6. 非常時の工事代金確保

6. 非常時の工事代金確保

建設業者のための法律相談

Q

非常時の工事代金確保

建築工事の途中に建築主が倒産するという噂を聞きました。工事代金を確保する方法を教えて下さい。
私の会社は工務店ですが、A社から鉄骨4階建ての本社ビル建築を5000万円で請け負いました。現在、内装工事の途中ですが、最近、A社は不渡り手形をつかまされ資金繰りが苦しくて倒産するのではないかという噂が広がっています。工事残代金は2000万円ありますが、このまま工事を続けなければいけないのでしょうか。またどうすれば工事残代金を確保できるでしょうか。

請負契約とは

請負契約とは、請負人が仕事の完成を約し、注文者が仕事の結果に対して報酬を与えることを約するものであり(民法632条)、報酬の支払は仕事の目的物の引渡と同時に履行されることになっています(民法633条)。つまり建築工事でいえば、請負人は先に建物を完成させなければならず(先履行義務)、完成して引渡すときに請負代金がもらえるというのが法律の建前です。もっとも現在では、請負契約において契約時・中間時、引渡時など数回に分けて支払うという特約がなされるのが一般的ですから、仕事を完成させる前にも工事代金の一部は支払ってもらうことができます。しかしその場合であっても、最後の引渡時の支払については、仕事を完成させなければこれを履行してもらえないことに変わりありません。

注文者が倒産しそうなとき契約解除できるか

注文者の信用状態が悪化し、報酬を支払ってもらえるかどうか不安であるという場合、請負人としては契約を解除して今までの出来高に応じて工事代金の精算をしてしまいたいところです。
しかし法律上は注文者が破産宣告を受ければ請負人から解除できますが(民法642条1項)、単に倒産しそうだというだけでは契約解除は認められていません。もっとも民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款の第32条(4)dには「甲(注文者)が強制執行を受け、資金不足による手形・不渡りを出し、破産の申立をする…など請負代金の支払能力を欠くと認められるとき。」には請負人が契約を解除することができると規定されているので、請負契約にこの約款を使用しており且つそのような条件を満たしていれば契約を解除することができます。また注文者が契約解除に同意すれば解除して工事代金の精算をすることができ ます。

工事を中止することができるか

では契約解除ができない場合は、先履行義務者である請負人はこのまま工事を続けなければならないのでしょうか。注文者が倒産するかもしれないというのに工事を続けて建物を完成させなければならないというのではたまったものではありません。
そこで判例は、「注文者が支払能力を失ったときは請負人において契約解除できる旨の特約が付せられている建築請負契約において、約定の仕事完成日の到来する以前に注文者が支払能力を失い、請負人が仕事を完成しても約定の弁済期に請負代金の支払を受けられないことが確実であり、かつ、いつ右支払を受けられるか、その見込みが全く立たないという状況が客観的に明らかになった場合には、請負人は工事の施工を一時中止することができる」としています(東京地方裁判所昭和51年3月19日判決)。この判例は、契約解除ができるという特約がある場合に限定して工事の中止を認めているようにも読めますが、公平の見地からは、そのような特約がない場合でも工事の中止を認めてよいと考えられます。
学説ではこのような先履行義務者の権限のことを「不安の抗弁権」と呼んでおり、その内容としては、以下ができると一般的に言われています。

1. 担保や保証を請求すること
2. これが拒絶された場合に先履行義務者は履行を拒絶すること、

したがって設問の場合、いきなり工事を中止するのではなく、まず注文者の信用状態の調査をして、注文者の信用状態が悪化していることが確実で、支払を受けられる見込みが立たないということが明らかになる客観的な資料を集めて下さい。その上で注文者に担保や保証を要求し、注文者がこの要求を拒絶すした場合に工事を中止することができるということになります。

担保と保証

ではどのような担保や保証を要求したらよいでしょうか。

3. 抵当権

まず敷地に抵当権を設定してもらうことが考えられます。抵当権とは、債務者または第三者にその物件をそのまま使用収益させておきながら、代金支払がない場合にはその物件の価額から優先的に弁済を受けられることができるという担保物権です。
建築途中の建物についても、屋根及び周壁ができて建物として使える状態となれば不動産として認められますので抵当権を設定することはできます。しかし建物がほとんど完成していなければ、抵当権を設定しても意味がありません。
というのは抵当権は登記をしなければ第三者に対抗できませんが、建物がほとんど完成した状態にまでならなければ実際に登記をすることは難しいからです。

4. 所有権

注文者から、代金を支払うまでは未完成の建物所有権は請負人にあるとの一筆をもらうのもよいでしょう。これは担保ではありませんが、代金を支払ってもらうまでは請負人に所有権があるとして引渡を拒絶できますので、実質的に担保的機能を果たすのです。
未完成の建物の所有権が、注文者と請負人とのいずれにあるかは非常に難しい問題であり、ここでは詳しく述べませんが、いずれにしろ、請負人が所有者であるとの特約がある場合には請負人に所有権があるとするのが判例です。したがって所有権が請負人にあるということを承諾してもらった上で、そのことを書面で明らかにしておいて下さい。

5. その他の担保

その他にも物的担保として質権・譲渡担保・仮登記担保等がありますが、詳細については省略いたします。

6. 保証

人的担保としては(連帯)保証人を付けることが考えられます。この場合に注意することは十分に資力のある人に(連帯)保証人になってもらうということです。
設問の場合、注文者が会社であり社長個人が「私が(連帯)保証人になりましょう。」と言ってくるかもしれませんが、社長個人に資産がなければあまり意味がありません。したがってまず(連帯)保証人となるべき人の資産調査をして、(連帯)保証人としてふさわしいかどうかを検討して下さい。

2015/01/04(日) カテゴリー:

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