相続人同士の話し合いがまとまらない時の解決法
親などの被相続人が亡くなった後、相続人(子など)は全員が参加して遺産分割協議を行なう必要があります。
しかし、遺産分割協議は相続人の間で合意が得られず、いつまでも解決しないことがよくあります。
金銭が絡むうえに、距離が近い兄弟姉妹などであるがゆえに感情的な対立が起きる場合が少なくないからです。
話し合いが難航し、平行線を辿ったまま同意が得られないと、いつまでも相続問題は解決せず、遺産を受け取ることができません……どうしたらいいのでしょうか?
本記事では、相続人同士の話し合いがまとまらない時の解決法について、次の4つのステップを中心に解説していきます。
- 当事者同士での協議を継続
- 弁護士を入れて遺産分割協議を行なう
- 遺産分割調停
(家庭裁判所へ調停申立て) - 遺産分割審判で裁判所が決定
目次
遺産分割協議の意味・必要性・
特徴・注意点を確認
ここでは、「遺産分割協議」の以下の項目について解説します。
遺産分割協議とは?
被相続人(亡くなった方)の遺言書がある場合は、基本的にその内容に従って相続手続きを進めていきます。
一方、遺言書がない、見つからない、遺言で指定されていない財産がある場合は相続人全員で話し合う必要があります。
何の遺産があり、誰が、どういった割合で相続するかを決めるための話し合いを「遺産分割協議」といいます。
なぜ遺産分割協議が
必要なのか?
ここでは、遺産分割協議が必要とされる以下の主な理由について解説します。
法定相続分は目安にすぎない
民法では、「相続人の範囲」や「法定相続分」が定められています(第900条)。
しかし、法律は「誰がどれくらい相続できるか」の基準を示しているだけで、実際の相続では「どの財産を」、「誰が」、「どれだけ」取得するかまでは規定していません。
つまり、相続の内容については法律にしばられずに相続人が決めていいわけで、そのための話し合いが遺産分割協議となります。
たとえば、遺産が1億円、相続人が子供2人の場合、法定相続分は2分の1ずつなので、それぞれの相続分は5,000万円になります。
しかし双方の合意があるなら、これを遺産分割協議で6,000万円と4,000万円に分割しても問題はないわけです。
個々の財産は単純に分けにくい
遺産の種類には、不動産、株式、預金、事業資産などさまざまありますが、単純に分割することは難しいでしょう。
そのため、話し合いをして具体的な分配方法を決める必要があるのです。
協議がまとまらないと
財産が凍結されてしまう
預金の払戻しや不動産の名義変更などができないと、相続手続きもできません。
結果、いつまでも相続が完了しない、遺産を受け取れないということになってしまうため、遺産分割協議を行なうのです。
遺産分割協議の概要と特徴
ここでは、遺産分割協議の概要と特徴を解説します。
相続人「全員」の参加が必須
- 遺産分割協議は、相続人全員が参加して行なう必要があります(遺産は相続人全員の共有財産のため)。
- そのため、1人でも欠けると協議は無効になることに注意が必要です。
- 相続人が胎児や認知症の場合、また行方不明者がいる場合などでは、代理人や特別代理人の選任が必要になることもあります。
合意内容は自由に決められる
前述したように、協議内容は法定相続分にしばられることなく、柔軟に決めることができます。
- すべてを一人が相続
- 不動産は長男、預金は次男
- 代償金を支払って調整 など
自宅や土地などの現物を受け継ぐ相続人が、その評価額に応じた金銭を他の相続人に支払う方法を「代償分割」といい、この金銭を代償金といいます。
代償分割の場合は、あらかじめ代償金分の金額を確保しておく必要があります。
遺産分割協議書を作成
(書面化)する
協議が合意に至った場合は口約束ではなく、遺産分割協議書を作成し、各自が署名押印(実印)をして保管します。
遺産分割協議書は、不動産の相続登記(名義変更)や銀行口座の名義変更、解約手続きなどでも必要になります。
ただし、押印することには注意が必要です。
一度、遺産分割協議書に署名押印してしまうと、あとから「納得いかない」と思っても覆すのは極めて困難だからです。
遺産分割協議がまとまらない
場合は家庭裁判所へ
協議がまとまらない場合は家庭裁判所に申述して、調停・審判に進みます。
※これについては、のちほど詳しく解説します。
遺産分割協議で注意するべき
ポイント
ここでは、遺産分割協議で注意すべき以下の項目について解説します。
相続人の確定が最優先
- 戸籍をさかのぼって、相続人の確定を行なう。
- 認知された子、養子、前婚の子などがいる場合、これらを漏らすと協議が無効になってしまうので要注意。
遺産の範囲を正確に把握する
- 不動産、預金、株式、生命保険、負債などを網羅的に調査。
- 借金などの負債もすべて洗い出す。
- 保証人になっていないかなども確認。
- 他の相続人による使い込みなども確認。
あとから財産が見つかると再協議が必要になってしまうので注意が必要です。
なお、財産はプラス分だけでなく、マイナス分も引き継ぐことが基本です。
そのため、負債が多い場合は相続放棄も検討するといいでしょう。
感情的な対立を避ける
遺産分割協議では感情の衝突が起きやすいため、次のような工夫も大切になります。
- 事前に財産目録を作成し、相続人で
共有する。 - 弁護士などの専門家に依頼し、協議に
参加してもらう。
遺産分割協議書は
正確に作成する
協議書の不備などのミスは後々のトラブルの原因となるため正確に記載する必要があります。
- 財産の特定が不十分
- 相続人の記載漏れ
- 実印を使っていない
- 日付がない など
遺産分割協議がもめてしまう
理由は?
遺産分割協議がもめてしまう理由は、じつは「財産の問題」よりも、「家族関係」、「情報不足」、「準備不足」が原因の場合が多いのが実情です。
実例としては、次のようなパターンが典型的だといえます。
②財産の内容が不明確 / 偏っている
③相続人同士の関係悪化 /
コミュニケーション不足
④生前贈与・特別受益・寄与分への
認識違い
⑤相続手続きの知識不足や誤解
スムーズな遺産分割協議のためには、親などの被相続人が生きているうちに、次のような準備をしておくことも重要になります。
- 財産目録を作成して家族で共有する。
- 親の生前から家族会議を行なって、
親の意思を共有、兄弟間の意思の調整を
行なっておく。 - 親の介護の負担を見える化(記録)し、費用の分担も含めて負担を調整して
おく。 - 生前贈与や寄与分については、記録や
資料などを残しておく。 - 親が生前に公正証書遺言を作成して、
相続についての明確な意思を
残しておく。 - 不動産は被相続人の生前に売却や
分割しやすい形に整理しておく。 - 親が遺言書で相続分などの調整をして
おく - 相続開始前から制度について理解して
おく。
詳しい内容は、こちらの記事を参考にしてください。
遺産分割協議がもめたときの
解決方法/4つのステップ
遺産分割協議がもめてしまった場合の解決法は、大きく分けると次の4ステップになります。
次に、それぞれの手続きや注意点などについて具体的に見ていきましょう。
ステップ1:相続人同士で
遺産分割協議を継続
相続人全員で、次のような論点・争点を分解して整理し直し、話し合います。
一つずつ詳しく解説します。
遺産には何があるのか整理
財産目録を作成し、相続人全員で情報を共有して再検討します。
生前贈与のあつかい方を確認
親などの財産所有者が生前に、子や孫などに財産を無償で与えることを生前贈与といいます。
生前贈与をされていない相続人は不公平と感じるため、あつかいに注意が必要です。
被相続人への貢献の程度と
内容を確認
たとえば、相続人のうちの一人が親の介護をしていた場合、遺産分割で受け取り分が少ないと不公平を感じる場合があり、話し合いがまとまらないケースもあります。
こうした場合は寄与分などを検討します。
複数の分割案を検討
不動産は売却するか、代償金で調整できるかなど分割案を複数用意して検討します。
ステップ2:弁護士に依頼して
遺産分割協議を行なう
- 一部の相続人が強く対立している。
- 不動産の評価額で納得がいっていない。
- 生前贈与や寄与分の主張がある。
こういったケースを含め、当事者同士では協議がまとまらない場合は弁護士に依頼して、遺産分割協議に入ってもらうことも検討するといいでしょう。
弁護士があなたの代理人として他の相続人との協議に入ることで、次のようなメリットを受けることができます。
- 論点を整理できる
- 感情的な対立を避けることができる
- 法的なサポートを受けることができる
- ストレスを軽減できる
なお、対立する相続人が弁護士に依頼して代理人としてつくと、弁護士同士での交渉となるため協議はまとまりやすくなりますが、その反面、対立構造が明確となるため、その後の兄弟姉妹関係が修復不可能になる可能性があることにも留意するべきでしょう。
ステップ3:家庭裁判所の
遺産分割調停を利用する
遺産分割協議が合意に至らない場合は、「遺産分割調停」を利用することができます。
ここでは、遺産分割調停の以下の項目について解説します。
遺産分割調停の特徴は?
相手方のうちの一人の住所地、または当事者が合意で定める家庭裁判所に対して調停の申立てを行ないます。
相続人全員が参加することが調停の条件で、月1回程度のペースで出席する必要があります。
調停は、相続人のうちの1人もしくは何人かが、他の相続人全員を相手方として申し立てるもので裁判ではありません。
裁判官と、民間から選ばれた調停委員(2名以上)の立ち合いのもとで合意を目指した話し合いを行なっていきます。
通常、調停人が当事者双方から別々に事情を聞き、それぞれの意向をまとめて調整を行ないます。
遺産分割調停の
メリットについて
- 顔を合わせなくても済む
相続人同士は直接の話し合いをしないため、顔を合わせなくても済みます。 - 冷静に対応できる
第三者が入ることで感情的な対立を避け、冷静に対応することができます。 - プライバシーを守れる
非公開で行われ、調停委員には守秘義務があるため、家族間の問題を公にすることなく解決できます。 - 合意内容が法的に保証される
調停成立後に作成される「調停調書」は、確定判決と同一の法的効力を持つため、合意内容が法的に保証されます。
遺産分割調停の
注意ポイントを確認
- 時間がかかる可能性
調停成立までの期間はケースバイケースで、半年以内、1年ほど、または3年以上もかかるケースもあります。平均的な目安は1年ほどになります。 - 調停に強制力はない
調停は、あくまで「話し合い」であるため強制力はありません。 - 必要書類がある
調停では次のような必要書類の提出を求められます。
「申立書」
(1通および、その写しを相手方の
人数分)
「申立添付書類」
(遺産分割の事情説明書、進行に関する
照会回答書等)
「戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本」
(被相続人の出生時から死亡時までの
すべて)
「戸籍謄本」(相続人の全員分)
「住民票または戸籍附票」
(相続人の全員分)
「遺産に関する証明書」
(不動産登記事項証明書および固定資産
評価証明書、預貯金通帳の写し、または
残高証明書、有価証券写し等) - 調停不成立の場合は審判に進む
調停は話し合いであるため合意に至らないケースもあり、その場合は自動的に審判に移行します。 - 時間が経つほど不利になることもある
相続税には申告期限(10か月)があることにも注意が必要です。
遺産分割調停の手続きと流れ
1.家庭裁判所に調停の申立て
⬇️
2.必要書類を提出(申立書、相続関係図、
遺産目録など)
⬇️
3.調停期日の通知が届く
⬇️
4.家庭裁判所の調停室で個別に事情の
聴き取り
※通常、対立している相続人同士は直接対面しない
⬇️
5.数回の期日を経て合意形成を目指す
※具体的な相続分や分割方法などの合意
⬇️
6.調停成立
※調停調書を作成
※不成立の場合は審判に進む
遺産分割調停が成立した場合に
できること
次のようなことが可能になります。
- 強制執行
- 相続登記
- 預貯金の解約
ステップ4:遺産分割審判で
家庭裁判所が決定
調停でも合意に至らない場合は、最終的な法的決着手段である「遺産分割審判」に自動的に移行します(申立ては不要)。
一つずつ詳しく解説します。
遺産分割審判とは?
- 審判は話し合いではなく、裁判官が遺産分割の方法を強制的に決定し、相続人はそれに従って遺産分割を進めていくものです。
そのため、当事者の合意は必要ありません。 - 調停の場合は調停案に反対する人が1人でもいれば成立しませんが、審判の場合は反対する人がいても、最終的な裁判所の決定には相続人全員が従わなければなりません。
- 家庭裁判所の決定に不服がある場合は、即時抗告をして高等裁判所で判断を求めることができます。
- なお、遺言の効力や遺産の使い込み、遺留分侵害額請求など遺産分割以外の問題は訴訟に移行します。
遺産分割審判の注意ポイント
- 審判では調停よりも証拠が重視されるため、裁判官から資料などを求められる場合があります。
- 家庭裁判所から指定された第1回審判期日には出頭しなければいけません。
- 調停とは違って、相続人同士が顔を合わせることになります。
- 審判期日の回数に制限はなく、概ね1か月~1か月半に1回のペースで行なわれます。
- 通常、半年から1年かかり、それ以上の期間がかかる場合もあります。
- 必ず決着がつくというメリットはありますが、希望が反映されない場合もあり、法定相続分どおりの機械的な分割になりやすい面があります。
また、不動産を売却して現金で分ける「換価分割」を命じられることもあります。
遺産分割での注意ポイントまとめ
ここでは、遺産分割についての注意すべきポイントを解説します。
一部の相続人だけで
勝手に決めない
遺産分割協議は全員参加が原則です。
欠けている人がいると、あとから協議のやり直しや無効主張などの火種となる場合があります。
遺産問題は放置しない
遺産問題を放置しておくと、相続人が増えて関係が複雑になる場合があります。
たとえば、何代にもわたって名義変更をしないまま放置していた不動産は時間の経過とともに相続人が増えてしまい、権利関係で収拾がつかなくなってしまうケースもあります。
また、2021(令和3)年4月の民法改正により、相続開始時から10年経過後の遺産未分割については、原則として相続人等の特別受益や寄与分を考慮せず、法定相続分または指定相続分によることになります。
この改正は、施行日(令和5年4月1日)前に発生した相続も対象ですが、施行時にすでに相続開始から10年が経過しているケースであっても、施行時から5年の猶予期間が設けられています。
期限後では取り戻せなくなり、不利になってしまうケースもあるため注意が必要です。
不動産の名義変更は
忘れずに行なう
不動産を相続した場合、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記(名義変更)の申請義務があり、遺産分割協議が成立した場合は、その日から3年以内に登記をする義務があります。
放置していると、10万円以下の過料の対象になってしまうので気をつけてください。
税務期限も把握しておく
遺産分割でもめていても、相続税の申告期限などは別問題として進んでいきます。
相続税の申告・納付期限は被相続人の死亡(相続開始)を知った日の翌日から10か月以内となっており、1日でも過ぎると延滞税がかかってしまうので要注意です。
ここまで、相続人同士の話し合いがまとまらない時の解決法について解説してきました。
遺産問題で迷ったときは、次のような順番で考えるといいでしょう。
- 話し合いの余地がある ⇒ 遺産分割協議を再度行なう・必要な資料を整理する
- 感情の対立が激しい ⇒ 弁護士に依頼
して遺産分割協議に入ってもらう - 合意が見えない ⇒ 遺産分割調停
- 調停でも合意できない ⇒ 遺産分割審判
いずれにせよ、遺産問題でお困りのときは1人で悩まず、弁護士にご相談ください!
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