7. 未収工事代金の回収方法

7. 未収工事代金の回収方法

建設業者のための法律相談

Q

未収工事代金の回収方法

施主が工事請負代金の一部を支払ってくれません、どうしたらよいでしょうか? Q.私はA建築会社の代表取締役です。A社はB氏から木造2階建(35坪)の建築工事を請け負いました。工事費2200万円の見積書を作成してB氏に渡しましたが、建築工事請負契約書は作成しませんでした。工事代金は建物完成前に1200万円払ってもらいましたが、建築工事の途中にB氏から次のような追加工事を依頼され、工事代金は130万円増額しました。 1. 照明器具工事: 50万円
2. バルコニー工事: 80万円
建物は無事工期内に完成しB氏に引渡して残代金1000万円と追加工事代金130万円の合計1130万円を請求しましたが、B氏はなかなか支払ってくれません。このような場合、どうしたらよいでしょうか。

まずは話し合いによる解決を!!

このような紛争が起きた場合は、とにかく話し合いで解決するのが一番です。裁判となると時間も費用もかかり、建築業者にとっては不利です。そこで本件についてもまずB氏と話し合いをしたところ、B氏の言い分は次のとおりでした。
  • 確かに2200万円の見積書はもらったが、そのような契約書は作っていない。A社は「2000万円でやりますよ、それ以外にもいろいろサービスします。」と言っていた。したがって工事代金は総額2000万円である。
  • 照明器具代金は当初の見積に含まれており、追加工事ではない。
  • バルコニー工事については金額を決めていない、サービスだと思っていたし、そうでなくとも30万円くらいでできるはずである。

話し合いで解決できない場合には

A社とB氏とは何回か話し合いをしましたが、結局、解決することができませんでした。このような場合は、建築工事紛争審査会または裁判所による解決方法があります。建築工事紛争審査会は建設業法に基づいて設置された機関で、あっせん、調停、仲裁により紛争を解決します。申請手続等については都庁、県庁に問い合わせをして下さい。 裁判所による解決としては調停、裁判による解決があります。調停はあくまで話し合いの場であり裁判ではありませんが、話し合いがまとまると裁判と同じ効力が認められます。 裁判は裁判官に白黒つけてもらう手続ですが、裁判の途中で和解、調停手続に移行することもあります。本件では裁判所よる調停という解決方法をとりました。

4. 工事請負契約書は必ず作成すべきである。

本調停において、まず工事請負代金が2200万円なのか2000万円なのかが問題になりました。請負代金は請負契約によって決まります。そしてこの契約は、契約書を作成しなくても当事者の合意(申込と承諾)があれば成立します。したがって本件でも、B氏の工事の申込とこれに対するA社の承諾がある以上、契約書がなくとも請負契約は成立しています。しかし本件では契約書がないために請負代金について紛争が生じてしまいました。 本件では2200万円の見積書が作成されているので、一応は、請負代金は2200万円と考えられますが、本当にA社が「2000万円でやります」と言ったのなら請負代金は2000万円となります。請負代金についても当事者の合意だけで決まるからです。本件ではA社がそのようなことを言ったか、言わなかったかが論争されましたが、最終的には真ん中をとって請負代金2100万円ということで話がまとまりました。 契約書をきちんと作成しておけばA社は100万円も減額する必要はなかったでしょう。このように、後日、紛争になるのを防止するために必ず契約書を作成しておくべきです。

5. 追加工事でも契約書を、少なくとも見積書を必ず作成するべきである。

契約書を作成するのは当たり前のことであり、今さら言われるまでもないと思われる方も多いでしょう。しかし追加工事についてはどうでしょうか。追加工事依頼があったとき、いちいち契約書を作成することはあまりないようですし、見積書すら作らない場合が多いようです。実際に裁判をしていると、追加工事代金を請求した事件で、その工事は追加工事ではなくもともとの工事に含まれているという形で争われることが非常に多いのです。そして本件もまさにそのことが問題となった事案でした。

本件の顛末

6. 照明器具工事について

B氏は、見積書に「電気工事一式130万円」と記載されていたために照明器具工事も「一式」の中に含まれており、追加工事ではないと主張しました。しかしながら建築業界では慣行として、照明器具は施主の負担であり別途工事とす るのが一般です。本件でも調停委員は業界の慣行を重視して追加工事であるとの意見を述べたため、B氏は渋々、50万円を支払うことにしました。 同じような争いはガス工事代金をめぐってもよく見受けられます。このような争いを避けるためにも見積書には別途工事の範囲をきちんと明記しておくべきでしょう。

7. バルコニー工事について

これはB氏からバルコニー追加工事の要請があったときに、A社が工事代金について何も言わなかったためにトラブルになったものです。このように追加工事代金が決められていない場合には、当時のバルコニー工事代金相当価額をもって追加工事代金とするしかないでしょう。 本件では建築専門家の意見を聞き、相当価額は50万円と評価されたため、A社もB氏もその金額で納得せざるをえませんでした。 以上のようにして本件は解決しましたが、その間10ヶ月、A社は工事代金を支払ってもらえず非常に苦しい思いをしました。このような紛争が起きると支払いが遅延し、建築業者は弱い立場に立たされます。したがって紛争予防のためにも工事請負契約書、見積書はきちんと作成しておくべきものとつくづく感じます。
  • 注文者は補修してもらうまで工事代金の支払いを拒める(同時履行の抗弁権)。
  • 工事した建物に欠陥があり(法律用語では欠陥のことを「瑕疵(かし)」と言います。)補修をしなければならない場合、注文者は請負人に対し瑕疵修補請求できますし、瑕疵の修補に代え又は修補とともに損害賠償請求することができます(民法634条2項)。そして注文者はその瑕疵の修補が完了するまで請負代金の支払いを拒むことができます(民法634条2項、533条)。このような注文者の権能を法律上「同時履行の抗弁権」と呼んでいます。したがってB氏の2.の主張には法律上の正当な理由があります。
  • しかし例えば釘1本が出ているとかクロスに手垢が付いて汚い等という軽微な瑕疵があることを理由にいつまでも何百万円以上もの工事残代金を支払わなくてもよいというのでは、施工業者はたまったものではありません。そこで判例は、瑕疵の程度や各契約当事者の交渉経緯等から判断して報酬残債権全額の支払いを拒むことが信義則に反すると認められるときは同時履行の抗弁権を主張できないとしています(最高裁判所平成9年2月14日判決)。
  • したがって本件でもB氏にどの部分に瑕疵があるか聞いて、補修すべきものはすぐに補修すべきです。この場合、今後の紛争防止のために写真を撮っておくとよいでしょう。またB氏がA社以外の工務店に補修させると言ってなかなか補修せず工事代金も支払わないという場合には、速やかに補修するよう要求するか、補修の見積書を提出するよう要求すべきでしょう。

2015/01/04(日) カテゴリー:

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