交通事故の死亡事故・後遺障害被害者の質問に回答
交通事故弁護士相談Q&A|みらい総合法律事務所

交通事故における政府補償事業とは?

2020年05月03日

自動車を運転する場合、運転者は自賠責保険に加入しなければなりません。自賠責保険は、自動車損害賠償保障法5条で加入が義務づけられている強制保険で、加入していない場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則があります(自動車損害賠償保障法86条の3)。

したがって、自賠責保険は、本来は必ず加入していなければならない保険なのですが、事故の加害者が未加入であったり、当初は加入していたが期限が切れてしまっている、というケースもあります。

このような場合、損害賠償金がまったく支払われないとすると、被害者にあまりに酷ですので、このような被害者を救済するために、自動車損害賠償保障法において「政府保障事業」という制度が設けられており、政府からの保障を受けることができるのです。

政府からの保障を受けることができるのは、加害車両の保有者が明らかでない場合と、自賠責保険等の被保険者以外の者が自動車損害賠償保障法3条の責任(運行供用者責任)を負う場合です。(自動車損害賠償保障法72条)

前者の例としては、ひき逃げで加害者や加害車両が特定できない場合があります。後者の例としては、加害者が自賠責保険に加入していないいわゆる無保険車の場合があります。

保障金額の算定は、自賠責保険と同じです(平成19年4月1日以降の自動車事故)。対象は人身事故のみで、支払限度額は、傷害については120万円、後遺障害については、その後遺障害等級に応じて75万円~4000万円、死亡事故の場合は3000万円です。

ただし、政府保障事業は、強制保険である自賠責保険によっても救済を受けることができない被害者のための最終的な救済制度であるため、被害者が労災保険や健康保険、介護保険などから給付を受けた場合や、将来給付を受けられる場合には、その限度で政府保障事業での保障を受けることはできません。

また、無保険車の場合であっても、加害者が損害賠償金を支払った場合には、その部分は控除されます。なお、物損に関しては、上述した通り政府保障事業の対象外のため、加害者が物損の賠償金を支払ったとしても、政府からの保障には影響しません。

政府が被害者に支払いをした場合は、政府は加害者に対し求償することができます。したがって、親族間で被害者、加害者となってしまうような親族間の事故の場合は、政府が被害者に支払いをしたとしても、親族である加害者から求償することになってしまい、補償の意味がないため、親族間の事故の場合は原則として政府保障事業の対象となりません。ただし、親族間の事故でも、加害者が死亡し、被害者である遺族が加害者の相続を放棄している等の特段の事情がある場合には、対象となる場合もあります。

政府保障事業を請求する場合には、損害保険会社や共済協同組合にある「自動車損害賠償保障事業への損害てん補請求書」に必要事項を記載し、交通事故証明書や診断書等の必要書類を添付して提出します。事案にもよりますが、処理には3ヵ月から7ヵ月程度かかるのが一般的のようです。

政府保障事業の支払いについて不服がある場合には、保障の内容等が記載されている文書の問い合わせ先に、不服内容や根拠等を記載して問い合わせを行うことができます。問い合わせに対する回答により、判断の訂正等が行われる場合もあります。それでも納得のいく回答が得られない場合には、政府を被告とする当事者訴訟としての給付の訴え(行政事件訴訟法4条)を起こすことになります。

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