Q4.設計者の指示と施工会社の責任

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Q

4.設計者の指示と施工会社の責任

設計事務所の指示に従って工事した場合でも瑕疵担保責任を負いますか?
私はX氏の住宅のリフォーム工事を請け負い完成して引き渡しました。設計はX氏が依頼したA設計事務所が行いましたが、工事に着手して建物の一部を解体したところ設計どおり施工するとバルコニー部の雨仕舞がうまくいかないように思われました。そこでA設計と協議しましたが、A設計の考え方には納得できずかなりもめました。最終的にはA設計の言うとおりに施工することになりましたが、案の定、建物完成後バルコニー部から雨漏りするようになり、X氏から補修工事しろと要求されています。私は、A設計の指示に従ったのだからX氏からそのような要求を受けるいわれはないと思っていますが、いかがでしょうか。

法律の規定では

施工業者は工事の欠陥について瑕疵担保責任を負います(民法634条1項)。しかし、これには例外があって、欠陥が注文者の提供した材料の性質または注文者の与えた指図によって生じたときは責任を負わないことになっています(民法636条)。但し、施工業者が、材料や指図が不適当であることを知っていながらこれを告示しなかったときはやはり責任を負わなければなりません(民法636条但書)。

注文者の指図とは

注文者は工事前でも工事中でも、ああして欲しい、こうして欲しいと言ってくるのが常ですが、どのような事情があれば注文者の「指図」があったとして施工業者が責任を負わなくて済むようになるのでしょうか。 この点について判例は、施工業者に対して厳しい判断をしており、「注文者の『指図』とは、注文者の十分な知識や調査結果に基づいて行われた指示、あるいはその当時の工事の状況から判断して事実上の強い拘束を有する指示などであると制限的に解釈しなければならない」としています(京都地方裁判所平成4年12月4日判決)。
つまり、注文者は建築の素人だから、その素人の言うことを何でもハイハイと聞いていたのではいけない、施工業者は建築のプロとして注文者の言うとおりにやるとどのような不都合が生じるかをきちんと説明し指導しなければならず、何回も説得したにも関わらず注文者が強硬に工事続行させたような場合に限って注文者の「指図」があったということになるでしょう。 しかし裁判所は滅多に注文者の「指図」があったと認めていませんので、結局、注文者からおかしな要求を受けた場合は絶対に断りなさいと言っているように聞こえます。

注文書の指示に従った場合

このような判例理論からすれば、単に注文者の希望・指示に従って工事をしたような場合には注文者の「指図」があったとは認められず、施工業者は瑕疵担保責任を負うことになります。
例えば次のような事件がありました。前面道路が狭いため車庫を設けることが困難なのに契約日になって注文者が強く車庫を希望しました。施工業者は間取り変更を提案しましたが注文者が聞き入れなかったためにそのまま車庫スペースを造りました。その結果、車は入出庫できず、注文者は施工業者に対し損害賠償請求したというものです。
この事件について裁判所は、施工業者は専門家として車庫ができるかどうか慎重に決定すべき注意義務を負っており、漠然と車庫の設置を安請合いしたものであり重大な過失があるとして注文者の損害賠償請求を認めました(東京地方裁判所平成3年6月14日)。

設計事務所の指示に従った場合

ご質問のケースでは指示したのは注文者の依頼した設計事務所であり建築のプロなのですから、判例の考え方からしても施工業者は責任を負わないように思えます。
しかし前記の京都地方裁判所は、設計事務所と注文者と施工業者との三者で協議をして汚水管の施工方法を決めた場合において、(01)施工業者が大手建設業者であり施工についてある程度の発言権があること、(02)給排水工事については設計事務所より施工会社のほうが専門的知識・経験があること、を理由に設計事務所の意向が絶対的・拘束的ではないとして、汚水管の施工が注文者の「指図」に基づくものということはできないとしました。
これは施工業者にとっては非常に厳しい判断です。場合によっては、設計図どおりに施工したとしても設計事務所に十分な知識、経験がなければ施工会社が責任を負わされることになりかねないからです。
もっともこの判例においては、もともと設計事務所の設計に不備があったためにこのような施工をしなければならなくなったのであり、設計の不備の責任ま
で施工会社に負わせることはできないとして、損害の5割を減額すべきとしました。つまり施工会社に責任はあるとしたものの、注文者側の設計事務所に過失があったことから具体的な損害賠償額の算定にあたっては大幅に減額することにしたものです。
ご質問のケースでは、A設計の言うとおり施工すると雨漏りの危険があることを説明したにも関わらずA設計がどうしても聞き入れなかったということであれば、注文者の「指図」があったものとして基本的には瑕疵担保責任を負わないと考えられます。しかし会社の規模や専門的知識・経験の優劣によって責任を負わされることもあり得ますので、設計事務所を含めてよく話し合いをしてみて下さい。

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