4. 借家のリフォーム工事

4. 借家のリフォーム工事

建設業者のための法律相談

Q

借家のリフォーム工事

借家のリフォーム工事中に家主から工事を中止するように言われました。どうしたらよいでしょうか。
A氏はB氏から一戸建住宅を賃借していますが、私はA氏から頼まれてリフォーム工事をしていました。工事の内容はリビングルームの壁・床材の貼り替えと物置を増築するというものでした。しかし工事途中に家主のB氏から「簡単なリフォームという話は聞いていたが増築をするという話は聞いていない、すぐに工事を中止しろ。」と言われてしまいました。以前に借地上の建物のリフォーム工事をしたときに、地主から文句を言われても増改築工事ができるという話を聞いたことがありますが、家主の言うとおり工事を中止しなければいけないのでしょうか。もし工事を中止しなければならないとしたら工事代金をA氏に請求することはできるでしょうか。

借家と借地の場合とで取り扱いが異なる

建物の賃貸借契約(借家契約)でも土地の賃貸借契約(借地契約)でも、契約書に「建物を無断で増改築をした場合は契約を解除できる。」という増改築禁止の特約が記載されていることがよくあります。しかし借家の場合と借地の場合とでは次のように大きな違いがあります。

1. 借家の場合
借家の場合は、その建物は家主が所有するものですから、原則として家主の承諾なしにその所有物を変更するような増改築などをすることはできません。もし家主の承諾なしに増改築を行えば建物についての保管義務、用法遵守義務(民法第400、616、598条)違反となり、増改築禁止の特約がなくても借家契約解除の対象になります。

2. 借地の場合
借地の場合は、建物は借地人の所有ですから、いつ、どのような増改築などをするかは原則として借地人の自由であり、増改築禁止の特約がなければ借地契約解除の対象とはなりません。また増改築禁止の特約がある場合であっても、判例は、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認められない場合は解除できないものとして契約解除を制限しています(借家契約においても同様に契約解除を認めなかったケースもありますが、借地契約に比べると解除が認められ易い傾向にあります)。さらに借地借家法第17条2項では、増改築禁止特約がある場合に賃貸人が承諾しないときは、裁判所に対し承諾に代わる許可を求めることができるものとして、借地人が増改築できる途を開いています(借家の場合はこのような手続は認められていません。)。

ご質問のケースは借家の場合に物置の増築工事を行ったということですから、家主の承諾を得ていないとすれば借家契約を解除される可能性が高いと考えられます。したがって工事はすぐに中止した方がよいでしょう。

リフォーム工事の種類

では、借家の場合であれば、どのようなリフォーム工事の場合でも家主の承諾が必要なのでしょうか。
リフォーム工事の中にも、増築、改築、模様替え、造作工事など色々な種類の工事があり、その工事内容によって法律的な取り扱いも異なってきます。しかしながらこれらの区別は必ずしも明確ではありません。
一応、「増築」は建物の床面積を増加させる工事、「改築」は屋根の葺き替え、壁の撤去など建物本体を変更する工事、「模様替え」はクロスの貼り替えや造り付けカウンターの取り替えなど小規模で原状回復することが簡単な改装工事、「造作工事」は畳、襖など建物に付加されたもので取り外しが容易なものの設置・取替工事、ということができますが、模様替えも大規模なものになれば改築といわれてしまうこともあります。
結局、具体的な工事内容によってケースバイケースで考えていくしかないでしょう。

基本的には家主の承諾が必要

これらの中でも、単なる模様替えや造作物の取り替えであれば家主の承諾がなくても契約解除にはならないと考えられます。小規模で簡単に原状回復できるものであれば、家主の建物所有権についての損害は軽微であり、家主との信頼関係が破壊されたとはいえないからです。判例でも、和室を洋室に改築したケースで、容易に原状に復せることを理由に契約解除を無効としたものがあります(東京地方裁判所昭和34年6月29日)。
これに対し、無断増改築は原則として契約解除の対象になります。もっとも判例では無断改築工事をした場合であってもお互いの信頼関係を破壊したとまではいえないとして解除を無効としたものもあります。例えば内装が14年を経て古くなりバーから婦人物洋品店に営業を変更するとともに内装工事を行ったケースで、増改築禁止の特約には違反するけれども解除は無効であるとしました(東京地方裁判所昭和56年3月26日)。
このように契約解除にまでは至らない場合があるとしても、家主との信頼関係を保つためには、あらかじめ家主の承諾を得て工事を行った方がよいことは言うまでもありません。したがって借家のリフォーム工事を頼まれたときは、まず家主の承諾を得ているかどうかを確かめる必要があります。

発注者(借家人)に対する損害賠償請求

しかしながら家主の承諾を得るのは借家人の義務であって、工事業者の義務ではありません。したがってご質問のように借家人が家主の承諾を得なかったために工事ができなくなった場合、その責任は借家人にありますから、工事業者は工事不能となったことによって被った損害を発注者である借家人に請求することができます。工事の出来高分を請求できるのはもちろんですが、既に材料の刻みが終わっており他に使用できなくなったような場合はその材料費分の損害賠償請求ができるでしょう。
ただ借家人は、「あなたはリフォームのプロなのだから、家主の承諾が必要だということくらいはきちんと説明すべきだった。」などと言って支払いを拒絶することも考えられます。このようなトラブルを防ぐためには、リフォーム工事前に工事業者自ら家主のところに行って工事の挨拶をするとともに、どのような工事をするのかをあらかじめ説明しておくのが一番よい方法だと思います。

2015/01/04(日) カテゴリー:

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