今回は、建物か構築物かを判断する際に、裁判所がどのような考え方を用いたかを解説します。
耐用年数省令別表第一に規定する建物について、直接定義する規定がないことから問題となります。
高松地判令和4年9月13日判決です。
(事案)
原告は、畜産業を営み、同人が所有する鶏舎等、牛舎等、鶏舎等、中古鶏舎等の各物件をいずれも「構築物」であるとして「定率法」により減価償却を行った。
税務署長は、いずれも「建物」に該当するから建物の償却に用いる「定額法」に基づき計算すべきであるとして、法人税等の更正処分をした。
(判決の考え方)
裁判所は、不動産登記の考え方を参考にします。
不動産登記規則第111条
「建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。」
・屋根及び周壁又はこれらに類するものを有する。
・土地に定着した建造物
・目的とする用途に供し得る状態にある
ということです。
そして、不動産登記事務取扱手続準則第77条は、「建物の認定に当たっては、次の例示から類推し、その利用状況等を勘案して判定するものとする。」とし、その例示は、以下のとおりです。
(1) 建物として取り扱うもの
ア 停車場の乗降場又は荷物積卸場。ただし、上屋を有する部分に限る。
イ 野球場又は競馬場の観覧席。ただし、屋根を有する部分に限る。
ウ ガード下を利用して築造した店舗、倉庫等の建造物
エ 地下停車場、地下駐車場又は地下街の建造物
オ 園芸又は農耕用の温床施設。ただし、半永久的な建造物と認められるものに限る。
(2) 建物として取り扱わないもの
ア ガスタンク、石油タンク又は給水タンク
イ 機械上に建設した建造物。ただし、地上に基脚を有し、又は支柱を施したものを除く。
ウ 浮船を利用したもの。ただし、固定しているものを除く。
エ アーケード付街路(公衆用道路上に屋根覆いを施した部分)
オ 容易に運搬することができる切符売場又は入場券売場等
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ここから、裁判所は、建物の認定基準として、
(1)土地の定着性、
(2)外気遮断性、
(3)用途性
を導き出し、但し、(2)外気遮断性については、完全な周壁を設けないことがその建造物の効用上合理的であり、完全な周壁を設けるとかえって不都合が生じると認められる場合には、同要件を緩和して認定する、という基準を定立しました。
そして、結論としては、以下のとおり、建物と認定しました。
「本件各物件は、いずれも完全な周壁を有してはいないものの、そのような構造は、これらの物件が鶏及び牛を収容して飼育するための畜舎等として使用されている関係から、その通気性を確保するなど必要なものであって、その用途に照らし、合理的なものというべきである上、いずれも、一定の堅固な構造を有する大規模なものであり、その資産価値が相当に高いものと認められることや一般家屋との権衡からしても、耐用年数省令別表第一に規定する建物に該当する。」
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以上です。
対象物によっては、その判断が非常に難しい場合があると思います。
その場合には、上記のような一定の判断基準に従って認定し、その上で、納税者に将来の否認リスクも説明することが大切です。
そして、【税理士を守る会】を会員先生は、可能であれば、書式のうち、「債務免除確認書」を取得して税理士損害賠償に備えてください。