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弁護士法人みらい総合法律事務所

積極的な隠蔽又は仮装がない事案

積極的な隠蔽又は仮装がない事案

預金脱漏で重加算税適法の裁判例

東京地裁平成30年4月24日判決(TAINS Z268-13147)、納税者敗訴。控訴棄却、上告不受理決定です。

事案

被相続人は、平成24年10月に死亡した。

原告は、相続人であり、平成22年~相続開始までの間に、被相続人名義の預金口座から合計2422万5000円を引き出し、自宅等に現金で保管していた。

原告は、税理士に委任して相続税申告をしたが、相続財産として計上された現金は、70万円であった。

課税庁は、隠蔽又は仮装があるとして、重加算税賦課決定をした。

争点

架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為がないが、「隠蔽又は仮装」があったといえるか。

判決

重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解すべきである〔最高裁平成7年4月28日判決〕。

原告は引き出した2000万円以上の現金を被相続人の自宅及び原告の当時の自宅において複数の封筒に入れた状態で保管していたのであるから、自らが多額の現金を保管しており、これが相続税の対象となる相続財産であって、申告しなければならないものであるとの認識を有していたと考えるのが自然である。

加えて、原告は、杉並税務署の財務事務官による質問応答において、本件現金が相続財産であることを認識しつつも税理士にその存在を伝えず、本件申告から除外したことを自認している。

原告は、預金の引き出しを上回る経費を記載した書面を税理士に交付して、本件現金の存在を認識することが困難な内容の書面を作成して税理士に交付した。

税理士が時間的な制約等からその内容について十分な検証ができないという状況下で、税理士からの現金の有無に関する質問に対する回答を殊更に避け、また、実際に保管されている現金の額と著しく異なる金額が相続財産である現金の額として本件申告書に記載されていることを認識しつつ、あえてこの相違につき税理士に指摘しなかった

原告の一連の行動は、多額の現金を保管している事実を税理士から知られないように意図して行われたものと評価することができ、相続財産を過少に申告するという上記の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に当たると認めるのが相当である。

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以上です。

ポイント

積極的な隠蔽仮装行為がない場合には、多くの場合、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動があるかどうか、検討されます。

今回は、

・多額の現金を保管していたこと

・質問応答においても相続財産と認識していたと供述したこと

・税理士からの質問をことさらにはぐらかしたこと

・現金の存在をごまかす書面を税理士に交付したこと

などをもって、「過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動」と認定されたものです。

反対に、

・保管金額が少額であること

・質問応答において、「忘れていた」などと供述すること

・税理士からの質問に素直に回答したこと、あるいは質問の趣旨を誤解して回答したこと

・他に現金の存在をごまかそうとした痕跡がないこと

などの事情があれば、十分に争える、ということになります。

売上除外で重加算税取消裁決

平成23年2月23日(J82-1-03)です。

事案

請求人は、スーパーマーケットなどで場所を借りて、売子等に商品の販売を行わせる事業を行っていた。

請求人は、スーパー等から売上金からスーパー等の取り分を差し引いた金員を仮受金勘定に計上し、一定の処理をした上で売上勘定に振り替えていた。
しかし、本件取引については、仮受金勘定のままになっており、売上計上漏れとなった。

処分庁は、隠ぺい又は仮装があるとして重加算税賦課決定をした。

原処分庁の主張

請求人は、税理士の事務所の事務員のEから、仮受金勘定の残高が累増する理由を解明するよう求められたにもかかわらず、あえて適正な経理処理をせずに放置していたものと認められる。

請求人は、本件拡張員帳合料(ちょうあいりょう)の支払について、現金出納帳に業務委託手数料の支払として虚偽の記載を税理士に経理関係資料の一部を提出せず、また、本件拡張員帳合料の取引内容を具体的に説明しないことにより、D税理士をしてこれを外注費と経理せしめた。

請求人は、仮受金勘定の残高の中に請求人の所得になるものが含まれているとの認識がありながら正当な経理処理をせずにあえてこれを放置し、さらに、本件御取引先別台帳の存在を隠匿してこれをD税理士に提出しなかったのであり、このことは、所得を過少に申告するという確定的な意図のもとでなされた行為であり、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと解されるから、隠ぺい又は仮装を行っていたことになる。

裁決

(書類不提出の点)

本件御取引先別台帳がD税理士に提出されていなかった事実があっても、その保管状況や本件調査時の請求人の態度、事実関係が明らかになる他の資料をD税理士に提出していることなど事実の隠ぺい又は仮装の故意を有する者及び過少申告の意図を有する者の行動にしては不自然な事実が認められることに照らすと、かかる事実が請求人の故意によるものであるといえないだけでなく、この事実から請求人に過少申告の確定的な意図があったとまでいうこともできない。

(説明しなかった点)

税理士の事務員であるEが、請求人の取引について既に熟知しており、設立当初の関与税理士主導の下に経理処理の方法が確立していたのであるから、請求人が取引内容の具体的説明を税理士自身にしなかったからといって、それが故意の隠ぺい又は仮装の行為であるとか、過少申告の確定的意図を外部からうかがい得る特段の行動であるなどということはできない。

(適正な経理処理がされなかったこと)
請求人、税理士及びEが、帳簿書類等について十分な検討をし、かつ、意思疎通を十分に図るなどして原因を解明して適正な経理処理をすべきであり、請求人の経理処理が適正さを欠いた処理であったことについて非難を加えられるべきことであったとしても、請求人が積極的な意思をもってあえて適正な経理処理を行うことなくこれを放置したとまで認めるには至らず、かかる仮受金勘定の誤った経理処理をもって、故意の隠ぺい又は仮装の行為や過少申告の確定的意図を外部からうかがい得る特段の行動があったとまでいうことはできない。

ポイント

●経理書類の一部が税理士に提出されなかった場合でも、他の経理書類と一緒に保管され、特に隠そうとする意図が見られない場合には、当該事実を主張する。

●また、他の資料をもって税理士が知りうる情報が提供されている場合には、隠ぺい仮装の故意と矛盾することから、当該事実を主張する。

●ずさんな経理が非難されるべき事情があり重過失があったとしても、重過失には隠ぺい仮装の「故意」が必要である。

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