相続争いが起きやすい典型パターン10選
「うちの家族、兄弟姉妹は仲がいいから相続トラブルは起きないだろう」
「相続はまだ先のことだろうから、あとで考えればいい」
そんなふうに考えている方、多いかもしれません。
でも、ちょっと待ってください。
明日のことは誰にもわかりません。
突然の親の死によって相続が始まってしまうことがあります。
また、最高裁判所事務総局が公表している司法統計によれば、家庭裁判所に申し立てられた遺産分割事件の全国総数は次のようになっています。
- 令和5(2023)年度/13,872件
- 令和6(2024)年度/15,379件
つまり毎日、全国のどこかで遺産相続の争いが発生し、当事者同士では解决できずに裁判所に持ち込まれているわけです。
相続争いは、決して他人事ではない、ということがおわかりいただけるでしょう。
そこで本記事では、相続争いが起きやすい典型的な例をピックアップして、
- 概要
- 問題点
- 注意ポイント
- 解決策
などについて解説していきます。
相続問題によって、兄弟姉妹、親族間の関係が壊れてしまわないように、また相続分で損をしないためにも、ぜひ最後まで読み進めて正しい知識をインプットしてください。
目次
- 1 遺産相続のトラブルはなぜ起きる?
- 2 相続争いが起きやすい典型的な5つの原因
- 3 10の事例から学ぶ!相続争いの解決ポイント
- 4 相続トラブルの対策まとめ
遺産相続のトラブルは
なぜ起きる?
相続とは?遺産分割協議とは?
☑︎相続というのは、亡くなった人(被相続人/親など)の財産(遺産)の権利・義務を、配偶者や子などの残された家族(相続人)等が引き継ぐことです。
☑︎遺言書があるなら、その内容のとおりに相続を進めます。
なぜなら、遺言書の内容は法定相続よりも優先するからです。
☑︎一方、遺言書がない場合は相続人の全員で話し合いを行ない、相続する遺産の種類や割合を決定し、相続を進めていきます。
この話し合いを「遺産分割協議」といいます。
相続トラブルが発生する
理由は?
相続トラブルは「財産の問題」ではなく、じつは「家族関係」、「情報不足」、「準備不足」が原因で起こることが多いといえます。
また、「仲が悪い家族だから起きるもの」ではなく、むしろ「普通の家庭」ほど情報や知識、準備の不足のために相続問題が起きてしまう、という現実があります。
逆に言えば、生前の準備と情報共有をしっかり行なっておけば、ほとんどのトラブルは防げるといえます。
相続争いが起きやすい
典型的な5つの原因
まずは、相続争いが起きてしまう理由や原因、その際の注意ポイントなどについて見ていきましょう。
一つずつ詳しく解説します。
相続トラブルの原因①
遺言書がない/内容が不十分
<原因・背景>
- 遺言書がない場合は、民法で規定されている法定相続分を基準に話し合い(遺産分割協議)を行なっていく必要があるが、意見が割れてもめてしまう場合がある。
- 遺言書はあるが曖昧な表現があったり、書式・形式の不備のために無効になるケースもある。
- 誰が家を継ぐのかでもめてしまう。
- 親の介護をした人と何もしていない人の不公平感から意見が食い違う。
- 親が生前に公正証書遺言を作成して、相続についての明確な意思を残しておく。
- 財産の分け方だけでなく、理由(付言事項)も書いておくと相続人たちの納得感が高まる。
相続トラブルの原因②
財産の内容が不明確/
偏っている
<原因・背景>
- 預貯金が少なく不動産が多いため遺産分割しにくい。
- 預金や証券に関する情報が家族に共有されていない。
- 隠れた借金や保証債務がある
- 不動産を誰が相続するかで相続人同士が対立。
- 財産調査に時間がかかり、相続人の間で疑心暗鬼が生まれる。
- 財産目録を作成し、家族で共有する。
- 不動産は被相続人の生前のうちに売却・分割しやすい形に整理しておく。
- 被相続人の借金の有無、保証人になっていないかなどについても明確にしておく。
相続トラブルの原因③
相続人同士の関係悪化/
コミュニケーション不足
<原因・背景>
- 相続人同士が以前から仲が悪かった。
- 親の生前からの不満が一部の相続人にあり、関係性が悪化。
- 親の意思を家族の誰も知らないまま相続が始まってしまった。
- 介護したのに受け取る分が少ない。
- 兄弟姉妹の一人が勝手に遺産を使い込んでいた。
- 生前から家族会議を行ない、親の意思を共有、兄弟間の意思の調整を行なっておく。
- 親の介護の負担を見える化(記録)し、費用の分担も含めて負担を調整しておく。
- 第三者(弁護士などの専門家)を交えて話し合う。
相続トラブルの原因④
生前贈与・特別受益・
寄与分への認識違い
<原因・背景>
- 親が特定の子にだけ多くの金銭的援助をしていた。
- 親の介護や事業への貢献などが正当に評価されていない。
- 兄だけ家の建築費を援助してもらっている。
- ほとんどの介護は自分が行なったのに、兄弟姉妹が正しく認めていない。
- 生前贈与の記録を残しておく。
- 寄与分は客観的に証明できる資料を保管しておく。
- 遺言書で相続分などの調整をしておくと後々の紛争を防げる。
相続トラブルの原因⑤
相続手続きの知識不足や誤解
<原因・背景>
- 法定相続分や遺留分の理解不足。
- 手続きの期限(相続放棄・準確定申告など)を把握していない。
- 遺産は長男が全部相続するという誤った慣習や誤解がある。
- 遺産分割協議で合意に至らず調停や審判に突入。
- 遺留分侵害請求に発展。
- 相続放棄の期限を逃してしまい親の借金を背負うことに。
- 相続開始前から制度について理解しておく。
- 各相続手続きの期限を一覧化して把握・管理しておく。
- 必要に応じて弁護士などの専門家に早めに相談する。
10の事例から学ぶ!
相続争いの解決ポイント
次に、これまで実際に相談を受けた案件の中から、起こりがちな相続トラブルとして10の事例を紹介します。
ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めていただき、解決に役立ててください。
事例①:遺言書がなく
親族間の意見が分裂した
【概要】
親が生きているうちに相続について話し合わなければいけない、と兄弟間で話していたが、結局その前に父が亡くなってしまった。
遺言書を探したが見つからず、3人の兄弟姉妹で遺産の分割について話し合ったが意見が割れてしまった。
「実家を引き継ぐのは兄の役目ではないか」、「結婚して家を出た妹の受け取り分は少なくていいのではないか」など、それぞれの言い分があり、当事者同士だけの話し合いでは、なかなか話がまとまらない……。
遺言書がない場合は、民法で規定されている法定相続分を基準に話し合い
(遺産分割協議)を行なっていく必要があります。
しかし、相続人である兄弟姉妹同士で話し合っても、それぞれの言い分があり、合意形成が進まずに遺産分割協議が長引いてしまうことはよくあります。
そこで対策としては次のことが考えられます。
一つずつ詳しく解説します。
公正証書遺言の作成
親が生前に公正証書遺言を作成して、相続についての明確な意思を残しておくことで争いを防ぐことができます。
公正証書遺言のメリットとしては、①公証人が関与して作成されるため遺言者の意思に基づいて作成されたことを証明しやすい、②原本が公証役場に保管されることから紛失・偽造・改ざんのおそれがない点などがあげられます。
遺言書に付言事項を記載
遺言書の中で法律行為以外のこと、たとえば遺言者の家族への思いや希望を自由に記載できる項目を「付言事項」といいます。
付言事項には法的効力はありませんが、相続人たちが被相続人(親など)の思いや考えを理解することで納得感が高まり、感情的な対立を防ぐ効果があります。
財産目録の整備
生前に、どういった財産があるのかを財産目録として整備・作成しておくことも、相続人たちの争いを避ける効果があります。
家族間のコミュニケーション
被相続人の生前から家族でコミュニケーションを取り、お互いの納得感を高めておくことはやはり重要です。
事例②:遺言書の内容が
“あいまい”“不公平”
【概要】
父の死後、遺言書が見つかり内容を確認すると、「家は長男に継がせたい」、「預金などは話し合って適当に分けてほしい」などと書いてあった。
そこで、長男は「家をもらう代わりに預金は少なくていい」と主張。
他の兄弟姉妹は「家と土地の価値が一番高いのだから不公平だ」と反発。
遺言書があっても内容があいまい、財産の評価が正しくされていない、情報が共有されていない、といった場合では相続争いになってしまうケースがあります。
上記の事例①の場合と同様に、被相続人が公正証書遺言を作成して、「自宅は長男、預金は次男と三男に各○円」というように具体的に記載する必要があります。
また、生前に財産目録を作成し、評価額を共有しておくのがいいでしょう。
事例③:特定の相続人に
偏った生前贈与があった
【概要】
父の死後、遺産の洗い出しをしたところ、長女のマイホーム資金として多額の生前贈与があったことがわかった。
当然、他の兄弟から「不公平だ」、「納得できない」との声が上がり、遺産分割協議が紛糾している。
生前贈与は不公平感が大きくなるリスクがあるため、①生前贈与の記録を残しておく、②遺言書に「持ち戻し免除」などを明記しておく、③家族全員への説明などをしておく、といった対策をとっておくべきです。
ちなみに、生前贈与などの特別受益について、被相続人の死後に相続財産に含めてから遺産分割を行なうことを持ち戻しといいます。
特別受益があった場合、原則として10年以内のものは相続財産に持ち戻して遺産分割をすることになっているため、弁護士などの専門家に相談することも検討されるといいでしょう。
事例④:親の介護をした
相続人が不公平を主張し
他の相続人と対立
【概要】
父の介護をしていた妹が、遺産分割協議で「自分は大変な思いをしたのに遺産の受け取り分が少ないのは納得がいかない」として「寄与分」を主張。
話し合いが平行線のままの状態になっている。
相続人が被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした場合などに、その貢献度に応じて法定相続分に加えて遺産を多く受け取れる制度を「寄与分」といいます。
親の介護を多くした相続人は、寄与分を主張することができますが、その場合、介護の負担は“見えない”ものであり、また寄与分の認定基準が曖昧であるため次のような対策が必要になります。
- 介護の記録(時間・内容・費用)を残しておく
- 介護費用を家計から出した場合は領収書を保管
- 被相続人が遺言で寄与分を考慮した配分を指定
また、家族会議を行ない事前に話し合っておくことも大切になります。
事例⑤:親の遺産のほとんどが
不動産で分割しにくい
【概要】
遺産の調査をしたところ、亡くなった父には預貯金や現金がほとんどなく、自宅とその他の土地があるのみだった。
長男は「自分が自宅に住みたい」と言ったが、他の相続人(兄弟)は「売却して現金化しなければ分割できない」と主張。
意見が対立してしまい、話し合いが平行線を辿っている。
自宅の相続では、感情(実家への思い出など)と経済合理性が衝突する場合があり、誰が管理するか、誰が固定資産税を払うかなどで、もめてしまう場合があります。
遺産の分割では、「現物分割」、「共有分割」、「換価分割」、「代償分割」といった方法があります。
不動産の場合は現物分割できず、共有名義にするのは後々のトラブルにもつながるため極力避けたほうがいいでしょう。
そこで、現金化に反対する相続人がいる場合は、代償分割といった選択肢があります。
たとえば長男が家と土地を相続し、他の相続人には代償として現金を支払う方法です。
被相続人の生前に家族会議を行ない、遺言で「代償分割」を指定して「長男が家を取得し、他の相続人に○円支払う」と記載しておくのもいいでしょう。
なお、その場合は家を相続する人が代償金を準備しておく必要があります。
事例⑥:親の介護や財産管理を
していた子の「使い込み」が
発覚
【概要】
親の死後、預金通帳の履歴を調査したところ、不自然な現金引き出しがあったことがわかった。
親と同居して介護していたのは長男夫婦で、彼らの使い込みが疑われた。
他の兄弟姉妹が問い詰めたところ、「必要な経費だ」と主張したが、それにしては金額が大きすぎる……。
被相続人の死亡の前後で、財産を管理していた相続人などによる預貯金の使い込みや、勝手に自宅を売却したといった、いわゆる「使い込み」が発覚する場合があり、こうしたケースでは遺産分割協議が紛糾したり、兄弟間の関係が完全に壊れてしまうなどのトラブルが生じる可能性があります。
財産の管理者の場合は、①財産目録を作成して家族で共有しておく、②領収書や通帳履歴のコピーなどの記録を残しておくという対応が必要ですが、被相続人の生前から家族会議を行なってコミュニケーションを取り、他の相続人の納得を得ておくことも重要です。
他の相続人としては、使い込みの事実が確認された場合は、①不法行為に基づく損害賠償請求や、②不当利得に基づく返還請求をすることができます。
その場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
事例⑦:前妻(夫)と
再婚相手の間で相続の主張が
激化
【概要】
父の死後、前妻の子と再婚相手の間で遺産分割協議を行なったが、もともとお互いの関係性が良好ではなかったこともあり、感情と利害が衝突。
そのため、お互いに権利を主張するばかりで歩み寄ることなく、話し合いが険悪な雰囲気になってしまい、協議が停滞したままになっている。
被相続人が再婚していた場合、交流がないため話し合いが困難になってしまったり、感情的対立が激しくなってしまうことがあります。
こうしたケースでは当事者同士での解決はなかなか難しいため、弁護士などの第三者を入れて遺産分割協議を行なうことをおすすめします。
具体的には、生命保険を活用して現家族の生活保障を確保するなどの方法があります。
もっとも、被相続人が生前に公正証書遺言で分配方針を明確化しておいたり、家族信託を活用しておけばトラブルを防ぐことが可能ですから、生前の対策も重要になってきます。
事例⑧:相続税対策が
不十分だったため困窮
【概要】
親の死後、相続税の申告・納税期限が迫ってきたが現金の持ち合わせがないため支払えない。
早めに相続税について勉強して、準備をしておけばよかったと後悔している……。
遺産の相続人は、住所地の所轄税務署に相続税を申告・納税しなければいけません。
相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が死亡した日)の翌日から10か月以内が申告・納税の期限になっています
被相続人の生前であれば、生前贈与を受けておく、生命保険の活用についてのコンセンサスを取っておくなどの対応が考えられます。
なお、相続税額が10万円以上の場合は「延納制度」があります。
また、延納でも納税が困難な場合は「物納制度」があるので検討されるといいでしょう。
事例⑨:相続人が多すぎて
まとめるのが困難
【概要】
相続人が兄弟姉妹で7人おり、なかには亡くなっている兄弟もいるため甥や姪にまで相続人が広がっていることが判明。
もう何十年も会っていない人もおり、連絡先がわからないなどの問題が起きている。
長男として遺産相続をまとめるために遺産分割協議を開こうと思っていたが、正直なところ困っている……。
まず早期に、正式な代表者を決定します。
さらに、相続人調査や連絡などは手間がかかってしまうため、弁護士や司法書士への相談・依頼を検討されることをおすすめします。
事例⑩:相続人の一部が
行方不明・借金まみれで
連絡不可能
【概要】
相続人である兄弟姉妹の中に借金まみれの末に行方不明の者がいる。
自分なりに手を尽くしたが見つからないため、遺産分割協議が開けず、いつまでも相続問題をクリアにできない。
相続人に行方不明者がいる場合、捜索には時間がかかってしまう場合があります。
こうしたケースでは、不在者財産管理人の選任といった対応が考えられます。
いずれにしても、弁護士に依頼することがもっとも解決への早道になる場合があるため、まずは相談されるといいでしょう。
相続トラブルの対策まとめ
最後に、相続トラブルを防ぐためにとることができる対応策として5つをピックアップしましたので参考にしてください。
| 対策項目 | ポイント |
|---|---|
| 遺言書の作成 | ・法的に強く、無効になりにくい。 ・家族の不満を減らすために理由も添える。 ・公正証書遺言がもっとも安全。 |
| 財産の見える化 (財産目録の作成) | ・預金・不動産・保険・借金を一覧化。 ・財産目録は定期的に更新する。 |
| 生前のコミュニケーション | ・親の意思を家族で共有。 ・介護や援助の記録を残す。 |
| 専門家の活用 | ・弁護士:紛争予防・調停 ・税理士:相続税対策 ・司法書士:登記・手続き ・行政書士:遺言書作成サポート |
| 生前整理・生前贈与の計画的実施 | ・不動産の整理。 ・贈与の記録は残しておく。 ・不公平が生じないよう調整。 |
| 項目 | 遺言書の作成 |
|---|---|
| 内容 | ・法的に強く、無効に なりにくい。 ・家族の不満を減らすために 理由も添える。 ・公正証書遺言がもっとも安全。 |
| 項目 | 生前のコミュニケーション |
|---|---|
| 内容 | ・親の意思を家族で共有。 ・介護や援助の記録を残す。 |
| 項目 | 専門家の活用 |
|---|---|
| 内容 | ・弁護士:紛争予防・調停 ・税理士:相続税対策 ・司法書士:登記・手続き ・行政書士:遺言書作成サポート |
| 項目 | 生前整理・生前贈与の計画的実施 |
|---|---|
| 内容 | ・不動産の整理。 ・贈与の記録は残しておく。 ・不公平が生じないよう調整。 |
以上、遺産相続で起きがちなトラブルと対応策について解説しました。
相続トラブルは感情や利害が絡むため、当事者同士ではこじれてしまい解決できないことも多くあります。
仲の良かった兄弟姉妹や親族の関係が壊れてしまう前に、一人で悩まず、まずは一度、弁護士にご相談ください。
弁護士法人みらい総合法律事務所は全国対応で、随時、無料相談を行なっています(事案によりますので、お問い合わせください)。






























