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遺言執行者の権限(相続法改正)

最終更新日 2019年 02月11日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

遺言執行者の権限の一般的明確化

改正相続法で、遺言執行者の権限が明確になりました。

改正前は、遺言執行者の法的地位について条文上明確ではなく、相続人とのトラブルや訴訟の当事者適格について争いがありました。

改正相続法で、遺言執行者の責務は、相続人の利益のためではなく、「遺言の内容を実現する」ことであることが明確化されました。

そのため、遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有することになります(民法第1012条1項)。

そして、遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければなりません(民法第1007条)。

この規律は、施行前に開始した相続に関し、同日以後に遺言執行者になる者にも適用されます(附則第8条1項)。

遺言執行者の行為の効果については、遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生じることとされました(民法第1015条)。

遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができません(民法第1013条)。

改正相続法は、この規定に違反した行為を無効としました。

ただし、これをもって善意の第三者に対抗することはできません(同条2項)。

また、これらについては、相続人の債権者(相続債権者を含む)が相続財産について差押等の権利を行使することを妨げない、としています(同条3項)。

特定遺贈・特定財産承継遺言の場合の遺言執行者の権限明確化

改正相続法は、特定遺贈および「相続させる」旨の遺言(特定財産承継遺言)がなされた場合の遺言執行者の権限について明確にしました。

(一)特定遺贈の場合

改正相続法では、遺言執行者の権限は、次のように定められました。

①特定遺贈がされた場合において、遺言執行者があるときは、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができる(民法第1012条2項)。

②遺言者が遺言において①と異なる意思表示をしているときは、その意思表示に従う。

この規律は、一部を除き、2019年7月1日より施行されますが、同日以後に遺言執行者になる者にも適用されます(附則第8条1項)。

(二)特定財産承継遺言の場合

「特定財産承継遺言」とは、遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人または数人に承継させる旨の遺言(いわゆる「相続させる」旨の遺言)です(民法第1014条2項)。

この場合、たとえば不動産を相続した相続人は、単独で登記申請をすることができる(不動産登記法第63条2項)ので、遺言執行者の職務は顕在化しませんでした。

しかし、当該相続人が長期間所有権移転登記をせずに放置している間に他の相続人が当該不動産につき自己名義に所有権移転登記をしてしまったような場合には、遺言の実現が妨害されたといえ、遺言執行者の職務が顕在化することになります。

また、預貯金債権について特定財産承継遺言があった場合の遺言執行者の払戻請求権の有無は明確ではありませんでした。

そこで、改正相続法では、遺言執行者の権限は、次のように定められました。

①特定財産承継遺言がされた場合において、遺言執行者があるときは、遺言執行者は、その相続人が対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる(民法第1014条2項)。

②①の財産が預貯金債権であるときは、遺言執行者は、預貯金の払い戻しの請求をする権限も有する(同条2項)。

③①の財産が預貯金債権であり、かつ、特定財産承継遺言の目的財産が預貯金債権の全部であるときは、遺言執行者は、預金または貯金の契約の解約の申し入れをする権限も有する。

④②遺言者が遺言において①~③と異なる意思表示をしているときは、その意思表示に従う(同条4項)。

これらの規律は、2019年7月1日より施行されますが、施行日前にされた特定の財産に関する遺言にかかる遺言執行者によるその執行については適用されません(附則第8条2項)。

遺言執行者の復任権

相続法改正前においては、遺言者が遺言に反対の意思表示をした場合を除き、疾病や長期不在などのやむを得ない事由がなければ、遺言執行者は、その任務を第三者に行わせることができないとされていました。

しかし、専門知識等の関係で、遺言執行の任務を法律家等に行わせることが適切であることも多いことから、改正相続法では、遺言執行者の復任要件を緩和しました。

改正相続法では、次のようになります(民法第1016条)。

①遺言者が遺言で反対の意思表示をしていない限り、
②遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。

③②の場合において、第三者に任務を行わせることが「やむを得ない事由」によるときは、遺言執行者は、第三者の選任および監督についての責任のみを相続人に対して負担する。

この規律は、2019年7月1日より施行されますが、施行日前にされた遺言については適用されません(附則第8条3項)。

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