Q18.欠陥住宅の慰謝料

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Q

18.欠陥住宅の慰謝料

建築確認申請しか行っていない場合でも、建物の瑕疵について責任を負いますか。
住宅の新築工事を請け負いましたが、雨漏りや床のきしみ等の欠陥が発生しました。何回か補修工事を行いましたが欠陥は完全には直らず、1年経ってしまいました。そのため注文者から、もう補修工事はやらなくて結構だから金銭賠償して欲しいと言われました。そして注文者の弁護士から内容証明郵便が送られてきましたが、補修工事費用の他、1年も雨漏り等に悩まされたことによる慰謝料として200万円支払えと書いてありました。補修工事費用は仕方ないとしても、慰謝料も支払わなければならないのでしょうか。また、支払らうとすればいくらくらいが相場なのでしょうか。

瑕疵担保責任と慰謝料

建築工事に欠陥があった場合、注文者は補修工事を請求することもできますし、補修工事の代わりに金銭による損害賠償請求をすることもできます。また、一部は補修工事を、それ以外は損害賠償を、というように両方とも請求することもできます(民法634条)。そして、どのような請求をするかの選択権は注文者にあります。
このような請負人の責任を瑕疵担保責任といいますが、瑕疵担保責任は、目的物に客観的欠陥があることによって注文者に生じた損害を回復是正するためのものであって、慰謝料のような精神的損害までカバーするものではないと考えられています。しかし、あまりに欠陥が大きいような場合、請負人は瑕疵担保責任以外に不法行為責任を負うことがあります。この不法行為責任は、生命、身体、名誉等の人格権を侵害した場合の損害賠償責任を定めたものであり、慰謝料はこの不法行為責任に基づいて認められるものです。
判例によれば、「請負建築建物に瑕疵があった場合は、注文者側の特別の事情により、右瑕疵の修補又はこれに代わる損害賠償がなされてもなお償うことのできない特別の精神的苦痛を注文者が被った場合に限り、慰謝料の請求を認めるべき」(東京地方裁判所平成11年12月24日判決)と言っておりますが、これも同じ考えであると言ってよいでしょう。
では、どのような場合に慰謝料が認められ、また慰謝料が認められなかったかを見てみましょう。

慰謝料が認められたケース

福岡地方裁判所平成11年10月20日判決では、地盤の強度の調査を怠った結果、建物の基礎が割れ、建物全体が沈下したというケースにおいて、長期間にわたり多大な精勤的苦痛を被ったとして50万円の慰謝料を認めました。
また熊本地方裁判所平成10年3月25日判決では、基礎の亀裂、雨漏り、屋根瓦が固定されていない等61項目に及ぶ瑕疵があり、補修費用は合計約1400万円かかるとされたケースにおいて、数多くの瑕疵があることにより精神的に大きな打撃を受けたとして75万円の慰謝料を認めています。
その他にも、構造上重大な瑕疵があり建て替えなければどうしようもないというケースでは100万円の慰謝料が認められたものもあります(熊本地方裁判所平成10年1月29日判決等)。このように慰謝料が認められているのは、瑕疵の程度が重大な場合が多いのですが、瑕疵の程度はあまり大きくないのに、注文者との打合せをきちんと行わず、契約内容を明確にしないまま工事を進め、工期も守る姿勢もなかったとして200万円の慰謝料を認めたケースもあります(仙台高等裁判所平成13年11月28日判決)。

慰謝料が認められなかったケース

神戸地方裁判所平成11年7月30日判決では、コウモリが生息し糞尿等で汚損した天井部材等を取換えなければならず、そのため引越までせざるを得なかったというケースにおいて、精神的苦痛を受けたであろうことは想像に難くないが、建物そのものを失い、あるいは全く居住できなくなったわけでもなく、汚損部も補修されているのであるから、それ以上に金銭をもって償われるべき精神的苦痛があったとは認め難いとして、慰謝料は認められませんでした。
長崎地方裁判所平成元年3月1日判決では、2階を造り替え、1階を補修しなければならず、補修費用として約1140万円かかると認定されたケースにおいて、精神的苦痛を受けたとしても、補修等の客観的損失の回復によって慰謝されるべきであり、特段に事情がない限り慰謝料は認められないとしました。

結論

このように見てくると、判例上も慰謝料が認められる基準というものは確立されておらず、個別具体的に判断されております。そして、その判断は、瑕疵の重大性の他にも請負契約を締結するまでの経緯、注文者と請負人との話し合い、請負人の対応等、様々な要素が基礎となっているようです。したがいまして、ご質問の事情だけで判断できませんが、必ずしも慰謝料の支払義務があるケースとは言えないように思われます。

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