Q15.建築確認を代行申請した建築士の責任

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15.建築確認を代行申請した建築士の責任

建築士が建築確認を代行申請しただけなのに、建築工事の瑕疵の全てについて責任を負わされたという判例が出たと聞きました。どのような判例なのか教えてください。

建築確認の代行申請

建築物の工事は、1級建築士、2級建築士、木造建築士の設計によらなければ行なうことができず、また工事をする場合にはこれらの建築士である工事監理者を定めなければならないものとされています(建基法第5条の4、建築士法第3条から3条の3)。また工事計画が建築士法第3条から3条の3の規定に違反するときは建築主事は建築確認申請書を受理できないものとされています(建基法第6条3項)。そこで建築士の資格がない施工業者等は、資格を有する建築士に建築確認申請だけを代行してもらうよう依頼するということがあります。これを一般的には建築確認の代願申請と呼んでいますが、その建築士(以下「代願建築士」といいます。)は建築確認申請手続しか行わず、工事監理はいたしませんし、実施設計にも携わらないこともあります。

代願建築士の責任問題

建築確認申請においては、建築主事から工事監理者の選定届を出すよう指導されていることが多いため、代願建築士は自分が工事監理者であるとして署名押印して届け出ています。しかしその後、施工業者が違反建築をしたり建物の工事に瑕疵が発生したりすることが多く、その場合に誰が責任を負うかという問題が生じます。このような場合、代願建築士は工事監理する予定にはなっていませんから、違反建築物や建物の瑕疵などの工事については責任はないと考えていることでしょう。しかし、工事監理者として選定届を提出した以上、何らかの責任があるのではないかというのがここでの問題です。
この点については、これまで地方裁判所や高等裁判所のレベルではいくつかの判例がありましたが、平成15年11月14日に初めて最高裁判所の判断がなされました。これによれば、次にご紹介するように代願建築士にはとても厳しい結果になっております。

最高裁判所の判例

この事案は次のようなものです。代願建築士Aは施工会社Bより、建築確認申請手続の報酬金116万8000円で代行業務を引き受け、工事監理者をAとする選定届を提出しました。AはBと工事監理契約を締結することはなく、建築工事開始までに工事監理の依頼がない場合にはBの中の有資格者が工事監理をするものと考えていました。しかし建築確認後もAはBに工事監理者の変更届をさせることもなくそのまま放置しておりました。ところがBは、建築確認の図面とは異なる施工図面に基づいて、200×200mmの鉄骨を用いるべきところ150×150mmの鉄骨を用いる等したために重大な瑕疵のある建築物になってしまいました。そこで施主はBとAに対して損害賠償請求をしたところ、大阪高等裁判所においては施主の損害額約2455万円のうち1割に当たる245万円がAの義務違反と相当因果関係のある損害だとしてAの賠償責任を認めました。
そこでAは、Bとは工事監理契約を締結していないのであり、確認申請書にAを工事監理者とすると記載したからといって賠償責任を負うとはいえないと主張して最高裁判所に上告したというものです。
これに対して、最高裁判所は、建築士には建築物の設計及び工事監理などの専門家として特別の地位が与えられていることに鑑みると、建築士法及び法の規定による規制の潜脱を容易にする行為などその規制の実効性を失わせるような行為をしてはならない法的義務があり、これに違反した場合は不法行為に基づく賠償責任を負う。本件においてはAは実態に沿わない記載をしたのであり、工事が着手するまでにBに工事監理者の変更の届出をさせるなど適切な措置をとるべき法的義務があるにもかかわらず、これを放置してBが規制を潜脱することを容易にし、規制の実効性を失わせたものであるから、不法行為に基づく賠償責任を負うと判示し、大阪高等裁判所の判断をそのまま認めました。
以上のとおり、実際に工事監理をしなくても、建築確認申請において工事監理者として名前を記載すれば、工事の瑕疵についても責任を負わなければならないということが最高裁判所によって認められたのです。したがいまして、今後はこのような裁判において代願建築士には重い責任が課せられることになります。なお、この事件では、施工業者の違法があまりにもひどかったため、そこまでは容易に予見できなかったということで1割の損害賠償責任しか認められませんでしたが、その他のケースでは損害の全てについて代願建築士の責任が認められたものもあります。したがいまして、今後は安易に代願申請だけ引き受けることがないようにご注意下さい。

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