遺産相続における期限と消滅時効の注意点
遺産相続の手続きでは、相続税の申告期限や相続放棄の期限、各種請求権の消滅時効など、数多くの「期限」と「時効」が存在します。
こうした期限や消滅時効を正しく理解していなければ、本来受け取れるはずの財産を失うことやトラブルに発展する可能性があります。
ここでは、遺産相続における主な期限や時効の一覧や注意点などを解説します。
遺産相続の手続きをこれから進める方や、遺産相続の準備を行っている方は、参考にしてください。
遺産相続における期限と
消滅時効の違い
遺産相続の手続きは、無期限にいつ申告や申請を行ってもいいわけではありません。
相続税の申告や相続放棄、各種請求権などには、それぞれ定められた期間があります。
まずは、遺産相続における期限と消滅時効の基本的な考え方について解説します。
期限とは
相続における「期限」とは、法律で定められた一定の期間内に手続きを行わなければならない期限です。
代表的なものに、相続放棄の期限や相続税の申告期限などが挙げられます。
原則として期間を過ぎると手続きを行うこと自体ができなくなります。
そのため、期限を知らずに放置すれば手続きを進められなくなり、結果的に不利益を被ることがあります。
消滅時効とは
相続における「消滅時効」とは、一定期間その権利を行使しない状態が続くことで法律上の権利を主張できなくなる制度です。
遺留分侵害額請求権など、相続に関する権利に消滅時効が定められています。
期限と異なり、消滅時効は期間が経過しただけで直ちに効力が生じるわけではありません。
時効により利益を受ける者が時効を援用して初めて権利が制限されます。
ただし、時効が完成すると権利行使が難しくなるため、相続に関する権利は早めに対応すべきです。
遺産相続に関する
主な期限と消滅時効
遺産相続には、法律や税法によって定められた複数の期限や消滅時効が存在します。
期限や消滅時効は内容ごとに期間や起算日が異なるため、把握できていないと手続きの無効や権利の消失のリスクがあります。
相続に関する主な期限・消滅時効の一覧と、それぞれの注意点は、以下の通りです。
【遺産相続に関する主な期限・消滅時効の一覧】
| 区分 | 期間 | |
|---|---|---|
| 限定承認・相続放棄 | 期限 | 相続開始を知った日 から 3カ月 |
| 準確定申告 | 期限 | 相続開始を知った日の 翌日から 4カ月 |
| 相続税申告 | 期限 | 相続開始を知った日の 翌日から 10カ月 |
| 遺産分割 請求 | 消滅時効 | なし |
| 遺留分 侵害額 請求権 | 消滅時効 | 原則1年 (最長10年) |
| 相続回復 請求 | 消滅時効 | 原則5年 (最長20年) |
| 相続登記 | 期限・義務 | 相続開始を知った日から3年 |
| 贈与税 | 消滅時効 | 原則6年 (悪質な 場合は7年) |
| 相続税の 更正の請求 | 期限 | 原則5年 |
限定承認・相続放棄(期限)
限定承認とは、相続財産をプラスの限度で負債を引き継ぐことを選択する手続きです。
これに対し、相続放棄とは、被相続人の財産や債務を一切引き継がないことを選択する手続きです。
限定承認及び相続放棄の期限は、原則として「相続開始を知った日から3か月以内」です。
期限内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。
この期限を過ぎれば相続を承認したものとみなされ、借金などの債務も含めて相続することになります。
ただし、相続財産の内容が期限内に把握できないなど、やむを得ない事情がある場合には、期限の延長が認められるケースもあります。
相続開始後は早めに財産状況を確認し、必要に応じて専門家へ相談することが大切です。
準確定申告(時効)
準確定申告とは、被相続人が生前に得ていた所得について、相続人が代わりに行う所得税の確定申告を指します。
準確定申告は、原則として「相続開始を知った日の翌日から4か月以内」に税務署へ申告と納税を行う必要があります。
この期限を過ぎると、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課されます。
被相続人が給与所得者の場合も、医療費控除や不動産所得があれば準確定申告が必要になるため注意が必要です。
相続人が複数いる場合には原則として連名で申告を行いますが、代表者を定めて提出することも可能です。
相続税申告(時効)
相続税の申告とは、相続によって取得した財産に対して課される税金の申告と納付をする手続きです。
相続税申告には期限があり、原則として「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」に申告と納税を行わなければなりません。
期限を過ぎれば、延滞税や加算税が課されます。
相続税には申告期限から5年~7年の間の時効が設けられていますが、期間内であれば申告漏れや申告不足があった場合に追徴課税が課せられる可能性があります。
また、相続人が複数いる場合は、各自の取得割合に応じて申告することが求められます。
期限内に申告するためにも財産の調査と評価を早めに行い、必要に応じて税理士など専門家に相談することが重要です。
遺産分割請求(時効)
遺産分割請求とは、相続財産をどのように分けるかを決めるために行う請求です。
遺産分割請求権には、相続開始から消滅時効はなく、原則としていつでも請求することができます。
ただし、相続開始から長期間が経過すると、相続人間での合意が難しくなることや、証拠資料の不足などによって、トラブルになるリスクが高まります。
遺産に含まれる個別の債権や権利については、それぞれの消滅時効が成立する可能性があるので注意が必要です。
また、相続開始から10年を経過すれば、特別受益の主張が制限されるなど、遺産分割の内容に影響が生じるでしょう。
将来のトラブルを防ぐためにも、早めに話し合いを開始することが望ましいです。
遺留分侵害額請求(時効)
相続人には、最低限の相続分が法律によって保証されており、これを「遺留分」といいます。
被相続人の遺言や贈与などによって遺留分が侵害された場合、侵害を受けた相続人は財産を取り戻すために「遺留分侵害額請求権」をすることができます。
遺留分侵害額請求権の消滅時効は、原則として「侵害されたことを知った日から1年以内」です。
また、相続開始から最長10年で時効が完成し、請求権が消滅します。
時効を過ぎれば遺留分を取り戻すことは原則としてできなくなるため、時効にも注意が必要です。
遺留分侵害額請求権には複雑な計算や法的手続きが必要なため、弁護士や専門家に相談することを推奨します。
相続回復請求(時効)
相続回復請求とは、相続人の一部が不正や詐欺によって遺産分割から除外された場合や、不当な処分が行われた場合に、相続人が権利を回復するために行う請求です。
相続回復請求の消滅時効は、原則として「不正や侵害の事実を知った日から5年以内」です。
また、相続開始から最長20年で時効が完成するため、放置すると権利を主張できなくなります。
相続回復請求は話し合いでは解決できないケースも多いため、専門家に相談しながら請求手続きを進めるべきでしょう。
相続登記(時効・期限)
相続登記とは、被相続人が所有していた不動産の名義を相続人に変更する手続きです。
2024年の法改正によって相続登記は義務化され、相続開始から3年以内に申請することが原則とされています。
期限を過ぎても登記自体は可能ですが、放置すると過料が科されることがあるので、注意が必要です。
相続登記をスムーズに行うためには、早めに遺産分割協議書や戸籍・登記事項証明書を準備し、司法書士など専門家に連携することが望ましいです。
生前贈与などの贈与税(時効)
生前贈与とは、被相続人が生前に財産を相続人や第三者に渡すことを指します。
そして、生前贈与が一定額を超える場合は贈与税の申告が必要です。
贈与税の申告や納付に関する権利には消滅時効があり、原則として贈与があった年の翌年から起算して6年で時効が成立します。
ただし、悪質な場合には7年に延長されることがあります。
生前贈与を受ける場合や贈与税が関係する場合は、贈与の時期や金額を記録しておくと良いでしょう。
相続税の更正の請求(期限)
相続税の更正の請求とは、申告内容に計算の誤りがあり、相続税を払いすぎた場合に、それを取り戻す手続きです。
この権利には期限があり、法定申告期限から5年です。
相続税の更正請求に備えるためには、申告書や添付書類、財産目録などを整理して保管しておくことが重要です。
税理士に相談すれば、時効や修正の対応なども安心して対応できます。
遺産相続の期限・時効における
注意点
遺産相続に関する期限や消滅時効を正しく理解しておかなければ、本来行使できたはずの権利を失うなど不利な権利を行使できなくなる可能性があります。
ここからは、期限や時効に関して押さえておきたい注意点を解説します。
起算日の考え方
遺産相続における期限や消滅時効は、起算日を正しく把握することが大切です。
「相続開始日 = 起算日」と誤解されることもありますが、手続きや権利によって起算日は異なります。
例えば、相続放棄の期限は「相続開始を知った日」から3か月、遺留分侵害額請求権の時効は「侵害を知った日」から1年で計算されます。
つまり、相続開始から時間が経過していても、権利を知った日によって期限が変わる場合があるので注意が必要です。
相続人が未成年者・
認知症の場合
相続人が未成年者や認知症の場合、期限や消滅時効の取り扱いには特別なルールが適用されます。
未成年者の場合、相続放棄や遺産分割の手続きは、親権者や特別代理人などの法定代理人が行います。
また、未成年者や認知症など判断能力が不十分な相続人については、期限の起算点が通常とは異なる扱いとなる場合があります。
例えば、相続放棄の3か月の期限は、法定代理人や成年後見人が選任され、相続の開始を知った時から進行します。
認知症などで判断能力が不十分な相続人についても、成年後見制度を活用することで、適切に手続きを進めることが可能です。
このように、本人が直接判断できない場合でも、法定代理人を通じて期限や時効を守ることが求められます。
期限が延長・停止されるケース
遺産相続において、期限や消滅時効は一定の要件を満たせば延長・停止されることがあります。
例えば、相続人が未成年や認知症で手続きができない場合、成年後見制度の利用により期限が延長されます。
また、相続人同士の協議中に手続きが保留されるケースもあり、この間は消滅時効の完成が猶予されることがあります。
これらの制度を知らずに放置すれば権利を失うリスクがあるため、手続きごとの条件を確認するようにしましょう。
遺産相続の期限・時効を
守るために相続人がすべきこと
遺産相続の手続きを円滑に進めるためには、期限や時効を意識して対応することが大切です。
期限・時効を守るために相続人がすべきことは、以下の通りです。
相続開始後は早急に
手続きを進める
相続開始後は、権利や義務を守るために手続きを早急に進めることが大事です。
まず、被相続人の戸籍や遺言書を確認し、相続人を確定させます。
次に、財産や負債の全体像を把握し、相続放棄や限定承認の必要性を判断します。
そこから相続税や準確定申告の必要性を確認し、期限内に必要な申告や納税が行えるよう準備しましょう。
これらの申告が遅延すると、権利の消滅やペナルティの発生、相続人間でのトラブルにつながるリスクがあります。
手続きをスムーズに進めるためにも、相続手続きの全体の流れを整理し、期限を意識して行動することが重要です。
弁護士など専門家に
早めに相談する
相続手続きは複雑で、期限や消滅時効を正確に守る必要があります。
とくに相続人が複数いる場合や、財産・負債が多岐にわたる場合は、個人だけで対応すると手続きミスや権利の消滅リスクが高まります。
そのため、弁護士や税理士などの専門家に早めに相談することを推奨します。
専門家は、遺産分割協議書の作成や財産評価、税務申告のサポートを行い、期限や時効を逃さずに手続きを進められるようサポートしてくれます。
また、紛争の可能性がある場合には、法的に適切な解決方法を提案してもらえるため、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
まとめ
遺産相続では、期限や消滅時効を正しく理解し、早めに手続きを進めることが大切です。
相続放棄や税務申告、遺産分割など、手続きごとに期限が定められており、放置すると権利を失う可能性があります。
とくに複雑な財産関係や相続人間の調整が必要な場合は、自力で対応することは難しくなるでしょう。
円滑に手続きを進めるためにも、早期に弁護士や税理士などの専門家に相談しましょう。
弁護士事務所によっては税理士と連携していることもあるため、まとめて相談することが可能です。
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