遺産分割協議書はどこに提出するのか?提出先5つと必要書類・原本の返却まで解説
遺産分割協議がまとまり、遺産分割協議書を作成したあと、「この書類はどこに出せばよいのか」と迷う方は少なくありません。
遺産分割協議書は、1か所にまとめて提出する書類ではなく、相続手続きの種類ごとにそれぞれの窓口へ提出します。
主な提出先は、法務局・金融機関・証券会社・税務署・運輸支局などです。
手続きによっては期限が定められているものもあり、準備の仕方や順番を知っておくとスムーズに進められます。
この記事では、遺産分割協議書の主な提出先と、必要書類・部数、提出した原本を返してもらう方法まで整理して解説します。
遺産分割協議書とは?
なぜ各所への提出が
必要になるのか
遺産分割協議書は、相続人全員でどの財産を誰が引き継ぐかを話し合い(遺産分割協議)、その合意内容をまとめた書面です。相続人全員が署名し、実印を押すことで、合意が成立した事実を客観的に証明する役割を持ちます。
相続の各種手続きでは、窓口に対して「誰がその財産を相続したのか」を示す必要があります。その根拠となる資料が遺産分割協議書です。財産の名義を変えたり、預貯金を払い戻したりする場面で、遺産分割協議書の提出(提示や添付)を求められます。
「提出」ではなく
「提示・添付」する場面が多い
「提出」と聞くと、書類を提出したまま手元に戻らないイメージを持つ方もいます。しかし実際の手続きでは、原本を確認してもらったうえで返却されたり、写し(コピー)を添付したりする場面が多くあります。そのため、提出のたびに新しい協議書を作り直す必要は、原則としてありません。
つまり遺産分割協議書は、複数の窓口で繰り返し使う「相続の証明書」のような位置づけです。どの窓口で原本が必要か、コピーで足りるかを事前に確認しておくと、手続きが滞りにくくなります。
遺産分割協議書の
主な提出先は5つ
遺産分割協議書の主な提出先は、相続する財産の種類に応じて次の5つに分かれます。
以下で、それぞれの提出先を順番に見ていきます。
法務局(不動産の相続登記)
土地や建物を相続した場合は、その名義を亡くなった方(被相続人)から相続人へ変更する「相続登記」を行います。
申請先は、対象となる不動産の所在地を管轄する法務局です。
遺産分割協議書は、誰がその不動産を取得したかを示す添付書類として提出します。複数の市区町村に不動産がある場合は、それぞれの所在地を管轄する法務局ごとに申請が必要になることがあります。
金融機関
(預貯金の解約・払戻し)
被相続人名義の預貯金は、金融機関が死亡を把握すると口座が凍結されます。解約・払戻しや名義変更を受けるには、遺産分割協議書などを金融機関の窓口に提出します。銀行ごとに所定の相続手続依頼書が用意されていることが多く、あわせて記入・提出するのが一般的です。
取引していた金融機関が複数ある場合は、それぞれの窓口で個別に手続きが必要です。相続税の申告にあたって残高を確定させるため、死亡日時点の残高証明書の発行を求めることもあります。窓口によって必要書類や様式が少しずつ異なるため、事前に電話などで確認してから訪問すると、二度手間を避けられます。
証券会社
(株式・投資信託の名義変更)
上場株式や投資信託は、被相続人の証券口座から相続人の口座へ移す形で手続きします。相続人がその証券会社に口座を持っていない場合は、新たに口座を開設したうえで移管するのが一般的です。ここでも、遺産分割協議書が誰の取得分かを示す書類として使われます。
非上場株式や、複数の証券会社にまたがる資産がある場合は、手続きが複雑になりがちです。銘柄の評価や配当の扱いなどで判断に迷うことも少なくないため、財産の種類が多いときは、早めに専門家へ相談しながら進めると安心です。
税務署(相続税の申告)
相続税の申告が必要な場合、遺産分割協議書の写しを申告書に添付します。提出先は、被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署です。相続人の住所地ではない点に注意が必要です。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を受ける場合は、遺産分割協議書の写しに加え、その協議書に押印した相続人全員の印鑑証明書の添付が求められます。特例を使うと納税額が大きく変わるため、添付書類の不足に注意が必要です。
運輸支局・軽自動車検査協会
(自動車の名義変更)
被相続人名義の自動車を相続する場合、普通自動車は管轄の運輸支局、軽自動車は軽自動車検査協会で名義変更を行います。
普通自動車では、遺産分割協議書(または相続人が1人であることがわかる書類など)が必要になります。軽自動車は普通自動車ほど厳格な書類を求められないことが多いものの、扱いは窓口で異なるため、事前の確認が確実です。
提出先ごとの必要書類と
「原本は何通いるか」
遺産分割協議書だけを出せばよいわけではありません。多くの窓口では、相続人を確定するための戸籍関係書類や印鑑証明書などをあわせて提出します。共通して求められることが多いのは、次のような書類です。
- 被相続人の出生から死亡までの
戸籍謄本(相続人を確定するため) - 相続人全員の現在の戸籍謄本
(相続人であることを示すため) - 相続人全員の印鑑証明書
(協議書の実印が
本人のものであることを示すため) - 遺産分割協議書
(合意内容と取得者を示すため) - (不動産がある場合)
登記事項証明書や
固定資産評価証明書など
(対象不動産を特定するため)
必要書類は窓口や手続きによって異なります。網羅的にすべてを毎回そろえる必要はありませんが、複数を組み合わせて提出することで、相続関係と取得内容を正確に確認してもらえます。なお、戸籍関係の書類は「法定相続情報一覧図」を法務局で取得しておくと、各窓口で戸籍謄本の束を何度も提出せずに済み、手続き全体の負担を軽くできます。
原本は1通で複数の
窓口に使い回せる
遺産分割協議書の原本は、基本的に1通あれば複数の窓口で使い回せます。多くの窓口では、原本を確認したあとに返却してくれるためです。原本を提出しても手元に戻ってくるので、法務局・金融機関・税務署などを順番に回ることが可能です。
ただし、複数の手続きを同時並行で進めたい場合は、原本を複数部作成しておくと待ち時間を減らせます。相続人が遠方に分かれているケースなどでは、あらかじめ2〜3通用意しておくと手続きがスムーズに進むためおすすめです。
提出した遺産分割協議書の
原本は返してもらえる
「原本を提出したら返ってこないのでは」と心配される方もいますが、相続登記をはじめ多くの手続きでは、原本を返却してもらう「原本還付」の取扱いが用意されているのが一般的です。原本のコピーをとり、そのコピーに「原本と相違ありません」と記載して署名(記名押印)したうえで、原本とともに提出すると、確認後に原本が返却されます。
原本還付を受けるときの
一般的な流れ
原本還付を受ける際の流れは、おおむね次のとおりです。
- 遺産分割協議書の原本のコピーをとる
- コピーに「原本と相違ありません」と
記載し、署名(記名押印)する - 原本とコピーをあわせて窓口に
提出する - 窓口での確認後、または手続き
完了後に原本が返却される
原本還付の可否や具体的な手順は、窓口や手続きの種類によって異なります。金融機関では独自の様式に沿う場合もあるため、提出前に各窓口へ確認しておくと安心です。
提出に期限がある手続きに注意
遺産分割協議書を提出する手続きの中には、期限が定められているものがあります。特に相続税の申告と相続登記は期限が明確なため、早めの準備が大切です。
相続税の申告・納付は
10か月以内
相続税の申告と納付は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。期限が土曜・日曜・祝日にあたる場合は、その翌日が期限となります。
期限までに遺産分割がまとまらない場合でも、いったん法定相続分で申告し、後から分割が決まった段階で修正する方法があります。ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は原則として分割後でなければ使えないため、期限内の分割が難しいときは、税理士など専門家に早めに相談するのが安心です。
相続登記は「3年以内」が
義務に(2024年4月から)
2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されています。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記を申請する必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。
この義務化は、2024年4月1日より前に相続した不動産にも適用されます。この場合は、施行日から3年間の猶予が設けられています。義務化より前に相続した不動産も対象となるため、名義がそのままになっている不動産がある方は、早めに相続登記を検討することが大切です。
遺産分割協議書の
提出が不要なケース
すべての相続で遺産分割協議書の提出が必要になるわけではありません。次のような場合は、遺産分割協議書が不要になります。
- 相続人が1人だけの場合(そもそも
分割の話し合いが生じないため) - 有効な遺言書があり、その内容どおりに
相続する場合
(遺言書が取得の根拠になるため)
ただし、遺言書があっても、相続人全員の合意で遺言と異なる分け方をする場合には、あらためて遺産分割協議書が必要になります。また、遺言書があっても遺言執行者が定められていないケースや、遺言に記載のない財産があるケースでは、その部分について協議書の作成が求められることもあります。自分のケースで提出が必要かどうか判断に迷うときは、専門家に確認しておくと安心です。
よくある質問
Q. 遺産分割協議書は原本と
コピーのどちらを
提出しますか?
A. 窓口や手続きによって異なります。相続登記では原本を提出したうえで原本還付を受けられ、相続税の申告では写し(コピー)を添付するのが一般的です。事前に各窓口へ確認すると確実です。
Q. 提出先ごとに別々の
遺産分割協議書を
作る必要はありますか?
A. 原則として1通の協議書で複数の手続きに使えます。原本は返却されることが多いため、順番に使い回すことが可能です。複数の手続きを同時に進めたい場合は、あらかじめ複数部を作成しておく方法もあります。念のため、遺産分割協議書を作成する前に提出先に確認しておくことをおすすめいたします。
Q. 提出後に記載のない
財産が見つかったら
どうなりますか?
A. 記載のない財産が見つかった場合は、その財産について改めて協議し、追加の遺産分割協議書を作成するのが一般的です。当初の協議書に「記載のない財産は特定の相続人が取得する」といった定めを設けておく方法もあります。個別の事情で取扱いが異なるため、判断に迷う場合は専門家にご相談ください。
まとめ
遺産分割協議書の主な提出先は、法務局・金融機関・証券会社・税務署・運輸支局などです。相続する財産の種類ごとに窓口が分かれており、それぞれで必要書類や提出方法が異なります。原本は原本還付などによって返却されることが多く、1通で複数の手続きに使えるのが一般的です。
一方で、相続税の申告(10か月以内)や相続登記(3年以内)のように期限が定められている手続きもあるため、早めの準備が大切です。提出先や必要書類の判断に迷う場合は、弁護士などの専門家に相談することで、手続きをスムーズに進められます。
弁護士法人みらい総合法律事務所は全国対応で、随時、無料相談を行なっています(事案によりますので、お問い合わせください)。





















