交通事故(後遺障害/死亡事故)の賠償金(慰謝料)で損をしない請求方法とは?

最終更新日 2020年 06月14日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所代表社員 弁護士 谷原誠

交通事故の被害にあってケガをした、または後遺症が残ってしまった……人生では、そうしたことが起きてしまう場合があります。

被害者の方は、まずはケガの治療を行ないますが、その他にさまざまな「やるべきこと」があることをご存じでしょうか?

みらい総合法律事務所では、交通事故の被害者弁護を行なっています。

扱っているのは、後遺症が残ってしまった場合と死亡事故の場合です。

そこで今回は、交通事故に初めてあってしまった人が正しい損害賠償金額を手にするために大切なことをお話しします。

・後遺障害等級認定の申請

・慰謝料(賠償金)の請求方法

・裁判の進め方

・弁護士に相談・依頼した場合のメリット

など、交通事故解決までの各手続や道筋について、わからないことがあるならば、ぜひ最後まで読み進めてください。

これから、後遺障害と死亡事故における慰謝料の請求方法について説明しますが、その前に、交通事故解決までの全プロセスを解説した無料小冊子をダウンロードしておきましょう。

目次
  1. 交通事故発生から示談成立までの流れを図解で確認
  2. 交通事故の初期対応で大事なこと
  3. 交通事故で後遺症が残った時は?
  4. 後遺障害等級の申請で大切なこと
  5. 交通事故の慰謝料(賠償金)は、どう計算するか?
  6. 交通事故の慰謝料(賠償金)は増額する場合がある!
  7. 交通死亡事故の慰謝料請求の方法
  8. 交通事故の裁判のメリットとは?
  9. 交通事故を弁護士に相談・依頼するメリットとデメリット

交通事故発生から示談成立までの流れを図解で確認

通常、交通事故が起きてから示談が成立するまでには次のような流れで手続きなどが進んでいきます。

<交通事故発生から裁判までの流れ>

① 交通事故が発生

 ↓

② 事故の状況や加害者の身元の確認

 ↓

③ 警察へ通報、実況見分調書の作成への協力

 ↓

④ 被害者、加害者双方の保険会社への連絡

 ↓

⑤ 入院・通院でケガの治療に専念する

 ↓

⑥ 主治医から症状固定の診断

 ↓

⑦ 後遺障害等級が認定され損害賠償額が提示

 ↓

⑧ 加害者側の任意保険会社との示談交渉が開始

 ↓

⑨ 示談成立(保険金の受け取り)

 ↓

⑩ 交渉が決裂した場合は訴訟を提起し、裁判での決着へ

交通事故の初期対応で大事なこと

まず、交通事故にあってしまった時には、警察を呼び、ケガをしている場合には救急車を呼ぶことになります。

そして、警察の実況見分調書等により、どんな事故だったのかということを証拠として後に残すことになります。

警察による実況見分調書は、刑事事件のために作成するものですが、じつは後の損害賠償という民事事件でも重要な証拠となってくるので、とても大切な手続きです。

自分が体験したことを忠実に実況見分調書に記載してもらうようにしましょう。

【参考情報】 交通事故の被害にあってしまった場合、すぐにやるべきことを教えてください。

交通事故で後遺症が残った時は?

ケガをした場合、被害者の方は治療に専念することになります。

通常、加害者は任意保険に加入していることが多いので、その任意保険会社から治療費や休業補償をもらいながら治療を行なっていきます。

しかし、治療が終わってもケガが完全に治らない場合があります。

この状態を「症状固定」といい、「後遺症」が残ってしまうことになります。

後遺症が残ってしまうと、これからの人生ではその後遺症と付き合っていかなければなりません。

後遺症が残っていると、仕事で力を発揮できなくなる可能性があり、収入の減少をもたらすこともあります。

そこで、後遺症が残ってしまった場合には、後遺症部分についても慰謝料や逸失利益などの賠償金を加害者側に請求することになります。

ここで、ひとつ注意するべきなのは、治療しながら慰謝料や過失割合などの賠償金を交渉しようとする人がいますが、これは適切ではない、ということです。

なぜなら、ケガの治療が完全に終わらないと、人損部分に対する損害額が計算できないので、示談交渉は治療が終了してから行なうのが通常だからです。

なお、物損のみの事故の場合は、修理費や車体価格を計算できれば示談交渉することができます。

後遺障害等級の申請で大切なこと

ケガの治療が終了して後遺症が残った場合、これを症状固定といいます。

後遺症部分についての慰謝料や逸失利益を賠償金として請求するということは、後遺症がどの程度重いものなのかを見積もらなければなりません。

これが自賠責後遺障害等級認定の手続きです。

自賠責後遺障害等級認定の手続きは、損害保険料率算出機構(損保料率機構)という機関が行ないます。

後遺障害等級は、1級から14級まで分かれていて、1級が最も重い後遺障害ということになり、損害賠償金額も最も多額になる傾向にあります。

1級というのは、たとえば頭部外傷や脊髄損傷などにより、全身が麻痺してしまって寝たきりになったような場合に認定されます。

そうなると、当然、日常的に介護が必要になるので、将来に亡くなる時までの介護費用も損害として加害者側に請求していくことになります。

ですから、まずは後遺障害等級を正しく認定してもらうことが重要です。

なぜなら、後遺障害等級が誤っていると、1級違うだけで、損害賠償金が数百万円から、場合によっては数千万円も違ってくることがあるからです。

したがって、後遺障害等級が認定された時には、それが正しい後遺障害等級なのかどうかについて必ず確認をする必要があります。

ただ、後遺障害等級が適切かどうかを判断するには、自賠責の後遺障害等級認定システムについて熟知していなければなりません。

そして、診断書が正しく記載されているか、必要な検査が実施されているかどうか、など医学的な知識も必要です。

もちろん、法律的な知識も必要となってきます。

初めて交通事故にあった被害者の方では、後遺障害等級が適正に認定されているかどうかは判断できないと思います。

ですから、実務経験が豊富な交通事故に強い弁護士に相談することをお勧めします。

【参考情報】 交通事故で正しい後遺障害等級が認定される人、されない人の違いとは

後遺障害等級表については、国土交通省が公開しています。

参照・国土交通省 後遺障害等級表

交通事故の慰謝料は、どう計算するか?

後遺障害等級が正しく認定されたなら、いよいよ示談交渉の開始ということになります。

示談交渉では、加害者側の保険会社から示談金(賠償金)の提示があることが多いです。

もちろん、被害者側から金額を提示してもいいと思います。

そして、じつは、保険会社は適正な示談金額を提示してくれないことが多いということを知っておくことが大切です。

保険会社は株式会社が多いのですが、株式会社というのは営利を目的とした存在なので、利益を出さなければなりません。

利益を出すためには支出を減らす努力もしなければなりません。

そのために被害者の方に支払う賠償金は、なるべく少ないほうが利益が大きくなり、株式会社の目的に適う、ということになるのです。

では次に、交通事故の損害賠償額の計算方法についてみていきましょう。

計算方法には3つの基準があります。

(1) 弁護士(裁判)基準

裁判になった時に認定される適正な賠償金額の計算方法です。

(2)任意保険基準

任意保険会社が出せる限界の金額として使う基準です。

残念ながら、任意保険基準は弁護士(裁判)基準より低いのが通常です。

したがって、示談交渉を弁護士に依頼し、また裁判となった場合はさらに金額が増額されることが多いのです。

(3)自賠責基準

自賠法によって定められた支払い基準のことで、最低限の保障額になります。

当然、自賠責基準では交通事故の被害者の方が被った損害をすべてまかなうことはできない、という場合がほとんどです。

ところが、任意保険会社が提示してくる金額の中には、この一番低い自賠責保険基準によって計算したものの場合もあります。

そのような場合には、適正な賠償金額ではないので決して示談をしてはいけません

保険会社から賠償金の提示がされた時には、必ず弁護士に相談して、慰謝料などの賠償額が適正な金額かどうか確認するようにしましょう。

ところで、交通事故における賠償金については、一応の計算基準があります。

過去の膨大な裁判例の積み重ねによって、損害賠償額の相場が形成されているのです。

なお、みらい総合法律事務所では弁護士(裁判)基準による計算式を入力したソフト(自動計算機)があります。

どなたでも簡単に利用できますので、参考にしてみてください。

【交通事故慰謝料自動シミュレーション 後遺障害編】

【交通事故慰謝料自動シミュレーション 死亡事故編】

交通事故の慰謝料は増額する場合がある!

じつは、慰謝料というのは相場で固定されたものではなく、事情によっては相場以上の高額の慰謝料額が認定されることがあります。

それは交通事故において、加害者の飲酒運転や赤信号無視など悪質性がとても高くて、被害者側の精神的苦痛も大きいと考えられる場合や、特に被害者側に精神的な苦痛が大きい事情がある場合などです。

ただし、そのような慰謝料増額事由は、被害者の方が自分で主張しなければ保険会社や裁判所は認めてくれません。

ですから、慰謝料増額事由がある時には積極的に主張していくことが重要になるのです。

また、そのような慰謝料増額事由には何があるかを知っておくことも大切だと思います。

慰謝料増額事由を知りたい方は、こちらから。
交通事故の慰謝料の相場と慰謝料を増額させる秘訣

交通死亡事故の慰謝料請求の方法

死亡事故の場合には、四十九日が終わった後に加害者側の保険会社から示談金が提示されるのが通常です。

死亡事故の場合に損害賠償金を請求できるのは、相続人と近親者ということになります。

交通事故の被害者の方が死亡の瞬間に、慰謝料や逸失利益などの損害賠償請求権を取得し、それが死亡によって即時に相続人に相続される、ということです。

また、近親者は精神的苦痛を被りますので、相続ではなく独自の慰謝料請求ができる場合があります。

死亡事故の場合にも、後遺障害の場合と同じく、保険会社は必ずしも適正な金額を提示してくれるわけではありませんので、死亡事故で示談金が提示された時には、必ず弁護士に相談して、その金額が適正かどうか確認するようにしたいものです。

交通死亡事故の場合の特殊性については、次の記事を読んでみてください。

【参考情報】 交通事故の慰謝料はいくら?ご家族がやるべきこととは?【弁護士が解説】

死亡事故の場合にも、後遺障害の場合と同じく、保険会社は必ずしも適正な金額を提示してくれるわけではありませんので、死亡事故で示談金(賠償金)が提示された時には、必ず弁護士に相談して、その金額が適正かどうか確認することをお勧めします。

特に死亡事故の場合には、損害賠償額は被害者の方の「命の値段」といってもよいでしょう。

低い金額で示談解決してしまったら、被害者の方に顔向けができないのではないでしょうか。

ですから、本来もらえる適正額をきちんと請求していく必要があるのです。

みらい総合法律事務所の慰謝料増額事例を紹介します!

ここでは、交通事故の示談交渉で弁護士が入るとどうなるのかを知っていただくために、みらい総合法律事務所で実際に解決した、慰謝料などの損害賠償金の増額事例をご紹介します。

「解決事例1:後遺障害等級12級の36歳男性の慰謝料などが約4.74倍に増額」

36歳の男性がバイクで信号機のある交差点に侵入したところ、右折してきた自動車に衝突された交通事故。

被害者男性は、右股関節脱臼骨折等の傷害を負い、右足に関節機能障害の後遺症が残ってしまいました。

自賠責後遺障害等級を申請すると12級が認定され、加害者側の保険会社は既払い金を除き、被害者の方に対し慰謝料など損害賠償金として、約270万円を提示。

そこで被害者の方は、みらい総合法律事務所の無料相談を利用し、この金額が妥当なものかどうかの確認を依頼しました。

弁護士が精査したところ、「この金額は自賠責基準で計算したものであり、まだ増額が可能」という指摘を受けたため、示談交渉のすべてを依頼することにしました。

弁護士は、弁護士(裁判)基準での支払いを求めて提訴。

最終的には弁護士の主張が認められ、約1285万円で解決となりました。

当初提示額から約4.74倍に増額したことになります。

「解決事例2:49歳女性の死亡事故で慰謝料などが約3120万円増額」

49歳の女性が自動車を運転中、センターラインをオーバーして走行してきた対向車に衝突された交通死亡事故。

加害者側の保険会社は、ご遺族に対して慰謝料などの損害賠償金として約3940万円を提示しましたが、この金額にご遺族は疑問を感じました。

「大切な人が亡くなったのに、この金額では少なすぎるのではないか……」

そこで、みらい総合法律事務所の無料相談を利用し、弁護士に示談解決のすべてを依頼されました。

弁護士が保険会社と交渉しましたが、決裂したため提訴。

裁判でも和解に至りませんでしたが、最終的には弁護士の主張が認められ約7060万円の判決が下りました。

当初提示額から約3120万円も増額しての解決でした。


【参考情報】 その他の解決事例を知りたい場合はこちらから

こうした慰謝料の増額事例を見ると、弁護士が示談交渉に入ることがいかに重要かご理解いただけると思います。

後遺障害等級が認定された際に、それが正しいものだと思い込み、すぐに示談交渉に入るのではなく、まずは弁護士に相談することを検討してみることも大切です。

みらい総合法律事務所では、交通事故の相談を年間1000件以上受け付けています。

交通事故に強い弁護士が随時、無料相談を行なっています。

後遺障害と死亡事故専門です。

交通事故の裁判のメリットとは?

交通事故の被害者の方の中には、「できれば裁判はしたくない」という人も多いと思います。

裁判というと、何となく気が引けてしまう、費用もたくさんかかってしまうのは避けたい、と思ってしまうからでしょう。

しかし、裁判にはメリットもあり、また被害者ご自身の負担もそれほど多くありません。

「遅延損害金とは?」

まず、裁判のメリットとして、遅延損害金があります。

裁判を起こして判決までいくと、事故日から支払の日まで、損害賠償金に「遅延損害金」という利息相当額がつくのです。

これは大きなメリットです。

「弁護士費用相当額とは?」

また、裁判を起こして判決までいくと、損害賠償金の約10%相当の金額の「弁護士費用相当額」を追加でつけてくれます

つまり、弁護士費用の一部を加害者に負担させることができる、ということです。

さらに、裁判所には弁護士が代わりに行ってくれ、被害者の方はほとんど出頭の必要がありませんので、それほど負担ではありません。

裁判のメリット、デメリットをもっと知りたい方は、こちらから。

交通事故被害で裁判して 得する人、損する人

交通事故を弁護士に相談・依頼するメリットとデメリット

ここでは、交通事故を弁護士に相談・依頼するメリットとデメリットについて考えてみたいと思います。

「メリット①」

まず、メリットの1つ目ですが、弁護士は法律の専門家なので、賠償額を適正に計算してくれることがあげられます。

また、示談交渉を依頼すれば、保険会社にきちんと法律的に反論し、適正な賠償金額を獲得してくれることでしょう。

交通事故の賠償金の計算については、過去の膨大な判例の積み重ねによって一応の計算基準が形成されていますので、それをもとに弁護士に計算してもらうと正しい金額がわかってくると思います。

「メリット②」

2つ目のメリットは、弁護士は成功報酬で仕事をすることも多く、依頼者の獲得する賠償金額が大きければ大きいほど弁護士の報酬も大きくなるので、依頼者と利害が一致することです。

これに対し、保険会社は被害者に対する支払いが少なければ少ないほど利益は大きくなりますので、利害は一致しないということになります。

「メリット③」

3つ目のメリットとしては、弁護士に解決を依頼してしまえば、弁護士が代わりに保険会社等と交渉し、裁判をしてくれますので、煩わしい交渉事などから解放されるということです。

これも大きなメリットといえるでしょう。

では逆に、デメリットは何か、ということですが、やはり費用のことが大きいと思います。

弁護士は無料で代理をしてくれるわけではないので、必ず報酬が発生します。

まずは、ご自身やご家族が加入している保険契約に「弁護士費用特約」があるかどうか、確認してみましょう。

弁護士費用特約があれば、一定金額までは保険会社が弁護士費用を払ってくれる可能性があります。

弁護士費用特約に入っていない時は、ご自身の賠償金の中から弁護士報酬を払わなければなりません。

つまり、その分の取り分が少なくなるということです。

しかし、後遺症がある場合や死亡事故など、慰謝料の金額が大きい案件になると、ご自身で交渉するのと弁護士が交渉するのとでは賠償額が大きく違ってくることがあります。

そのような場合には、弁護士報酬を払っても大きな利益が被害者の方にもたらされることになりますので、弁護士報酬だけのことを考えて弁護士に依頼することを躊躇するのは得策ではないと思います。

2つ目のデメリットとしては、弁護士には得意不得意の分野があるということです。

交通事故では、法律知識はもとより、医学的な知識や自賠責後遺障害等級の認定システムに関する知識、保険に関する知識など非常に複雑で高度な知識が必要になります。

必ずしもすべての弁護士が、そのような知識を持っているとは限りません。

したがって、弁護士に相談・依頼する時には、できる限り実務経験が豊富な、交通事故に強い弁護士を選ぶことをお勧めします。

交通事故を弁護士に相談すべき理由と注意点は、こちら。
交通事故を弁護士に相談すべき7つの理由と2つの注意点

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交通事故を弁護士に相談すべき7つの理由
交通事故で弁護士に相談するときの2つの注意点