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弁護士法人みらい総合法律事務所

「課税仕入れを行った日」(東京高判令和元年9月26日)

監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
 代表社員 弁護士 谷原誠

最終更新日 2025年4月25日

今回は、消費税法の「課税仕入れを行った日」が争われた東京高判令和元年9月26日をご紹介します。

建物の売買契約書の締結日をもって「課税仕入れを行った日」とすることが許されるかどうかが争われた事例です。

(事案)

控訴人は、株式会社である。

控訴人は、平成25年6月28日に控訴人の代表取締役との間で、建物を購入する売買契約を締結した。

同年7月31日に売買代金の支払い及び引き渡しがなされた。

控訴人は、同年6月28日に課税仕入れを行った日として消費税等の確定申告をした(同年6月10日から同月30日までの課税期間)。

課税庁は、同年7月31日が課税仕入れの日であるとして、更正処分を行った。

(判決)納税者敗訴

「課税仕入れを行った日」とは、仕入れの相手方において当該資産の譲渡を行った日と時点を同じくするものと解するのが相当である。

資産の譲渡等による対価を収受すべき権利が確定したといえるか否かについて、客観的に認識可能な事情を基礎として判断することは、納税者の恣意を許さず、課税の公平を期するという観点にも合致する。この意味において、消費税についても、いわゆる権利確定主義が妥当する。

消費税法30条1項1号にいう「課税仕入れを行った日」とは、仕入れの相手方において、当該資産の譲渡等について、同時履行の抗弁などの法的障害がなくなり、対価を収受すべき権利が確定した日をいうものと解するのが相当であり、このように解することが、取引段階の進展に伴う税負担の累積を防止するという仕入税額控除の制度趣旨に合致するものである。

→7月31日が課税仕入れを行った日(代金決済、引き渡し)

控訴人(納税者)は、消費税法基本通達9-1-13 「固定資産の譲渡の時期は、別に定めるものを除き、その引渡しがあった日とする。ただし、その固定資産が土地、建物その他これらに類する資産である場合において、事業者が当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているときは、これを認める。」を引用し、契約書の締結によって契約の効力が発生したとして、契約書締結日が「課税仕入れを行った日」であると主張しました。

しかし、判決では、次のように判示し、これを否定しています。

(判決)

引渡日をもって「課税仕入れを行った日」とすることを原則としつつ、契約内容によっては、契約の効力発生日の時点で、当該資産の譲渡等による対価を収受すべき権利が確定したといえる場合もあることから、そのような場合には契約の効力発生日をもって「課税仕入れを行った日」とすることを認める趣旨であると解される。

本件資産の譲受けのように、売買契約の効力発生日(締結日)の時点では売買契約による対価を収受すべき権利が確定したというべき実態が存しない場合にまで、納税者の恣意により、売買契約の効力発生日をもって「課税仕入れを行った日」とすることは、消費税法30条1項1号の規定に反し、許されるものではない。

※同旨の裁判例 大阪地裁令和2年6月11日判決

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以上です。

通達の読み方によっては、売買契約書において、「本契約は、本契約締結により、その効力を生ずる」などと効力発生日にすることが許されるかのようにも思えます。

しかし、裁判所の考え方は、そのような当事者間の条文操作によって課税の発生時期をずらすことを許さないということになります。

あくまでも、「売買契約による対価を収受すべき権利が確定した」かどうかが問われることになります。

ご注意ください。

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