胎児・未成年者が相続人の場合の注意点
相続において、未成年者や胎児が相続人の場合、どういったことに注意すればいいのでしょうか。
【未成年者の場合】
未成年者であっても法的に相続人であるなら当然、被相続人の遺産を相続する権利があります。
ただし、未成年者が親と遺産分割を行なう場合(亡くなった父親の法定相続人が妻と子の場合など)は、親と未成年者の利害が反してしまうため、「特別代理人」を立てる必要があります。
では誰が誰を特別代理人に選べばいいのでしょうか?
家族が家族を特別代理人に選ぶことはできるのでしょうか?
【胎児の場合】
胎児の場合も法的には相続人となるため、その前提で手続きを進めていく必要があります。
ただし、未成年者の場合と同様に単独での法律行為ができないため、遺産分割においては法定代理人を立てる必要があります。
では、胎児に相続権が発生するのはいつなのでしょうか?
万が一、生まれてくることができなかった場合はどうなるのでしょうか?
本記事では、盲点となりがちな相続人が胎児や未成年者の場合について、相続の手続きの流れに沿って注意ポイントや対応策などを中心にお話ししていきます。
<本記事の主なポイント>
☑︎子が未成年者や胎児の場合も法定相続人になりますが、胎児が死産の場合は相続権は発生しません。
☑︎未成年者や胎児は自分で法的な判断ができないため、法定代理人を立てる必要があります。
ただし、親も相続人で遺産分割協議を行なう必要がある場合は利益相反になる可能性があるため、特別代理人の申立てを家庭裁判所に行なう必要があります。
☑︎遺産相続の手続きは、未成年者や胎児も相続人として進めていきますが、遺産分割協議は出生後、特別代理人が決定してから行ない、遺産分割協議書の作成も同様となります。
目次
「未成年者が相続人の場合」の
相続実務のポイント解説
まずは、未成年者が相続人の場合について、
といった相続手続の流れに沿って、「注意ポイント」と「対応策」 を整理して解説します。
相続開始時点
(被相続人の死亡)
未成年者が相続人になることには何も問題はなく、当然に相続の権利を持ちます。
ただし、本人単独での法律行為・相続手続き(遺産分割協議など)はできません。
相続人の調査・確定
注意ポイント
通常、未成年者の法律行為では、親などの親権者や未成年後見人が法定代理人になります。
しかし、相続においては親が法定代理人になると、未成年者と親権者(親)がともに相続人となった場合において、遺産分割をするケースでは利益相反が発生する可能性が高くなり、公平な遺産分割ができなくなるという状況が考えられます。
そこで、親と未成年の子供が相続人で、遺産分割をする場合(利益相反になる場合)は未成年者本人の利益を守るために家庭裁判所で「特別代理人」の選任申立てが必要になります(民法第826条、第860条)。
対応策
特別代理人の選任前後では、次のような対応が必要になります。
- 家庭裁判所へ申立て
- 弁護士・司法書士などが特別代理人に
選任される - 特別代理人が未成年者を代表して
遺産分割協議に参加 - 遺産分割協議を実施
なお、特別代理人の選任には1〜3か月かかることがあるので、相続手続きの中の相続税申告期限(10か月)に影響する可能性もあります。
やはり、家庭裁判所への特別代理人の選任申立ては、できるだけ早めに準備し、実行することが大切です。
一方の立場では利益になるものの、他の立場では不利益になることを「利益相反」といいます。
たとえば、母と子が相続人で、母が自分の相続分を多くしたいと考えた場合、子の代理人でもあると、子にとって不公平な遺産分割をすることができるため、これは利益相反になるわけです。
遺産の調査・評価
相続人が未成年者であっても、財産目録作成などは通常どおり進められます。
なお、財産評価に異議がある場合は、親権者あるいは特別代理人が対応します。
遺産分割協議
特別代理人なしでの遺産分割協議は原則無効となります(登記や預金解約などで必ず指摘される)。
親権者が相続人でない場合は、親権者が代理をして遺産分割協議に参加します。
注意ポイント
特別代理人は未成年者の利益を最優先するため、親が希望するとおりの遺産分割割合にはならないこともあります。
対応策
被相続人が遺言書を遺しておけば、遺産分割協議は不要になります。
ただし、後から遺留分侵害額請求を受ける場合があることに注意が必要です。
その他の注意事項
☑︎遺産分割協議で話がまとまったら、相続人の間で「遺産分割協議書」を作成します。
その際の署名・押印は親権者が行ないますが、利益相反の場合は特別代理人が行ないます。
☑︎名義変更についても、親権者あるいは特別代理人が行います。
☑︎未成年者でも財産を相続するなら、相続分に応じた相続税を納税する必要があります。
ただし、相続税の納税資金が不足しており、未成年者が納税できない場合は、親権者が立替えるか、遺産分割で現金を多めに確保する必要があります。
☑︎未成年者には相続税控除があります。
ただし要件があるため、弁護士や税理士に相談してみるのがいいでしょう。
☑︎特別代理人の役割としては、次のことがあげられます。
- 遺産分割協議への参加
- 遺産分割協議書への署名押印
- 相続登記や預貯金引出しなどの
相続手続き - 他の相続人からの財産評価に対する
異議への対応 など
☑︎基本的には、家庭裁判所の審判によって決められた行為(書面に記載された行為)についてのみ代理権などを行使することができます。
☑︎未成年者の親権者と違い、決められた手続き以外の代理はできません。
当該手続きが終われば、特別代理人の任務は終了します。
☑︎特別代理人になるための資格などはありません。
遺産分割で利害関係のない人であれば、子供の親族(祖父母、叔父・叔母など)でも問題ありません。
☑︎家庭裁判所が、特別代理人候補として届け出された人が適任でないと判断した場合は、弁護士や司法書士など士業の専門家が選任されます。
☑︎家庭裁判所は、遺産分割協議書案の内容を確認したうえで特別代理人の申立を受理するかどうか判断します。
そのため、後から内容の異なる遺産相続手続きはすることができません。
「胎児が相続人の場合」の
相続実務のポイント解説
次に、胎児が相続人の場合について、
といった相続手続の流れに沿って、「注意ポイント」と「対応策」 を整理して解説します。
相続開始時点
(被相続人の死亡)
胎児は、相続については、すでに生まれたものとみなされます(民法第886条1項)。
ただし死産の場合は、相続権は発生しません(同法2項)。
胎児が生まれた後に死亡した場合、相続権は発生しますが、相続分は母親が引き継ぐことになります。
相続人の調査・確定
注意ポイント
相続人の確定は「出生後」になります、
そのため、出生まで一部の手続きが保留されることがある点、注意が必要です。
ただし、胎児を除外した遺産分割は無効となるため、相続人調査の段階では胎児も相続人としてカウントするべきです。
対応策
母親が妊娠中であることが判明したら、出生まで遺産分割協議を行わないほうが安全です(実務では、出生後に行なうのが一般的)。
やむを得ず協議を急ぐ場合は、胎児を相続人に含めた前提で協議案を作成しておき、出生後に確定させるのがいいでしょう。
その場合、未成年者が相続人の場合と同様、胎児の場合も法定代理人あるいは特別代理人が必要です。
親と胎児が相続人である場合は利益相反になる可能性があることから、胎児の利益を守るために家庭裁判所で「特別代理人」の選任申立てが必要になります。
遺産の調査・評価
相続人が胎児の場合でも、この段階の作業(財産目録作成など)は通常どおり進められます。
ただし注意点として、出生後に相続割合が確定するため、相続分の算出は出生後に最終確定となります。
遺産分割協議
注意ポイント
遺産分割協議書の相続人としての記載は出生後になります。
死産の場合は相続人でなくなるため、その前後では協議内容が根本から変わる可能性があります。
そのため、出生前に遺産分割協議書を作っても法的に無効になる場合もあることに留意するべきです。
対応策
胎児が相続人の場合、生まれた時点で相続人として確定するため、出生まで遺産分割協議を待つほうがよいでしょう。
なお、緊急に遺産処分が必要な場合は、家庭裁判所に「遺産の管理人選任」を申立てる方法もあります。
その他の注意事項
名義変更は、出生後に戸籍が整うまで(出生届 → 戸籍反映 → 相続人として確定)はできません。
未成年者と胎児の相続分は
どうなる?
未成年者・胎児の相続順位と
割合
☑︎相続人が未成年や胎児であっても、基本的には法定相続分(民法第900条)が取り分になります。
☑︎民法では遺産を相続する人を「法定相続人」とし、第1~第3順位までの相続順位と法定相続分(割合)を規定しています。
☑︎配偶者がいればつねに相続人になり、各相続順位と割合は次のようになります。
第1順位:子
法定相続分:配偶者が2分の1
子が2分の1
- 子が複数いる場合は、2分の1を人数で均等に分割する。
(子が2人なら、それぞれの相続分は4分の1ずつになる) - 子がすでに死亡している場合は
「代襲相続」により、その子供(孫)が相続人となる。 - 嫡出(婚姻関係にある男女、夫婦から生まれること、またはその生まれた子)か、非嫡出(姻関係にない男女の間に生まれた子)かは問題にならない。
第2順位:親
法定相続分:配偶者が3分の2
親が3分の1
- 第1順位の相続人がいない場合は親が
相続人になる。 - 両親がいる場合は、3分の1を2人で
分けるので、6分の1ずつになる。
第3順位:兄弟姉妹
法定相続分:配偶者が4分の3
兄弟姉妹が4分の1
- 第1、第2順位の相続人がいない場合は、兄弟姉妹が相続人になる。
- 兄弟姉妹が複数いる場合は、4分の1をその人数で均等に分割する。
関係別:相続順位と割合の
注意ポイント
事例1:未成年者の代襲相続
被相続人A(父)が死亡した時点で、すでに子B(息子)が死亡しており、その子C(孫)がいるケース。
代襲相続により、この孫Cが法定相続人になりますが、未成年者であることもよくあります。
その場合、代襲相続人の母Dが生きており、被相続人Aと養子縁組をしていなければ法定相続人にはならないため、特別代理人を申請せずに、DがCの法定代理人になることができます。
Cに兄弟がいなければ、Cが相続順位第1位となり、Aの配偶者とともに法定相続人になります。
事例2:夫婦が離婚し
元妻が妊娠中に元夫が死亡
妻が妊娠中に離婚し、元夫が死亡したケース。
被相続人である元夫Aが死亡した場合、元妻Bはすでに配偶者ではないため法定相続人にはなりません。
一方、胎児Cは法的にはすでに生まれたものとみなされるため法定相続人になりますが、死産した場合は相続人にはなりません。
出生した場合は、第1順位の相続人となり、被相続人の財産を引き継ぎます。
未成年者や胎児の相続問題は
弁護士にご相談ください!
ここまで、未成年者や胎児が相続人の場合の注意ポイントや問題への対応策などについてお話ししてきました。
相続は法律問題ですから、やはり難しい面が多々あります。
また、せっかく親などが遺してくれた財産ですから損はしたくないと思われるでしょう。
もしも現在、未成年者や胎児の相続問題でお困りの場合は一人で悩まず、まずは一度、弁護士法人みらい総合法律事務所にご相談ください。
当事務所は随時、無料相談を行なっています(事案によりますので、お問い合わせください)。






















