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持ち戻し免除の意思表示の推定(相続法改正)

最終更新日 2019年 02月11日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

被相続人から共同相続人に対して遺贈された財産および婚姻や養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与された財産を「特別受益」といいます。

特別受益とされると、その財産の価額を相続財産に持ち戻した上で、指定または法定相続分を計算し、そこから、その共同相続人が遺贈または贈与で得た財産を差し引いて、その共同相続人の具体的相続分とされます(民法第903条1項)。

ただし、相続人が持ち戻しを免除する意思表示をしたときは、遺留分を侵害しない範囲で、当該持ち戻しの処理は行われないこととなります(民法第903条3項)。

たとえば、相続人として、妻と子1人を残して被相続人が死亡し、相続財産として、1000万円の現金があるとします。

そして、被相続人は、生前に妻に対して特別受益として1000万円を贈与していたとします。

この場合、生前贈与の1000万円が相続財産に持ち戻され、2000万円となります。

妻の法定相続分は2分の1なので、1000万円が具体的相続分です。

特別受益として得た財産が1000万円なので、これを差し引くと、0円となります。

したがって、妻が相続財産から得る財産はないこととなり、子が1000万円を相続します。

しかし、被相続人が、遺言により特別受益の持ち戻しを免除する意思表示をしている場合には、持ち戻しの処理がされないこととなりますので、相続財産1000万円に対する妻の法定相続分2分の1である500万円を妻が相続することとなり、子は残りの500万円を相続することとなります。

子の遺留分は、500万円ですので、遺留分を侵害しません。

この持ち戻し免除は、被相続人が、意思表示をすることが要件となっています。

そこで、今回の改正相続法では、一般に、被相続人としては、持戻しを免除する意思があることが通常であること、高齢となった配偶者の一層の保護を図ること、長期間にわたり婚姻関係にある夫婦については、通常、他方の配偶者の財産形成に対する貢献度が高いこと、などを趣旨として、持ち戻し免除の意思表示がない場合でも、その意思表示を推定する規定を新設しました(民法第903条4項)。

具体的には、
①婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、
②居住の用に供する建物またはその敷地を遺贈または贈与したとき
という要件を満たしたときは、持ち戻し免除の意思表示があったものと推定されます。

ここでは、「推定」ということになっていますので、被相続人が持ち戻し免除をしない旨の意思表示をしているような場合には、推定が覆ることになり、原則どおり、持ち戻しがされることになります。

この推定規定は、2019年7月1日から施行ですが、施行日前にされた遺贈または贈与については、適用されません。

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