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遺産相続で遺言書の正しい書き方と間違った書き方

最終更新日 2019年 02月12日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

遺言書とは?

遺言書は、自分が死んだ後、自分の財産をどう承継していくかを自分で決められる制度です。

自分の意志を相続に反映させる制度といってもよいでしょう。

遺産相続においては、遺言書がない場合には、相続人全員で遺産分割をしなければ遺産を相続することができません。

遺産分割は遺産分割協議、協議が調わない場合には調停、審判等の手続を経る必要があり、場合によっては何年もかかってしまいます。

そこで、相続人間の争いをなくすために「遺言書」を書いておく方法があり、遺言書を書く人が増えています。

ここでは、遺言書について、解説します。

相続は、被相続人の死亡によって開始します(民法第884条)。

相続税の申告期限は、相続人が、その相続の開始を知った日の翌日から10ヵ月以内です(相続税法第27条1項)。

遺言があるかどうかで遺産分割の要否が異なるので、まず遺言の有無を確認することが必要です。

遺言があれば、自分の財産を自由に処分できる

遺言は、一定の方式に従って行った単独の意思表示を、その人の死後に実現させるものです。

日本国憲法により私有財産権が保障されており、人は、生前に自分の財産を自由に処分することができます。

それを死後にまで広げたのが遺言制度ということができます。

自分の財産を処分するだけの意思能力を備えていることが必要であり、民法では、15歳以上の人が遺言をすることができるとされています(民法961条)。

遺言があると、被相続人の財産は、相続開始によって、原則として、遺言内容のとおりに実現されることになります。

遺留分制度など一定の制限はありますが、被相続人の意思を尊重する制度です。

遺言は、死後の紛争回避に役立つ

遺言は、被相続人の死後の紛争回避にも役立ちます。

遺言がない場合には、被相続人の遺産は、遺産分割により分割されます。

しかし、遺産分割協議は必ずしも円満に行われるとは限りません。

特に遺産に不動産があるような場合には、相続人中誰が不動産を相続するのか、不動産の評価額はどうするのか、などで紛糾することも稀ではありません。

しかし、遺言により、誰がどの遺産を相続するのかを明確にしておけば、遺産分割協議が不要になりますので、このような紛争を回避することができます。

推定相続人の状況によっては、配偶者の生活保障を図ることもできます。

たとえば、夫が被相続人であるとし、夫婦に子供がいないとしましょう。

そして、夫には兄がいます。

この場合、夫が死亡した場合の相続人は、配偶者である妻と兄です。

法定相続分は、妻が4分の3、兄が4分の1です。

このケースで夫が遺言により全ての遺産を妻に相続させることにしておくと、そのとおりの効果を得られます。

遺言をしても、遺留分を侵害することはできませんが、兄弟姉妹には、遺留分がありません。

したがって、兄弟姉妹に遺産を渡したくない場合には、それ以外の人に遺言により遺贈などをすることによって、その意思を実現することができます。

遺言は、このように紛争回避の機能も有しています。

遺言は、遺留分対策になる

遺言は、事実上の効果ですが、遺留分対策にもなります。

遺言がない場合には、遺産は法定相続人間で遺産分割により分割されます。

しかし、被相続人としては、法定相続人以外の人に遺産を渡したい場合もあれば、公益団体に寄付をして公益的目的に遺産を使用してほしい、というような希望がある場合もあります。

このような場合にも遺言をしておくことにより、その意思を実現することができます。

さらに、法的効果ではなく、事実上の効果ではありますが、相続人からの遺留分減殺請求権の行使を抑制する効果があります。

たとえば、夫が被相続人であるとして、推定相続人が妻と長男としましょう。

遺言により、全遺産を妻に相続させる旨定めたとします。

この場合、長男には、遺留分として遺産の4分の1がありますので、長男が妻に対して遺留分減殺請求をした場合には、遺産の4分の1は、長男のものになります。

しかし、遺言により、被相続人が全ての遺産を妻に相続させたい気持ちを切々と綴ったとしたらどうでしょうか。

長男が父親の気持ちを大切にしたい、という気持ちを持っていたとしたら、遺留分減殺請求を思いとどまる可能性があるでしょう。

このような記載は法律上の記載ではなく、一般に「付言事項」といいますが、事実上の効果が期待できるものです。

このように、遺言には、

①被相続人による私有財産の自由処分
②相続人による紛争回避
③遺留分対策

などの機能があるといえます。

遺言の性質

また、遺言には、次のような性質があるとされています。

要式行為性

遺言は、遺言者の死後に効力を生じるものであり、遺言の効力発生時に遺言者に真意を確認することができません。

したがって、遺言者の真意を明確にし、他人の偽造・変造を防止するために法律で定める要式に従って作成することが要求されています。

単独行為性

遺言は、契約ではなく、相手方のない単独行為です。

ただし、死因贈与契約は、贈与者と受贈者による契約です。

本人の独立意思

遺言は、遺言者の最終的な意思を尊重することから、本人の独立した意思が必要であり、代理も許されません。

遺言撤回の自由

遺言は、遺言者の最終的な意思を尊重するため、いつでも撤回することができるとされています。

死後行為性

遺言は、遺言者の死後に効力を生じるものであり、受遺者は、遺言者の生存中は何らの権利もありません。

法定事項限定性

遺言は、法定事項に限り、その効力を生じます。

ただし、法定事項以外の記載をしてはいけないわけではありません。

遺言でできること

では、遺言書には、何を書けばよいのでしょうか。

遺言書に書いておけば、どんなことでもできるのでしょうか。

実は、遺言でできること(遺言事項)は、法律で決まっています。

それ以外のことは、遺言で書いても法的には効力を生じません。

ただし、法定事項以外の記載をしてはいけないわけではありません。

遺言事項は、以下のとおりです。

①身分関係に関する事項
・認知
・未成年後見人の指定
・未成年貢献監督人の指定など

②相続の法定原則の修正
・推定相続人の廃除、廃除の取り消し
・相続分の指定、指定の委託など
・特別受益に関する事項
・遺産分割方法の指定、その委託
・遺産分割の禁止
・遺産分割における共同相続人間の担保責任の定めなど

③遺産の処分に関する事項
・遺贈の減殺に関する定め
・遺贈
・遺贈の効力に関する定め
・一般財団法人の設立など
・信託の設定

④遺言の執行に関する事項
・遺言執行者の指定、その委託、遺言執行者に関する定めなど

⑤その他
・その他祭祀主催者の指定、生命保険金受取人の指定、変更など

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