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相続手続きに必要となる主な書類と取得方法

最終更新日 2025年 12月05日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

相続手続きに必要となる主な書類と取得方法

この記事を読むとわかること

相続手続きには必要書類が多く、書類集めや書類作成が複雑です。

書類不足や取得方法の誤りがあれば、手続きの遅れやトラブルに発展することがあります。

ここでは、相続手続きに必要となる主な書類を一覧で整理し、預貯金・不動産・相続税申告など場面ごとの取得方法まで解説します。

これから相続の準備を進める方が、スムーズに手続きを完了できるように詳しく紹介していくので参考にしてください。

相続手続きで必要になる
書類の一覧

相続手続きでは、相続人の確定や遺産内容の確認など、段階ごとに多くの書類が必要になります。

とくに遺言書の有無によって準備すべき書類が大きく変わるため、注意が必要です。

必要書類をあらかじめ整理しておけば、金融機関や法務局での手続きをスムーズに進めやすくなります。

以下では、遺言書の有無で必要となる主な書類を一覧にまとめました。

【遺言書がある場合】

書類名目的書類の
取得先
遺言書
(公正証書・
自筆・
法務局保管)
相続内容の確認自宅、
公証役場、
法務局等
被相続人の戸籍謄本
(死亡記載まで)
相続開始の証明市区町村
役場
相続人の
戸籍謄本
相続関係の調査・証明市区町村
役場
財産資料
(通帳、
残高証明、
登記情報など)
遺産内容の確認銀行、
法務局、
自治体等
法定相続
情報一覧図
(任意)
各手続きの簡略化法務局

【遺言書がない場合】

書類名目的書類の
取得先
被相続人の出生から
死亡までの戸籍一式
相続人の
確定
市区町村
役場
相続人
全員の
戸籍謄本・
住民票
身分関係の証明市区町村
役場
財産資料
一式
遺産内容の確定銀行、
法務局、
自治体
遺産分割
協議書
遺産の分配内容の決定相続人全員で作成
法定相続
情報一覧図
(任意)
手続き
簡素化
法務局

上記は相続手続きで求められる一般的な書類を整理したものですが、実際には財産の種類や金融機関のルールによって追加書類を求められることもあります。

とくに戸籍の収集は手間がかかりやすいため、早い段階で取得を始めることが重要です。

また「法定相続情報一覧図」は必須ではありませんが、複数の金融機関で手続きを行う際に負担を減らせるため、作成しておくと便利です。

自分の状況を整理しながら、必要な書類を準備しましょう。

相続手続きの流れから
必要な書類と取得方法を解説

相続手続きは、複数の工程を踏んで進めるものです。

それぞれの段階で必要となる書類や取得先が異なるため、全体の流れを把握しておくことが大切です。

ここからは、相続の基本的な流れに沿って必要書類と取得方法を解説します。

遺言の有無の確認

相続手続きで最初に行うべき工程は、遺言の有無の確認です。

遺言の有無により手続きの進め方や必要書類が大きく異なります。

遺言には、多く利用されるものとして、「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があります。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が自ら作成した遺言書です。

自筆証書遺言は、作成したことや保管場所を家族が知らない場合があります。

そのため、まずは以下のような場所を丁寧に確認しましょう。

  • 自宅の書類棚・金庫
  • 故人が使用していた机の引き出し
  • その他保管の可能性がある場所

自筆証書遺言を発見した場合、勝手に開封してはいけません。

開封前に家庭裁判所で行う「検認」という手続きが必要です。

検認とは、遺言書の偽造・変造を防ぐため、家庭裁判所が相続人立会いのもと内容を確認する手続きです。

検認が完了すると「検認済証明書」が交付されます。

ただし、2020年(令和2年)から始まった法務局による自筆証書遺言の保管制度を利用している場合は、検認は不要です。

法務局での保管が考えられる場合は、最寄りの法務局に照会して確認しましょう。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証人役場で公証人が作成する遺言書です。

遺言者が遺言内容を公証人に伝えて公証人が文章にまとめて作成するため、形式不備による無効のリスクが低いという特徴があります。

公正証書遺言は原本が公証役場に保管されるため、相続人は謄本(写し)を取得して手続きを進めるのが一般的です。

自筆証書遺言のような検認手続きは不要で、手続きが比較的スムーズに進められます。

法定相続人を確定する

遺言書の有無の確認後は、法定相続人の確定を行います。

法定相続人は民法で定められており、配偶者は常に相続人です。

さらに、子ども・父母・兄弟姉妹などが故人との関係に応じて相続人となります。

故人に認知した子どもや前婚の子どもがいる場合などは、家族が把握していない相続人も存在する可能性があるため、慎重に確認する必要があります。

法定相続人を確認するために必要な書類と取得方法は、以下の通りです。

書類名目的取得場所取得方法と注意点
戸籍謄本
(出生~死亡までの
連続戸籍、
除籍・改製原戸籍含む)
相続人の範囲や
家族関係を確認
故人の本籍地の
市区町村役場
窓口申請または
郵送請求
(複数の市区町村に
本籍がある場合は
それぞれ取得が必要)
住民票相続人の現住所確認相続人の現住所地の市区町村役場窓口申請または
郵送請求
死亡診断書戸籍に死亡を
記載する際に使用
故人が亡くなった
医療機関
医療機関で申請
(原本が必要な場合もある)
書類名戸籍謄本
(出生~死亡までの連続戸籍、
除籍・改製原戸籍含む)
目的相続人の範囲や家族関係を
確認
取得場所故人の本籍地の
市区町村役場
取得方法と
注意点
窓口申請または郵送請求
(複数の市区町村に
本籍がある場合は
それぞれ取得が必要)
書類名住民票
目的相続人の現住所確認
取得場所相続人の現住所地の
市区町村役場
取得方法と
注意点
窓口申請または
郵送請求
書類名死亡診断書
目的戸籍に死亡を
記載する際に使用
取得場所故人が亡くなった
医療機関
取得方法と
注意点
医療機関で申請
(原本が必要な場合もある)

法定相続人を確定するには、故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍・改製原戸籍を含む)を取得します。

この戸籍により、相続人の範囲や家族関係を把握できます。

相続財産を調査する

法定相続人の確定後は、相続財産を調査します。

相続財産には、預貯金や不動産、株式や投資信託、生命保険などさまざまな種類があります。

主な相続財産の種類と必要書類は、以下の通りです。

預貯金・証券

預貯金や証券は、複数の金融機関や支店に口座があるケースも多いです。

まずは故人が取引していた銀行、信用金庫、証券会社に問い合わせ、残高証明書や取引履歴を取得しましょう。

金融機関によって必要書類は異なりますが、一般的には故人の死亡診断書、戸籍謄本、印鑑証明書などが必要です。

口座の所在や残高を正確に把握することで、遺産分割協議や名義変更手続きが円滑に進みます。

不動産

故人が所有していた不動産は、法務局で登記事項証明書を取得して確認します。

不動産の種類や所在地、名義人を正確に把握することで、遺産分割協議や相続登記に必要な情報を整理できます。

また、固定資産税の課税明細書を確認すると評価額や管理状況も把握でき、相続税申告の際にも役立ちます。

不動産の評価や権利関係は複雑な場合もあるため、専門家に相談することも検討しましょう。

生命保険・損害保険

生命保険や損害保険も相続財産に含まれます。

保険会社に問い合わせて契約内容や受取人を確認し、保険金請求の準備を進めます。

必要書類は、死亡診断書、契約者や被保険者の情報、受取人の本人確認書類などです。

保険の種類や契約状況により手続きが異なるため、早めに確認する方が良いでしょう。

借金・ローンなどの債務

相続財産にはプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も含まれます。

銀行ローンやカードローン、住宅ローンなどの残高や契約状況を確認し、必要に応じて債務の整理や相続放棄の検討も行います。

必要書類は、契約書や残高証明書、故人の死亡を証明する書類が一般的です。

借金の存在を把握せずに相続を進めると、後にトラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。

法定相続情報一覧図を作成する

相続財産の調査の次に、法定相続情報一覧図の作成を行います。

法定相続情報一覧図とは、相続人の氏名や続柄、故人との関係を整理した図式です。

法定相続情報一覧図を家庭裁判所や各種手続きの窓口に提出することで、戸籍謄本を何度も提出せずに手続きを進められます。

預貯金の名義変更や不動産の相続登記など、多くの手続きを行う際に便利な制度です。

一覧図を作成するために必要な書類と取得方法は、以下の通りです。

書類名書類の取得先
故人の戸籍謄本
(出生~死亡までの連続戸籍)
故人の本籍地
市区町村
役場の窓口
または郵送請求
相続人の戸籍謄本各相続人の本籍地
市区町村役場
戸籍附票・住民票
(必要に応じて)
各相続人の
現住所地
市区町村役場

これらの情報を基に、相続人の氏名や続柄、取得する財産の範囲などを図式化します。

作成した一覧図は家庭裁判所に申請して「法定相続情報一覧図の写し」を交付してもらえば、金融機関や法務局での手続きに戸籍の代わりとして使用可能です。

遺産分割協議をする

相続人と相続財産が確定すれば、遺産分割協議を行います。

遺言書がある場合はその内容が優先されますが、遺言に定めのない財産や遺言がない場合は全員で遺産の分割について協議する必要があります。

協議で合意した内容は、遺産分割協議書として書面にまとめ、全員が署名・実印で捺印します。

この書面は、金融機関での預貯金名義変更や不動産相続登記などに必要です。

協議が難しい場合や財産が複雑な場合は、弁護士や司法書士に相談することで円滑に進められます。

預貯金口座を相続する場合の
書類と取得方法

預貯金口座の相続手続きは、必要書類が揃っていなければ手続きを進めることができません。

相続手続きに必要な書類と取得方法は、以下の通りです。

書類名書類の
取得場所
注意点
預金通帳・
キャッシュカード
故人が保管している
場所
口座が複数ある場合、
全ての
確認が必要
遺産分割
協議書
相続人間で作成全員の
署名・
実印捺印が必要
戸籍謄本各相続人の本籍地の
市区町村
役場
連続した
戸籍を
揃える
必要がある
住民票各相続人の現住所地の
市区町村
役場
金融機関に
よって
必要な
場合がある
印鑑証明書各相続人の市区町村
役場
3カ月以内のもの
遺言書
(ある場合)
自宅または公証人役場自筆証書
遺言の
場合は
検認済
証明書も
必要

金融機関ごとに手続きを行わなければならないため、まずは被相続人が所有していた口座を把握する必要があります。

そして、必要書類を揃えた上で金融機関に申請し、遺産分割協議書に基づいた名義変更や解約の手続きを行います。

口座によっては解約時に振込先の指定が必要な場合があるため、事前に確認しておくとスムーズです。

不動産を相続する場合の
書類と取得方法

不動産の相続手続きでは、相続登記を申請して名義を相続人に変更する必要があります。

名義変更をしないまま放置すれば売却や担保設定ができないため、早めに手続きを進めることが大切です。

不動産相続に必要な書類と取得方法は、以下の通りです。

書類名書類の
取得場所
注意点
登記事項
証明書
(登記簿謄本)
不動産の
所在を
管轄する
法務局
最新の情報の取得が
必要
固定資産税納税通知書不動産
所在地の
市区町村
役場
相続税申告に
必要な場合あり
遺産分割
協議書
相続人間で作成全員の
署名・
実印捺印が必要
戸籍謄本各相続人の本籍地の
市区町村
役場
連続した
戸籍を
揃える
必要がある
住民票各相続人の現住所地の
市区町村
役場
法務局で
必要な
場合がある
印鑑証明書各相続人の市区町村
役場
3カ月以内のもの
遺言書
(ある場合)
自宅または公証人役場自筆証書
遺言は
検認済
証明書も
必要

相続登記は期限が法律で定められているわけではありませんが、トラブルを避けるためにも早めに行うことが推奨されます。

相続税を申告する際の
書類と取得方法

相続をした場合、税務署に相続税の申告が必要です。

期限は相続開始を知った日の翌日から10カ月以内で、遅れると延滞税や加算税が発生する可能性があります。

そのため、期限内に申告書が提出できるように書類の取得や作成を行わなければなりません。

故人の財産や債務の状況などで異なりますが、主に税務署へ提出する書類として必要なものは、以下の通りです。

書類名書類の
取得場所
注意点
相続税
申告書
(第1表~付表)
税務署/
国税庁の
サイト
からダウンロード
財産内容に応じて
必要な付表が変わる
添付漏れに注意
被相続人の戸籍
(死亡の記載の
あるもの)
本籍地の
市区町村
役場
生前の戸籍全部は不要
(税務署提出分
としては
「死亡の記載が
ある戸籍」のみ)
相続人全員の戸籍謄本各相続人の本籍地の
市区町村
役場
相続関係が分かる
最新のものを提出
住民票
(被相続人:
除票、
相続人:
住民票)
市区町村
役場
住所地の
確認用
(マイナンバー
記載の有無は
自治体による)
遺言書の
写し
(ある場合)
自宅または公証人役場自筆証書
遺言は
検認済
証明書も
必要
遺産分割
協議書
(写し)
相続人間で作成全員の
署名・
実印捺印が必要
不動産の
登記事項
証明書
法務局申告期限
までに
最新のものを取得
土地・建物ごとに必要
不動産の
固定資産
評価
証明書
市区町村
役場
相続年の
評価額が
必要
(1月1日現在の
評価)
預貯金の
残高証明書
各金融機関の窓口・
郵送・
オンライン
相続開始日(死亡日)
現在のものを依頼する
通帳コピー
(財産確認用
として
提出を
求められる
ことがある)
各金融機関・手元の通帳過去の資金移動の
確認として必要になる
場合がある
有価証券の残高証明書証券会社相続開始日時点の
評価額が
記載された
もの
生命保険金の支払
証明書
保険会社支払金額・受取人が
わかる
証明書を
提出
借入金残高証明書銀行・
金融機関・
貸主
相続開始日現在の
残高が
記載されていること
葬式費用の領収書葬儀社・
寺院・
霊園等
香典返しの費用は
控除対象外
必要経費と認められるもののみ
提出

残高証明書や評価証明書などの日付指定がある書類は取得に時間がかかるため、早めの準備が必要です。

書類に不備があると税務署からの追加提出や修正が求められる可能性があるため、事前にしっかり確認しましょう。

相続放棄する場合の
書類と取得方法

相続放棄とは、被相続人の財産だけでなく、借金や負債も含めて一切の相続権を放棄する手続です。

相続放棄は、原則として個人が亡くなったことを知った日から3カ月以内に家庭裁判所に申し出る必要があります。

期限を過ぎると原則として放棄できなくなるため、早めの手続きが重要です。

相続放棄に必要な書類と取得方法は、以下の通りです。

書類名書類の
取得場所
注意点
相続放棄
申述書
家庭裁判所で入手・
提出
申述書は
家庭裁判所

様式を
使用する
こと
被相続人の戸籍謄本故人の
本籍地の
市区町村
役場
連続した
戸籍が必要
被相続人の除籍謄本・
改製原戸籍
故人の
本籍地の
市区町村
役場
申立人の
戸籍謄本
申立人の
本籍地の
市区町村
役場
申立人の
住民票
申立人の
現住所の
地市区町村
役場
申述書
提出時に
必要な場合がある

上記の必要書類を揃えて家庭裁判所に提出し、裁判所で審査を受けると「相続放棄受理通知書」が発行されます。

この通知書の発行で相続放棄が完了します。

相続放棄が認められると、相続人としての権利が失われ、借金や負債の返済義務がなくなります。

まとめ

相続手続きは、多くの工程を順に進める必要があり、非常に複雑です。

それぞれの段階で必要書類や取得先が異なるため、正確に情報を整理しながら手続きを進めなければなりません。

万が一、書類の漏れや判断の誤りがあれば、手続きの遅れやトラブルにつながることもあります。

手続きに不安がある場合や、複雑な相続で手続きがスムーズに進んでいない場合は、専門知識を持つ弁護士にご相談ください。

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