遺産分割調停はどこの裁判所に申立てができるのか?
遺産分割調停は、申立てる裁判所を正しく選ぶ必要があります。
申立てる裁判所の管轄を誤れば、手続きがスムーズに進まない可能性もあるでしょう。
遺産分割調停は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てます。
ただし、条件によっては別の裁判所でも対応が可能です。
この記事では、遺産分割調停を申立てる裁判所の基本ルールや、申立てる判断のポイントを解説します。
目次
裁判所における「管轄」とは
遺産分割調停では、申立てできる裁判所が「管轄」によって決まります。
管轄の意味を理解すれば、どの家庭裁判所に申立てるべきか判断しやすくなります。
まずは、管轄の基本的な考え方を確認しましょう。
管轄の基本的な考え方
管轄とは、どの裁判所がその事件を担当するかを定めたルールです。
日本では、すべての裁判所が自由に事件を扱えるわけではありません。
事件の内容や当事者の住所地などに応じて、担当する裁判所があらかじめ決められています。
遺産分割調停でも同様に、どの家庭裁判所に申立てるかは管轄によって判断されます。
管轄が決められている理由
管轄が決まっている理由は、裁判手続きを円滑かつ公平に進めるためです。
担当する裁判所が明確でなければ、どこに申立てるべきか分からず、手続きが混乱してしまいます。
また、当事者が遠方の裁判所に呼び出される負担を避ける意味もあります。
一定のルールに基づいて裁判所を振り分けることで、手続きの効率性と公平性が保たれています。
遺産分割調停はどこの裁判所へ
申立てすべきか?
遺産分割調停は、どの裁判所にも申立てられるわけではありません。
申立て先は、法律でルールが決まっています。
申立てをする裁判所を選ぶための基本的な考え方は、以下の通りです。
一つずつ詳しく解説します。
原則は「相手方の住所地の
家庭裁判所」
遺産分割調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てます。
相手方とは、自分以外のすべての相続人を指します。
遺産分割調停を申立てる裁判所は、申立人自身の住所地ではない点を注意しなければなりません。
相続人が複数いる場合は、いずれか1人の住所地を基準に裁判所を選べます。
複数の候補がある場合でも、いずれか一つの家庭裁判所に申立てれば問題ありません。
合意があれば別の裁判所でも
可能
遺産分割調停は、相手方の住所地の家庭裁判所に申立てることが原則です。
ただし、相続人全員の合意があれば、別の家庭裁判所に申立てることも可能です。
例えば、相続人全員が集まりやすい場所の裁判所を選ぶという対応もできます。
合意がある場合に限られるため、事前に全員の意思を確認しておくことが重要です。
家庭裁判所以外に
申立てできるのか?
遺産分割調停は家庭裁判所で行う手続きですが、「他の裁判所でも申立てができるのか」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
じつは、遺産分割調停は家庭裁判所の専属管轄となっており、他の裁判所で行うことはできません。
なぜ地方裁判所や簡易裁判所では対応できないのか、その理由と違いを詳しく解説します。
地方裁判所で扱えない理由
遺産分割調停は、家庭に関する事件として扱われるため、地方裁判所では対応できません。
地方裁判所は主に民事訴訟や刑事事件など、争いを法的に判断する手続きを担当しています。
一方で、遺産分割調停は相続人同士の話し合いを調整し、合意形成を目指す手続きです。
そのため性質が異なり、専門的に家庭事件を扱う家庭裁判所に限定されています。
簡易裁判所との違い
簡易裁判所は、主に比較的少額の金銭トラブルや日常的な民事紛争を扱う裁判所です。
例えば、貸金の返還請求や損害賠償請求などが対象です。
一方で、遺産分割調停は相続人同士の関係調整や財産の分配を行う手続きであり、家庭に関する問題として家庭裁判所の専属管轄とされています。
そのため、簡易裁判所では遺産分割調停を取り扱うことはできません。
相手方が複数いる場合の
管轄について
相手方が複数いる場合、どの家庭裁判所に申立てるべきか迷うことがあります。
ここからは、相手方が複数いるときの管轄の基本的な考え方を解説します。
いずれか1人の住所地の
家庭裁判所を選ぶ
相手方が複数いる場合でも、すべての相手方の住所地を基準にする必要はありません。
いずれか1人の相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てれば対応できます。
そのため、複数の候補があっても裁判所ごとに申立てを分ける必要はありません。
まずは、誰の住所地を基準にするかを決めることが重要です。
管轄を選ぶ際の判断基準
どの家庭裁判所に申立てるかは、いくつかの条件を踏まえて選ぶことが大切です。
ここでは、裁判所を選ぶ際の判断ポイントを整理します。
一つずつ詳しく解説します。
アクセス
相続人が裁判所へ出向く際の負担を考えれば、アクセスのしやすさは重要な判断材料になります。
相続人が集まりやすい場所を選ぶことで、期日への出席がしやすくなります。
遠方の裁判所を選ぶと移動の負担が大きくなるため、移動時間や交通の利便性も考えて決めることが大切です。
進行のしやすさ
裁判所を選ぶ際は、手続きの進めやすさも重要な判断基準です。
相続人同士の距離や関係性によっては、話し合いがスムーズに進む場所を選ぶ方が負担を減らせます。
集まりやすい裁判所ならば期日の調整もしやすくなり、調停の進行が安定しやすくなります。
弁護士の所在地
弁護士に依頼している場合は、弁護士の所在地も裁判所選びの判断材料のひとつです。
弁護士事務所から裁判所までの距離が近いと、書類の準備や提出、期日への対応がしやすくなります。
また、打ち合わせや連絡も取りやすくなるため、手続き全体の流れがスムーズになるでしょう。
遠方の裁判所を選ぶと移動や調整の負担が大きくなるため、弁護士の活動拠点も考慮して選ぶことが重要です。
家庭裁判所の管轄を判断する
具体例
ここまで裁判所の管轄の基本的な考え方を解説しましたが、実際のケースでは判断に迷うこともあります。
家庭裁判所の管轄をどのように判断するのか、以下の具体例を基に確認していきましょう。
相続人が東京と大阪にいる場合
相続人が東京と大阪にいる場合は、いずれか1人の住所地を基準に家庭裁判所を選びます。
例えば、東京に住む相続人の住所地を選べば東京家庭裁判所に、大阪を選べば大阪家庭裁判所に申立てることができます。
どちらを選んでも手続き自体に違いはありませんが、アクセスのしやすさや関係者の負担を考えて決めることが重要です。
全員が別々の地域にいる場合
相続人がそれぞれ別々の地域に住んでいる場合でも、申立てできる家庭裁判所は1つに絞られます。
いずれか1人の相続人の住所地を基準に選べば、その家庭裁判所で手続きを進めることができます。
複数の候補がある場合は、アクセスのしやすさや関係者の負担を考えて選ぶことが大切です。
全員の住所地を使い分ける必要はありません。
海外在住者がいる場合
相続人の中に海外在住者がいる場合でも、国内に住んでいる相続人の住所地を基準に家庭裁判所を選びます。
海外在住者がいても特別な扱いになるわけではなく、原則のルールに従って申立てを行います。
そのため、いずれか1人の国内住所地を選び、その家庭裁判所で手続きを進めることになります。
海外在住者がいる場合は、書類のやり取りに時間がかかる点にも注意が必要です。
遺産分割調停の申立て方法や費用
遺産分割調停を進めるには家庭裁判所へ申立てを行う必要がありますが、そのためには必要書類の準備や費用の確認も必要です。
必要書類一覧
申立てには、相続関係や遺産の内容を確認できる書類を準備する必要があります。
事前に書類を揃えておけば、手続きをスムーズに進められるでしょう。
必要となる主な書類は、次の通りです。
- 申立書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産に関する資料
(不動産登記事項証明書、
預金通帳の写しなど) - 相続関係説明図
上記の書類を揃えることで、家庭裁判所で相続関係や遺産の内容を正確に確認できます。
申立てにかかる費用
遺産分割調停の申立てには、費用がかかります。
主に必要な費用の内訳は、収入印紙と郵便切手です。
収入印紙は申立手数料として使用し、金額は遺産分割調停の場合は、一般的に1,200円程度です。
これに加えて、家庭裁判所からの連絡用として郵便切手を納めます。
切手の金額や組み合わせは裁判所ごとに異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
また、弁護士に依頼する場合は、別途弁護士費用が発生します。
遺産分割調停の申立て手続きの
流れ
遺産分割調停の申立ては、家庭裁判所に申立てを行い、いくつかの工程を経て解決を目指します。
申立てから解決までの一連の流れは、以下の通りです。
一つずつ詳しく解説します。
申立書と必要書類の準備
遺産分割調停を申立てるためには、まず申立書と必要書類を揃えます。
戸籍謄本や遺産に関する資料など、相続関係を確認できる書類を準備します。
書類が不足していると手続きが進まないため、事前にしっかり確認しておくことが大切です。
家庭裁判所への申立て
書類が揃ったら、管轄の家庭裁判所へ申立てを行います。
申立書と必要書類を提出し、あわせて収入印紙や郵便切手も納めます。
申立てが受理されることで、調停手続きが正式に開始されます。
調停期日の通知
申立てが受理されると、家庭裁判所から調停期日が通知されます。
期日では相続人が順番に事情を説明し、解決に向けた話し合いが行われます。
日程は裁判所が調整し、当事者に通知されます。
調停期日で話し合い
調停期日では、調停委員を交えて遺産分割について話し合います。
相続人それぞれの意見を整理しながら、合意できる内容を探っていきます。
一度で決まらない場合は、複数回期日が開かれることもあります。
合意または不成立の判断
話し合いがまとまれば調停成立となり、合意内容が調停調書にまとめられます。
合意に至らない場合は調停不成立となり、手続きは終了します。
その後は審判手続きに移ることになります。
遺産分割調停における注意点
遺産分割調停の申立てでは、管轄や手続きの流れなど注意すべき点がいくつかあります。
スムーズに遺産分割調停を進めるためにも、間違いやすいポイントや注意点を理解しておきましょう。
一つずつ詳しく解説します。
申立てする管轄は
相続開始地ではない
遺産分割調停の申立て先は、相続が開始した場所ではありません。
例えば、被相続人が亡くなった場所がどこであっても、その住所地の家庭裁判所に申立てるわけではありません。
申立て先は、原則として相手方の住所地を基準に決まります。
誤解したまま手続きをすれば、管轄違いで手続きが進まない可能性があるため注意が必要です。
全員同じ裁判所に
行く必要はない
遺産分割調停では、相続人全員が同じ裁判所に同時に集まる必要はありません。
申立てをした家庭裁判所から、それぞれの相続人に対して期日が通知され、各自が指定された日時に出席する形で手続きが進みます。
そのため、遠方に住んでいる相続人がいる場合でも、同じ場所へ移動することを前提に準備する必要はありません。
調停では、調停委員を交えて順番に意見を伝えながら話し合いが行われます。
各相続人は個別に事情を説明できるため、必ずしも一堂に会する形式ではないことを知っておきましょう。
申立て後すぐに
解決するわけではない
遺産分割調停は、申立てを行ったからといってすぐに解決するものではありません。
話し合いは1回で終わることは少なく、複数回の期日を重ねて進められます。
相続人の人数や争点の内容によって期間は変わりますが、一般的には数か月から1年程度かかることが多いです。
財産の種類が多い場合や意見の対立が大きい場合には、さらに長期化することもあります。
そのため、ある程度時間がかかる手続きであることを前提に準備しておくことが重要です。
いきなり訴訟はできない
遺産分割については、いきなり訴訟を起こすことはできません。
まず家庭裁判所での調停を行うことが前提になっており、これを「調停前置主義」といいます。
調停で相続人同士の話し合いが行われ、それでも合意できない場合に限り、審判という手続きに進みます。
いきなり訴訟で白黒をつけるのではなく、まずは話し合いによる解決を優先する仕組みです。
まとめ
遺産分割調停の申立て先は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に限られます。
相続人が複数いる場合でも、いずれか1人の住所地を基準に選びます。
また、相続人全員の合意があれば、別の家庭裁判所を選ぶことも可能です。
管轄のルールや必要書類、手続きの流れを正しく理解しておくことで、スムーズに申立てを進められます。
判断に迷う場合や手続きに不安がある場合は、弁護士に相談することで適切な裁判所の選定や書類準備のサポートを受けることが可能です。
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