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配偶者居住権とは?要件やメリット・デメリットを解説

最終更新日 2026年 06月11日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

配偶者居住権とは?要件やメリット・デメリットを解説

この記事を読むとわかること

住み慣れた我が家に住めなくなるとしたら……想像以上につらく、不安で苦しいことだと思います。

たとえば長年、夫婦として暮らしていたものの、夫が亡くなった場合に、妻が自宅に住み続けることができないとなると、精神的にも金銭的にも非常に厳しい状況に陥ってしまう可能性があります。

その時、重要になるのが「配偶者居住権」です。
簡単にいうと、配偶者居住権というのは、被相続人(亡くなった人)の配偶者が、相続開始後も自宅に住み続けられる権利のことです。

本記事では、次の項目などについて解説していきます。

☑配偶者居住権の概要と成立要件
☑配偶者居住権が問題になる具体的事例
☑配偶者居住権のメリットとデメリット
☑配偶者居住権の登記/節税との関係に
ついて
☑配偶者居住権を活用するべきケース
☑配偶者短期居住権と何が違う?
☑配偶者居住権で注意するべきポイント

ぜひ最後までお読みになって、未来の安心を手に入れていただきたいと思います。

目次

配偶者居住権とは?

配偶者居住権の概要

☑「配偶者居住権」とは、次のような権利のことをいいます。

夫婦のうち、どちらかが亡くなり、残された配偶者が、
被相続人(亡くなった人)の所有する建物、もしくは被相続人と配偶者が
共有する建物に居住していた場合に、亡くなるまで、または一定期間、
賃料の負担なく、引き続き住み続けられる権利

☑配偶者居住権は、残された配偶者の居住権を保護する目的で、民法改正により2020年(令和2年)4月1日以降に発生した相続から適用されるようになっています(民法第1028条)。
つまり、これ以降に亡くなった人の相続から配偶者居住権が設定できるようになっているわけです。

☑なお、亡くなった日が令和2年3月以前の場合、遺産分割協議が令和2年4月1日以降であっても、配偶者居住権は設定できないことに注意が必要です。

☑配偶者居住権は、遺言で遺贈することができます。
ただし、令和2年4月1日以降に作成された遺言書である必要があります。

配偶者居住権の成立要件

配偶者居住権が成立するためには、次のすべての要件を満たさなければいけません。

  1. 残された配偶者が、亡くなった人の
    法律上の配偶者であること
  2. 配偶者が、亡くなった人が所有して
    いた建物に、亡くなった時に
    居住していたこと
  3. 「遺産分割」、「遺贈」、
    「死因贈与」、「家庭裁判所の審判」のいずれかにより
    配偶者居住権を
    取得したこと
注)
遺産分割:相続人の間での話し合い
(協議)による分割の場合
遺贈:配偶者居住権に関する遺言がある
場合
死因贈与:配偶者居住権に関する
死因贈与契約書がある場合
家庭裁判所の審判:相続人の間で
遺産分割の話し合い(遺産分割協議)が
成立しない場合に行なわれるもの

ここで注意していただきたいのは次の2点です。

①内縁配偶者では認められない
(法律上の配偶者であること)。

②被相続人が建物を配偶者以外の
第三者と共有していた場合、その建物は
配偶者居住権の対象にならないこと。

配偶者居住権が問題になる
具体的事例を解説

次に、配偶者居住権が関わってくる具体例について見ていきます。

事例1:配偶者が自宅に
住み続け、生活費も
確保できるケース

夫が亡くなり相続人は妻と子1人、遺産は自宅2,000万円、預貯金3,000万円というケースで考えてみます。

  • 法定相続分の割合は、配偶者が2分の1、子全員が2分の1になります。
    その割合のとおりに遺産分割するとしたら、配偶者の相続分は自宅の2分の1(1,000万円分)と預貯金1,500万円になります。
  • ここで妻が自宅を取得する場合、配偶者居住権が適用される以前では、妻が子に1,000万円(2,000万円の2分の1)の代償金を渡す必要があるため、預貯金の相続分(1,500万円)と相殺するなら手元に現金として500万円しか残りません。
    となると、住む場所はあるものの生活費が不足してしまう可能性があります。
  • これに対し、妻が配偶者居住権を使い、所有権は子が取得したとすると、妻は代償金を子に支払わずに、自宅に住み続けることができます。
    さらに、自宅2,000万円と預貯金3,000万円の2分の1である2,500万円も得ることができるわけです。

このように、配偶者居住権があれば「自宅を取るか」、「生活費を取るか」の悩みが軽減できるのです。

事例2:配偶者の将来の退去
リスクを軽減させるケース

配偶者が自宅の所有権を取得しないと、将来の退去リスクが高まってしまうケースです。

たとえば、夫が亡くなり、子が自宅の所有権を取得、妻は預金を多めに取得しただけというケースでは、相続直後は自宅に住むことはできても、将来、所有者である子との関係が悪化すれば居住が不安定になる可能性があります。
そこで、配偶者居住権を設定しておけば妻は権利として住み続けられるので、たんなる「家族の厚意」より法的に安定し、安心して住み続けることができます。

事例3:配偶者の死後に
同居していた子や親族が
住み続けられないケース

たとえば、妻に配偶者居住権が設定されていても、妻が亡くなった後に同居していた子や親族がそのまま権利を引き継いで住み続けられるわけではありません

なぜなら、制度の趣旨は「残された配偶者の居住保護」であり、配偶者居住権は基本的に配偶者本人のための権利だからです。
ですから、配偶者居住権が終身型で設定されているなら、配偶者が亡くなった時点で権利は消えてしまうため、その後の自宅の相続については、同居していた子などの他に相続人がいれば、相続人全員で行なう遺産分割協議で決定していくことになります。

事例4:共有建物のため
配偶者居住権を使えないケース

亡くなった夫が、自宅建物を兄弟と共有していたようなケースでは、その建物は配偶者居住権の対象になりません。
被相続人が建物を配偶者以外と共有していた場合は、配偶者居住権の対象外となるため、「住み続けられると思っていたのに制度が使えない」という典型的な落とし穴のケースといえます。

配偶者居住権のメリットと
デメリットは?

ここでは、配偶者居住権のメリットデメリットを解説します。

配偶者居住権のメリット

まず、配偶者居住権のメリットを見ていきましょう。

ひとつずつ詳しく解説します。

住まいの確保と他の財産の
確保を両立しやすい

最大のメリットは、住まいの確保と預貯金など他の財産の確保を両立しやすいことです。

以前は自宅を相続すると現金が減りやすく、前述したように「家はあるが生活費が足りない」という事態になりがちでした。
しかし現在では、配偶者居住権を使えば、建物の価値を所有権部分と居住権部分に分けるため、配偶者は自宅に終身あるいは一定期間住み続けながら、預貯金なども一定程度確保しやすくなっています。

代償金のリスクが減る

たとえば、全体の遺産が2,000万円で、そのうち1,500万円が自宅不動産のケースでは、配偶者がそのまま自宅の取得を希望したなら、子などの相続人に代償金として750万円を支払わなければいけません。

こうしたケースで配偶者居住権を活用すれば、代償金を支払うことなく自宅に住み続けながら、預貯金分も確保できる可能性があります。

遺産分割や遺言の選択肢が
増える

遺産分割や遺言の選択肢が増える点も大きなメリットです。
裁判所が公表している改正法概要でも、配偶者居住権は「遺産分割等における選択肢の一つ」として創設された、としています。

つまり、自宅を単純に「妻と子のどちらが取るか」ではなく、「妻は住む権利、子は所有権」というような柔軟な設計が可能になるわけです。

節税にもなる

活用の仕方によっては節税にもなります。
※詳しい内容は、のちほど解説します。

配偶者居住権のデメリット

次に、配偶者居住権のデメリットを見ていきましょう。

一つずつ詳しく解説します。

制度設計と手続きが複雑

自宅の価値を分けて考える必要があり、遺産分割でも「配偶者居住権の価額」と「負担付き所有権の価額」を整理しなければなりません。
そのため、制度設計と手続きが複雑で、相続人間で評価争いになる可能性がある、というデメリットがあります。

所有者は固定資産税を
支払わなければいけない

所有権者にとっては、居住権がないにも関わらず固定資産税を支払わなければならず、負担になってしまいます。
配偶者居住権を取得した配偶者は、建物の必要経費を負担する義務がありますが、これはあくまで建物部分に限られます。
土地の所有者は固定資産税を負担しなければいけないことを考えておく必要があるわけです。

所有権を持つ人との
利害調整が必要

配偶者は住み続けられても、建物の所有者は自由に使えません。
そのため、所有権を取得した子などの立場から見ると、財産の利用や処分に制約がかかることになります。

自由に売却できない

配偶者居住権はあくまで自宅に居住する配偶者に認められた権利であり、仮に資金が必要になっても他人に売却や譲渡をすることはできません。

専門家に依頼する必要がある

権利関係が複雑で、評価額の計算や登記などは難しいため、専門家に依頼する必要があります。

配偶者居住権と登記の関係を解説

配偶者居住権は、成立要件を満たせば権利として発生します。
しかし、第三者に対抗するためには登記が必要です。

たとえば、配偶者である妻が配偶者居住権を設定したものの、登記をしていなかったために、将来、建物の所有者である子から「家から出ていってくれ」と言われた場合は、これに対抗できない可能性があるわけです。

法務局の案内では、居住建物の所有者は、配偶者に対して配偶者居住権の登記を備えさせる義務を負うとされています。

<注意ポイント>

  1. 登記申請は、配偶者(権利者)と建物所有者(義務者)の共同申請だということに注意してください。
  2. 配偶者居住権の設定登記ができるのは建物のみで、その敷地である土地には登記できません。
  3. 法務局の登記記載例では、亡くなった人名義のままであれば、先に所有権移転登記をしてから配偶者居住権の設定登記をする必要がある、とされていることにも注意が必要です。

つまり、相続登記と配偶者居住権の登記を切り離して考えないことが大切になります。

配偶者居住権と節税の関係

配偶者が亡くなった場合は
課税されない

相続には、1回目と2回目の相続がある場合があります。

たとえば、夫婦と子の家庭の場合、夫婦のどちらかが亡くなって配偶者と子が相続人になるのが1回目の相続(一次相続)。
その次に配偶者が亡くなって子が相続人になるのが2回目の相続です(二次相続)。

ここで注意が必要なのは、配偶者居住権に対する相続税の課税は、一次相続と二次相続で異なることです。

  • 一次相続では、配偶者が相続した配偶者居住権は相続税の課税対象に
    なります。
  • 二次相続では配偶者居住権への課税は
    ありません。

これは、配偶者が死亡した時点で配偶者居住権は消滅するため、その際に課税関係が生じないからです。

この場合、子にとっては節税になるといえます。

配偶者居住権の存続期間を
設定した場合

配偶者居住権は配偶者が亡くなるまでの権利ですが、相続人は遺言や遺産分割協議などで存続期間を設定することができます。

設定された存続期間が満了して配偶者居住権が消滅した場合、配偶者居住権の金額分の贈与が所有者に対して行なわれたことにはならないため、贈与税の課税はありません。
この場合、子にとっては節税になるといえます。

ただし、節税でどの程度有利になるかは、相続財産の構成、配偶者の年齢、二次相続まで含めた全体設計などによって変わるため、ケースごとの検討が必要です。

配偶者居住権を活用すべき
ケースについて

配偶者居住権は、配偶者の権利として、被相続人が亡くなったら自然に得られるものではありません。
遺言や遺産分割などで任意に設定するものですから、次のようなケースでは配偶者居住権を活用するべきです。

一つずつ詳しく解説します。

住まいと資金を配偶者に
確実に残したい場合

相続人が配偶者と子のケースで、遺産を法定相続分で分け合うと、配偶者にとって良くない場合があります。

たとえば、遺産の額が十分でない場合、配偶者は自宅を相続すると現預金など他の遺産を相続することができない状況になる可能性があります。
一方、配偶者が現預金を相続すると住む場所を失ってしまう可能性があります。

配偶者居住権は自宅に関する権利のうち居住する権利だけに限定したもののため、配偶者は自宅に住み続けるために自宅を相続するのではなく、配偶者居住権とあわせて現預金など他の遺産を相続することで、生活資金を確保することができます。

この旨を遺言書に残しておけば、配偶者に住まいと資金を確実に残すことができるのです。

自宅の他には財産が
ほとんどない場合

財産としては自宅しかなく、預貯金などがほとんどないケースでは、相続人のうちの誰か一人が自宅を相続すると、他の人は遺産をほとんど相続できないことになります。

そこで配偶者居住権を設定すると、自宅の価値が「配偶者居住権」と「所有権」に分けられるため、配偶者は配偶者居住権を相続し、子など他の相続人は所有権を相続することができます。
これにより、相続人どうしのトラブルを防ぐことができます。

相続税を節税したい場合

前述したように、配偶者居住権は配偶者が死亡すると消滅するため、配偶者居住権を活用することで相続税を節税できる場合があります。

<コラム①小規模宅地等の特例とは?>
「小規模宅地等の特例」とは、亡くなった人が自宅として使っていた土地を、配偶者あるいは亡くなった人と同居していた親族が相続した場合、一定の条件を満たすと、その土地の相続税評価額が最大80%減額される制度です。

なお、小規模宅地等の特例の適用を受けるには、さまざまな要件が定められているので、国税庁のサイトなどを参考にされるといいでしょう。

配偶者居住権で注意するべき
ポイントまとめ

配偶者居住権についての注意点を以下にまとめました。

一つずつ詳しく解説します。

住んでいれば配偶者居住権が
発生するわけではない

長期の配偶者居住権には遺産分割、遺贈、死因贈与、審判など、権利取得の根拠が必要です。
たんに配偶者だった、同居していた、というだけでは足りないことに注意してください。

建物の所有関係を事前に
確認する

被相続人が建物を配偶者以外と共有していた場合は配偶者居住権の対象外になるため、土地と建物の名義、共有者の有無を早めに調べて確認しておくべきです。

登記を後回しにしない

第三者に対抗するためには配偶者居住権の登記が必要です。
また、所有者には登記協力義務があります。
せっかく遺産分割で配偶者居住権を得ても、登記しないままでは将来の不安定さが残ってしまいます。

税金と遺産分割を別々に
考えない

配偶者居住権は居住の安心を生みますが、税務上は専用の評価ルールがあり、相続税や二次相続の設計にも影響します。
節税だけを目的に決めるのではなく、生活設計・所有者との関係・将来の売却や修繕まで含めて考えるのが安全です。

<コラム②配偶者短期居住権とは?>
配偶者居住権と似た制度に「配偶者短期居住権」があります。
これは、亡くなった人の建物に住んでいた配偶者が、遺産分割がまとまるまで、または早くまとまっても最低6か月間は、無償で住み続けられる権利です。

配偶者短期居住権は、長期的な権利である配偶者居住権とは違い、応急的・一時的な居住保護の制度で登記できないため、長く住みたい場合には注意が必要です。

配偶者居住権でお困りの場合は
弁護士にご相談ください!

配偶者居住権には、配偶者以外との共有建物には使えないこと、配偶者が亡くなれば終身権も消えること、短期居住権とは別制度であることなど、落とし穴といえることがあります。

相続が起きてから慌てて考えるのではなく、遺言や遺産分割の段階で配偶者居住権を選択肢として、きちんと検討することが大切です。

もし、配偶者居住権で不安がある、困ったことになっている、という場合はまずは一度、弁護士にご相談ください。

みらい総合法律事務所は全国対応で、随時、無料相談を行なっています(事案によりますので、お問い合わせください)。
もちろん、秘密厳守ですから安心してご相談ください。

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