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特別寄与料とは?わかりやすく解説

最終更新日 2026年 06月01日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

特別寄与料とは?わかりやすく解説

この記事を読むとわかること

特別寄与料(とくべつきよりょう)は、相続人ではない親族が、亡くなった方の介護や看護などを無償で行っていた場合に、相続人に対して金銭の支払いを請求できる制度です。

2019年(令和元年)7月1日に施行された、比較的新しい制度です。

従来は、長年無償で介護を担っていた場合でも、相続人でなければ相続財産から金銭を受け取る仕組みがないという課題がありました。

本記事では、特別寄与料の意味、誰が請求できるか、認められる条件、金額の考え方、期限、手続きの流れをわかりやすく解説します。

個別の事情によって判断が分かれる場面もあるため、具体的な請求を検討する際の参考にしてください。

目次

特別寄与料とは何か

特別寄与料は、相続人ではない親族が、亡くなった方の財産の維持や増加に貢献した場合に、相続人に対して金銭を請求できる権利です。

まずは、制度の概要創設の背景を見ていきましょう。

制度の概要

特別寄与料は、亡くなった方の親族のうち相続人ではない人が、無償で介護や家業の手伝いなどを行い、財産の維持または増加に大きく貢献した場合に認められます

請求の相手方は、亡くなった方の相続人です。

請求できる金額は、貢献の程度に応じて決まり、当事者同士の話し合い、または家庭裁判所の手続きで決められます。

なお、この制度が適用されるのは、2019年(令和元年)7月1日以降に発生した相続のみです。

創設された背景

改正前の法律にも、相続人の貢献を評価する「寄与分(きよぶん)」という制度はありましたが、その対象は相続人だけに限られていました。

そのため、例えば長男の妻が義父を長年無償で介護していた場合でも、長男の妻は相続人ではないため、相続財産から何も受け取れないという問題が指摘されていました。

こうした不公平を是正するために、2018年(平成30年)の法改正で特別寄与料の制度が新設され、相続人以外の親族の貢献も金銭で評価できるようになりました。

特別寄与料を請求できる人

特別寄与料を請求できるのは「特別寄与者(とくべつきよしゃ)」と呼ばれる立場の人です。

ざっくり言うと、次の2つを両方満たす人が特別寄与者にあたります。

  • 亡くなった方の「親族」にあたる人で
    あること
  • 「相続人」には該当しないこと

それぞれの意味を順番に見ていきましょう。

「親族」とはどこまでの範囲か

ここでいう親族の範囲は、法律上、次のように決められています。

  • 6親等内の血族
    (血のつながりがある親族。
    いとこの孫まで含む広い範囲)
  • 配偶者
  • 3親等内の姻族(配偶者の血族。
    義理の親、義理のおじ・おばなど)

特別寄与料を請求できるのは、このうち相続人ではない親族です。

代表的な例としては、長男の妻(亡くなった義父・義母の介護をしていたケース)や、相続人にならない兄弟姉妹・甥姪などが挙げられます。

請求できない人

親族の範囲に入っていても、次のいずれかにあたる人は特別寄与料を請求することができません。

  • 相続人(配偶者・子・直系尊属・
    兄弟姉妹のうち、実際に相続人になる
    人)
  • 相続を放棄した人
  • 相続欠格にあたる人
    (被相続人を死亡させた場合など、
    相続権を失った人)
  • 廃除(はいじょ)により相続権を
    失った人
    (被相続人の意思で相続権を
    はく奪された人)

また、内縁の配偶者(婚姻届を出していないパートナー)など、法律上の親族関係がない人も対象外です。

事実上、長年支えていたとしても、法律上の親族でなければ特別寄与料の請求はできません。

特別寄与料が認められる
4つの条件

特別寄与料は、親族であれば自動的に認められるものではなく、次の4つの条件をすべて満たす必要があります。

それぞれの中身を見ていきましょう。

無償(タダ)で行ったこと

ここでいう「無償」とは、対価としての報酬を受け取っていないことを指します。

例えば、給与や生活費名目で定期的にお金を受け取っていた場合は、「無償」と評価されない可能性があります。

また、亡くなった方にお金を贈与したり、財産を譲渡したりする行為は、ここでいう「労働の提供」には含まれません。

介護・看護や
家業の手伝いなど、
労働の提供であること

特別寄与料の対象になるのは、体や時間を使って行う「労働の提供」です。

具体的には、亡くなった方の介護や看護、家業の手伝い、生活上の世話などがこれにあたります。

前述のとおり、お金を渡したり財産を譲ったりする「金銭的な援助」は対象になりません。

その結果、財産が
維持または増加したこと

労働の提供によって、亡くなった方の財産が「減らずに済んだ」または「増えた」という関係が必要です。

例えば、本来であれば介護費用や家事代行費を支払う必要があったところ、親族が無償で介護や家業の手伝いを行ったことで、その支出が抑えられた、というケースが想定されます。

また「特別の」と表現されているとおり、通常の親族間で期待される程度を超える貢献であることが求められると一般に解されています。

認められやすい典型的なケース

典型的なケースとしては、次のような場面が想定されます。

  • 長男の妻が、長年にわたり義親の
    在宅介護を無償で担っていたケース
  • 相続人ではない兄弟姉妹や甥姪が、
    家業を無償で手伝い続け、事業の維持に貢献していたケース

ただし、これらに該当すれば必ず特別寄与料が認められるわけではなく、貢献の内容や期間、財産への影響などを総合的に考慮して判断されます。

「寄与分」との違い

特別寄与料は、似た言葉である「寄与分(きよぶん)」とよく混同されます。

両者の違いは、ひとことで言うと「請求できる人が相続人かどうか」です。

仕組みの内容
寄与分相続人が、亡くなった方の財産維持・増加に貢献した場合に、遺産分割で自分の取り分を増やせる仕組み
特別
寄与料
相続人ではない親族が、貢献した相続人に対して金銭を請求できる仕組み

寄与分は遺産分割の枠組みの中で処理されますが、特別寄与料は遺産分割とは別の手続きとして扱われる点でも違いがあります。

特別寄与料の金額の考え方

請求できる金額は、貢献の程度に応じて決まりますが、法律上の「上限」と「相続人ごとの負担割合」が定められています。

金額の上限:
遺産を超えては請求できない

法律では、特別寄与料の額は、亡くなった時点の遺産から、遺言で渡されることになっている財産(遺贈)を差し引いた残額を超えてはならないと定められています。

つまり、「遺贈分を除いた遺産の合計額」が、特別寄与料全体の上限になります

例えば、亡くなった方の遺産が1,000万円で、そのうち300万円が遺言で他の人に渡される場合、特別寄与料の上限は残り700万円までです。

計算上は1,000万円分の貢献があったとしても、上限を超える額は請求できません。

相続人が複数いる場合
の負担割合

相続人が複数いる場合、各相続人は特別寄与料の総額に、自分の相続分(法定相続分または遺言で指定された相続分)を掛けた額を負担します。

例えば、特別寄与料の総額が300万円で、相続人が法定相続分2分の1ずつの長男・次男の2人だとすると、長男と次男がそれぞれ150万円ずつを負担する整理になります。

特別寄与者は、相続人全員にまとめて請求するのではなく、相続人それぞれに対してその相続分に応じた額を請求する形になります。

金額算定の考え方

具体的な金額の算定方法について、法律は詳細を定めていません。

一般的には、貢献の期間や内容、財産への影響などを総合的に考慮して、当事者間の話し合いや家庭裁判所の判断によって決められます。

ここで、特別寄与料の金額を以下の仮定の事例で計算してみます。

介護をしたケース
(療養看護型)の計算式

亡くなった方を介護したケースでは、ヘルパーに介護を依頼した場合の日当額を基準にする方法が用いられることがあります。

計算式の一例:ヘルパーに依頼した場合の日当額 × 介護した日数 × 裁量割合

それぞれの目安は、次の通りです。

  • ヘルパーに依頼した場合の日当額
    介護保険の介護報酬基準などを参考に、1日あたり5,000円〜8,000円程度で設定されることがあります。
  • 介護した日数:実際に介護にあたった日数。
    介護日誌など、客観的な記録で示せると説得力が高まります。
  • 裁量割合:親族には扶養義務
    (家族を支える法律上の義務)があり、介護の専門家でもないという観点から、0.5〜0.9の範囲で設定される可能性があります。

要介護2の親を
3年間在宅介護したケースの
計算式

次のような前提条件で計算してみます(あくまで仮定値による試算例です)。

項目前提条件
亡くなった方要介護2の親
特別寄与者子の配偶者
(長男の妻など)
介護期間3年間(1,095日)
介護日当額8,000円
裁量割合0.7

計算式に当てはめると、次のようになります。

8,000円 × 1,095日 × 0.7 = 6,132,000円

この場合、特別寄与料の概算は約613万円です。

ただし、これは仮定の数値を用いた一例であり、実際の金額は、貢献の期間・内容、財産状況、扶養義務の範囲などを総合的に考慮して個別に判断されるため、必ずこの金額になるとは限りません

家業を手伝ったケース
(家業従事型)の計算式

亡くなった方の家業を無償で手伝っていたケースでは、本来もらえたはずの給与額をベースに計算する考え方が用いられることがあります。

計算式の一例:本来もらえたはずの
年間給与額 × 手伝った期間 × 裁量割合

「本来もらえたはずの年間給与額」は、同じ業種・同じ規模で同様の仕事をした場合の賃金統計(賃金センサスなど)を参考に算定されることがあります。

いずれの計算式も、最終的には個別の事情を踏まえて家庭裁判所で判断されるため、見通しを立てる際は弁護士などの専門家に相談すると安心です。

請求の期限は
意外と短いので要注意

特別寄与料の請求には、比較的短い期限が定められています。

家庭裁判所への申立ては、次のいずれかが経過すると認められなくなります。

  • 特別寄与者が、亡くなったことと
    相続人が誰かを知った時から6か月
  • 亡くなった時から1年

これらの期限は、法律上「除斥期間(じょせききかん)」と呼ばれる厳格な期限と解されています。

通常の「時効」とは異なり、当事者間で話し合いや請求の意思表示を行っても、期限の進行が止まったりリセットされたりすることはありません。

そのため、相続人と話し合いを進めている間にも、家庭裁判所への申立てができる期限は同じように経過していきます。

「介護していた家族が亡くなった」「相続人とまだ話し合えていない」というタイミングで、6か月という期限はあっという間に過ぎてしまいます。

請求を検討している場合は、できるだけ早めに動き出すことが大切です。

請求の手続きは「2ステップ」

特別寄与料を請求する流れは、大きく次の2ステップです。

それぞれ順番に見ていきましょう。

STEP1:
まずは相続人との話し合い

最初に行うのは、特別寄与者から相続人に対して、特別寄与料の支払いを求める旨を伝え、金額や支払時期について話し合うことです。

話し合いで合意ができれば、合意書を作成し、合意内容に従って支払いが行われます。

この段階で、貢献の内容や期間を示す資料(介護記録、家計簿、医療機関とのやり取りの記録など)を整理しておくと、話し合いがスムーズに進みやすくなります。

STEP2:家庭裁判所への
調停・審判の申立て

話し合いで合意に至らない場合や、そもそも話し合いができない場合は、家庭裁判所に「特別の寄与に関する処分」の調停を申し立てることになります。

申立先は、相手方の相続人が住んでいる地域を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で決めた家庭裁判所です。

申立てには、申立書のほか、戸籍関係書類や貢献の事実を示す資料などの提出が求められます

詳しい手続案内や申立書の書式は、裁判所のウェブサイトで公開されています。

特別寄与料には相続税がかかる

特別寄与料は法律上の金銭請求権ですが、税金の世界では「相続税」の対象として扱われます

「みなし遺贈」
として相続税がかかる

国税庁の整理では、特別寄与料は相続税法上「亡くなった方から遺贈(遺言によって財産をもらうこと)により取得したもの」とみなされ、相続税の課税対象となります。

特別寄与者本人は、特別寄与料の額が確定したことを知った日の翌日から10か月以内に、相続税の申告書を提出する必要があります。

一方、すでに相続税の申告を済ませた相続人が、特別寄与料を支払ったことで自分の相続税が減る場合は、確定を知った日の翌日から4か月以内に「更正の請求(納めすぎた税金の返還を求める手続き)」を行う必要があります。

通常の相続税の申告期限(亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内)とは別の起算点が設定されているうえ、立場によって期限も異なる点に注意が必要です。

相続税が「2割増し」
になる点にも注意

相続税には、亡くなった方の1親等の血族(子と親)・配偶者以外の人が財産を取得した場合、税額が2割増しになる仕組みがあります(2割加算)。

特別寄与者は、典型的には子の配偶者(長男の妻など)や甥姪なので、1親等の血族・配偶者以外にあたり、2割加算の対象になります

税務上の取扱いはケースによって異なる場合があるため、具体的な計算については税理士に確認すると安心です。

請求にあたって
意識しておきたいポイント

特別寄与料の請求を検討する場合、制度上のルールに加えて、以下のような実務的に意識しておきたい点があります。

一つずつ詳しく解説します。

貢献の事実を示す資料を
具体的に残しておく

特別寄与料が認められるためには、貢献の内容・期間・無償であったことなどを、後から客観的に示せることが重要です。

実務上、次のような資料を組み合わせて整理しておくと、話し合い・調停・審判の場面で役立つことがあります。

項目主な資料
介護・看護の事実を
示すもの
介護日誌
 (誰がいつどのような介護を何時間行ったかを記録した
もの)
被相続人の診断書やカルテ
 (医師による病状・要介護度の証明)
要介護認定通知書 (要介護度を公的に示す記録)
ケアマネジャー等とのメール・LINE等のやり取り
 (介護調整の経緯を示すもの)
介護のための住宅改修や福祉用具購入の領収書、
 改修箇所の写真
金銭的な負担や立替えを
示すもの
医療費・介護用品・施設費用の領収書
銀行振込履歴や通帳のコピー
 (亡くなった方のために送金した記録)
公共料金や家賃の支払記録 (特別寄与者が立替えた場合)
家業を手伝った場合の
もの
勤務実態を示す日報
業務日誌、給与明細の有無を示す資料
取引先とのメールや受発注の記録
 (関与の度合いを示すもの)
事業に関する税務申告書・帳簿
 (手伝っていた期間の事業状況を確認できる資料)

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項目主な資料
介護・看護の
事実を示すもの
介護日誌
 (誰がいつどのような介護を何時間行ったかを記録したもの)
被相続人の診断書やカルテ
 (医師による病状・要介護度の証明)
要介護認定通知書 (要介護度を公的に示す記録)
ケアマネジャー等とのメール・LINE等のやり取り
 (介護調整の経緯を示すもの)
介護のための住宅改修や福祉用具購入の領収書、改修箇所の写真
金銭的な負担や
立替えを示すもの
医療費・介護用品・施設費用の領収書
銀行振込履歴や通帳のコピー
 (亡くなった方のために送金した記録)
公共料金や家賃の支払記録 (特別寄与者が立替えた場合)
家業を手伝った
場合のもの
勤務実態を示す日報
業務日誌、給与明細の有無を示す資料
取引先とのメールや受発注の記録
 (関与の度合いを示すもの)
事業に関する税務申告書・帳簿
 (手伝っていた期間の事業状況を確認できる資料)

これらをすべて揃える必要はありませんが、複数の資料を組み合わせると貢献の実態を示しやすくなります。

期限の短さに注意する

前述のとおり、家庭裁判所への申立てができる期限は最短で「亡くなったことと相続人が誰かを知った時から6か月」です。

亡くなった直後は、葬儀や遺産分割の対応で慌ただしい時期と重なるため、特別寄与料を請求するかどうかは早めに検討を始めることが大切です。

請求できないケースも
あることを踏まえる

親族の範囲、無償性、貢献の程度などの条件を満たさない場合、特別寄与料は認められません

また、相続人との関係性によっては、話し合いが難航することも考えられます。

請求すべきかどうか、請求した場合に見込まれる金額や手続きの負担などについては、個別の事情を踏まえて専門家に相談すると安心です。

よくある質問

Q.遺言で「全財産を長男に
相続させる」と
書かれていても、
特別寄与料は請求できますか?

A.請求できます。特別寄与料の請求権は、遺言の内容によって直接左右されるものではありません。

遺言で全財産を取得した相続人がいる場合でも、その相続人が自身の取得分に応じて特別寄与料を負担することになります。

もっとも、遺贈分を除いた相続財産の範囲が金額の上限となる点には注意が必要です。

Q.相続人が複数いる場合、
誰に対していくら
請求できますか?

A.各相続人は、特別寄与料の総額に自分の法定相続分(または遺言で指定された相続分)を掛けた額を負担します

例えば、特別寄与料の総額が300万円で、法定相続分2分の1ずつの長男・次男の2人が相続人である場合は、長男と次男がそれぞれ150万円ずつを負担する整理になります。

Q.兄弟姉妹や複数の親族で
介護を分担していた場合は
どうなりますか?

A.複数の親族が介護に関与していた場合でも、それぞれが「無償」「特別の貢献」などの条件を満たしているかが個別に判断され、条件を満たす各人がそれぞれ特別寄与料を請求できます

ただし、合計した請求額が金額の上限を超える場合は、各人の貢献度に応じて按分(あんぶん)するなどの調整が必要になることもあります。

そのため、誰がどの程度関わったかを示す資料を、個別に整理しておくとよいでしょう。

まとめ

特別寄与料は、2019年7月に施行された制度で、相続人ではない親族が、亡くなった方を無償で介護するなどして財産の維持・増加に貢献した場合に、相続人へ金銭を請求できる仕組みです。

対象となる親族の範囲、認められる条件、金額の上限、請求期限、手続きの流れがあらかじめ定められており、まずは一般的なルールを正しく理解しておくことが大切です。

もっとも、個別のケースで認められるかどうか、どの程度の金額が見込めるかは、貢献の内容や期間、相続人との関係性などによって判断が異なります。

請求を検討する場合や、自分が請求される側になっている場合には、弁護士などの専門家に相談することで、状況に応じた整理や手続きのサポートを受けることが可能です。

【執筆時点】2026年5月現在の法令に基づき作成。

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