この記事では、以下の内容について解説しています。
- 年休とは
- 年休をあたえなくてよい場合
- パートタイム労働者について
- 年休を与えなくてはならないが従業員の指定した日を変更できる場合
- 年休に対して支払う給与の額
- 労使協定による計画的な年休の取らせ方
- 従業員が年内に消費しなかった年休について
目次
年休とは
年休とは年次有給休暇を略したのもので、給与を支払わなければならない休暇のことをいいます。
年休をあたえなくてよい場合
年休をとることができるのは、出勤率が8割以上で、入社後6ヶ月以上継続して勤務した従業員です。
このような従業員は、継続して勤務する期間に応じ、年休を取得します。
例えば,入社後6ヶ月連続して勤務した従業員は10日間の年休を,1年6ヶ月の従業員は11日の年休を,2年6ヶ月の従業員は12日の年休を取ることができます。
ですので、出勤率が8割未満の者や6ヶ月以上継続して勤務していない者には、年休を与える必要はありません。
出勤率は、(出勤日数)÷(全労働日数)で計算します。
業務上の事故等で負った病気や怪我のための休業、育児介護休業、産前産後休業で休んだ日数は、出勤日数、全労働日数に含まれます。
また、全労働日には、休日、ストライキなどの正当な組合活動のための休業や使用者の原因での休業は、含みません。
出勤率8割以上という条件は常に必要で,例えば、入社後1年6ヶ月間,全労働時間の8割以上,継続して勤務していた労働者は,11日間年休を取ることができますが,その後の1年間の労働日のうち2割より多く休んでしまったら,入社から2年6ヶ月後からの1年間は,8割以上勤務していれば取れるはずであった12日間の年休を1日も取れなくなります。
パートタイム労働者について
パートタイム労働者についても、パートタイム労働者のうち週4日より多く働きかつ年間216日より多く働いている者、週4日以下でも週30時間以上働いている者には、通常の従業員と同様に上の表に挙げた日数の年休を与えなければなりません。
それ以外のパートタイム労働者にも,その勤務年数,週の勤務日数に応じた年休が与えられます。
年休を与えなくてはならないが従業員の指定した日を変更できる場合
従業員が、日にちを指定して、年休を取りたいと申し出た場合には、原則として、その従業員が指定した日に年休を取らせなければなりません。
もっとも、従業員が指定した日に年休を取られてしまうと客観的に「事業の正常な運営を妨げる場合」(労働基準法39条4項ただし書)には、会社はその従業員の申し出を拒むことができます。
「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、年休を取ろうとしている従業員が休んでしまうと、その従業員の所属する課や係の業務の運営が滞る場合で、他の替わりとなる人員を確保することが困難なことをいいます。
人員の確保が困難であったかどうかは、他の人でも替えが勤まるような業務内容か、忙しい時期であったかそれとも比較的人員に余裕がある時期か、人員を確保するのに必要な時間的余裕があったか(つまり従業員が早めに年休をとる旨を告げたかということ)、などを総合的に判断します。
もっとも、人員不足で常に人員の確保が困難であるような場合には、それは適切な人員を確保していない会社の責任であり、それでは誰も年休を取れなくなってしまいますので、従業員の指定した日に年休を与えなければなりません。
一般的に、日常的な業務のみの場合と比較して、集合研修等といった以前から予定されていた特別な業務が含まれる場合には、会社は従業員の指定する日での年休の取得を拒否することが認められやすくなります。
年休に対して支払う給与の額
年休について支払う給与は,平均賃金又は所定労働時間労働した場合に支払う賃金です。
年休日の給与については就業規則に定めておかなければなりません。
また、労使協定がある場合には、標準報酬金額とすることもできます。
労使協定による計画的な年休の取らせ方
従業員は、自由に自分の都合のいい日に年休を取得できるのが原則ですが、会社と従業員との間で協定を結んだ場合には、特定の日を年休日と定めて、事業場全体で一斉に年休をとらせる、グループに分け、グループ別に年休をとらせる事などもできます。
この協定は、事業場の半数より多くの労働者が所属する労働組合、または、半数より多い労働者の代表者と書面によって締結しなければなりません。
さらに、この協定で定めることのできる年休は5日間にとどまります。
残りの5日を超える分は、原則通り、従業員の自由な取得にゆだねられることとなります。
また、協定では、従業員が個別に年休取得する場合の計画表を作成する期限・手続きを定めることもできます。
会社が協定によって定められた年休の取得日を変更することができるのは、この年休を取得させる事のできないような重大な支障が生じ、しかもこのような支障が発生することが、年休の計画時には予測することができなかった場合に限られます。
従業員が年内に消費しなかった年休について
年内に消費しなかった年休については、一般的に次の年に繰り越すことが認められるとされています。
もっとも、繰越しが認められるのは翌年度まででそれを過ぎると、消費できなかった年休は消えてしまいますので、3年前に取らなかった年休を取りたいといわれた場合には、その年休の取得を拒否することができます。