3.欠陥住宅の損害賠償責任

3.欠陥住宅の損害賠償責任

建設業者のための法律相談

Q

欠陥住宅の損害賠償責任

下請人が欠陥住宅を建てた場合、下請人は注文者に対して損害賠償責任を負わなければなりませんか。
私(X氏)は一人で大工をやっているものです。A社がB氏から建築請負した建物を、私がA社の下請で工事しました。ところがA社は足場や防護網も準備してくれなかったため作業がやりにくく、ついに私は1階の屋根から落ちて右手を怪我してしまいました。しかしA社は転落したのは私の不注意だと言って治療費も払ってくれませんでした。その後も工事を続けましたが怪我のためにいつもどおりには工事ができず、それでも何とか建物を完成してB氏に引き渡しました。しかし2ヶ月経ってB氏から雨漏りがするので補修してくれと私に直接言ってきました。このような場合、私はB氏の請求に応じなければならないのでしょうか。またA社に対して治療費の請求はできないのでしょうか。

下請と注文者との関係

下請と注文者との関係B氏の補修請求は、民法634条の瑕疵(かし)担保責任に基づくものと考えられます。瑕疵担保責任とは、建物に欠陥がある場合に注文者は請負人に補修の請求又はそれに代えて補修費の損害賠償請求ができるというものです(補修とともに損害賠償請求することもできます)。
しかしこの瑕疵担保責任は請負契約に基づくものですから、質問の場合、B氏はX氏に瑕疵担保責任を追及することはできません。
つまり請負契約はA社とB氏との間で結ばれたものですから、B氏は契約当事者でない下請のX氏には補修や損害賠償の請求をすることはできないのです。したがってX氏はB氏の請求に応じる必要はありません。
もっとも建物の欠陥がX氏の故意または過失によって生じた場合、B氏はX氏に対し不法行為責任(民法709条)を追求することができます。但し、この場合は金銭的な損害賠償請求ができるだけで「補修しろ」という請求はできません。
したがっていずれにしろB氏からの補修請求には応じる必要はないことになります。

元請と注文者との関係

元請は注文者と請負契約をしても、仕事を下請にやらせることができます。但し、下請を使うことを禁止する特約があったり、仕事の性質上、元請がしなければいけないような場合は下請にやらせることはできません。また建設業者は、注文者の書面による承諾がない限り一括下請は許されないことになっています(建設業法22条)。
元請が下請に工事をやらせた場合、下請は単なる履行補助者にすぎず、元請は下請の故意・過失についても自分に故意・過失があったものと同視され責任を負わなければならないと考えられています。したがって元請は注文者に対し、下請の工事ミスについても責任を負わなければなりません。
つまり質問のケースでは、B氏の請求に応じなければならないのはA社ということになります。

元請と下請との関係

元請と下請とは一般的には通常の請負契約の関係にあります。したがって元請は下請に対し瑕疵担保責任を追求できますし、また工事ミスについて下請に故意、過失があれば不法行為責任を追及することもできます。
つまり質問のケースではA社がB氏の請求に応じた場合、A社はX氏に瑕疵修補または損害賠償の請求ができるということになります。

下請は元請に治療費請求できるか

ではX氏はA社に対し、治療費について損害賠償請求できるでしょうか。
この点については最近、元請に損害賠償義務を認めた判例が出ましたので紹介します。この事件も質問と同じようなケースで、大工の甲が屋根から落ちて脊髄損傷により両足麻痺などの後遺障害が残ったので、足場などの設備を設けずに作業をさせた元請の乙社に安全配慮義務違反があるとして1億円の損害賠償を請求した事件です。
安全配慮義務というのは、一般には労働者が勤務中に事故に遭わないようにするために使用者が労働者の生命や健康を損なうことがないように環境を整備してこれに配慮する義務をいいます。もっとも使用者と労働者というように雇用契約関係になくても、実質的に使用従属関係があればこの義務はあると考えられています。
この事件で裁判所は、甲と乙社との関係を雇用契約関係ではあるとはいえないが請負契約関係でもなく請負契約の色彩の強い契約関係にあると認定しました。そして甲と乙社とは実質的な使用従属関係にあるとし、乙社は足場その他の墜落防止設備がなく、墜落することが容易に予見できたのに、甲が高所作業をしているのを黙認していたものであり安全配慮義務違反があるとして乙社の損害賠償責任を認めました。ただ甲にも危険であることを知りながら作業したという重大な過失があるとして8割の過失相殺をしました(浦和地方裁判所平成8年3月22日判決)。
この判例からすれば質問の場合も治療費の請求はできると考えられますが、全額認められるのは難しいといえるでしょう。
そこで質問の場合、X氏がA社から瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求を受けた場合、X氏は治療費の損害賠償請求権と相殺すると主張すればよいでしょう。またそもそも工事に瑕疵が生じたのはA社の安全配慮義務違反がありそれによって怪我をしたからだとしてA社からの損害賠償請求を拒絶又は過失相殺を主張することもできると考えられます。

2015/01/04(日) カテゴリー:

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