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相続回復請求権とは?どんな場合に請求できるか?

最終更新日 2026年 01月13日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

相続回復請求権とは?どんな場合に請求できるか?

この記事を読むとわかること

法律上の相続人ではないが戸籍上相続人となっている者(表見相続人)などが相続財産を占有している場合があります。

そうした場合には、真の相続人は、相続回復請求権によって相続の権利の回復を求めることが可能です。

具体的には、表見相続人が財産を独占しているケースや、無効な遺言が原因で相続権を侵害されているケースなどで利用できる制度です。

ここでは、相続回復請求権の概要や具体的なケース、請求方法、注意点まで解説します。

相続回復請求権とは

相続回復請求権とは、法律上の相続人としての権利を持つ「真正相続人」が、自分の相続権を行使できない状態になったときに利用できる制度です。

行使できなくなった相続権を取り戻すための法的手段を指します。

民法では、真正相続人が他の相続人や第三者によって不当に財産を取得された場合に、相続回復請求権を行使できることが定められています。

相続回復請求権は金銭的な補償を求めるものではなく、相続財産の返還や相続関係の正当性を取り戻すことを目的としています。

相続回復請求権を行使する人・
行使される人

相続回復請求権は、誰でも自由に行使できる権利ではありません。

真の相続人が行使できる権利です。

相続回復請求権を適切に判断するために、まずは請求権を行使できる人行使される人について知っておきましょう。

相続回復請求権を行使できる人

相続回復請求権を行使できるのは、「真正相続人」と呼ばれる人です。

真正相続人は、民法上における相続人を指し、法定相続人が該当します。

例えば、被相続人の配偶者や子供は法定相続人ですが、相続財産を取得できていない場合には、真正相続人として相続回復請求権を行使できる可能性があります。

一方で、相続放棄をした人や、そもそも相続人に該当しない人は、相続回復請求権を行使することはできません。

相続回復請求権を行使される人

相続回復請求権の行使対象になるのは、真正相続人の相続権を侵害している人です。

具体的には、法律上の相続人ではないが戸籍上相続人となっている者や相続欠格者などが相続財産を取得・管理しているようなケースが該当します。

このように相続人のように見えるものの、法律上は相続権を有していない人を「表見相続人」と呼びます。

また、他の相続人が遺産分割協議を行わずに相続財産を独占している場合も、その相続人が請求相手になることがあります。

さらに、相続人ではない第三者が相続財産を取得しているケースでは、その第三者に対して相続回復請求権を行使することも考えられます。

相続回復請求権を
行使できるケース

相続回復請求権は、相続権が不当に侵害されている特定の場面で利用する制度になります。

ここからは、相続回復請求権が行使される代表的なケースを紹介します。

一つずつ詳しく解説します。

相続人の一部が相続財産を
独占している

相続回復請求権が行使される代表的なケースとして、相続人の一部が相続財産を独占している場合が挙げられます。

例えば、兄弟のうち一人が他の相続人に何も知らせないまま被相続人の預貯金を引き出したり、不動産の名義を自分一人のものに変更したりするケースです。

こうした行為により、他の相続人が本来取得できるはずの相続財産を受け取れなくなっている状態は、相続権が侵害されている可能性があります。

相続財産を管理したり一時的に使ったりしているだけでなく、他の相続人が財産の受け取りや処分について話し合う機会すら与えられていない状態であることが判断基準になります。

相続人でない第三者が
相続財産を取得している

相続回復請求権は、本来は相続人でない第三者が相続財産を取得している場合にも行使されます。

例えば、法律上の相続権を持たない相続欠格者が被相続人名義の預貯金を解約したり、不動産の名義を取得したりするケースが挙げられます。

こうした場合、周囲からは相続人のように見えることもありますが、法律上は真正な相続人とは認められません。

相続回復請求権を行使すれば、このような第三者に対して財産の返還や相続人としての地位の回復を求めることが可能です。

第三者であることを示すための調査や、証拠の収集が重要なポイントになります。

無効な遺言によって
相続権を侵害されている

法律上無効とされる遺言に基づいて相続財産が処分され、真正な相続人が財産を取得できない場合も相続回復請求権を行使できるケースです。

例えば、遺言が法定の方式を満たしていない場合や、遺言作成時に遺言者の判断能力がなかった場合などが挙げられます。

具体的には、内容を理解できない状態で作成された遺言、成年後見制度の対象となる状況下で作成され無効と判断されるケースなどが該当します。

効力を持たない遺言によって特定の人が相続財産を取得している状態では、真正相続人の相続権が侵害されている状態と言えます。

相続回復請求権を行使することで、財産の返還や相続権の正当性を法的に主張することが可能です。

相続人であることを
知らされていなかった場合

相続が開始したにもかかわらず、自分が相続人であることを知らされていなかったケースもあるでしょう。

例えば、被相続人の前婚の子供や、法律上認知されている子供が存在しているにも関わらず、その事実が他の相続人から共有されないまま遺産分割の手続きが進められてしまう場合が挙げられます。

こうしたケースでは、相続人としての関与が一切ないまま手続きが完了し、本来受け取れるはずの相続財産を取得できていない状態に置かれることになります。

相続人であることを知らされていなかった人は、相続回復請求権を行使することで自身の相続人としての法的地位を回復することが可能です。

相続回復請求権が
行使できないケース

相続回復請求権は、正当な相続人であるにもかかわらず相続権を侵害された場合に行使できる重要な権利です。

しかし、どのようなケースでも請求できるわけではありません。

相続回復請求権が行使できない代表的なケースは、以下の通りです。

一つずつ詳しく解説します。

相続回復請求権の
期間制限が経過している

相続回復請求権には、法律で定められた期間制限があります。

相続人が侵害を知った時から5年、または相続開始から20年が経過すると、原則として相続回復請求権を行使することはできません。

この期間制限は、判例は時効と判示していますが、反対説も有力です。

侵害に気付いたものの長期間放置していた場合や、相続開始から相当年数が経過している場合には、請求自体が認められない可能性が高くなります。

真正相続人ではない

当然のことですが、真正相続人でなければ相続回復請求権を行使できません。

例えば、内縁の配偶者や相続人の配偶者、被相続人と生前に親しかった第三者などは、特別な事情がない限り相続人には該当しないと言えます。

また、相続放棄をした者も相続人ではなくなるため、相続回復請求権を行使することはできなくなります。

相続分の侵害にとどまる場合

相続回復請求権は、相続人としての地位が侵害された場合に認められる権利です。

そのため、相続分が少なく分配されたケースや、遺産の配分が不公平だと考えるケースは、相続回復請求権の対象にはなりません。

こうしたケースでは、相続回復請求権ではなく、遺産分割協議や遺留分侵害額請求によって解決すべきです。

相続権自体が否定されているのか、それとも相続の配分が問題なのかを正確に見極める必要があります。

相続財産が第三者に
善意取得されている

相続回復請求権は、原則として相続権を侵害した人物に対して行使されますが、相続財産が第三者に移転している場合には一定の制限があることを知っておかなければなりません。

とくに、その第三者が「善意無過失」、つまり相続に問題があることを注意していても知ることができなかった状態で財産を取得している場合には、相続回復請求によって財産の返還を求めることができない可能性があります。

例えば、相続人ではない者から不動産を購入した第三者が、その人物に相続権がないことを全く知らず、通常の取引として購入していたような場合です。

こうしたケースでは、不動産や高額な動産について第三者の取引安全が優先され、財産の返還ではなく、金銭による損害賠償請求になる可能性があります。

遺産分割協議の問題の場合

相続人全員が確定していて相続人としての地位に争いがない場合には、問題は相続回復請求権ではなく遺産分割協議の範囲に該当します。

例えば、「協議の内容に納得できない」「特定の相続人が多く取得している」などの事情は、相続回復請求権では解決できません。

この場合は、遺産分割協議のやり直しや、家庭裁判所での調停・審判で解決を目指します。

相続欠格・廃除により
相続権を失っている

相続欠格や相続廃除に該当する場合、その人物は相続権を失います。

そのため、相続欠格者や廃除された相続人は、相続回復請求権を行使することはできません。

例えば、被相続人に対する重大な非行があった場合などには、相続権自体が否定されます。

このような場合、相続回復請求権を主張しても認められないため、事前に自身の相続資格の有無を確認する必要があります。

相続回復請求権を
行使するための方法

相続回復請求権を実際に行使するには、法律上の手続きや書類の準備などが必要です。

相続回復請求権を行使する具体的な流れは、以下の通りです。

一つずつ詳しく解説します。

手元の資料を確認・整理する

まずは、自分が真正相続人であることや、相続権が侵害されていることを示す資料を揃えます。

戸籍謄本や除籍謄本、遺産の登記簿謄本、預貯金の通帳や取引履歴などが必要です。

これらの資料は、相手方に請求する際や、後の裁判で証拠として提示するためのものになります。

証拠が揃っていなければ、請求権の正当性を十分に示せない可能性があります。

相手方に内容証明で請求する

資料を整理したら、次に請求する相手に請求書を送ります。

一般的には、内容証明郵便を使用します。

その際に、請求の趣旨と理由を明確に伝えることが重要です。

内容証明を送付することで相手方が自主的に応じる場合もありますが、拒否された場合に備えて記録を残すことも可能です。

まずは、交渉や催告の形として解決の余地があるか確認します。

交渉で解決できない場合は
裁判を検討する

相手方が請求に応じない場合、家庭裁判所での調停や訴訟による請求を検討することになります。

裁判では、真正相続人であることや相続権の侵害があったことを証明するため、事前に整理した資料や証拠が必要です。

裁判手続きは複雑で専門知識も必要なため、弁護士などの専門家に相談して進めることが一般的です。

相続回復請求権を
行使する際の注意点

相続回復請求権を行使する際には、注意すべき点がいくつかあります。

ここでは、相続回復請求権を適切に行使するためのポイントを解説します。

時効・除斥期間に注意する

相続回復請求権は、行使できる期間に制限があります。

相続人が相続権の侵害を知った時から5年以内に請求しなければなりません。

また、相続開始から20年を経過すると、除斥期間により権利そのものが消滅します。

除斥期間は時効とは異なり、期間を過ぎると権利そのものが法的に消滅します。

そのため、相続回復請求権を行使する際は、早めに事実関係を確認して手続きを進める必要があります。

遺留分侵害額請求権との
違いを理解する

相続回復請求権と遺留分侵害額請求権は、混同されやすい制度です。

遺留分侵害額請求権とは、遺言や生前贈与によって法律で保障された最低限の取り分が侵害された場合に、その不足分を金銭で補償してもらうための権利です。

一方、相続回復請求権は、相続人として扱われていない、または相続権そのものが否定されている状況において、相続人としての地位や相続財産そのものを回復することを目的としています。

このように、両者は異なる制度になるため、違いを正しく理解せずに請求を行えば請求が認められないことや、予想外のトラブルを招く恐れがあります。

そのため、自身の状況が該当する制度を慎重に見極めることが大切です。

弁護士へ相談する

相続回復請求権は、相続関係の把握や証拠の整理、法定期間の確認など、検討すべき事項が多いです。

そのため、個人だけで正確に進めることは簡単ではありません。

とくに、相続人が多数いる場合や、相続人でない第三者が関与している場合には複雑化しやすいため、専門的な知識と経験が求められます。

また、相続回復請求権には時効や除斥期間(判例は時効)が定められており、対応が遅れると請求自体が認められなくなる恐れがあります。

誤った手続きの選択や、請求方法を誤ることで、正当な権利を十分に行使できない結果になることもあるため、早い段階で弁護士に相談することを推奨します。

まとめ

相続回復請求権は、真正相続人が相続権を侵害された場合に、正当な相続関係を回復するための重要な権利です。

しかし、行使するには期間制限があり、場合によっては認められないこともあります。

また、遺留分侵害額請求との違いや手続きの複雑さもあるため、個人だけで判断するのは難しいこともあるでしょう。

権利を確実に行使して財産を回復するためには、早めに専門家である弁護士へ相談して状況に応じた対応を検討することが大切です。

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