今回は、リベートと重加算税です。
従業員がリベートを得ていた場合に、税務調査で重加算税指摘を受けることがあると思います。
そんな時に参考にしてください。
平成23年1月25日裁決(J82-1-04)です。
(事案)
・請求人は、コンピュータ及びコンピュータ関連商品等の販売を業とするC社に勤務し、同社のD営業所長である。
・C社のD営業所に勤務する従業員は請求人のみであり、請求人は、同社から、同営業所におけるすべての業務を一任されていた。
・請求人は、D営業所の業績が良好であるにもかかわらず、C社から支払われる給与が減額されたことなどに不満を感じ、C社の業務の他に、請求人個人としてもコンピュータ関連商品を仕入れ、これをC社の取引先等に販売する取引を行って、事業所得を得ていた。
・C社就業規則では兼業は禁止されていない。
・請求人は、本件個人取引を行うに当たって、請求人個人名義の請求書を使用し、代金の振込先として、請求人名義の口座を指定し、仕入代金を、本件個人取引等管理口座から支払っていた。
・請求人は、E社の従業員で同社側の窓口となっていたGに対し、取引金額のおおむね1%に相当する金額をリベートとして、支払っていた。
・請求人は、個人取引に係る事業所得について申告をしていなかったため、税務調査を受けて期限後申告するとともに、重加算税賦課決定がされた。
(原処分庁の主張は?)
・請求人は、本件個人取引に係る事業所得を申告しなければならないことを十分認識していたにもかかわらず、C社等に本件個人取引が発覚することを懸念し、申告しないことを当初から確定的に意図し、申告しなかった。
・請求人は、C社等に本件個人取引が露見しないようにするため、Gに対して本件リベートを支払ったこと、及びCの取引先に対する取引に係る本件請求書明細に本件個人取引を記載せず、本社に報告していた行為は、当初から所得を申告しない意図を外部からもうかがい得る特段の行動に当たる。
(裁決)
【規範】
「事実を隠ぺいする」とは、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実について、これを隠匿又は故意に脱漏することをいい、「事実を仮装する」とは、所得、財産又は取引上の名義等に関し、あたかもそれが事実であるかのように装う等、事実をわい曲することをいう。
※名古屋地裁昭和55年10月13日判決
【結論】
・本件リベートは、E社の複数の取引先の中から請求人を選んでもらう趣旨で支払われた謝礼であったと認められ、本件個人取引を秘匿することを意図して支払われた口止め料であったとはいえない。
・本件請求書明細は、C社のD営業所の売上げを本社に報告するためのものであるところ、本件個人取引は、仕入れも販売も、請求人が、C社とは無関係に個人で行った取引であって、その売上げは、C社のD営業所の売上げではないから、請求人が主張するとおり、本件個人取引の売上げを本件請求書明細に記載しないことは当然である。
・事実の隠ぺい又は仮装行為があったとは認められないから、重加算税の賦課要件を満たさない。
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以上です。
本件では、「隠ぺい又は仮装行為」があったか、だけを認定していますが、本件のような事案では、実質所得者課税の原則より、
・本件収入は、誰に帰属するか。
・隠ぺい又は仮装行為があったか。
の二段階で論点を検討することになりますので、ご注意ください。


