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会社分割について
会社分割には、ある会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割して新しい会社を設立する「新設分割」と、他の会社が事業に関して有する権利義務の全部又は一部を吸収する「吸収分割」があります。
事業の全部又は一部を分割する会社を「分割会社」、新設分割によって、新しくできた会社と吸収分割によって、事業を吸収した会社を「承継会社」といいます。
会社分割は以下のような手順で進んでいきます。
① 分割契約(吸収分割)・分割計画(新設分割)を作成し、本店に備え置く
② 株主総会の承認
③ 債権者への異議申述の公告・催告
④ 異議を述べた債権者への弁済・担保の提供
⑤ 分割の登記
会社分割に伴う雇用の移転
分割により、移転した事業に主として従事していた従業員は、当然に承継会社の従業員となります。
従業員の同意は必要ありません。
事業に主として従事していた従業員を承継会社に移すとする定めを分割契約、計画におかなかった場合には、当該従業員がこれに異議を述べると、この従業員の労働契約は承継会社に引き継がれ、承継会社の従業員となります。
反対に、その他の従業員の労働契約は分割会社に残り、分割契約、分割計画に労働契約が承継会社に移ると定めても、従業員が異議を述べると、この従業員の労働契約は分割会社に残り、分割会社の従業員としての地位を維持します。
承継される事業に主として従事する労働者とは
分割で当然にその労働契約が承継会社に移る「承継される事業に主として従事する労働者」とは
- 承継される事業に専ら従事する労働者
- 承継される事業以外の事業にも従事している労働者のうち、それぞれの事業に従事する時間、それぞれの事業における役割を総合的に判断して、承継事業に主として従事するといえる労働者
です。(会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律施行規則2条)
会社分割に伴って行う雇用に関する手続き
分割をするにあったって、雇用に関しては、次の手続きを踏みます。
1.労働者の理解と協力を得るための協議
2.労働者への書面での通知
通知の必要な労働者
- 承継する事業に主として従事する労働者
- 承継する事業に主として従事しない労働者であっても、分割後、新設会社、吸収会社の従業員となるもの
通知を出す期限
- 分割の承認を得る株主総会の二週間前の日の前日まで
- 株主総会の承認が必要でない場合、合同会社が分割をする場合は、分割契約を締結した日、または、分割計画を作成した日から二週間を経過する日まで
なお、労働省の出した指針は、株式会社については、分割契約、計画を本店に備え置いた日と株主総会の通知を発する日のいずれか早い日と同時に行うことが望ましいとしています。
通知する事項
(会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律施行規則1条)
- 通知を受け取る従業員が、承継する事業に主として従事する者、主としては従事しないが、分割契約、計画によって承継会社の従業員となると定められた者のどちらに該当するか
- 承継される事業の概要
- 会社分割後の分割会社と承継会社の商号、住所、事業内容及び雇用することを予定している労働者の数
- 分割の効力発生日
- 分割後、通知をうけた従業員が従事する予定の業務の内容、就業場所その他の就業形態
- 分割後の、分割会社、承継会社の債務の履行の見込みに関する事項
- 自分の労働契約について異議がある場合には、異議を申し出ることができること、申出を受理する部門の名称及び住所、又は担当者の氏名、職名及び勤務場所
3.労働協約を締結している労働組合への書面での通知
(労働協約を結んでいなくとも労働組合に通知することが望ましいとされています。)
通知を出す期限
・ 労働者への通知と同じ
通知する事項
- 承継される事業の概要
- 会社分割後の分割会社と承継会社の商号、住所、事業内容及び雇用することを予定している労働者の数
- 分割の効力発生日
- 分割後の、分割会社、承継会社の債務の履行の見込みに関する事項
- 承継会社の従業員となる者の範囲、この範囲を示してもどの人か労働組合にとって明らかにならない場合には、承継会社の従業員となる者の氏名
- 承継会社が承継する労働協約の内容
4.労働者からの異議の申し出
異議を申し出ることができる労働者
- 承継される事業に主として従事する者で、分割契約、計画に、分割後、承継会社の従業員となることが定められていない者
- 承継される事業に主として従事していないのに、分割契約、計画に、分割後に承継会社の従業員となると定められた者
異議を申し出る期限
- 承認の株主総会の2週間前の日から株主総会の日の前日までの日で分割会社が申し出の期限を定めることができる
- もっとも申し出の期限は通知後13日以上たった日でなければならない
労働協約について
労働協約のうち、労働条件その他労働者の待遇に関する基準を定めた部分,例えば,賃金,労働時間,懲戒,解雇,休日については、承継会社と労働組合の間で、これと同一の労働協約が締結されたとみなされます。
労働協約のうち,使用者と,労働組合と労働組合活動について決めたルールについて,例えば組合事務所・掲示板の使用方法,人事に関する問題について労働組合と事前に協議する旨の定め等は,承継会社に移転したい部分のみを分割計画、分割契約に記載することによって、権利義務を分割会社と承継会社との間で分割することができます。