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弁護士法人みらい総合法律事務所

隠蔽又は仮装の故意

隠蔽又は仮装の故意

無申告で隠ぺい仮装の故意否定して重加算税取消裁決

無申告事例において、重加算税賦課決定が取り消された裁決例を解説します。

令和2年2月13日裁決です。

事案

●請求人は昭和60年に設立された有限会社である

●請求人は設立以降平成15年の事業年度までは税理士に依頼し、確定申告をしていたが、翌事業年度から申告していない

●平成30年に税務調査が行われ、調査の結果、期限後申告をした

●課税庁は、本件無申告は隠蔽又は仮装に基づくものと認定し、重加算税賦課決定をした

(裁決)

●請求人が、法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認められる場合には、重加算税賦課要件を満たす

●請求人が平成16年の事業年度に申告をしなかったのは、従前の税理士に依頼を断られたからである

●その後も複数名の税理士に税務代理を依頼したが、断れていることからすると、漫然と無申告の状態を放置していたわけではなく、むしろ、申告をしようとしていたことがうかがえる

●税務調査において、代表者は、一度は請求書などを捨てたと申述したものの、翌日には管理していた書類を調査官に提示したことからすると、直ちに虚偽の答弁を行ったとまで評価することはできない

●請求人は、申告の必要性を認識しながら、これをしなかったことは認められるものの、税を免れようとする確定的な意思に基づいて無申告を貫いていたとまで評価することはできない

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以上です。

規範としては、やはり、「意図を外部からもうかがい得る特段の行動」が使用されています。

そして、その認定にあたっては、他の裁決例でもよくでてきますが、

●仮装又は隠蔽の意図が貫かれているか

←税務調査で隠そうとしているか、あるいは素直に応じているか

が重視されています。

また、今回は、無申告の事例なので、「無申告を貫こうとする態度」と矛盾する行動を探して主張することになります。

そうすると、税理士に依頼して申告しようとしていた、という事実主張が力を発揮する、ということになっています。

重加算税については、取消事例も多いので、重加算税賦課決定がされた際は、適法性について精査することをおすすめしたいと思います。

過少申告とは別の隠ぺい仮装を否定し重加算税取消裁決

平成30年10月2日裁決です。

相続財産である出資金の存在を知りながら相続税申告の際、税理士に告げなかったことが隠蔽又は仮装と言えるかどうかが論点となった事例です。

国側は、請求人が各共済契約について、

(1)関与税理士からの指示に基づき解約返戻金相当額等証明書を取得したこと

(2)被共済者等の名義を請求人に変更したこと、

(3)出資金については、払戻請求を行ったことなどの各手続等(本件手続等)を行ったにもかかわらず、本件税理士に各共済契約及び出資金の存在を一切伝えなかったこと

をもって、隠ぺい又は仮装の行為に該当する旨主張しました。

しかし、国税不服審判所は、

積極的な隠蔽又は仮装が存在しない場合の最高裁平成7年4月28日判決における規範である

「納税者が、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解するのが相当である。」

とした上で、

●請求人が行った本件手続等は相続により財産を取得した相続人が通常行う手続と外形上何ら異なるものではないこと、

●上記各共済契約のうち満期共済契約の返戻金及び上記出資金の払戻金が相続財産として申告されている貯金の解約金の入金口座と同一の口座に入金されていること

からすれば、

請求人が本件税理士に各共済契約及び出資金の存在を一切伝えなかったとしても、請求人が当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づく過少申告をしたとは認められない。

と判断し、重加算税賦課決定処分を取り消しました。

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税務調査において相続財産が発見された場合において、相続人がその財産の存在を知りながら税理士に告げなかった、というような場合は、重加算税指摘を受けることが多いと思います。

しかし、税理士を告げなかった一事をもって隠蔽又は仮装にあたるわけではありません。

隠そうとする意図がうかがわれるような「行為」があるかどうか、また、隠そうとする意図と矛盾するような「行為」(たとえば質問に特に隠さず素直に回答するなど)があるかどうか、検討を要するものと考えます。

隠ぺい仮装の故意が否定され重加算税取消裁決

国税不服審判所平成17年1月11日裁決を解説します。

売上計上漏れについて、重加算税を課せられたところ、それが取り消された事例です。

税目は、法人税。

事案としては、請求人が事務所の窓口で受領した売上代金等については入金帳に記載しているものの、入金(売上)伝票に記載せず、その結果、売上計上漏れが生じた、というものです。

【課税庁の主張】

請求人が本件売上げの代金を現金で受領しているにもかかわらず益金の額に算入しなかったこと及び調査担当職員に対して「小遣い程度の金額なので使ってしまったかもしれない」と申述したことから、「隠ぺい又は仮装」があったと主張しました。

国税不服審判所は、次のように判断して、重加算税を取り消しました。

【裁決の理由】

売上げに係る入金の事実を本件入金帳に記録したものの、本件売上げに係る入金(売上)伝票は起票されておらず、総勘定元帳にもその記録はなく、本件売上げに係る代金の行き先は不明である。

このように、本件売上げが請求人の所得金額の計算上益金の額に算入されることなく申告漏れとなった理由については、請求人の事務処理上のミスからであることも否定できず、請求人が積極的に本件売上げを所得金額から除外したと認定できる事実は認められない。

【ポイント】
隠ぺい又は仮装が認められるためには、「納税者が故意に課税標準又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装」することが必要とされており(最高裁昭和62年5月8日判決)、過失によって売上が除外された場合には、重加算税の賦課要件を満たしません。

本件では、「請求人の事務処理上のミスからであることも否定できず、請求人が積極的に本件売上げを所得金額から除外したと認定できる事実は認められない。」とされており、「故意」による隠ぺい又は仮装行為が否定されました。

このように、「故意」か「過失」かによって重加算税の課税要件を満たすかどうかが決まってくるケースがありますので、重加算税を課せられた場合には、課税庁の収集した証拠によって、「隠ぺい又は仮装の故意」が立証されているか(立証責任は課税庁)、を吟味することが大切だと思います。

売上除外で重加算税取消裁決

国税不服審判所平成23年2月23日裁決(J82-1-03)です。

【事案】

・請求人は、スーパーマーケットなどで場所を借りて、売子等に商品の販売を行わせる事業を行っていた。

・請求人は、スーパー等から売上金からスーパー等の取り分を差し引いた金員を仮受金勘定に計上し、一定の処理をした上で売上勘定に振り替えていた。

・しかし、本件取引については、仮受金勘定のままになっており、売上計上漏れとなった。

・処分庁は、隠ぺい又は仮装があるとして重加算税賦課決定をした。

【処分庁の主張】

・請求人は、税理士の事務所の事務員のEから、仮受金勘定の残高が累増する理由を解明するよう求められたにもかかわらず、あえて適正な経理処理をせずに放置していたものと認められる。

・請求人は、本件拡張員帳合料(ちょうあいりょう)の支払について、現金出納帳に業務委託手数料の支払として虚偽の記載を税理士に経理関係資料の一部を提出せず、また、本件拡張員帳合料の取引内容を具体的に説明しないことにより、D税理士をしてこれを外注費と経理せしめた。

・請求人は、仮受金勘定の残高の中に請求人の所得になるものが含まれているとの認識がありながら正当な経理処理をせずにあえてこれを放置し、さらに、本件御取引先別台帳の存在を隠匿してこれをD税理士に提出しなかったのであり、このことは、所得を過少に申告するという確定的な意図のもとでなされた行為であり、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと解されるから、隠ぺい又は仮装を行っていたことになる。

【裁決】

・本件御取引先別台帳がD税理士に提出されていなかった事実があっても、その保管状況や本件調査時の請求人の態度、事実関係が明らかになる他の資料をD税理士に提出していることなど事実の隠ぺい又は仮装の故意を有する者及び過少申告の意図を有する者の行動にしては不自然な事実が認められることに照らすと、かかる事実が請求人の故意によるものであるといえないだけでなく、この事実から請求人に過少申告の確定的な意図があったとまでいうこともできない。

・税理士の事務員であるEが、請求人の取引について既に熟知しており、設立当初の関与税理士主導の下に経理処理の方法が確立していたのであるから、請求人が取引内容の具体的説明を税理士自身にしなかったからといって、それが故意の隠ぺい又は仮装の行為であるとか、過少申告の確定的意図を外部からうかがい得る特段の行動であるなどということはできない。

・請求人、税理士及びEが、帳簿書類等について十分な検討をし、かつ、意思疎通を十分に図るなどして原因を解明して適正な経理処理をすべきであり、請求人の経理処理が適正さを欠いた処理であったことについて非難を加えられるべきことであったとしても、請求人が積極的な意思をもってあえて適正な経理処理を行うことなくこれを放置したとまで認めるには至らず、かかる仮受金勘定の誤った経理処理をもって、故意の隠ぺい又は仮装の行為や過少申告の確定的意図を外部からうかがい得る特段の行動があったとまでいうことはできない。

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【解説】

売上除外があり、納税者から税理士に対し、一部の資料が提出されなかった場合、税務調査で、売上を隠蔽する意図があるとして、重加算税賦課決定がされることがあります。

隠ぺい又は仮装が認められるためには、「納税者が故意に課税標準又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装」することが必要とされており(最高裁昭和62年5月8日判決)、過失によって売上が除外された場合には、たとえそれが「重過失」であったとしても、重加算税の賦課要件を満たしません。

そして、故意の立証責任は処分庁側にあります。

納税者が故意に隠蔽仮装をしたわけではない場合には、以下の点に留意して反論を行うことになります。

・経理書類の一部が税理士に提出されなかった場合でも、他の経理書類と一緒に保管され、特に隠そうとする意図が見られない場合には、当該事実を主張します。

・また、他の資料をもって税理士が知りうる情報が提供されている場合には、隠ぺい仮装の故意と矛盾することから、当該事実を主張します。

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