法律情報

不動産賃貸管理の実務

建物老朽化と立退き

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一. 建物老朽化と立退き

建物が老朽化したので建て替えたいと思うのは大家としては当然です。しかし、建て替えたいからといって、借り主はおいそれとは出てくれません。期間が満了しても、借り主は法定更新で、保護されています。平成4年8月以降の新たな賃貸借には「取り壊し予定の建物」について、予め期限付きで貸せることになりましたが(借地借家法39条)、現在老朽化が問題なのは平成4年8月より以前に成立した賃貸借によるものでしょうから、この場合は、旧借家法第1条の2のにより、あくまで老朽化による立退きを求める解約もしくは更新拒絶に正当事由があることを裏付けなくてはなりません。「60年以上経過した木造の危険な建物で、然も賃借人は、他に不動産を所有し、当該建物を使用する必要性が高くない」という例外的ケースでは立退料なしに立退きが認められましたが(東京高裁3.11.26判例時報1443-128)、一般的には「30年以上経過したマンションで大修繕が必要ではあるが、建て替え理由の解除は否定された」(東京地裁4.3,28判例時報1449-112)事例のように、建て替えの必要性だけでは賃貸借の解約・更新拒絶の正当事由とするのは不十分です。

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二. 立退料と正当事由

そこで、貸し主が、立退料を提供すれば正当事由が補完され、解除が認められる、という考え方が出され、これが特に東京都心部の高度利用地区にある多く古い建物について建替えを必要とするケースで認められています。但し、建て替えの必要性が相当高いなどの正当性を裏付ける事情は当然必要で、それすら薄い場合は、いくら立退料を積んでも解除は認められません。銀座のビルの立退きでは30億円を立退料として提示したのに解除は認められませんでした(東京地裁平成2年4月25日)。正当事由は、双方の建物必要の事情、交渉経過、周りの利用状況、他の賃借人の有無などにも左右され、微妙な判断になりますので、一審では認めなかった立退きも、控訴審では立退料を支払って認めた事例もあります(後出参考判例f)。この立退料を支払う旨の申し出は、解約申し出と同時でなくとも、後からでもよく、また貸し主の申し出た額に拘らず、例えば貸し主が「4000万円提供する」と言っても裁判所が「貸し主が8000万円出すのと引換に明け渡せ」と判決することが出来ることになっています。(では貸し主が「裁判所の出した立退料は高すぎるので立退きはあきらめよう」としても借り主に請求されたら払わねばならないか?これは七項で後述します。)では、どういう場合に立退きが認められ、また、その場合立退料として、一体いくら位払えばいいのでしょうか、その基準はどうなっているのか、先ず最近の3つの具体例で検討しましょう。

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三. 最近の3事例の紹介

事例1「東京都吉祥寺JR駅前の飲食店」で、「4000万円」の立退料で解約申し出の正当事由が具備するとされた事例(東京地裁平成8年5月20日、判例時報1593-82)

  1. 賃借部分昭和36年建築の鉄筋コンクリート5階建ビルの1階、約132u、家賃月110万円、使用態様「飲食店」
  2. 貸主の事情
    1. 築後35年のビルで老朽化による雨漏り、消防からの改善指導あり、服飾専門学校経営は競争激化で、このため建物新築の必要あり。
    2. 10年前の裁判で貸し主は立退き求めたが拒否されたので諦め、借り主の投下資本回収のための営業継続を認め、低廉な家賃で貸してきた。
    3. 家賃2年分2640万円を立退料として提示した。
  3. 借主の事情
    1. 他に立ち食い蕎屋なども経営するが、この店が中心。
    2. 投下資本の回収ができない。
    3. 代替店舗の確保は難しい。
  4. 判決は、建て替えの必要性を認め、投下資本も合計20年の賃貸借で回収済みになっており、今後の借り主の減収分は、立退料で賄えばよいとした上、立退料は家賃3年分の「4000万円」で正当事由を補完できるとした。
  5. コメント

    この事例では若年層を相手にする服飾専門学校の特殊性からビル建て替え計画の合理性を認めている点も目を引きますが、立退料を「家賃3年分」と明示しのたが目新しく、立退料の一つの基準として今後実務上影響を与えそうです。

事例2「東京都千代田区麹町の事務所」で「800万円」の立退料で更新拒絶が認められた事例 (東京地裁平成8年3月15日、判例時報1583-78)

  1. 賃借部分昭和43年建築の鉄筋コンクリート6階建ビルの4階、約41u、家賃月15万円、使用態様「印刷会社事務所」
  2. 貸主の事情
    1. 老朽化による外壁などのひび、エレベーター配管設備の老朽化、建築基準法消防法などへ現行法規に不適合で、建て替えの必要。
    2. 地域指定の見直しにより住居から商業地区になり土地の有効利用のためにも建て替えが必要。
    3. 同時に計画された隣のビルは既に建て替えられ、このビルの他の借り主も既に退去した。
    4. 交渉の経過の中で、立退料4000万円を提示した。
  3. 借主の事情
    1. 本店所在地ではあるが、他にも事業所(新宿)がある。
    2. 移転で不利益を受ける。
  4. 判決は、ビルの老朽化は必ずしも明確ではないとしながら、改修より新規建築の方が費用も安く期間も短いなども理由も掲げ、建て替えの必要性を認め、移転は借り主に不利益だが、相場の賃料が低下しているので引越しは容易であるとして、「800万円の立退料」で正当事由を補完できるから更新拒絶は正当事由があるとして、借り主に立退きを命じた。
  5. コメント

    建て替え計画が進み、貸し主は立退き交渉を重ね、他の部分の賃借人の立退きが進み、この借り主だけ残ったというビルの立退きで、貸し主が「4000万」の申し出をしているのに(但し裁判外で)、「800万」という5分の1の立退料での立退きが命じられましたが、根拠は明確でありません。「ごね得」を許さぬという姿勢を示した、ということでしょうか。

事例3「東京都新宿区のゲームセンタ」で「2億2500万円」の立退料で解約による明け渡しが認容された事例(東京地裁平成7年10月16日判例タイムズ919-163)

  1. 賃借部分昭和35年建築の軽量鉄骨亜鉛メッキ鋼板葺3階建ビルの1階、家賃月200万円、使用態様「ゲームセンター」
  2. 貸主の事情
    1. 新宿西口南口近くで、中層の店舗兼事務所ビル敷地として利用するのが最有効利用である。
    2. 老朽化でしかも、エレベーターがない、部屋の配置も機能的でない。また、建築基準法、消防法などへ現行法規に不適合のおそれがあって建て替えの必要がある。
    3. 双方で、他の店舗の賃貸も含め双方で紛争があり、信頼関係は破壊された。
    4. 代替店舗の提供、及び立退料1億または2億2500万円を提示した。
  3. 借主の事情
    1. 修繕義務による補強工事を要求した。
    2. 営業廃止補償など借家権として14億を要求した。
  4. 判決は、老朽化がはなはだしくというほどの事情はなく、また信頼関係破壊もないが、建て替えの合理性があるとして、「割合方式」(後述四3項)の鑑定による借家権2億2500万円の立退料で正当事由を補完できるとし、借り主に立退きを命じた。
  5. コメント

    ビルは事例2より古いが、建て替えの必要性はそれほどでないとしながら、地域性から来る土地の最有効利用の必要を重視し、賃借人の不利益は鑑定の借家権評価の立退料の補償によってカバーしようとした事例です。

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四. 立退料額はどうして決まるか

  • 1. 正当事由の補完ということ

    建て替えのための解約申し出や、更新拒絶には、ビルの老朽化の程度や、周りの土地の利用状況、建坪率の変更などからの有効利用の必要などがなくては、正当な理由があるとはいえませんが、これだけではなく、賃貸人・賃借人の双方についてそれぞれがその場所を必要とする事情を比較し、立退き交渉やそれまでの賃借関係なども考慮し、その上で、その上に「立退料」の支払があれば、賃貸人に軍配を挙げる、ということですから、外の事情が賃貸人に有利なら「安く」、不利なら「高く」なることになります。

  • 2. 立退料の内容

    立退料の内容としては、次のものがあるとされます。

    1. 移転費用、これも詳しく言うと次の内容が含まれます。
      1. 引越し費用(運送費、梱包費、諸届け出、転居通知などの費用)
      2. 移転先取得費用(敷金、保証金、不動産仲介費用など)
      3. 差額賃料(移転によって増額した家賃との差額)
    2. 事実上失う利益の補償(いわゆる居住権、営業権、休業損失、減収)
    3. 消滅する利用権の補償(いわゆる借家権)

    なおその他に4. 「開発利益の分配」という考えがあります。立ち退きで、その土地が開発され、土地の価格が上昇する分大家地主は利得を得るわけですが、それには立ち退いた借家人の貢献もあった、という面を評価し、その分を立退料の中で斟酌しようとするものです。

  • 3. 借家権の算定方法

    では、借家権価格は一体どうして出すのか。借家権の鑑定方式は不動産鑑定基準で次の4つあり、特に2. の「割合方式」多く使われますが、決定的なものがある訳ではありません。計算式を簡単に説明しましょう。

    1. 益還元方式(差額賃料還元方式)
      計算式: (正常実質賃料 - 実際支払賃料)* 福利年金現価率
      賃貸人が有する建物という資産が生み出す賃料を法律上の果実(元金に対する金利のようなもの)として捉え、逆算して(つまり金利から元金を算定するように)借家権価格を算出しようというものです。
    2. 割合方式
      計算式: (土地価格 * 借地割合 * 借家割合)+(建物価格 * 借家割合)
      敷地に着目し、土地の価格から利用権の割合を求めるものです。一般的には、土地価格に借地割合の70〜80%(路線価表による)に借家割合30%(相続評価基準)を掛け、これに建物の40%の価格を足したものとなることが多く、計算が単純なことからよく用いられます。
    3. 収益価格控除方式
      計算式: (当該建物と敷地の価格) - (当該家賃とその敷地の収益価格)
      当該不動産に賃借権のような利用権がある場合とない場合に差額を借家権価格として評価する方法です。
    4. 比準方式
      計算式: (借家権取引事例価格)* (当該借家と取引事例の個別要因比較での修正)
      実際の取引事例の価格を基準に当該借家の価格をこれとの比較で出そうというものです。
  • 4. 裁判所の出す立退料額

    裁判所はこれらの鑑定を参考にし、さらに、営業損失、移転費用などを考慮して立退料額を決めますが、必ずしも鑑定の数字に従いません。双方から自分の都合のいい鑑定を出し合い、複数の鑑定になることもありますが、裁判所はこのどれにも依拠せず、あくまで個々の正当事由との関連で、双方の事情を加味して、独自に立退料を出します。事例1〜3、及び末尾のaからiの9つの参考判例をの具体例に則して纏めて見ましょう。

    (資料、従来の参考裁判事例)

    ここで別の立退料の提供で立ち退きを認めた昭和61年以降の裁判事例を掲げてみました。もちろん時期によって相場は相当異なり、特に借家権の鑑定は土地の価格に左右されますのでバブルの前後で事情は激変しました。その変化を念頭において立退料額をみて下さい、(1)は建替えを相当とする背景事情、(2)は立退料算定の背景事情です。

    • a. 「東京新橋駅前の中華料理店」につき「3億4千万円」の立退料(東京地裁61.5.28時1233-85)
      1. 新橋駅前の大正時代のビル一階、老朽化で耐震性危険あり、立地条件からも新建物建築は合理性あり。
      2. 立退料として、代表者・従業員の生計維持の減収分補填が必要として、他の賃借人との和解を参考にし借家権2億9千万に、営業利益と経費の2年分5000万を付加し、計「3億4千万円」を立退料とした。
    • b. 「JR大阪駅前一等地の薬局」につき「9千万円」の立退料(大阪地裁63.10.31時1308-134)
      1. 賃貸建物は木造2階建て、広大な土地の一部で高度利用必要、借り主は他所に自宅あり。
      2. 立退料は昭和61年当時の鑑定借家権5300万円が2年後で地価倍増、営業中断の保証、新たに借りるため保証金などを考慮して「9000万円」の立退料。
    • c. 「東京西池袋の酒屋兼住居」について「1億6千万円」の立退料(東京高裁1、3,30時1306-38)
      1. 昭和22年ころ建築の木造長屋、建物朽廃が近い、市街地再開発は住民の総意で公益に添う。
      2. 借家権鑑定1億2500万、1年間の営業利益1500万などを考慮して「1億6千万円」立退料。
    • d. 「東京新宿の印刷業店舗」に付いて「6000万円」の立退料(東京地裁1.7.10時1356-106)
      1. 築後30年以上の木造二階建て老朽化著しく、土地の有効利用からのビル新築の必要あり。
      2. 借家権価格は2500万円で、それに代替店舗費用、移転費用、顧客減少による営業損失、再開までの休業補償などを加味して「6000万円」の立退料。
    • e. 「東京六本木のディスコ」について「4億円」の立退料(東京高裁1.9,29時1356-106)
      1. 昭和31年建築増築の建物で、老朽化と高度利用に必要性から取り壊して新ビル建築の必要性はあり。
      2. 借家権鑑定は8億と4億9000万と2つあるが、後者が相当で、かつ借り主に背信行為ありと考慮して「4億円」の立退料。
    • f. 「東京早稲田通りと明治通り交差点のジーンズ店舗」について「2億8千万円」の立退料(東京高裁2.5.14時1350-63)* 一審では、立退料を出しても正当事由を補完しない、として立ち退き請求は却下された。
      1. 築後60年の木造亜鉛メッキ建物で老朽化は明らかで、周りは中高層化必至。
      2. 新店舗入居保証金1億6000万、営業損失1億2000万、新店舗造作費1000万、移転費仲介手数料300万円などを考慮して「2億8千万円」の立退料。
    • g. 「東京六本木の日本料理店」について「1億5千万円」の立退料(東京地裁2.9.10時1387-91)
      1. 他は空き家で、築後30年で家賃17万と低廉、高度利用再開発の要請強い。
      2. 更地価格18億以上、開発利益の還元も考慮し、3つの借家権価格の鑑定の内一番高いものを採用して「1億5千万円」の立退料。ちょうど営業利益の10年分にあたる。
    • h. 「東京銀座の印刷所」について「8億円」の立退料(東京地裁3.5.30時1395-81)
      1. 昭和4年完成鉄筋コンクリート5階で老朽化なお進行中で、耐震性の危険があり、補修より建て替えが経済的で、しかも銀座という立地がら高度有効利用が望ましい。
      2. 借家権評価の鑑定は、差額還元方式、割合方式、補償方式をミックスして昭和61年6億、昭和63年12億としたが、裁判所は相当でないとして独自の認定で「8億円」の立退料。
    • i. 「東京都文京区本郷のコンピュータ室」で「1億円」の立退料(東京地裁3.7.25時1416-98)
      1. 昭和46年建築の鉄骨プレハブ3階建てで、事務所老朽化、陳腐化し、近隣状況の進展に応じた敷地の有効利用が必要。
      2. 家賃差額(現行128万円、新規200万円)、近隣保証金3600万、従来支払い家賃総額1億、借家権鑑定1億900万などを参考に「1億円」の立退料

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五. これから立退きを求める場合の注意点

  1. 従来の判例で、建て替え理由の解約・更新拒絶の正当事由の判断に当たって重視されたと思われる項目で参考となるものを掲げると次のものが挙げられます。
    1. 「老朽化の程度、建築基準法・消防法の不適合」(築後30年以上というものが多いのですが、事例1の昭和43年、参考判例iの昭和h46年の建築もあります。)
    2. 「土地の高度利用の必要性、容積率・建坪率の変化、周囲の利用状況」(場所的には東京の都心の事例です。)
    3. 「借り主の建物使用の必要性」(特に「借り主が他に不動産がある」点は、事例2や参考判例bのように貸し主に有利に働きます。)
    4. 「他の賃借人が退居しているか」(事例2のように、退居の交渉を進め、その賃借人しか残っていない事情も影響します。)
    5. 「家賃が低廉で推移したか」(事例1ではこの点も注目されました)
    6. 「立退き交渉における事情」(特に賃貸人側の誠意は事例2のように賃貸人に有利です。)
    7. 「賃借人に背信行為があったか」(程度が酷い場合は、「信頼関係破壊」として解除できますので、立退料は不要です。)
  2. 立退料額の決定当たって考慮された項目に次のものがあります。
    1. 「借家権鑑定価格」(事例3や参考判例gではストレートにこれが立退料とされましたが、参考判例hでは裁判所が独自に判定しました。)
    2. 「申出額」(これも立退料の根拠とされますが、多くの場合は鑑定結果を見て申し出ているようです。)
    3. 「営業利益・営業損失」(参考判例aでは生計費を、参考判例cでは営業利益を借家権の鑑定に上乗せし、参考判例gでは「営業利益10年分」が立ち退き料相当としています。)
    4. 「従来の家賃」(事例1では3年分を立退料とし、参考判例iでは、総支払家賃額と立ち退き料がk一死一致します)
    5. 「移転費用」(参考判例fでは再入居費用を立退料とし、参考判例dでは借家権の価格にこの分を上乗せしたいる。)
    6. 「賃貸・賃借人間の背信行為」(参考判例eでは賃借人の背信行為が立ち退き料の減額事由とされました。)
  3. 以上を踏まえて、立退きを求めようとする場合、現在のビルの老朽化の状況や周囲の利用状況などの細かい事情も検討して、立退きが求められる状況か、立退料額の決定に当たってどういう要素を考えて見ればいいのか、考えてみて下さい。
  4. 最後に手続き的な点を忘れてなりません。更新拒絶は(1)期間満了1年前から6月前までの間に更新拒絶を通知し、(2)期間満了後も賃借人が継続使用している場合はすぐに異議を通知をしないと認めたことになります。期間の定めがないとものや、法定更新され期間に定めがないものになった場合は解約しますが、これも(1)6月経過以降の日と定めて、解約を通知し、(2)その期間満了後も賃借人が継続使用している場合は直ちに異議が必要です。

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六. 今後、建て替え予定の建物を賃す時の注意点

  1. 前述の通り新借地借家法では、取り壊し予定の建物については「確定期限付きの賃貸借」として、期限が来れば正当事由の有無や立退料の支払を要せず、借家契約を終了させこがことが出来ることとなりましたが、場面は限られており必ずしも貸し主に十分な配慮をいたといえません(39条)。但し、従来こういう場合は「一時使用目的」という契約する外なかったのですが、当事者間の合意でも一時使用と認めない判例もあり、終了の確保には不安がありました。
  2. 平成4年8月以降は、取り壊し予定建物を新たに貸す場合は、確定期限で貸すことができるようになりましたが、次の要件がありますので、注意して下さい。
    1. 取り壊し予定は「法令または契約で」一定期間経過後に取り壊しが明らかな場合に限られますので、貸し主が主観的に「3年後に取り壊した新築したい」という理由では認められません。
    2. 1年未満の期間は認められません。
    3. 契約書は公正証書にする必要はありませんが、建物を取り壊す理由となる事情を契約書などの書面で明確に記載しなくてはなりません。
  3. この要件に当てはまらないない場合はやはり従来通り「一時使用」として契約し、仮にそう認定されなくても、通常の賃貸借の正当事由となるよう具体的事情を契約書に明記して置くことが必要でしょう。

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七. 引換給付立退き料の支払義務について

  1. 最後に、立ち退き料を引換に支払え、という判決が確定したら、貸し主は支払わねばならないか、ということに触れておきます。前述の通り、引換給付での判決で此方の言い分通りの立退料で出ていってくれれば良いのですが、裁判所の出す金額は、此方の言い分の額とは限りません。実際の案件で、「立ち退き料として4000万を提示したが、判決は7000万円と出たのでとても出せないとを諦めたことろ、逆に賃借人から7000万円の支払請求がされた」事件がありました。(福岡地裁8・5.17タイムズ929-228)
  2. 判決はこの場合は請求できないとしましたが、これは申し出額と判決額が「格段に違う」ときなので、賃貸人の意思の範囲を超えているとの理由で支払義務を否定したのもです。しかし、一般的には引換え給付判決が確定した時、貸し主は信義則上支払申し出た立退料を撤回できず、その範囲にある限り(例えば1億の申し出に判決が1億1000万の判決という程度)、貸し主はその立ち退き料の支払義務はある、と言うのが多数の考えです。
  3. 従って立退料額を申し出る以上は、後で撤回は出来ないかもしれない、ということは頭に置いていて下さい。

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みらい総合法律事務所(Mirai Sogo Law Offices)