5. 連帯保証人に対する責任追求

5. 連帯保証人に対する責任追求

不動産賃貸管理の実務

連帯保証人に対する責任追求

総論

賃借人は賃貸人に対して、賃料支払・用法遵守などさまざまな義務を負担しています。しかし、賃借人が契約上の義務に違反したとき、賃借人がすべて責任を負いきれないことがあるでしょう。そのようなときに、効果があるのが連帯保証人に対する責任追求です。賃貸管理において、保証人の存在は、賃貸物件から生じる債権を担保する重要な意味をもっています。また、賃借人としては、保証人に無用な迷惑を掛けないように心がけなければいけません。そのためには、万が一にもトラブルが発生したときに保証人がどのような責任を負うのかをよく理解しておく必要があります。

事例の紹介

「賃料の支払がないまま保証人に何の連絡もなしに建物賃貸借契約が更新された場合、更新後の未払賃料について連帯保証人に必ずしもすべての責任を負わせることができないとされた事例」(東京地方裁判所平成6年6月21日判決)

  1. 賃借人は次の約定で建物を借りて、連帯保証人もついた。
    • 賃料: 月8万6000円
    • 期間: 2年間
    • 期間満了の場合は両者合議のうえ契約を更新する
    • 契約更新の際は現金にて8万6000円を貸主に支払う
  2. 最初に期間満了となったとき、賃貸人と賃借人は次の約定で合意更新した。
    • 賃料: 月9万5000円
    • 期間: 2年間
    • 更新料は新賃料の一ヶ月分
  3. しかし、更新後7ヶ月目から賃借人は賃料を全く支払わなくなった。
  4. 賃料が支払われない状態のまま、その後2度にわたり、賃貸人と賃借人との間で同一条件で合意更新された。
  5. 最後の更新後1年以上経ってから賃貸人は賃貸借契約を解約して、連帯保証人に対して未払賃料の支払を求めた。

裁判所の判断

裁判所は、連帯保証人に対して、3回目の合意更新の前後で責任のあるなしを区別する判決を出しました。つまり、保証人に何の連絡もなかったとしても、2回目の更新による期間が満了するまでの間に生じた未払賃料については連帯保証人も責任を負う、しかし、3回目の更新があってから後の未払賃料については責任を負わないという判断でした。それでは、どのような理由で、更新後の責任を認めたり認めなかったりしたのでしょうか。詳しくその理由を見てみましょう。

更新後も責任が継続することが原則

まず、2回目までの更新について、保証人は更新後の未払賃料について責任を負うとされた理由を考えてみましょう。裁判所は、賃貸借契約に合意更新や更新料に関する規定があるから、「本件賃貸借は当然に更新されることが予定されていたもので、被告(保証人)においても、本件賃貸借が二年で終了することなく、更新されることを承知して連帯保証人になったものと認められる。」と説明しています。
建物賃貸借契約では、合意更新の規定か自動更新の規定を設けているのが一般的です。合意更新の規定というのは、本事件のように、賃貸人・賃借人間で協議のうえ更新できるというものです。自動更新の規定というのは、例えば「期間満了6ヶ月前までに申出がない限り、満2年間更新されるものとし、以後も同様とする」というような規定です。普通は、どちらかの規定が置かれているでしょう。
このような規定があれば、賃貸借契約を締結する時点で、期間が満了するときには更新されるだろうと当然予想することができます。連帯保証人も更新される契約に署名捺印する以上、何度更新されようが解約されるまで責任を負わなければならないという覚悟ができているはずです。そのようなことを考えると、更新後も責任が継続するとしても、保証人にとって予想外のことだということにはなりません。しかも、賃借人の契約違反として考えられることは賃料不払を中心とするものですから、負わされる責任の金額も容易に予想がつきます。従って、期間満了後に更新されてからも、賃借人の賃借権が存続する限り連帯保証人の責任も継続するのです。
なお、民法の規定に従えば、賃貸借契約が黙示のうちに更新されたときには、付いていた担保は存続しないで消滅することになります(619条2項)。保証人がいるということは一種の担保を付けたことになりますから、保証人の責任も終了するように読めます。しかし、建物の賃貸借契約に関しては、このような民法の規定は適用されないと考えられています。借地借家法が適用されて当然に更新されることが常識となっているために、民法とは違う考え方をしなければならないからです。

法定更新の場合も保証人の責任は継続する

本事件では、更新に関する規定がありました。それでは、賃貸借契約に更新に関する規定が全くなかったらどうなるでしょうか。
ご存知のように、借地借家法に基づき、更新の規定がなく自動更新も合意更新もされなくても、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に更新しないという事前通知がなければ更新されたものとみなされます(借地借家法第26条)。法律に定められた更新なので、法定更新と呼ばれています。しかも、賃貸人の側から更新拒絶をするには「正当事由」がなければいけません(同法第28条)。このような借地借家法の規定があるため、建物に関する賃貸借契約は期間満了後も存続することが原則となっています。そのため、賃貸期間の約定があっても、結局は更新のたびに賃料の見直しや更新料の徴収をするために機能しているというのが現実でしょう。連帯保証人としても、このような借地借家法のもとで保証を約束する以上、賃貸借契約が更新されることを承知の上で約束していることになります。とすれば、更新に関する規定がある場合とあまり状況は変わらないということになります。
裁判所も、賃貸借期間が満了して法定更新となった直後から約8ヵ月分の賃料不払が生じた事例で、連帯保証人に対してこの未払賃料の支払いを命じています(東京地方裁判所昭和56年7月28日判決)。その理由について、保証人は「予め、賃貸借が更新により存続することを十分予想でき、また予想すべきである」からだと説明されています。
なお、借地借家法第38条及に基づく「期限付建物賃貸借」が締結されて、契約更新はしないという合意がされた場合には事情が違ってくるでしょう。保証人としては、もともと更新されないものだと考えて保証したのですから、もしも、更新されるようなことがあっても保証人の責任は当初の期間満了により終了したと考えられるでしょう。

保証人が責任を免れる場合

ところが、裁判所は、3回目の更新後の未払賃料については保証人に責任はないとしました。その理由を裁判所は次のように説明しています。つまり「賃借人の賃料の支払がないまま、保証人に何らの連絡もなしに賃貸借契約が期間二年として二回も更新されるとは社会通念上ありえないことで、被告(保証人)がかかる場合にも責任を負うとするのは、保証人としての通例の意思に反し、予想外の不利益をおわせるものである」から、その更新以降は保証人としての責任はないということです。確かに、このような異常な事態についてまで保証人に責任を負わせることは行き過ぎでしょう。裁判所の説明には十分納得できます。
しかし、保証人は、3年間分以上の未払賃料について責任を負わされるとまで考えていたでしょうか。この賃貸借契約には、「借主が契約条項に違反したときは、貸主は何らの催告なくして、本契約を解除することができる」という無催告解除特約もありましたし、半年以上も続けて賃料不払があれば、それを理由に解約することもできたでしょう。ここまで賃料不払を放置して損害が大きくなったことについて、賃貸人にも責任はないでしょうか。この点に関して、参考になる裁判事例を次に紹介しましょう。
建物の賃借人が賃料を支払わなかったために、賃貸人は賃貸借契約を解約したのち建物明渡を求めて裁判を起こしました。その結果、賃借人が建物を明渡すという内容の和解が成立しましたが、賃借人は和解で決めた明渡期限も守らず居座りました。この時点で、賃貸人は、直ちに建物明渡の強制執行をすることができました。しかし、建物の立地条件が悪いために新たな借り手が見つかりにくかったため、賃貸人は、このまま賃借人に建物の使用を続けさせたうえで賃借人または保証人から賃料相当の損害金を受け取ったほうが得策だと考え、明渡しの強制執行をしないで、明渡しまでの損害金の支払を求める裁判を起こしました。
これに対して、裁判所は、明渡執行ができるのにそれをしないで明渡しまでの損害金を請求するのは、みずからの権利不行使により増大した損害を保証人に負担させようとするものであるから信義誠実の原則に著しく反するものであり許されないと判断しました(東京地方裁判所昭和51年7月16日判決)。
このように、賃貸人がいたずらに賃借人の賃料不払を放置して損害を拡大してしまった場合には、保証人には責任がないとされることもあるので、ケースバイケースで考える必要があります。

保証人が保証契約を解約できる場合

それでは、賃借人が当初予想できなかったくらいに経済状態が悪化して、賃料を支払えなくなることが避けられないような状態に陥っても、保証人は責任を負い続けなければならないのでしょうか。
そのような場合に保証人に過酷なことにならないように、保証契約を解除することが一定の要件のもとに認められています。これを保証人の特別解約告知権といいます。
どのような要件のもとに認められているかといえば、(1)保証責任の内容に金額及び期間の定めのなく、(2)賃借人が著しく賃料債務の履行を怠り、(3)保証の当時予見できなかった資産状態の悪化があって将来保証人の責任が著しく増大することが予想されるような場合には、保証人は将来に向かって保証契約を解除することができるとされています(東京地方裁判所昭和51年7月16日判決等参照)。
ただし、建物賃貸借の場合、余程のことがないかぎり予想外の責任が生じるということはないとされるでしょうから、簡単にはこの解約告知権は認められないでしょう。もっとも、賃貸人が、賃料不払が続いているのに放置して何もしようとしない場合には、この解約告知権を行使するべきでしょう。そのためには、保証人としては、賃借人の状況をこまめに確認して、賃料不払となっていないかどうかをチェックする必要があります。

保証人の責任の範囲

未払賃料の支払を保証人に請求することが多いでしょうが、保証人はそれ以外にどのような責任を負うのでしょうか。
保証人の責任の範囲について、通常は、賃貸借契約に「連帯保証人は、賃借人の賃貸人にする本賃貸借契約に基づく一切の債務について連帯保証する」というような規定を設けていることが多いでしょう。従って、保証人は、賃料支払債務はもちろん、原状回復義務など賃借人と同様の責任を負います。そのうえ、「連帯保証人」は債務者本人(賃借人)と同じ立場におかれますから、ただの「保証人」よりも厳しい責任を負います。例えば、連帯保証人は賃貸人から責任を追求されたときに、「先に賃借人本人に対して請求してくれ、それまでは支払わない」とか「先に賃借人から執行してくれ、それまでは支払わない」という抗弁を言うことができません。賃貸人としては、賃借人を相手にせず直接連帯保証人に請求することができるわけです。

実務上の対処方法

このように賃貸人にとっては、賃料不払などによって生じる損害について、連帯保証人に責任を取らせることにより実損を極力少なくすることができます。その反面、保証人の責任が免除されるような場合もあります。そこで、賃貸管理の実務上は次のように対処しておけば、スムーズに処理できるようになるでしょう。

  1. 賃貸借契約の連帯保証人の規定に、更新後も保証人は継続して責任を負担する旨の文言を明記しておく。明記されていなくても、保証人は更新後も責任を負わなければならないことは既に述べたとおりですが、契約の時点で注意を喚起しておき、将来余計な争いがないようにしておくとよいでしょう。
  2. 賃借人が数回にわたり賃料支払を怠るなど、将来も契約違反が生じることを予想できる状況が発生したら、保証人に対してその旨を通知するとともに、賃借人の契約違反問題の解消に協力するように求める。特に、保証人が賃貸人の身元引受人的な立場の人物であれば、賃借人が保証人の注意を聞き善処することが期待できます。
  3. 期間満了となり賃貸借契約が更新された場合、更新されたことを保証人に対して通知する。通知しなくても賃貸人の責任を左右するものではありませんが、念のために行い、更新後も責任を負っていることを保証人に再認識させます。
  4. 更新の際に、従前の賃料等の契約条件に変更が生じた場合には、その変更内容を保証人に対して通知しておく。特に、賃貸借契約に、更新料や更新後の賃料改定について具体的な規定が設けられていない場合には、更新後の責任内容を保証人に確認させるうえで重要です。
  5. 契約締結の際に、保証人の実印を押してもらい、かつ、保証人の印鑑証明書と住民票を徴収する。確かに保証人が保証契約を結んだという確かな証拠を作ることが大切です。保証人に契約に同席してもらうことはなかなかできないでしょうが、少なくともこのくらいはしておくべきでしょう。
  6. 保証人の信用性をできるだけ確認する。特に、高額な賃貸物件の場合には、賃借人と同程度に保証人の信用性を確認するべきです。
  7. 更新の際に、賃借人から、保証人を変更したいという要求を受けた場合には、契約時と同様の注意をもって保証人の信用性を確認する。

2014/12/31(水) カテゴリー:

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