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「遺留分は放棄する」という念書は無効?ではどうすれば?

最終更新日 2026年 01月29日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

「遺留分は放棄する」という念書は無効?ではどうすれば?

この記事を読むとわかること

被相続人(親など)が亡くなり相続が発生した際、問題になることのひとつに「遺留分」があります。

☑︎遺留分とは……

被相続人(亡くなった親など)の兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者、子、直系尊属など)に、最低限保障される遺産の取得分を「遺留分」といいます。

☑︎遺留分が発生するケースは……

たとえば、亡くなった父親の遺言書を確認したところ、「長男◯◯に全財産を相続させる」と書かれていた場合、他の兄弟姉妹は相続人であるにもかかわらず親の遺産を受け取ることができなくなってしまいます。
なぜなら、原則として、法定相続よりも遺言による相続が優先されるからです。

また、父親が生前、長男に住宅購入資金として多額の金銭を渡していた場合、これは「生前贈与」となり、他の子にも贈与がなければ不公平になります。

こうした場合の救済措置として、相続財産を侵害された相続人は、多く受け取っている相続人に対して「遺留分侵害額請求」(民法第1046条)をすることができるのです。

☑︎遺留分の放棄とは……

遺留分の放棄とは、遺留分権利者である法定相続人が、その権利を自ら手放すことをいいます。
これにより、遺留分権利者だった人は遺留分侵害額請求ができなくなります。

さて、ここで次のような疑問が湧いてきます。

  • なぜ自分の権利である遺留分を放棄する
    必要があるのか?(遺留分権利者)
  • 遺留分放棄が必要なケース、
    したほうがいいケースとは?
    (遺留分権利者/他の相続人)
  • 確実に遺留分放棄をしてもらうには、
    どうしたらいいのか?(他の相続人)

そこで本記事では、主に次の項目について解説していきます。

  • 遺留分について知っておくべきこと
  • 遺留分放棄についての基礎知識
  • 遺留分放棄を被相続人や他の相続人から求められるケース
  • 遺留分放棄をしたほうがいいケース
  • 遺留分放棄のメリットとデメリット
  • 確実に遺留分放棄をしてもらうために
    必要なことと注意点
     など

ぜひ最後まで読み進めて、遺留分の放棄で損をしないための知識を身につけてください!

目次

遺留分放棄でまず
知っておくべき3つのこと

遺留分は被相続人(亡くなった人)の遺言よって奪われることがありません。
また、被相続人の生前贈与または遺贈によっても奪われることのないものです。
遺留分は法律で認められている権利であり、法定相続人が必ず受け取ることができる相続財産の権利なのです。

では、これを放棄するとはどういうことなのか、見ていきましょう。

遺留分放棄とは?

☑︎遺留分の権利を持っている法定相続人が、この権利を手放すことを「遺留分放棄」といいます。

☑︎遺留分を放棄すると、当然ですが遺留分が侵害された相続が行なわれても「遺留分侵害額請求」はできなくなります。

☑︎一方、その他の法定相続人(遺留分放棄を求める相続人)は、一定の目的を叶えることができます。
また、被相続人の死後、相続によるトラブルを回避することにも役立ちます。

☑︎なお、遺留分の権利はなくなっても相続人であることに変わりはないので、法定相続人としての権利は失われません。
たとえば、放棄した遺留分以上に被相続人の財産が残された場合や、借金などの負債がある場合(相続では負債も引き継ぐため)などでは、相続の可能性はあるということになります。

☑︎そのため、遺留分を放棄する際には「遺留分のみを放棄するのか」、あるいは「相続そのものを放棄するのか」について確認したうえで手続きを進める必要があります。

相続放棄と遺留分放棄の
違いは?

☑︎相続人が、被相続人(亡くなった人)の財産・権利・義務を一切受け継がないことを「相続放棄」といいます。

☑︎法的に相続放棄をするには、家庭裁判所で「相続放棄の申述」を行なう必要があります。
(※相続人の間で、口頭で相続放棄を伝えているだけでは相続放棄は成立しません)

☑︎なお、相続放棄の手続きは被相続人が亡くなった後に行なうものです。
被相続人の生前には行なえないことに注意が必要です。

遺留分放棄の基本ルールを確認

遺留分放棄には次のようなルールがあるので、おさえておきましょう。

  1. 被相続人が生きているうちは、
    家庭裁判所の許可が必要
  2. 被相続人の死後は遺留分放棄の
    手続きは不要
  3. 一度、認められた遺留分放棄許可の
    撤回は困難
  4. 生前の被相続人との口約束・
    念書だけでは遺留分放棄は無効
  5. 他の相続人が遺留分放棄を
    強要することはできない
  6. 遺留分の放棄には理由が必要

これらについては後ほど詳しく解説します。

遺留分放棄が必要になる理由は?
/5つのケースと対策

相続の現場では「遺留分の放棄」が大きな意味を持ちます。
遺留分放棄は、ただ単に“権利を放棄する”という話ではなく、家族関係・事業承継・不動産のあつかい・公平性など、さまざまな事情が絡んでくるからです。

ここでは、「被相続人や他の相続人から求められるケース」や、「遺留分放棄をスムーズにしてもらえるケース」などについて、事例と対策までを含めて整理します。

被相続人や他の相続人から
遺留分放棄を求められるケース

法律上、遺留分放棄が必ず必要という場面はありません。
ただし、放棄しないと実現できない相続の形などがあるため、他の相続人から放棄を依頼される場合があります。
じつは、このケースがもっとも多いパターンといえます。

ケース①:事業承継で後継者に
株式を集中させたい場合

【事例】
父親(被相続人)が経営している会社を長男に引き継がせる予定になっており、経営の安定化を図るため、会社株式のほとんどを長男に相続させたいと考えた。
そこで、被相続人は他の息子(次男・三男)に遺留分の放棄を依頼(長男が依頼する場合は弟たちに対して)。
なぜなら被相続人の死後、次男・三男から遺留分侵害額請求をされると、後継者(長男)が多額の金銭を支払う必要が生じ、事業承継が破綻する可能性があるから。

【対策】

  • 強制はできないため、事業承継計画を
    家族全体で共有し、目的を明確にして
    合意形成を図る。
  • 生前に次男・三男の遺留分放棄について
    家庭裁判所から許可を得ておく。
  • 書面だけの「遺留分放棄の合意」は
    無効となるため注意が必要。
  • 遺留分を放棄する代わりに、金銭や
    不動産を生前贈与して納得してもらう
    ケースも
    ある。

ケース②:生活を共にして
介護を担ってくれた子に
自宅を遺したい場合

【事例】
父親(被相続人)としては、生活を共にして介護をしてくれた子に自宅を遺したい(相続したい)と考えた。
しかし、他の子たちが遺留分を主張すると、自宅を売却して金銭を支払う必要が生じてしまう。
そこで、他の子たちに遺留分放棄を依頼した。

【対策】

  • 自分(父親)の死後に「遺留分を請求
    しない」という合意(口約束や念書)は
    無効のため、親が生きているうちに
    家庭裁判所で放棄の手続きする
    必要がある。
  • 感情的な摩擦が起きやすいため、
    遺留分放棄の代わりに金銭補填や
    生前贈与をして
    納得してもらうなどの
    対応も必要。

ケース③:相続財産の大半が
分けられない財産の場合

【事例】
親の遺産のほとんどが農地、山林、店舗、収益物件、アパートなど分けることができない、あるいは分けることが困難なもので、他の相続人から遺留分を主張されると売却が必要になってしまうケース。
結果、家業や収益構造、資産運用計画などが崩れてしまう可能性も。

【対策】
遺留分放棄を依頼し、その代わりに
生命保険などによる金銭補填などを検討。

ケース④:再婚家庭の
配偶者などの生活を
確保したい場合

【事例】
前婚での子があるが、自宅と預金のすべては現配偶者(再婚相手)に相続させたい。
自宅売却を迫られないように、前妻との間の子に遺留分放棄を依頼。

【対策】

  • 生前贈与などでの代償を検討。
  • 配偶者居住権との併用も検討。

遺留分放棄をスムーズに
してもらえるケース

次のようなケースでは遺留分を放棄してもらいやすいでしょう。

ケース⑤:
生前に十分な援助を
受けており、これ以上の
取得を望まない場合

【事例】
これまで親から住宅購入資金などを多額に援助してもらっている。
すでに他の兄弟姉妹よりも多くの生前贈与を受け取っている。

【対策】
遺留分を放棄するメリットとデメリットを検討。
・家族間の公平感を保ち、二重取得による不公平感を回避。
・親の希望(特定の相続人に財産を
集中させたいなど)を尊重。
そのうえで、家庭裁判所に放棄理由を
明示し、許可を得る。

遺留分放棄での「念書」は
効果があるのか?

遺留分放棄の念書とは?

念書とは、約束した内容について証明をする文書のことです。
遺留分放棄について口頭での約束や認識の共有に不安がある場合に、意思や約束内容を文章にして、証拠として残すために使われます。
当事者の一方が相手に対して約束した内容を記載して、署名・押印します。
(契約書ではないため、他の相続人の押印などは必要ない)

生前の遺留分放棄の念書は無効

生前に、相続人(子など)と遺留分放棄について口約束をしている、あるいは念書を書かせているから心配ないと考えている方がいます。
しかし、被相続人の生前における口約束や遺留分放棄の念書は法的効果がないため無効となります。

被相続人の生前では、遺留分放棄には家庭裁判所の許可が必要(民法第1049条1項)で、これがなければ念書などは無効になることを覚えておいてください。

なお、なぜ家庭裁判所の許可が必要なのかというと、被相続人などから遺留分を有する相続人に対して、遺留分の放棄を迫る、強要するなどの「不当な干渉」が行なわれる可能性があり、これを防止するためなどの理由があるからです。

遺留分放棄の手続きの流れは?

遺留分放棄の手続きは、基本的には次のような流れで進んでいきます。

①当事者間で話し合い(説明・条件提示)
⬇︎

②家庭裁判所に「遺留分放棄の許可申立て」
※提出書類には次のものがあります。
「家事審判申立書」、「理由書」、
「不動産の目録」、
「現金・預貯金・株式などの財産目録」、
「申立人の戸籍謄本」、
「被相続人予定者の戸籍謄本」、
「被相続人の同意書」 など
⬇︎
③裁判所の審査
(任意性・対価の有無・家族関係など)
⬇︎

④遺留分放棄の許可決定
⬇︎

⑤遺言書の作成
(放棄を前提に内容を整える)

遺留分放棄の重要ポイントを解説

被相続人の生前と死後で
遺留分放棄の手続きは異なる

被相続人の生前対応

前述したように、被相続人の生前(相続の開始前)に遺留分放棄をする場合は、家庭裁判所の許可が必要になります。

遺留分権利者と「書面で約束しただけ(念書を書いてもらうだけ)」では、生前の遺留分放棄は法的に無効であることに注意が必要です。

被相続人の死後対応

被相続人の死後に遺留分放棄する場合、特別な申請などは必要なく、遺留分権利者が侵害者に「遺留分を請求しない」と意思表示すれば足ります。
そのため、被相続人の死後の念書については、遺留分権利者の真意に基づいたものであれば有効になりますし、念書を作成しなくても放棄の意思は有効と認められます。
つまり、念書はあってもなくても、どちらでもいいということになります。

なお、念書は遺留分放棄をしたことの証拠になりますが、すべての念書が、つねに有効とされるわけではありません。
この点、詳しい内容については弁護士に相談されることをおすすめします。

遺留分放棄を成功させる
実務ポイント

遺留分放棄を成立させる(家庭裁判所の許可を得る)には、次のポイントに注意してください。

①合理的な理由があるか
②代償(見返り)が適切に
行なわれているか

③放棄における自由意思が
担保されているか

④家庭裁判所での手続きを
正確に踏んでいるか

裁判所の判断では、遺留分放棄にあたっては、遺留分権利者に対して不当な圧力がないかを重視します。
そのため、裁判所は遺留分権利者の立場に立って、次の点も確認していくので注意が必要です。

  • 強制されていないか
  • 内容を理解しているか
  • 経済的に困窮していないか
  • 放棄の理由が合理的か

<遺留分放棄の成立条件と
手続きのポイント>

区分手続き特徴・条件
生前
放棄
家庭裁判所への
申し立てが
必要
①本人の自由意思か
②放棄の合理性が
あるか
③見返り(代償)が
あるか
の3点が審査
される。
死後
放棄
手続き不要
(自由)
相続が発生した後、
遺留分侵害額
請求権を
行使しなければ
よい。

相手が遺留分放棄に
応じない場合の対応について

遺留分放棄を依頼したものの、相手が応じてくれない場合は次のような対応策があります。

遺言書に「付言事項」を添える

遺言書の付言事項に次のような項目を加えます。

  • なぜこの相続割合にしたのか、
    なぜ遺留分放棄を依頼するのか
    といったことの背景や理由
  • 家や会社を守りたい理由
  • これまでの感謝の気持ち など

これにより、心理的な納得感を高め、請求を思いとどまらせるよう促し、感情的な対立を防ぐようにします。

生命保険の活用

生命保険金の受取人を「財産を多く受け継ぐ人」に指定し、保険金を遺留分請求された際の支払い原資(キャッシュ)として活用します。
事業承継の場合は、受取人を後継者に指定した生命保険を準備しておきます。

生前贈与の活用で
早めの財産移転

10年以上前の贈与は、原則として遺留分の対象外(相続人への贈与の場合)となるため、早めに財産移転を計画し、実行するのがいいでしょう。

除外合意の活用

事業用資産について遺留分の計算から外すためには、「経営承継円滑化法」が定める「除外合意」の特例制度を活用することもできます。
ただし、経済産業局の確認が必要になります。

遺留分放棄は後から
撤回するのは難しい

被相続人の生前に家庭裁判所の許可を得て遺留分放棄をした場合、後から撤回するのは難しいことを知っておいてください。

家庭裁判所に対して、遺留分放棄の許可の取り消しをしてもらうには、事情が変化したことによって遺留分の放棄が不合理であると考えられる場合でなければ許可の取消しは認められません。
遺留分放棄者の気が変わった、といった理由では遺留分放棄の許可は取り消されないということです。

遺留分放棄の問題は
一人で悩まず弁護士に相談を!

遺留分放棄には、さまざまなメリットがあります。

たとえば、被相続人の立場であれば、「財産承継の自由度向上」、「相続争いの予防」、「事業承継の安定」、「特定財産の確実な承継」などのメリット。

一方、遺留分権利者のメリットとして、「生前贈与などの利益」、「家族関係の維持」、「将来設計の明確化」、「手続き負担の軽減」などがあげられます。

ただし、法的に適切な対応・手続きをしなければ無効となってしまうため、まずは一度、弁護士に相談することを検討してください。

弁護士法人みらい総合法律事務所は、随時、無料相談を行なっています(事案によりますので、お問い合わせください)。

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