、相続人は被相続人の財産に属する一切の権利義務を原則として承継すると定めています。
したがって、最初の被相続人に借金があり、その借金を一次相続の相続人が承継していた場合、その人が亡くなることで、その債務がさらに次の相続へつながる可能性があります。
たとえば、次のようなケースが考えられます。
⬇️
長男Cが相続
⬇️
Cが死亡
⬇️
Cの妻Eや子FらがCの相続人
プラスの財産だけを見て数次相続を処理すると、後から債務が判明することがあるため、数次相続では各被相続人ごとに財産と債務を確認することが重要になります。
リスク⑤未成年者が
相続人になることがある
二次相続によって、未成年の子どもが最初の遺産分割協議へ参加することもあります。
通常、未成年者については親権者が法定代理人となります。
しかし、親権者自身も共同相続人であり、親と子の利益が対立する遺産分割を行なう場合には、家庭裁判所で「特別代理人」を選任しなければならないことがあります。
数次相続では世代が下がるため、この問題・リスクが生じやすくなります。
リスク⑥相続人が増えるほど
合意が難しくなる
遺産分割協議は多数決で決めるものではなく、原則として関係する相続人全員の合意が必要です。
そのため、たとえば3人だった相続人が7人になる、さらに次の相続で10人になる、というように人数が増えるほど次のような問題が起こりやすくなります。
- 意見がまとまらない
- 連絡が取れない
- 遺産の評価で争う
- 過去の事情を知らない人が参加する
当事者だけで協議がまとまらない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停を利用することになります。
数次相続が発生した場合の対処法/6つのステップ
数次相続が発生したら、次の順番で整理しながら進めていくと理解しやすくなります。
STEP1:相続が何回
発生しているか整理・確認
まず、死亡した順番を時系列で整理します。
父A ○年○月死亡
⬇️
長男C ○年○月死亡
⬇️
Cの妻Eも、○年○月死亡
数次相続では、死亡の順番によって誰が相続人になるのかが変わるので注意が必要です。
STEP2:各被相続人の戸籍を
収集
最初の相続の被相続人だけでなく、その後に死亡した相続人についても戸籍を確認します。
そして、たとえば、A ⇒ Cと数次相続が起きているなら、Aの相続人とCの相続人をそれぞれ確定します。
何世代にもわたっている場合には、戸籍の量が多くなることがあるので要注意です。
STEP3:相続放棄の有無を確認
相続人の中に相続放棄をしている人がいないか確認します。
相続放棄をした人は、法律上、原則として最初から相続人ではなかったものとしてあつかわれるため相続関係が変わります。
また、相続の承認・放棄を決めないまま死亡した人がいる場合には、再転相続の問題も確認します。
STEP4:最終的に誰が
遺産分割に参加するか確定する
現在、生存している人だけを見て決めるのではなく、それぞれの相続を順番にたどって、最初の被相続人の相続上の地位を最終的に誰が承継しているのかを確認します。
ここを間違えると、必要な相続人を欠いたまま遺産分割協議書を作ってしまい、無効になる可能性があります。
STEP5:遺産と債務を確認する
数次相続では、たとえば「祖父の財産」(一次相続)と「父自身の財産」(二次相続)が混在しやすくなります。
誰の財産なのかを区別しながら、「預貯金」、「不動産」、「株式」、「貸付金」、「借金」、「保証債務」などを整理します。
STEP6:相続人全員で
遺産分割協議を実施
相続関係を確定したら、必要な相続人全員で協議します。
合意できたら「遺産分割協議書」を作成し、不動産の相続登記や預貯金の解約などを進めます。
話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てることを検討します。
数次相続で注意するべき
ポイントまとめ
「相続開始から10年の
ルール」に注意する
数次相続では、最初の相続から何十年も経過しているケースがあります。
ここで注意したいのが、2023年4月1日から施行されている遺産分割の新しいルールです。
現在は原則として、被相続人の死亡から10年を経過した後の遺産分割では、
- 生前贈与による特別受益
- 介護や家業への貢献などによる寄与分
を反映した「具体的相続分」ではなく、法定相続分または指定相続分による分割となります(一定の例外や経過措置はあり)。
したがって、「遺産分割には期限がないから、何年でも放置してよい」とは考えない方がよいでしょう。
特に古い数次相続では、早めに相続関係を整理することが重要です。
数次相続では相続登記も
複雑になる
遺産に土地や建物が含まれている場合には、不動産の相続登記にも注意が必要です。
2024年4月1日から相続登記が義務化されています。
現在は、不動産を相続によって取得したことを知った相続人は、原則としてそのことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
また、遺産分割によって不動産を取得した場合には、遺産分割成立日から3年以内に、その内容に沿った登記を申請する必要があります。
数次相続では、「祖父名義 ⇒ 父が相続 ⇒ 登記しないまま父が死亡 ⇒ 子どもが相続」というように登記が何世代も残っていることがあります。
こうなると相続人が増え、多くの書類が必要になってしまいます。
なお、遺産分割がすぐにまとまらず、3年以内に通常の相続登記が難しい場合には、「相続人申告登記」によって基本的な登記申請義務を履行する方法もあるので検討されるといいでしょう。
数次相続では相続税にも
注意する
相続税の申告について
数次相続では相続が2回以上発生しているため、「一次相続についての相続税」と「二次相続についての相続税」をそれぞれ確認しなければなりません。
相続税は、遺産分割が終わっていなくても申告期限が延長されるわけではありません。
原則として、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納税」する必要があります。
遺産分割が終わっていなければ、いったん法定相続分などにしたがって取得したものとして申告することになります。
つまり、「父の遺産分割が終わっていないから、父の相続税もまだ申告しなくてよい」とはならないのです。
相次相続控除について
なお、短期間で相続が続いた場合には「相次相続控除」も確認する必要があります。
短期間のうちに相続が連続すると、同じ財産に近い形で相続税が繰り返し課税されることがあります。
そこで、一定の条件を満たす場合には相次相続控除を利用できることがあります。
現在の制度では、今回の相続開始前10年以内の相続で被相続人が財産を取得し、その財産について相続税が課されていた場合などに、一定額を今回の相続税から控除する仕組みがあります。
数次相続が発生している場合には、弁護士や税理士に確認しておくとよいでしょう。
みらい総合法律事務所は全国対応で、随時、無料相談を行なっています(事案によりますので、お問い合わせください)。
もちろん、秘密厳守ですから安心してご相談ください。
数次相続が発生していて、お困り事がある場合は、まずは一度、弁護士にご相談いただければと思います。






























