Q5.建築物の著作権

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Q

5.建築物の著作権

建築にも著作権はありますか?
A氏はX工務店に住宅の設計施工を頼んでいましたが、工事費の折り合いがつかずX工務店をやめて私のところへ依頼してきました。しかしA氏はX工務店の設計自体は気に入っているので、その設計図にしたがって設計施工をして欲しいと言っています。多少は設計変更をする予定ですが、その場合に著作権侵害というような問題が生じるのでしょうか。

著作権とは

著作権法は、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術又は音楽の範囲に属するもの」を著作物と定義し(2条1項1号)、その著作者の権利を保護しています。
著作者の権利としては、大別して人格的利益を保護する「著作者人格権」(公表権、氏名表示権、同一性保持権)と財産的権利を保護する「著作権」(複製権、譲渡権等)の2つがありますが、「著作者人格権」と「著作権(狭義)」を合わせて「著作権(広義)」と呼んでいます。
これらの著作権を侵害されたり又は侵害のおそれがある場合には、その侵害の停止や予防の請求(差止請求)をすることができますし、また損害賠償請求をすることもできます。

建築物の著作権

著作物の定義は前記のとおりですが、著作権法第10条1項5号はそれを分かりやすくするために著作物の種類を例示しています。その中に「建築の著作物」と「学術的な性質を有する図面…その他の図形の著作物」というものがありますが、この2つが建築に関係するものです。ここで「建築の著作物」というのは建築物それ自体をいい、設計図は学術的な図面として「図形の著作物」と考えられています。
ところで著作権の1つとして複製権があり、無断で他人の著作物を複製することは禁じられます。そして「複製」とは「印刷、写真。複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」をいいます。
したがいまして、すでに建っている建築物そのものをそっくりマネして建築することは「建築の著作物」の「複製」となりますし、また他人の設計図をコピーすることは「図形の著作物」の「複製」となりますので、いずれも著作権侵害となります。ところが設計図に従って建物を建築することは、設計図を「有形的に再製」したとはいえませんので、この場合には「図形の著作物」を「複製」したことにならなくなってしまいます。
しかし建築物それ自体をマネすれば著作権侵害となるのに、その建築物の設計図どおりに建築すれば著作権侵害とならないというのはおかしな話です。そこで著作権法は「建築の著作物」については「建築に関する図面に従って建築物を完成させること」も「複製」に当たるとしています(2条1項15号)。
ちょっとゴチャゴチャしているかもしれませんので整理してみますと、設計図については、(01)設計図そのものをコピーしたり手で書き写したりした場合は「図形の著作物」の「複製」ととなり、(02)設計図に従って建物を建築するときは「建築の著作物」の「複製」となり、どちらの場合でも著作権侵害となるということになります。

芸術性のある建物に限られる

ところで「建築の著作物」といってもすべての建物について著作物性が認められているわけではありません。
建築物に著作権が認められたのは、それが芸術的なものとして発展してきたからです。したがって芸術的な建築物と認められるものでなければ著作物性は認められず、規格化された住宅等の芸術的要素の乏しいものは、著作権法による保護は認められないと考えられています。そして芸術建築といえるかどうかは、使い勝手のよさといった実用性、機能性ではなく、その文化的精神性の表現として建物の外観を中心に検討すべきだとされています(福島地方裁判所平成3年4月9日判決)。

他人の設計図を利用したら

そこでご質問の場合ですが、他人の設計図に多少手を加えたとしても、外観、間取り等において同一性が認められれば「図形の著作物」を「複製」したのものとして著作権侵害となり、損害賠償請求の対象となります。このように「図形の著作物」を「複製」したという形で裁判になったケースはあまりありませんが、設計料相当額の損害賠償請求が認められたものもあります(東京地方裁判所昭和60年4月24日判決)。
また他人の設計図に従って建築工事を行ったときは、それが芸術的な建築であれば「建築の著作物」を「複製」したものとして著作権侵害となります。この場合は、損害賠償請求のほか、工事差止請求の対象にもなります。
もっともご質問の場合はX工務店の設計した住宅ということですので、外観上、一般の住宅とは異なった芸術性の高い建物とまではいえないのではないかと思います。したがいまして工事差止請求が認められる可能性は低いと考えられます。
建築に関して著作権侵害の裁判となったケースはあまり多くありません。これは出版物などでは数多く出版すれば印税収入が増えるので著作権者の関心が高いのに対し、建築については1つの建築物しか建築しませんので、設計者もあまり関心を持たないからではないかと思われます。しかし自分の設計をマネされればプライドが傷つけられ、トラブルになる可能性は十分ありますから、事前に設計者の承諾を得た上で設計・施工することをおすすめします。

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