9. 瑕疵担保

9. 瑕疵担保

建設業者のための法律相談

Q

瑕疵担保

工事請負業者はいつまで瑕疵担保責任を負うのでしょうか?
私は5年前にA氏の木造2階建住宅の新築工事をしました。建物完成後、A氏から何カ所か欠陥を指摘されダメ工事を行いましたが、その後は特に何事もありませんでした。しかし最近になってA氏から雨漏りがするので補修工事をして欲しいと言われました。建物完成後5年も経っているのに、補修工事をしなければならないのでしょうか。

瑕疵担保責任の期間

法律用語では欠陥のことを「瑕疵(かし)」と言っていますので、ここでも瑕疵という言葉を使うことにします。 請負契約に基づいて完成した目的物に瑕疵がある場合、注文者は相当の期間を定めて瑕疵の修補請求ができます(民法634条1項)。また修補してもらう代わりに金銭的な損害賠償請求をすることもできますし、修補請求とともに損害賠償請求することもできます(同条2項)。請負人のこのような責任のことを「瑕疵担保責任」と呼んでいます。 一般の請負契約においては、注文者が請負人に対しこの瑕疵担保責任を追及するには、目的物の引渡を受けたときから1年内に行わなければなりませんが(民法637条1項)、建物等の土地の工作物についてはその期間が次のように延長されています(民法638条1項)。

  • 建物が石造、土造、煉瓦造または金属造の場合は引渡したときから10年
  • その他木造の建物や地盤の瑕疵については、引渡したときから5年
但し、これらの期間についてはあくまで法律上の規定であって、特約でそれ以下に短縮することもできますし、また2. の5年については10年に延長することもできます(民法639条)。 平成9年9月に施行された「民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款」では、「瑕疵担保期間は…木造の建物については1年間、石造・金属造・コンクリート造及びこれらに類する建物、その他土地の工作物もしくは地盤については2 年間とする。ただし、その瑕疵が乙(請負人)の故意または重大な過失によって生じたものであるときは1年を5年とし、2年を10年とする。」と規定され(同約款第27条)、期間が短縮されています。 また注文者としては、裁判にしなくとも、この期間内に修補請求さえすれば、その瑕疵部分の修補請求権は一般の債権の消滅時効にかかるまで、つまり10年間(民法167条1項)存続するものと考えられています(東京地方裁判所平成3年6月14日判決)。 そこでご質問の場合ですが、建物は木造ですので「工事請負契約約款」を使用していない限り、瑕疵担保責任の期間は5年となります。

ところで建物完成後5年経過しているとのことですが、瑕疵担保責任の期間は「引渡のときから5年」ですので何時引渡したのかをまず確認してみて下さい。また建物完成後、瑕疵を指摘されてダメ工事を行ったとのことですが、そのときも同じ部分に雨漏りがあってA氏から修補請求を受けたのであれば、その請求があったときから10年間はその雨漏りを補修する責任があることになります。

瑕疵担保責任を負わない方法

そうすると最悪のケースを考えると、注文者が5年近く経ってから瑕疵担保責任を追及してきたときは、その瑕疵についてはそれから10年間は補修しなければならないということになり、建物引渡時から15年近く経っても修補義務を負うことになってしまいます。
このような話をしますと、建築業者の方から瑕疵担保責任を負わない方法はないのかというご質問を受けることがありますが、請負契約で瑕疵担保責任を負わないという特約をつけることが認められていますので(民法640条)、そのような特約をつければ瑕疵担保責任を負わずに済みます。
しかし現実問題として、請負契約書に「瑕疵担保責任は負いません。」などという特約を入れておくと、注文者からいい加減な工事をする建築業者だと疑われ、契約締結すらしてもらえない可能性があります。したがって特約をつけるのは、注文者の要求が厳しくて工事に自信がもてない等、余程の事情がある場合に限るべきであり、企業に対する信用という観点からすれば、少なくとも「工事請負契約約款」と同様の瑕疵担保責任を契約書に明示しておくべきだと思います。なお特約をつけた場合であっても、請負人が瑕疵のあることを知りながら注文者に告げなかったことについては責任を免れることはできません(民法640条)。

瑕疵担保責任以外の責任

建築物に瑕疵があった場合、瑕疵担保責任以外にも債務不履行責任または不法行為責任を問われることが考えられます。
債務不履行責任とは簡単に言えば契約不履行したときの責任のことです。建築請負契約についていえば、当然に瑕疵のない建物を建築することが請負契約の内容になっていた、それにも関わらず瑕疵のあるものを建築した、だから契約不履行だという論法になります。一般に債務不履行責任は消滅時効にかかるまで10年間存続しますので、注文者からすれば瑕疵担保責任の5年の期間が経過した場合でも請負人の責任を問うことができるというメリットがあります。しかしながら判例の多数は、瑕疵担保責任が認められる場合は債務不履行責任を問うことができないとしています(東京地方裁判所平成4年12月21日判決等)。したがってご質問の場合も債務不履行責任は負わないと考えられます。
これに対し不法行為責任は瑕疵担保責任が認められる場合であっても、これを問うことができます。不法行為責任というのは、請負人が故意、過失により瑕疵ある建物を建築したために注文者に損害が生じた場合の請負人の責任です。不法行為に基づく損害賠償請求権は、損害を知ったときから3年、不法行為のときから20年で時効にかかります。
したがってご質問のケースでは、建物完成後5年以上経過した場合であっても、注文者が雨漏りによる損害を知ったのがつい最近であり、それが請負人の故意、過失に基づくものであれば不法行為責任を負う可能性があります。

2015/01/04(日) カテゴリー:

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