Q1.工事ミスと契約解除

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Q

1.工事ミスと契約解除

工事にミスがあった場合には、建築工事請負契約を解除されてしまうのですか?
X氏より住宅のリフォーム工事を請けましたが、完成間近になってX氏からフローリングが凸凹である、巾木や見切縁の施工が汚い、塗装の色が思っていたのとまったく違うといったクレームがつき、請負契約を解除するので全部元通りにしてくれと言われました。確かに、多少は仕上げに雑なところもありますが、ダメ工事をすればすむ問題だと思っています。法律的には、X氏の主張どおり元通りにしなければならないものでしょうか。

請負契約の解除

まず請負契約はどのような場合に解除できるのかという一般的な話をしましょう。
建築工事の請負契約は、建物が完成してしまうとどんなに重大な瑕疵があっても解除することはできません(民法635条)。これは完成後の契約解除が認められると、請負人は建物を取り壊さなければならないことになり、請負人にとってあまりに過酷ですし、社会経済的にも損失が大きいからです。この場合は、瑕疵担保責任、すなわち補修するか、補修代金を賠償するかによって解決するしかなくなります。
建物の完成前は、契約どおり工事されていないと債務不履行の一般原則にしたがって契約解除をすることができます(民法540条以下)。しかしちょっとした工事のミスがあっても契約解除できるとなると、これも請負人にとって過酷になります。そこで目的物に重大な瑕疵があって、期日までに契約どおり完成させることができないことが明らかであって、契約関係を継続させることが相当でない場合に限って契約解除ができると考えられています。
このように完成前と完成後とで契約の解除の取扱が異なってきますが、では建物は何時完成したといえるのでしょうか。
この点について古い判例によれば、工事が途中でストップし最後の工程を終えていない場合は未完成であり、工事が予定された最後の工程まで一応終了した場合には、完成したものとされています(東京高等裁判所昭和36年12月20日)。

注文者の解除権

以上は建物に瑕疵がある場合の解除の話ですが、瑕疵がない場合であっても注文者は、請負人が仕事を完成しない間は、何時でも請負人の損害を賠償して契約解除することができます(民法641条)。これは契約後に事情が変化し注文者にとって不要となったのに無理に完成させる必要はありませんし、また請負人も損害を賠償してもらえば特別の不利益を被ることはないということから、特別に注文者に解除権を認めたものです。
なお、ここで請負人の損害というのは、既工事部分についての報酬金、未工事部分については得られたであろう利潤や支出した費用(手配した材料代、手間賃等)をいいます。

一般の解除に当たらなくても、注文者の解除が認められる

以上を前提にご質問のケースを検討しますと、完成間近ということですので未完成の場合だと想定します。そうするとフローリングの凸凹や木工品の仕上げ等の瑕疵が契約の解除原因となるのかという問題となります。これは程度問題ですが、一般的には内装の仕上げは補修が可能であって契約を解除しなければならないほどの重大な瑕疵とはいえないと考えてよいと思います。塗装色の違いというのも、茶色にするところを青色で塗ったというのであれば話は別ですが、明るいとか暗いとかいうのは好みの問題ですから、これも解除を認める理由にはならないでしょう。したがってご質問のケースでは一般の解除は認められないと考えられます。
しかしこのような場合であっても、注文者が請負人の工事に不満を抱き、これ以上工事を継続して欲しくないという意思が認められるのであれば、民法641条の注文者の解除があったものとして取り扱われる可能性があります。

原状回復は不要

一般の解除の場合は、解除すると最初から契約はなかったことになり、元通りに復旧(原状回復)しなければなりません(民法545条1項)。
しかし注文者による解除の場合は、請負人に原状回復させる必要はないというべきでしょう。原状回復工事の費用も損害金としてもらえば請負人は特に不利益を被らないでしょうが、すでに信頼関係が失われた請負人に原状回復工事をやらせるというのもおかしな話ですし、途中まで完成したものを全て原状回復させなければならないというものもったいない話だからです。最近の判例でも、未完成部分を他の業者に請け負わせて完成させるということを前提として契約解除した場合は、解除の効力は既に完成した部分には及ばず、未完成の工事部分についてのみ及ぶとしたものがあります(東京地方裁判所平成4年11月30日判決)。

このように見てきますと、ご質問のケースでは、一般の解除はおそらく認められませんので原状回復する必要はありませんし、注文者の解除が認められる場合であっても原状回復義務まで負わされることはないでしょう。そして注文者の解除が認められる場合は、X氏に対して損害賠償(既にやった工事の報酬金、まだやっていない工事のために支出した費用や得られたはずの利潤)を請求することができます。もっともこちらの工事にダメ工事があるのであればその工事代金分は差し引かなければなりません。

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