交通事故の死亡事故・後遺障害被害者の質問に回答
交通事故弁護士相談Q&A|みらい総合法律事務所

70歳の母が交通事故(死亡事故)亡くなりました。慰謝料など損害賠償額はいくらになりますか?

2014年07月16日

70歳の母が交通事故(死亡事故)亡くなりました。慰謝料など損害賠償額はいくらになりますか?
ちなみに、無職で、夫と2人くらし。家事をしていました。

弁護士からの回答

交通事故で死亡した場合に、請求できる損害賠償額の項目には、主に以下のものが挙げられます。

①葬儀費

②死亡逸失利益

③慰謝料

④弁護士費用(裁判をした場合)

上記①~④の他にも、治療の後に死亡したような場合は、治療費、付添看護費、通院交通費等を請求することができます。

また、損害賠償を請求する際に必要となる診断書、診療報酬明細書、交通事故証明書等を取得するためにかかった費用も、損害賠償関係費として請求できます。

では、70歳で夫と2人暮らしの主婦が交通事故で死亡した場合の損害賠償額がいくらになるのかを具体的にみていきましょう。

弁護士が依頼を受けて交渉や裁判を行う場合、損害賠償額を算定する際には、通常日弁連交通事故相談センターが出している書籍「民事交通事故訴訟損害賠償算定基準」(通称「赤い本」と言います)を使用しますが、この赤い本に書かれている基準を「裁判基準」といいます。

以下の金額は裁判基準によりますが、保険会社が示談の段階で提示してくる損害賠償額は裁判基準より低い場合がほとんどですので、注意が必要です。

①葬儀費

原則150万円です。

実際にかかった金額が150万円を下回る場合は、実際に支出した額となります。

②死亡逸失利益

死亡逸失利益は下記の計算式により算定されます。

基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

基礎収入とは、交通事故で死亡しなければ、将来にわたり労働により得られたであろう収入です。

生活費控除とは、生きていればかかったはずの生活費分を、基礎収入から差し引くことです。

生活費控除率の目安は、被害者が一家の支柱で被扶養者が1人の場合は40%、一家の支柱で被扶養者2人以上の場合は30%、女性(主婦、独身、幼児等含む)の場合30%、男性(独身、幼児等含む)の場合は50%とされています。

就労可能年数は、原則として67歳までと考えられています。

ただし、職種、地位、能力等によって、67歳を過ぎても就労することが可能であったと考えられる事情がある場合には、67歳を過ぎた分についても認められる場合もあります。

ライプニッツ係数とは、損害賠償の場合は将来受け取るはずであった収入を前倒しで受け取るので、将来の収入時までの年5%の利息を複利で差し引く係数のことをいいます。

中間利息を控除する、という言い方をします。

主婦の場合、家事労働を行っていますので、逸失利益は認められます。

基礎収入について、高齢の家事従事者の事例の判例をみると、①女性労働者の全年齢平均賃金とするもの、②女性労働者の全年齢平均賃金から何割か減額した額とするもの、③年齢別の女性労働者の平均賃金とするもの、④年齢別の女性労働者の平均賃金から何割か減額した額とするもの、に分かれています。

実際には、個別の事案ごとに、被害者がどの程度の家事を行っていたか等、具体的に評価して決めることになるでしょう。

今回は、上記①の女性労働者の全年齢平均賃金を基礎収入とします。

この基礎収入は、場合によって減額されることもあります。

生活費控除率は30%とします。

就労可能年数は、平成23年の簡易生命表によると、70歳の場合の平均余命は14.93年ですので、その2分の1である7年間について家事労働を行うことができたと仮定します。

 

3,559,000円(平成23年賃金センサス女性学歴計全年齢平均賃金)×(1-0.3)×5.7864(ライプニッツ係数)=14,415,658円

 

なお、年金収入がある場合には、将来受給できたであろう年金額について、逸失利益として請求することができます。

ただし、遺族年金については、判例で逸失利益性が否定されています。

また、年金収入が逸失利益として認められる場合でも、年金は生活費として使われる場合が多いことから、生活費控除率を高くする傾向にあるようです。

③慰謝料

被害者が一家の支柱の場合は2800万円、母親・配偶者の場合は2400万円、その他(子供、成人独身者、高齢者等)の場合は2000万円~2200万円が相場となっています。

今回の被害者は高齢者ですので、慰謝料は2200万円とします。

なお、近親者の固有の慰謝料が認められる場合があります。

④弁護士費用

弁護士に依頼して裁判によって損害賠償を請求した場合は、請求認容額の10%程度が弁護士費用として認められます。

これは実際に支払う弁護士費用とは無関係です。

 

上述した請求額は、

1,500,000円(葬儀費)+14,415,658円(死亡逸失利益)円+22,000,000円(慰謝料)=37,915,658円

となりますので、弁護士費用は37,915,658円の10%の3,791,565円とします。

以上から、70歳で夫と2人暮らしの主婦が交通事故で死亡した場合の損害賠償額の合計は、

 

1,500,000円(葬儀費)+14,415,658円(死亡逸失利益)円+22,000,000円(慰謝料)+3,791,565円(弁護士費用)=41,707,223円

となります。

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