遺産分割協議のやり方|失敗しないためのポイント
遺産を相続する際の重要な手続きのひとつに「遺産分割協議」があります。
被相続人(亡くなった人)が遺してくれた財産は、遺言書があれば基本的には、その内容のとおりに相続を進めていきます。
一方、遺言書がない場合は、法定相続人たちが「何の遺産を」、「誰が」、「どのような割合で」相続するのかを決める必要があり、この話し合いを遺産分割協議といいます。
遺産分割協議は……問題なく話がまとまればいいのですが、やはり遺産が絡むため、相続人の間でもめてしまい、すんなりと話し合いがまとまらないこともあります。
そこで本記事では、遺産分割協議について、
・進めるうえでの注意点
・失敗しないために大切なポイント
などを中心に解説していきます。
遺産相続とは?
亡くなった人(被相続人)の財産の権利・義務を、残された家族(相続人)などが引き継ぐことを相続といいます。
相続の手続きは、大まかには次のような流れで進められます。
遺産相続のフローチャート/
9つの手続きを確認!
遺産分割協議について知る前に、まずは遺産相続の大枠の流れを確認しておきましょう。
実務的には、感情面・法律面の両方が絡んでくる難しさがあるため、流れを理解しておくとスムーズに進めることができます。
①相続開始(被相続人の死亡)
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②相続人の調査/確定
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③遺言書の有無を確認
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④単純承認・相続放棄・限定承認の決定
(3か月以内)
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⑤準確定申告(4か月以内)
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⑥遺産の範囲・内容の確定
(金額の調査・評価・鑑定)
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⑦遺産分割協議
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⑧名義変更(不動産・預貯金など)
/財産の分配
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⑨相続税の申告・納税(10か月以内)
相続の各手続きを深堀り解説
遺産の相続を終えるのに、最低でも9つの手続きを行なうのは正直なところ厄介……と感じる方もいらっしゃるでしょう。
それを解決するには、相続に強い弁護士に相談・依頼することがもっとも早く、確実な方法なのですが、やはりその前に仕組や重要ポイントを知ることが大切です。
ここでは、ご自身が独力で相続の手続きをしていく場合にも役に立つポイントを解説します。
相続開始(被相続人の死亡)
被相続人(親など)が亡くなることで遺産相続が開始されます。
相続人の調査/確定
まずは、誰が相続人になるのかを法的に確定させます。
なお民法では、配偶者や子などの法定相続人には第1位から3位までの相続順位や相続割合が定められています。
遺言書の有無を確認
相続では、遺言書があるかないかで、その後の手続きが変わってきます。
- 遺言書が発見された場合、その内容が
優先されます。 - 記載されている内容に従って相続を
進めていきます。 - 公正証書遺言や法務局に遺言が
保管されている場合以外の遺言書
(自筆証書遺言など)については、
家庭裁判所による検認の手続きをする
必要があります。 - 検認とは、遺言書の内容を明確にして、
遺言書の偽造・変造を防止するための
手続きで、その後は遺言の執行という
流れになります。 - 相続人などは、勝手に遺言書の封印を
開封してはいけません。
- 相続人の間で遺産分割協議を行ないます。
準確定申告
納税者が亡くなった場合の確定申告を「準確定申告」といい、4か月以内に行なう必要があります。
遺産の範囲・内容の確定
(金額の調査・評価・鑑定)
遺産に関して次のような調査を行ない、預貯金、不動産、有価証券、保険、借金などを洗い出します。
- 各銀行での全店照会、残高証明書発行
- 証券保管振替機構への開示請求
- 市区町村役場での名寄帳・課税台帳の
閲覧(不動産の調査) - 個人信用情報機関への開示請求
(負債の調査) など
単純承認・相続放棄・
限定承認の決定
- 相続人は、相続放棄・限定承認・単純承認の決定を行ないます。
- 被相続人(亡くなった人)の財産をプラス分(資産)もマイナス分(負債)もすべて無条件で引き継ぐことを単純承認といいます。
特に手続きは不要で、相続開始を知った日から3か月以内に相続放棄や限定承認の手続きをしなければ自動的に単純承認をしたことになります。 - プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合は相続放棄の手続きを行ないます。
- 被相続人のプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産も引き継ぐことを限定承認といいます。
限定承認では、負債が資産を上回ったとしても、相続人が自己の財産から負債分を弁済する必要がなくなります。
遺産分割協議
- 相続人全員で遺産の分割について
協議を行なう - 合意した場合は、「遺産分割協議書」を作成
- 遺産分割協議書には各自が
署名・捺印し、保管 - 合意に至らない場合は、
遺産分割調停・審判に進む
名義変更・財産の分配
- 被相続人が所有していた不動産や預貯金、自動車などの財産を相続人が引き継ぐためには名義変更を行ない、所有者を変更する手続きが必要です。
- 不動産の名義変更は「相続登記」といいます。
相続税の申告・納税
- 相続人が遺産を相続した場合は、相続人の住所地の所轄税務署に申告・納税する必要があります。
- 申告・納税の期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が死亡した日)の翌日から10か月以内です。
- 相続税額が10万円以上で、納税期限までに金銭で納付するのが困難な場合は延納制度があります。
- 延納でも納税が困難な場合は、物納制度があります。
遺産分割協議とは?
前述した相続の各手続きはすべてが大切なもので、円滑な遺産分割協議のためには欠かせないプロセスです。
それらを前提として、この章では遺産分割協議でのトラブル事例や、注意するべき重要ポイントなどについてお話ししていきます。
遺産分割協議が重要な理由
亡くなった人(被相続人)の遺言書がない場合に、遺産の分け方を相続人全員で話し合って決めるプロセスを遺産分割協議といいます。
なぜ全員で話し合うかというと、遺産は相続人全員の共有になるからです。
逆にいえば、遺産分割協議に相続人のうちの一人でも欠けた場合、あるいは一人でも反対する人がいる場合は成立しないということになります。
遺産分割協議でよくある
トラブル事例集
ここでは、遺産分割協議を行なううえで、よくあるトラブル事例をご紹介しますので参考にしてください。
事例①:亡くなった父に
前妻との間の子供がいた
【状況】
父が亡くなり戸籍を調査したところ、前妻との間に子供がいたことが判明。
母と兄弟2人で遺産分割協議を進めていたが、その子供も相続人であることから、協議のやり直しが必要に。
しかし、会ったことがなく、連絡先もわからない……。
- 被相続人(亡くなった人)の出生から
死亡までの戸籍を取得し、
法定相続人を確定します。 - 前妻の子供にも必ず遺産分割協議に
参加してもらう必要があります。 - 遺産分割等を弁護士に依頼すれば、
その過程で身元調査も弁護士に
依頼できます。
事例②:亡くなった父の
予期せぬ財産が発見された
【状況】
亡くなった父の財産調査の後、父名義の土地や古い貸金庫が見つかり、中に株券が保管されていた……。
- 遺産の調査漏れがあった場合、
あとから再協議が必要になるため、
調査は徹底して行なう必要があります。
事例③:亡くなった母の
遺産に負債があった
【状況】
亡くなった母からの相続財産は、自宅と預金400万円だと思っていた。
ところが、経営していた会社の事業用ローン3,000万円があらたに判明した。
- 兄弟姉妹の中に相続放棄を検討する
相続人が出てきた場合は協議を中断し、
再度、遺産分割協議を仕切り直す
必要があります。
事例④:亡くなった父の
遺言書があとから発見された
【状況】
遺品整理を行なっていたところ、あとから封がされている父の遺言書が見つかった。
- 自筆証書遺言(遺言を遺す人が自筆で
書いた遺言書)で封印している場合は、
相続人などが勝手に開封しては
いけません。 - 法的には、封印されている遺言書は
家庭裁判所で「検認」の手続きを
受けたうえで開封する必要が
あります(民法第1004条)。 - なお、家庭裁判所での検認の前に
開封してしまっても、遺言書の内容が
無効になるわけではありません。
ただし、5万円以下の過料という
罰則が科されるので注意が必要です
(民法第1005条)。
事例⑤:想像より不動産の
評価額が低かった
【状況】
兄弟で遺産分割協議をした際、兄は「実家の家と土地は2,000万円くらいだろう」と言ったが、弟は「2,500万円にはなるだろう」と言った。
最終的には、2,200万円ということで話は落ち着いた。
しかし、専門家に査定してもらったところ1,000万円との判断で、協議のやり直しが必要になってしまった。
- 不動産評価について、主観的な価値観の違いで話し合ってもあまり意味が
ありません。
正確な遺産額がわからなければ
遺産分割はできないので、感覚ではなく
客観的な評価が必要です。 - 不動産会社や不動産鑑定士などの
専門家に依頼して、評価額を
算定するべきです。
事例⑥:
兄弟間で希望するものが同じ
【状況】
兄も妹も「実家を相続して住み続けたい」と、希望が衝突した。
お互いの希望については理解しているが、どう分割すればいいのかわからない……。
- 一例として、実家を兄が相続すること
とし、その代わりに兄が妹へ代償金を
支払う「代償分割」での合意を
進める方法があります。
事例⑦:遺産分割協議で
遺産の記入漏れが発覚
【状況】
遺産分割協議書に現金と不動産については記載したが、預貯金については調査を確実に行なっていなかったため記載しなかった。
後日、銀行から「預金の扱いが不明」と指摘され、再作成することに。
銀行が調べてくれると思っていたのに……。
- 遺産については、相続人がすべてを
記載することが必要です。
遺産分割協議で気をつけるべき
ポイントまとめ
遺産分割協議そのものは、相続人全員が話し合うものですが、ここまで解説してきたすべてのプロセスが大切で、密接に関わってきます。
そこで本記事の最後に、トラブル回避策としての「遺産分割協議で気をつけるべきポイント」をまとめておきます。
一つずつ詳しく解説します。
相続人の調査と確定は
確実に行なう
遺産分割協議には、すべての相続人が参加しなければいけません。
しかし、たとえば被相続人が父親の場合、あとから認知していた子や前妻との間の子、養子などが判明し、相続人が増えるケースがあります。
また、連絡がつかない相続人がいるために、いつまでも遺産分割協議を行なえないケースもあります。
相続人の漏れがあると、協議自体が無効になり、やり直さなければいけない可能性があります。
- 被相続人の戸籍を出生から死亡まで
取得して、相続人を確認する。 - 難しい場合は、弁護士への相談・依頼も検討する。
遺言書の有無を必ず確認する
遺言書があるなら、原則として遺言の内容が優先されます。
もし、あとから遺言書が見つかったなら、遺産分割協議で決めた内容は無効になる可能性もあります。
- 遺言書が見つかったら勝手に開封せず、家庭裁判所で検認が必要。
(公正証書遺言は不要) - 自筆証書遺言の場合、被相続人が
法務局の「遺言書保管制度」を
利用している可能性があるため、
こちらも調査する。
財産の全体像を正確に把握する
遺産分割協議書には、すべての財産を記載しなければいけません。
不動産・預貯金・株式・負債などで漏れがあると、あとでもめてしまう原因になります。
漏れがあると、プラスの財産であれば自分の受け取り分に影響が出てきますし、借金などの負債があれば誰が負担するかで大きな争いになる可能性があります。
財産の調査も確実に行なうことが大切です。
- 難しい場合は弁護士への相談・依頼も
検討する。
協議内容は必ず書面に残す
(遺産分割協議書の作成)
口約束で済ましてしまうと、あとからトラブルになる可能性があります。
その際、証拠がないと訴訟などの紛争に発展しかねません。
遺産分割協議書は必ず作成するようにしましょう。
遺産分割協議書には、次の項目を記載します。
- 被相続人の情報
- 相続人全員が合意した旨
- 具体的な相続財産の内容
- あとから新たな遺産が見つかった際の
対応 - 作成年月日
- 相続人全員の署名と押印 など
これらを正確に記載することでトラブルを回避し、相続手続きを円滑に進めることができます。
- 内容に不備や不足がないように、
法的なチェックを弁護士に依頼する。
取得財産額はできるだけ
公平にする
話し合いによっては、遺言書の内容や法定相続分とは違う分割方法を選択して、なるべく公平な遺産分割を目指すこともできます。
なお、分割方法には次の3つがあります。
- 現物分割(不動産をそのまま取得)
- 代償分割(不動産を取得した人が金銭を
代償する) - 換価分割(売却して現金で分ける)
- 法的な問題になるため、弁護士に
相談・依頼する。
感情的な対立を避けるための
工夫をする
実際、遺産分割では「公平」と「納得」を両立させることが難しい局面があり、どうしても相続人同士が感情的になってしまうことがあります。
しかし、感情的になっても何の解決にもならないことは理解してください。
- 文書のやり取りだけでなく、対面や
オンラインで話すと誤解が減る。 - 弁護士に第三者として協議に
参加してもらうことで
冷静になることができる。
遺産相続は利害が絡むため、当事者同士だけでは解決できない場合もあります。
もし現在、遺産相続や遺産分割協議でもめている、なかなか解決できないというお悩みを抱えているなら、一人で悩まず、まずは一度、弁護士にご相談ください。
弁護士法人みらい総合法律事務所は全国対応で、随時、無料相談を行なっています(事案によりますので、お問い合わせください)。
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