Q9.違反建築の是正命令への対処方法

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Q

9.違反建築の是正命令への対処方法

役所の違反是正命令に納得できませんが、どのような手続をとったよいのでしょうか?
当社は、A氏から増築を頼まれ、既存のコンクリート造の車庫の上に2階建て木造建物の建築工事を行っていました。しかし8割方完成したところで役所から「車庫は構造的に問題があるので車庫の上に建物を建ててはいけない。」と言われ、建築物を除去するよう命じられました。車庫は35年くらい前に建てられたもので図面はなく、当社も心配だったので事前に専門家に相談したところ、大丈夫じゃないかとのことだったので工事をすることにしたのです。当社としては構造的に問題があるとしてもコンクリートの補強をすれば済む問題であり、建物を取り壊す必要はないと考えています。このまま除去命令を無視しようと思いますが、その場合はどうなるのでしょうか。また除去命令について不服申立をしたいのですが、どうしたらよいでしょうか。

是正措置命令とは

違反建築があった場合、特定行政庁は、建築主だけでなく請負人等に対しても、工事の停止を命じ、または一定期間内に建物を除去、移転、増築、修繕その他違反を是正するために必要な措置をとることを命じることができます(建基法9条1項)。これを是正措置命令といいます。

命令を無視すると

是正措置命令に従わない場合または措置はとったけれどもそれが不十分であった場合、特定行政庁は、措置を行うべき者に代わって自ら必要な措置を行い、あるいは第三者に行わせることができます(行政代執行 建基法9条12項)。そしてこれにかかった費用については、義務者に納付を命令しなければならず、また国税滞納処分の例によって徴収できることになっています(行政代執行法5、6条)。つまり財産差押等の方法により強制的に費用を支払わされるということになります。

不服申立の方法

是正措置命令に不服のある者は、まず市町村または都道府県の建築審査会に対して審査請求をしなければなりません(建基法94条1項、96条)。そして建築審査会の裁決に不服がある場合には、建設大臣に対して再審査請求するか、裁判所に是正措置命令についての取消しの訴えを提起することになります(建基法95、96条)。このように2段階に手続が分かれていますので、徹底的に争おうとするとかなり骨が折れると思います。

不服申立が認められるか

是正措置命令を発するか否か、またその内容等については特定行政庁の自由裁量に委ねられていますが、どのような命令でもよいというわけではありません。違反を是正するために必要なものであり、かつ是正目的を達するのにいくつかの方法がある場合には、受命者にとってもっとも損害の少ないものを選択すべきであり、限度を超えた措置命令は違法となります。
ではご質問の場合はどうなるでしょうか。これについては次の判例が参考になります。
この事件は、既存の石垣の上に擁壁工事をしようとしたXが、役所の公務課や宅地指導課に行って事前に相談したが、許可も届出も必要ないと言われたので工事をしたところ、近隣住民から危険だとの苦情が出たために市が調査することとなり、その結果、市は安全性が確認されていないとして除去命令を出したので、Xは裁判までやって命令の取消を求めたという事案です。
第1審では、次のような理由で措置命令は違法だとしてXの請求が認められました。擁壁は直ちに除去を必要とするほどの危険は認められず、また擁壁を除去するには大がかりな工事と多額の費用がかかることは容易に推測できるので、安全性が確認されていないからといって軽々しく措置命令を出すべきではなく、違反の是正に必要な範囲を超えてXに必要以上の損害を与えるものである。
ところがこれに対して市が控訴し、第2審では、逆転して市が勝訴しました。その理由は、「安全性に欠ける建築物に対して、その安全性確保のためどのような措置を講ずべきかは行政庁の高度の専門的知識に基づく判断にかかるものであるから、原則として行政庁の判断が尊重される。」とした上で、「命令の相手方に与える損害のより少ない措置が比較的容易に判明するのに、安易に大きな損害を与えるような措置を選択したような場合は格別、そうでない限り、裁量権の逸脱と判断することはできない。」と述べ、本件では、市が除去以外の方法を容易に選択できたとは認めることはできないから、市のとった命令は適法であるというものです。Xは最高裁まで争いましたが、最高裁も第2審を支持し、X敗訴となりました。この判例の考え方からすると、ご質問の場合も役所の判断が尊重され、より損害の少ない方法が容易に判明できるのでなければ、不服申立は通らないということになります。そして是正措置命令を発するには、行政庁は命令をしようとするものに対して、あらかじめ意見を聞くことになっていますが(建基法9条2項)、この意見聴取の際に、ご質問者が損害が少なくかつ安全性を確保できる方法があることを資料によって証明したかどうかということも問題になってくるでしょう。そのような証明をしたのに、行政庁が除去命令を発したのであれば違法となる可能性がありますが、そうでない限りなかなか不服申立を認めてはもらえないと推測します。

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