Q3.建物と隣地との距離

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Q

3.建物と隣地との距離

建物を建築するときは、隣地境界線からどのくらい離さなければいけないのですか?
A氏から店舗兼用住宅の増築工事を依頼され、当社が設計施工で請け負いました。1階に大きめの倉庫が欲しいということでしたので、当社は隣地境界線ギリギリのところまで倉庫を増築する計画をたてました。ところが隣の人から、敷地境界線から最低でも50㎝は離して欲しいと言われました。50㎝離さなければいけないという話はよく聞きますが、街中では敷地ギリギリに建っている建物もよく見かけます。法律的にはどのようになっているのでしょうか?また絶対に50㎝以上離さなければいけないものなのでしょうか?

原則として50㎝離す

ご質問のように、建物を建てるときに隣人から少なくても50㎝は離して下さいと言われることがよくあります。また建築確認申請のとき隣地境界線から50㎝離れていないと役所から隣の人の承諾をもらってきて欲しいと言われることもあります。このように建物は敷地境界線から最低50㎝離さなければならないということは常識的になっているといっても過言ではないでしょう。 これに関しては民法234条1項に規定があり、「建物を築造するには 界線より五十センチメートル以上の距離を存することを要す」と定められています。これは日照や通風、さらには災害のときの避難通路等を確保し、よりよい居住環境を守ろうとする趣旨です。この趣旨からすると50㎝というのは建物の外壁またはこれと同視できる出窓等と敷地境界線との距離が50㎝なければならないということであり、屋根庇の出っ張りとの間が50㎝なければならないということではありません(東京高等裁判所昭和58年2月7日決定)。 したがって建物を建てるときは、原則として建物外壁面と敷地境界線との距離を50㎝確保しなければならないということになります。

50㎝離さなくてもよい場合

しかし、ご指摘のとおり銀座、赤坂、六本木のような繁華街においては敷地境界線ギリギリに建っているビルが沢山あります。また住宅地においても敷地境界線から50㎝離れていないというケースもよく見受けられます。しかしこれらがすべて違法だということにはなりません。 50㎝離さなくてもよい場合としては次の3つのケースが考えられます。

1. 隣人の承諾があった場合

民法234条1項は相隣規定といって、隣人同士の権利関係を調整するための規定です。したがってお互いの権利関係に問題がない場合にはこの規定の適用はなく、隣人が承諾しているのであれば50㎝離す必要はないということになります。この承諾は明示にされる必要はなく黙示であってもかまいません。建築中に隣人が何もクレームをつけてこなければ基本的には黙示の承諾があったと考えてよいでしょう。

2. 慣習がある場合

民法236条は「前2条の規定に異なりたる慣習あるときはその慣習に従う。」と規定しています。つまり50㎝離さなくてもよいという慣習があれば、50㎝離す必要はないということになります。どのような場合にこのような慣習があるかは難しいところですが、一般的にいえば繁華街においては境界線に接着して建物を建てるという慣習があると考えてよいでしょう。これに対し、第1種低層住居専用地域のような住宅街においてはこのような慣習はないというべきでしょう。

3. 防火地域または準防火地域における外壁耐火構造建築物

建築基準法65条は「防火地域または準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。」と規定しています。この規定によって民法234条1項の適用が排除されるかどうかについては昔から大論争になっていましたが、平成元年になってやっと最高裁判所が結論を出し、この論争に終止符が打たれました。
民法234条1項は排除されないとする考え方は、「建築基準法65条は建築確認の審査基準にすぎず、防火地域等の火災や延焼防止という公共目的のを図るためのものである。したがって隣人間の権利関係の調整については建築基準法ではなく民法234条1項が適用される。」と主張します。
しかし最高裁判所は建築基準法65条所定の建物については民法234条1項の適用が排除されるとしました。これは「建築基準法65条は、防火地域等における土地の効率的な利用を図るという見地から、隣人間の権利関係を調整するために、外壁が耐火構造であれば外壁を隣地境界線に接して設けることができるとしたものである。」との考えに基づいています。
この争いの根本には土地の有効的利用とよりよい居住環境の確保という2つの要請をどのように調整するかという難しい問題があります。しかしとにかく最高裁判所の判断が下されましたので、防火地域または準防火地域における建物で外壁を耐火構造にしたものについては隣地境界線ギリギリまで建てることができるということになります。
ご質問の場合、以上の3つのケースに当てはまらなければ隣地境界線より50㎝離さなければならないということになりますが、将来、お隣が建物を建て替えたりするときにも同じような問題が起きるわけですから、A氏にお隣とよく話し合ってもらうことが必要になるでしょう。

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