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相続分について

最終更新日 2026年 08月05日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

相続分について

この記事を読むとわかること

親などの被相続人が亡くなり相続が始まると、こんな疑問を持つ方は多いでしょう。

「自分はどれくらい遺産を受け取れるのか」
「兄弟姉妹で、どう分ければいいのか」
「遺言がある場合でも法定相続分どおりになるのか」

このとき重要になるのが「相続分」という考え方です。

相続分とは、各相続人(兄弟姉妹など)が、遺産をどのような割合で取得するのかを示す際に用いるもので、大きく分けて次の3つがあります。

  • 法定相続分 = 民法で定められた
    基本的な相続割合
  • 指定相続分 = 遺言によって指定された
    相続割合
  • 具体的相続分 = 特別受益や寄与分を
    考慮して調整された相続割合

本記事では、相続が始まったばかりで知識がない方、相続トラブルを抱えている方、相続で失敗したくない方などに向けて、相続分の基本から実務上の注意点まで、弁護士がわかりやすく解説します。

まずは相続分について
知っておくべき基礎知識

相続とは?

相続とは、簡単にいうと、亡くなった人(被相続人)の財産などの権利や義務を、残された家族(相続人)などが引き継ぐことをいいます。

注意したい財産の
プラス/マイナス

相続で注意したいのは、預貯金や不動産などのプラスの財産だけではなく、借金や未払金、保証債務などのマイナスの財産も引き継ぐことです。

単純に親の遺産を受け取ることができるというものではなく、まずは相続が始まったら次の3つを確認してください。

  1. 亡くなったのは誰か?
  2. 相続人になるのは誰か?
  3. どんな財産や負債があるのか?

相続には2種類ある

相続には大きく分けて「法定相続」と「遺言相続」があります。

遺言相続

遺言で相続について前もって指定しておくことを遺言相続といいます。
遺言書がある場合は、原則としてその内容が優先されます

法定相続

遺言書がない場合などでは、民法で定められた相続のルール(民法第889条、900条)にしたがって、遺産分割協議により相続割合を決定して相続することになります。

相続分とは?

相続分とは、各相続人が遺産をどの割合で取得するのかを示す割合のことです。
まずは、相続人のひとりである子どもの視点で見てみます。

たとえば、父が亡くなり、相続人が母と子ども2人だった場合、法律上の相続分は、母が2分の1、子ども2人がそれぞれ4分の1ずつとなります。
このように、遺産をどの割合で分けるかを考えるときの出発点になるのが相続分です。

もっとも、相続分は必ずしもそのまま「実際に受け取る金額」と一致するわけではありません
なぜなら、遺産には不動産、預貯金、株式、借金などさまざまな財産があり、さらに遺言、生前贈与、介護や事業への貢献(寄与分)なども問題になるからです。

つまり、相続分は、遺産分割を考えるうえでの基本的な割合ですが、そのとおりに分割する法的義務はなく、実際の分け方は相続財産の内容や相続人の間の事情によって変わることがあるわけです。

なお、被相続人は遺言によって、各共同相続人の相続分を指定することができ(民法第902条1項)、これを「指定相続分」といいます。

一方、相続分が指定されない場合には、民法の定めによって相続分が決まります。
これを「法定相続分」といいます。

詳しい内容は次項で見ていきます。

【解説動画】誰が相続人か調査する方法。
きちんと調べないと無効になります。

法定相続分について

法定相続分の基本ルール

民法で定められている相続分を「法定相続分」といいます。
被相続人の遺言がない場合、または遺言で相続分が指定されていない場合には、法定相続分が遺産分割での基本的な目安になります

相続人には「範囲」、「順位」、「相続分割合」の定めがあり、基本的なルールは次のようになっています。

配偶者

  • 配偶者がいる場合は、つねに相続人になります(民法第890条)。
  • 配偶者とは、婚姻届を出している法律上の夫または妻のことで、内縁の配偶者、事実婚のパートナー、婚約者は原則として法定相続人にはなりません。

それ以外の相続人

相続順位と法定相続分(割合)は、法的には次のように定められています。
順位は1~3がありますが、順位が高い血族相続人がいない場合は、後の順位の血族相続人が相続をすることになります。

第1順位:子ども

☑︎法定相続分:配偶者が2分の1
/子が2分の1

  • 実子だけでなく、前婚の子や法律上の養子も含まれます。
  • 嫡出子(法律上の婚姻関係にある夫婦の子)か、非嫡出子(婚姻していない男女の子)かは問題になりません。
  • 子が複数いる場合は、2分の1を人数で均等に分割します(子が2人なら、4分の1ずつ)。
  • すでに子が死亡している場合は、その子ども(孫)が代襲相続により相続人になります(民法第887条2項)。
  • 胎児は、すでに生まれたものとみなされるため相続人になります(民法第886条)。
  • 養子の場合、普通養子は実親と養親両方の相続人になりますが、特別養子は縁組によって実親との親族関係が終了するので、実親の相続人にはなりません。

第2順位:父母・祖父母

☑︎法定相続分:配偶者が3分の2
/親が3分の1

  • 第1順位の相続人(子・孫)がいない場合は、直系尊属である父母や祖父母が相続人になります。
  • 父母のほうが祖父母より優先順位は高くなります。
  • 両親がいる場合は、3分の1を2人で分割します(6分の1ずつ)。

第3順位:兄弟姉妹

☑︎法定相続分:配偶者が4分の3
/兄弟姉妹が4分の1

  • 第1、2順位の相続人がいない場合は、兄弟姉妹が相続人になります。
  • 兄弟姉妹が複数いる場合は、4分の1を人数で均等に分割します。
  • 父母の一方だけを同じくする兄弟姉妹(いわゆる「半血の兄弟姉妹」)の相続分は、父母双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1になります。
  • すでに兄弟姉妹が亡くなっている場合は、代襲相続により、その子ども(被相続人の甥・姪)が相続人になります。

<早見表:相続の代表的な組み合わせと
相続割合>

※横にスクロールすると続きが見れます。

相続人の組み合わせ法定相続分
配偶者と子ども配偶者2分の1、子ども2分の1
配偶者と父母配偶者3分の2、父母3分の1
配偶者と兄弟姉妹配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1
配偶者のみ配偶者が全部
子どものみ子どもが全部
父母のみ父母が全部
兄弟姉妹のみ兄弟姉妹が全部

指定相続分について

指定相続分とは?

被相続人は、遺言によって、各共同相続人の相続分を指定することができます(民法第902条1項)。
このように、被相続人が遺言によって指定した相続分を「指定相続分」といいます。

たとえば、法律上は配偶者2分の1、子ども2人が各4分の1であっても、被相続人が遺言で、「妻に4分の3、長男に4分の1を相続させる」と指定していれば、基本的にその割合に基づく指定相続分での遺産分割になります。

なお、相続分の指定は第三者に委託してすることもできます。

被相続人が相続分を指定した場合は、遺言が効力を生じたときに、また相続分の指定を第三者に委託した場合は、第三者が相続分を指定したときに、相続開始時に遡って効力を生じます。

遺言がある場合は
まず内容を確認する

相続では、最初から法定相続分だけを前提に話し合い(遺産分割協議)を始めるのは危険です。
というのは、有効な遺言がある場合では、法定相続分とは異なる割合で相続分が指定されていることがあるからです。

そのため、相続が始まったら、まず次の点を確認する必要があります。

  • 自筆証書遺言がないか
  • 公正証書遺言がないか
  • 法務局の自筆証書遺言書保管制度を
    利用していないか
  • 遺言で相続分が指定されていないか
  • 特定の財産を特定の相続人に
    取得させる内容になっていないか

指定相続分は
法定相続分より優先される

前述したように、遺言で相続分が指定されている場合、原則としてその指定が法定相続分に優先します
そのため、相続分の指定があったときは、各共同相続人は指定相続分にしたがって相続財産を承継することになります。

法定相続分はあくまで法律上の基準であり、被相続人が遺言で別の割合を定めていれば、その意思が尊重されることを覚えておいてください。

可分債務も承継する

マイナスの財産である可分債務(相続割合に応じて分割可能な債務)についても、各共同相続人は内部的には指定相続分にしたがって承継します。

しかし、遺言による相続分の指定は、債権者に対抗できません

そこで、債権者との関係では、可分債務は法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じて債務を承継します(最高裁昭和34年6月19日判決、民法百選Ⅲ62)。

ただし、2019年7月1日以降開始された相続に関しては、以下のとおりとされています。

  1. 相続分の指定がなされた場合であっても、相続債権者は、各共同相続人に対して、その法定相続分の割合でその権利を行使することができる。
  2. 相続債権者が、共同相続人の一人に対して、指定相続分の割合による債務の承継を承認したときは、各共同相続人に対して、その法定相続分の割合でその権利を行使することはできず、その指定相続分の割合でその権利を行使することができる。

遺留分に注意

指定相続分がある場合でも、一定の相続人には「遺留分」があることに注意が必要です。
指定相続分があるといっても、必ずそのまま親族間で争いなく相続が終わるとは限らないのです。

配偶者、子ども、父母など一定の相続人に最低限保障される取り分を遺留分といいます。

たとえば、父親の遺言書に「財産は長男にすべて相続させる」と書かれていたとしても、他の相続人(妻や他の兄弟姉妹など)に遺留分の権利があり、それを侵害しているならば、長男に対して「遺留分侵害額請求」をすることができます。

【解説動画】遺留分を請求された場合の
対処法

具体的相続分について

具体的相続分とは?

具体的相続分とは、法定相続分や指定相続分を出発点にしながら、生前贈与や寄与分などを考慮して調整した相続分です。

遺産分割では、たんに法定相続分どおりに分けると不公平になるケースがあります。
その不公平を調整するために、特別受益や寄与分が問題になります。

特別受益との関係

特別受益とは、相続人の一部が、被相続人から生前贈与や遺贈などによって特別な利益を受けていた場合に、その利益を相続分の計算上考慮する(遺産に持ち戻して計算する)制度です。

たとえば、次のようなケースが考えられます。

  • 長男だけが住宅購入資金として
    1,000万円の援助を受けていた。
  • 長女だけが結婚資金として多額の贈与を
    受けていた。
  • 特定の相続人だけが事業資金の援助を
    受けていた。
  • 遺言で一部の相続人だけが多額の
    財産を受けることになっている。

このような事情をまったく考慮せず、残った遺産だけを法定相続分で分けると、他の相続人にとっては不公平になってしまいます。
そこで、特別受益を相続分の計算に反映させる場合があるのです。

寄与分との関係

寄与分とは、共同相続人の中に、被相続人の財産の維持または増加について特別の貢献をした人がいる場合に、その貢献を相続分に上乗せして評価する制度です。

たとえば、次のようなケースが考えられます。

  • 長年、被相続人の介護をして
    介護費用の支出を抑えた。
  • 被相続人の家業を無償または低賃金で
    手伝い、財産形成に貢献した。
  • 被相続人の事業資金を援助した。
  • 被相続人の不動産や財産を管理し、
    価値の維持に貢献した。

寄与分が認められると、その相続人は、法定相続分に加えて、貢献に応じた取り分を主張できる場合があります。

ただし、寄与分は「親の面倒を見たから当然に認められる」というものではありません。
通常の親族間の扶助を超える特別の貢献が必要です。
そのため、寄与分を主張する場合には、介護記録、支出資料、送金記録、事業への関与資料など客観的な証拠が重要になります。

相続分で知っておくべき
ポイントまとめ解説

相続分をめぐる実務では、たんに相続割合を知っているだけでは不十分です。
実際の相続では、遺言、財産内容、生前贈与、寄与分、遺留分、相続税、登記など複数の問題が絡んでくるからです。

ここでは、相続分を考えるうえで重要な実務上のポイントを整理してまとめておきます。

相続人を正確に確定

相続分を計算するには、まず誰が相続人かを正確に確認しなければなりません。

相続人が一人増えるだけで、各人の相続分は大きく変わります。
そのため、被相続人の出生から死亡までの戸籍を取り寄せ、配偶者、子ども、養子、認知した子、代襲相続人などを確認します。

「家族だから、誰が相続人かはわかっている」と思っていても、戸籍調査で初めて前婚の子や認知した子がいる事実が判明するのは実際にあることです。

遺言の有無を確認

遺言があるかどうかで、相続分の考え方は大きく変わります。

遺言がなければ法定相続分を基本に遺産分割を考えていきますが、遺言があれば指定相続分や特定財産の承継内容を確認する必要があります。
特に、不動産や預貯金など、特定の財産を、特定の相続人に相続させる内容の遺言がある場合は、単純な法定相続分の計算だけでは判断できません。

借金などの負債も
相続の対象になる

相続分というと、預貯金や不動産などプラスの財産だけを考えがちです。
しかし、借金や保証債務などのマイナスの財産も相続の対象になります。

プラスの財産より借金が多い場合には、相続放棄や限定承認を検討する必要があります。
相続の開始を知ってから(被相続人が亡くなってから)3か月以内に手続きをする必要があるため、早めの対応が重要です。

法定相続の割合は絶対ではない

法定相続分は遺産分割の重要な基準ですが、相続人全員が合意すれば、法定相続分と異なる分け方をすることも可能です。

たとえば、相続人全員が納得して、「実家は長男が取得し、預貯金は長女が多めに取得する」「母の生活を優先して、母が多く取得する」といった遺産分割協議をすることもできます。

ただし、合意内容は遺産分割協議書に明確に残す必要があります。

特に不動産が多い相続では、法定相続分どおりにきれいに分けることが難しい場合があります。
「法定相続分 = 当然に受け取れる金額」と考えないことも大切です。

具体的相続分の主張は
制限される可能性もある

現在の民法では、相続開始から10年を経過した後に行なう遺産分割については、原則として、特別受益や寄与分を反映した具体的相続分ではなく、法定相続分または指定相続分によって分割することになります

つまり、長期間遺産分割を放置していると、「兄は生前贈与を受けていた……」「自分は親の介護に大きく貢献した!」といった主張などは、原則として反映されにくくなります。

この点は、相続分を考えるうえで非常に重要です。
相続が始まったら、早めに遺産分割の話し合いを進めることが大切です。

相続分の話し合いは感情的に
ならず弁護士にも相談する

遺産分割協議は相続人全員で行なう必要があり、認知症の方、未成年者、行方不明者、海外在住者がいる場合には別途手続が必要になることがあります。

また、相続分をめぐる争いは、たんなる金額の問題ではなく、親の介護、過去の援助、兄弟姉妹間の不公平感、同居の有無など、長年の家族関係が表面化しやすい分野です。
そのため、当事者だけで話し合うと感情的になり、かえって解決が遠のくことがあります。

早い段階で弁護士に相談し、法的な見通しを整理することが有効です。

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