簡単に遺留分を請求する方法【5ステップ】
なぜ?親の財産を相続できない
という現実……
人生では思いもよらぬことが起きて、大きな衝撃を受けるような経験をすることがあります。
たとえば遺産相続では、こんなケースが考えられます。
遺産相続分がなかった……。
☑︎親の遺産調査をしたところ、兄弟姉妹のうちの1人に多額に生前贈与がされていて、もう遺産がないことが判明した。
☑︎「内縁の妻に遺産のほとんどを渡す」と、死んだ父親の遺言書に書いてあり……親族である我々は納得がいかない!
遺産相続では、被相続人(亡くなった人)の遺言書があれば、その内容が法定相続より優先されます。
また、被相続人が財産をすでにあなた以外の相続人などに生前贈与していたら、もう財産が遺っていないというケースもあります。
こうした状況では、もう泣き寝入りするしかないのでしょうか?
法的に対抗する手段はないのでしょうか?
遺留分を請求するという
選択がある!
じつは、遺産相続の世界には「遺留分」というものがあります。
遺留分の権利を持っている人は、
遺言書で自分以外の相続人などが財産を相続することになっていても、
被相続人がすべての財産を贈与などしていても、
その中から、一定割合を確保することができます。
つまり、遺留分を他の相続人などに請求することで、本来はあなたのものである遺産の取り分の一部を受け取ることができるのです。
そこで本記事では、遺留分を請求する方法を簡単な「5つのステップ」で解説していきます。
これで、あなたは遺産相続で損をしなくてよくなります。
ぜひ最後まで読み進めて、しっかり対応していきましょう。
目次
あなたは大丈夫?
こんな時に遺留分は発生する!
まずは遺留分が発生する、よくあるケースについてまとめてみました。
遺言で特定の相続人に
全財産を譲ると
記載された場合
被相続人(亡くなった親など)が「全財産を長男に相続させる」といった遺言を遺したため、他の相続人の取り分が0(ゼロ)になるケース。
生前贈与で一部の子に
多額の財産を渡していた場合
被相続人が生前に特定の子へ不動産や多額の現金を贈与していたため、相続時に他の相続人が相続できる財産がほとんどなくなるケース。
内縁の配偶者や第三者に
遺産を集中させた場合
法律上の相続人ではない内縁の配偶者や友人などに遺産を遺贈した結果、法定相続人の取り分が侵害されるケース。
会社経営者が事業承継のために後継者に株式を集中させた場合
事業承継目的で後継者に株式を集中させる遺言を遺した結果、他の相続人の遺留分が侵害されるケース。
相続人が複数いるが
一部が排除されている場合
被相続人が「次男には一切相続させない」とか、「長男と次男に相続させて、長女と次女には相続させない」と遺言で排除した場合に遺留分が侵害されるケース。
このようなケースに直面しても、あきらめないでください。
ご自身の遺留分を請求し、受け取ることができます。
これから遺留分の請求方法を解説していきますが、まずはその前に相続の基本となる大切なポイントから解説していきます。
遺産相続で重要な
3つのポイントを解説します!
法定相続人/法定相続分とは?
遺産は誰でも相続できるわけではなく、民法では「法定相続人」が受け取ると規定されています。
そして、遺産の分配割合のことを「法定相続分」といいます。
そこで遺産相続では、まず誰が相続人になるのかを確認する必要があります。
そして大切なポイントは、法定相続人の順位と相続分を理解しておくことです。
<相続のポイント①>
配偶者は、つねに法定相続人になります。
<相続のポイント②>
その他の法定相続人は、民法により相続順位と法定相続分が次のように決められています。
第1順位:子
法定相続分:配偶者が2分の1/子が2分の1
※子が複数いる場合は、2分の1を人数で均等に分割します。
たとえば子が2人なら、4分の1ずつになります。
※子がすでに死亡している場合は、その子供(孫)が代襲相続により相続人となります。
嫡出か非嫡出かは関係ありません。
第2順位:親
法定相続分:配偶者が3分の2/親が3分の1
※第1順位の相続人がいないときは親が相続人になります。
※両親がいる場合は、3分の1を2人で分けるので、6分の1ずつになります。
第3順位:兄弟姉妹
法定相続分:配偶者が4分の3/兄弟姉妹が4分の1
※第1順位、第2順位の相続人がいないときは、兄弟姉妹が相続人になります。
※兄弟姉妹が複数いる場合は、4分の1を人数で均等に分割します。
※父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1となります。
ただし、法定相続分は絶対ではありません。
必ず法定相続分の割合で遺産を分割しなければならないわけではなく、相続人の間で合意するなら割合は自由に決めることができます。
遺言書が重要な理由
遺産相続では遺言書があるかないかが重要になります。
というのは、原則として、法定相続よりも遺言による相続が優先されるからです。
たとえば、法定相続人が長男と次男、長女の3人の場合、民法上の法定相続割合のとおりに遺産を分割するなら、3分の1ずつになります。
しかし、遺言書があれば原則、その内容に従って遺産分割を進めていくことになります。
被相続人(親など)の遺言書に「全財産を長男に相続させる」とか、法定相続人ではない「内縁の妻にすべて相続する」などと書かれていれば、それが優先されるのです。
その結果、不公平な立場になってしまう相続人が苦しむという事態が起きてしまうわけです。
相続には遺留分という
救済がある!
そこで、法的には遺留分という救済制度があることを知ってください。
☑︎配偶者や子、父母など一定の法定相続人が最低限の相続財産を請求できる権利を「遺留分侵害額請求権」といい、ここで受け取ることができるものが「遺留分」になります。
☑︎遺留分は、遺された近親者の生活を保障するなどのために、法律で定められている制度です(民法第1042条~1049条)。
そのため遺言書があっても、遺留分の権利は遺言の内容によって奪うことはできないことを覚えておいてください。
遺産相続の権利がある人が「最低限これだけの割合は受け取ることができるもの」が遺留分ということになります。
遺留分の基本ルールを
おさえておきましょう!
では、ここからは遺留分に関しておさえておくべきポイントやルールについて解説します。
遺留分は請求しなければ
受け取れない
遺留分は黙っていても認められ、勝手に現金が自分の預貯金口座に振り込まれることはありません。
権利をもつ法定相続人が、遺留分侵害額請求をする必要があります。
遺留分侵害額請求には
期限がある
ただし注意しなければいけないのは、遺留分の権利には時効があり、請求できる期間が次のように決められていることです。
- 「相続開始と遺留分侵害の事実」を
知った日から1年以内 - 相続開始や遺留分侵害の事実を
知らずに時が過ぎた場合は、
相続開始から10年以内
この期間を過ぎると請求できなくなるので十分に注意してください。
遺留分を受け取ることが
できる人は?
遺留分の権利をもつ人は、次のとおりです。
- 配偶者
- 子
- 直系尊属(父・母など)
※子が死亡している時は、その子(孫)が「代襲相続人」となり遺留分の権利をもつことになります。
※胎児も、生きて生まれたときは遺留分の権利をもちます。
遺留分が認められないのは…
この人たち!
遺留分は兄弟姉妹には
認められない!?
前述したように、民法では法定相続人の順位や割合について規定しており、兄弟姉妹は第3順位になっています。
しかし、遺留分は兄弟姉妹には認められていません。
相続放棄をした人
相続を放棄すれば、遺留分も受け取ることはできません。
なお、法的に相続放棄をするには家庭裁判所で相続放棄申述を行なう必要があります。
口頭などで相続人の間で相続放棄を伝えているだけでは相続放棄は成立しないので注意してください。
相続人廃除になった人
相続人廃除とは、被相続人が遺留分の権利をもつ特定の相続人に財産を相続させたくない場合に、その相続権を剥奪し、相続から外すことです。
被相続人の財産を不当に処分した者、被相続人に虐待や重大な侮辱を行なっていた者、犯罪行為があった者などが該当します。
被相続人が遺言で相続人の廃除をするか、家庭裁判所に申立てをして認められることが必要です。
相続欠格者になった人
民法で定められた欠格事由が相続人にある場合、相続権をはく奪されます。
相続が自分にとって有利になるように、遺言の偽造・破棄・隠匿等を行なった場合、詐欺・脅迫・殺人等を行なった場合などが該当します。
遺留分放棄をした人
相続開始前に家庭裁判所で遺留分放棄の手続きを行なった場合、その人の遺留分も認められません。
相続開始後の場合は、遺留分の権利を行使しなければ放棄したことになります。
遺留分の割合を
一覧表でチェック!
法定相続分に対する遺留分の割合について、一覧表にまとめたので確認してください。
| 相続人 | 遺留分 | 法定相続人の遺留分の割合 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 配偶者 | 子ども | 父母 | 兄弟姉妹 | ||
| 配偶者のみ | 1/2 | 1/2 | - | - | - |
| 配偶者と子ども | 1/2 | 1/4 | 1/4 | - | - |
| 配偶者と親 | 1/2 | 1/3 | - | 1/6 | - |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 1/2 | 1/2 | - | - | - |
| 子どものみ | 1/2 | - | 1/2 | - | - |
| 親のみ | 1/3 | - | - | 1/3 | - |
| 兄弟姉妹のみ | - | - | - | - | - |
| 遺留分 | 法定相続人の 遺留分の割合 | |||
|---|---|---|---|---|
| 配偶者 | 子ども | 父母 | 兄弟 姉妹 | |
| 相続人:配偶者のみ | ||||
| 1/2 | 1/2 | - | - | - |
| 相続人:配偶者と子ども | ||||
| 1/2 | 1/4 | 1/4 | - | - |
| 相続人:配偶者と親 | ||||
| 1/2 | 1/3 | - | 1/6 | - |
| 相続人:配偶者と兄弟姉妹 | ||||
| 1/2 | 1/2 | - | - | - |
| 相続人:子どものみ | ||||
| 1/2 | - | 1/2 | - | - |
| 相続人:親のみ | ||||
| 1/3 | - | - | 1/3 | - |
| 相続人:兄弟姉妹のみ | ||||
| - | - | - | - | - |
たとえば、相続人が配偶者と子供1人の場合の遺留分割合について考えてみます。
まず、遺留分は、法定相続分の2分の1になります。
これを総体的遺留分といいます。
次に、これを配偶者と子供で分けます。
これを個別的遺留分といいます。
割合は、それぞれが2分の1なので、配偶者と子供はそれぞれ4分の1ずつとなります。
つまり配偶者と子供は、それぞれ法定相続分の4分の1を遺留分として請求できるわけです。
遺留分は誰に請求するのか?
遺留分の権利をもつ人が遺留分を請求する相手の順番は、法律で次のように定められています。
①受遺者と受贈者があるときは、受遺者が先に負担する。
※受遺者:遺言によって遺産を受け取る人。(相続人でなくとも受遺者になる場合がある)
※受贈者:贈与(生前贈与・死因贈与)によって財産を受け取る人。
②受遺者が複数あるとき、または受贈者が複数ある場合において、その贈与が同時にされたものであるときは、受遺者または受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。
ただし、遺言者がその遺言に別の意思表示をしているときは、その順番に従う。
③受贈者が複数あるとき(同時贈与を除く)は、後の贈与に係る受贈者から順次、前の贈与に係る受贈者が負担する。
遺留分の対象になる財産は?
すべての財産
相続開始時に被相続人が所有していた財産のすべてが遺留分の対象になります。
現金や預貯金、不動産、株式、自動車、宝石等の貴金属類などが該当するでしょう。
また、借金や税金の滞納分などの負債も相続財産になるので、その点は十分検討するべきです。
遺贈する財産
「遺贈」とは、故人が遺言で指定した人に遺産の一部、または全部を譲与することです。
遺言書によって、相続人や特定の個人以外にも遺産を受け継がせることができるという点が遺産分割との違いになります。
そのため、法定相続人が遺留分侵害額請求をする対象にもなります。
生前贈与した財産
「生前贈与」とは、生きているうちに、配偶者や子供、第三者などに財産を無償で譲与することです。
法定相続人の遺留分が侵害されている場合は、贈与された人(受贈者)に対して遺留分侵害額請求をすることができます。
相続開始より1年前以内に生前贈与した財産が遺留分の対象になります。
なお、1年以上前の生前贈与でも、贈与する側と贈与される側が他の相続人の遺留分を侵害することを知っていて贈与を行なっていた場合は遺留分の対象になります。
特別受益による財産
「特別受益」とは、複数の相続人の中に被相続人から遺贈や生前贈与によって特別の利益を受けた者がいる場合、その相続人の受けた贈与などの利益のことをいいます。
特別受益があった場合、10年以内のものは相続財産に持ち戻して遺産分割をすることになっています。
なお、10年以上前のものでも、贈与する側と贈与される側が遺留分を侵害することを知っていて贈与を行なっていた場合は遺留分の対象になります。
死因贈与する財産
「死因贈与」とは、贈与する人(贈与者)と受け取る人(受贈者)の間の契約による合意に基づくもので、贈与者が死亡した際に贈与の効力が生じます(民法第554条)。
遺留分に関しては、死因贈与されたものも対象になります。
遺留分のその他の注意点
遺留分は現金返還
以前は遺留分を行使すると、たとえば不動産は他の相続人との共有になってしまうなどの問題がありました。
しかし、2019年7月1日以降に開始した相続については、遺留分に相当する金銭の請求をできることになっています。
そのため、現在、遺留分は原則として現金返還になっています。
遺留分の放棄
相続開始後であれば、遺留分の放棄は、いつでも自由に行なうことができます。
ただし、被相続人が存命のうちは家庭裁判所の許可が必要になることに注意してください。
遺留分の請求方法と流れを
5ステップで解説
ここでは、遺産相続で損をしないための「遺留分の請求方法」を5ステップで解説します。
ステップ①
遺留分を侵害されているか
どうかの確認
遺留分侵害額請求をするには、まずはご自身の遺留分が侵害されていることを知ることが必要なため、次の手続きを行ないます。
- 遺言書を探す
- 相続人調査
(すべての相続人を確認する) - 相続財産調査
(すべての相続財産を確認する) - 銀行などに取引利益の開示請求
- 生前贈与の有無の確認
ステップ②遺留分侵害額請求
遺留分が侵害されていることがわかったら、早めに対象者に対して遺留分侵害額請求を行ないます。
これは、前述のように遺留分侵害額請求権には時効があるからです。
まずは、相手方に「内容証明郵便」を送り、遺留分侵害額請求権を行使する旨の意思表示をします。
内容証明郵便は、どのような内容の手紙を送ったのかを証明できる郵便で、また相手に届いたことも証明できるものになります。
ステップ③遺留分を侵害した
贈与分の調査
生前の契約によって、財産を持っている人(贈与者)が受け取る人(受贈者)に無償で財産を譲ることを「贈与」といいます。
故人の遺言によって遺産の一部、またはすべてを無償で譲ることは「遺贈」になります。
これらがどのくらいあるのかの調査を行なうわけですが、遺贈については遺言書で明らかになります。
しかし、生前贈与分については調査が困難な場合もあります。
たとえば、以前に所有していた不動産が、相続開始時には所有していないという場合は、その所在地を探して不動産の全部事項証明書を取得し、誰に移転したのかなどを調査します。
そして、それが生前贈与かどうかの判断をしていくのですが、こうした調査は弁護士などの専門家に依頼することも検討するといいでしょう。
なお、遺留分の計算についてはこちらの記事を参考にしてください。
ステップ④話し合い・交渉
受贈者や受遺者などと次の項目などについて話し合い、交渉をします。
- 遺留分の金額
- 支払時期
- 支払い期限などについて
話し合いによっては、金銭ではなく不動産を受け取ることで解決を図る場合もありますが、これは法律的には遺留分侵害額請求権を行使したことによって金銭請求権が発生し、それを不動産などで代物弁済した、ということになります。
当事者同士で話し合い、合意したなら「合意書」などの書面を取り交わします。
後々、紛争にならないように実印で押印し、印鑑証明書を取り交わしておくのが望ましいです。
なお、相手方が金銭を支払わない場合は、すぐに強制執行で財産や給料などの差し押さえができるように、合意書を公正証書にすることも検討しましょう。
「強制執行認諾文言付公正証書」にしておけば、相手方が支払いをしない場合には、その公正証書に基づいて強制執行をすることができます。
ステップ⑤訴訟を提起して裁判
交渉が決裂した場合は、家庭裁判所に訴訟を提起して解決を図ることになります。
裁判となると、もはや素人では難しいので弁護士に依頼することになるでしょう。
短くて半年、通常1~2年くらいかかることを覚悟しておく必要があります。
以上、遺留分の請求方法について解説してきましたが、いかがでしょうか。
ご自身で対応するのは難しいと感じた方もいらっしゃるでしょう。
また、当事者同士の感情的な対立や、もめ事は避けたいと考える方もいらっしゃるでしょう。
その場合は1人で悩まず、まずは一度、弁護士にご相談ください。
弁護士法人みらい総合法律事務所は全国対応で、随時、無料相談を行なっています(事案によりますので、お問い合わせください)。




























