1. 建築工事の際の近隣問題

1. 建築工事の際の近隣問題

建設業者のための法律相談

建築工事の際の近隣問題

建築工事をするために隣の敷地を使うことはできますか。また隣から出ている木の枝を切り取ることはできますか。

Q

1.工事ミスと契約解除

A氏から住宅建築の依頼を受けましたが、設計上、東隣のB氏の敷地境界から建物まで20cmしか離れていないためB氏の敷地に足場を設けなければ工事ができない状況です。そこでB氏に敷地を使わせて欲しいとお願いしましたが、A氏とB氏とは仲が悪くB氏から絶対にダメだと断られてしまいました。何とかB氏の敷地を使える方法はないでしょうか。また西隣のC氏の木の枝がA氏の敷地までせり出してきており工事の邪魔になります。このような木の枝は切り取ってもかまわないのでしょうか。

隣地を使用させろと請求することはできる

民法第209条1項は、「土地の所有者は境界またはその近傍において牆壁(ショウヘキ)もしくは建物を築造しまたはこれを修繕するために必要なる範囲内において隣地の使用を請求することができる」と規定しています。したがって土地所有者は隣地所有者に土地を使用させろと請求する権利があり、反対に隣地所有者はこの請求に応じる法律上の義務を負っていることになります。
しかし、だからといって隣の人の承諾もなしに、いきなり隣地に立ち入って足場を立てたりすることはできません。これはお金を貸した人には法律でお金を返せと請求する権利が認められていても、借りた人から無理やりお金を取り上げることはできないのと同じことです。つまり法治国家においては法律で権利として認められていても、その権利を実現するには原則として裁判によらなければならず、自ら実力行使することは許されていないのです(「自力救済の禁止」と言われています)。

何とか話し合いによる解決を

権利の実現は裁判によるといっても、ご質問のような近隣同士の問題についてはいきなり裁判をするのではなく、何とか話し合いによって使用させてもらえるよう努力すべきでしょう。お隣同士であればこの先何年も顔を付き合わせて生活していかなければならないのですから、後々しこりが残るような方法は避けるべきです。話し合いにおいては、どうしても隣地を使用しなければならないこと、工事中は迷惑をかけないこと、将来隣地所有者が建物を建てるときにはこちらの土地を使用してもかまわないこと、使用に対する礼金を払うこと等を提示して説得するとよいでしょう。また場合によってはこれらの事項を念書にして差し入れることも必要になるでしょう。

それでもダメなら調停か裁判を

しかし質問のケースではA氏とB氏との仲が悪いということですので、話し合いもうまく行かないかも知れません。そのような場合はまず調停の申立をするのがよいでしょう。調停は裁判所において調停委員が間に入って話し合いをするというものであり、経験豊かな調停委員がお互いの話に耳を向け相手を上手に説得してくれますので、当事者同士だけで話をするよりもスムースに話しがまとまるという利点がありますし、費用も裁判に比べると低額で済みます。
それでもダメだという場合には最終手段として裁判をして隣地所有者の承諾に代わる判決をもらうしかありません。しかしこのような近隣紛争においては、裁判はやむを得ない場合に限るべきだと考えています。
なお土地の使用が認められた場合に、隣地所有者がそれによって損害を受けたときは損害賠償をしなければならないことになっています(民法第209条2項)。

木の枝は切り取れない

では隣から出ている木の枝を勝手に切ることはできるでしょうか。
民法第233条1項によれば、隣地の木の枝が境界線を越えたときにそれを切れと請求できることになっていますが、この場合も自分で勝手に切ることはできません。これに対し民法第233条2項は、木の根であれば自分で切り取ってもよいとしています。つまり隣の樹木でも、塀の上から出ている柿を勝手に取ることはできませんが、地面から顔を出した竹の子は取ってもかまわないことになっているのです。
なぜこのような違いがあるのか不思議に思われる方も多いと思いますが、これは木の枝は花や実が成るので価値があると考えられており、また木の所有者は隣地に立ち入らなくても簡単に木の枝を切ることができるので所有者以外の人が価値のあるものを簡単に切るべきではないと考えられているからです。
したがって工事の邪魔になっているからといって境界から出ている木の枝を勝手に切ることはできません。もしその木が何百万円もする高価なものであったとすれば、切った方が何百万円もの損害賠償をしなければならないということになりかねませんので、注意して下さい。

仮処分による解決方法

このような場合も前と同様に、話し合いにより解決するのが一番よい方法ですが、それでもダメなときは調停や裁判手続をとることになります。
しかし調停や裁判では時間がかかり工事が間に合わなくなる可能性があります。またこの場合は、先ほどの隣地を使わせてもらうという場合とは異なり、自分の土地所有権が隣の木の枝によって侵害されているために工事が妨害されているというケースですから、もっと簡易迅速に解決できる方法をとりたいところです。
このように権利関係にトラブルがあって、そのままにしていたのでは著しい損害が生じるというような場合には暫定的な措置として妨害禁止の仮処分という制度が認められています。ご質問の場合であれば「〇日以内に木の枝を撤去せよ。〇日以内に撤去しない場合は裁判所執行官にC氏の費用で木の枝を撤去させることができる。」という内容の仮処分を裁判所に申し立てることになります。
調停や裁判の場合は、申立をしてから第1回目の期日が開かれるまでに1ヶ月以上かかり、それから話し合いや審理が行われますので結論が出るまでには何ヶ月も(場合によっては何年も)かかってしまいます。しかし仮処分の場合は申立をしてから早ければ1~2週間程度で裁判所の命令が発せられますので、緊急を要する場合には仮処分を申し立てるのがよいでしょう。

2014/12/25(木) カテゴリー:

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